プロローグ 血に塗られた誓い
初めまして。前々から登録をしていましたが、ようやく書き始めました。
楽しんでくださるとうれしいです。
忠誠の制約――それは、決してたがえてはならないもの。
騎士が、主と定めたただ一人に、自らの剣を掲げ、誓文を述べることで成立する神聖な儀式。
一度決めたならば最後、変更することはできない。
だからこそ、騎士たちは慎重になる。主を変えられないということは、主とは一蓮托生。とんでもない人物を選んでしまったら破滅する。
「我、この剣を捧げ、永久の忠誠を誓う。ただ一人の我が君へ」
ポツリとつぶやいたのは忠誠の制約で騎士が口にする誓文、その最後の一文だった。
かつて、自分も手にしている剣を握りしめ、興奮する胸を抑えながら口にしたはずの言葉。これからも、自分の主とともに人生を歩んでいくのだと――信じていた。
「何がいけなかったんだろうな……」
彼は目の前にいる主に向かって問いかける。返事はない、と知りつつ。
様々な感情が入り乱れ、自身の胸を焼く。
紅くそまった剣を握りしめ、絞り出すように後悔の声を紡ぐ。
「なぜ……」
自分の剣で貫かれ、すでに息絶えた主は光のない瞳で、ぼんやりと騎士の顔を映していた……
「シルファ」
まるで夜明けと明け方の狭間のような色から通称、暁の花と呼ばれる。この花はごく一部の地域にしか咲かず、見つけることもとても難しい。そのため、一輪のシルファは幸運、二輪のシルファは変わらない友情を象徴する。人はこの花を親愛なる友、あるいは最愛の恋人に手渡し、永遠を誓いあうという。
『エルディア国辞典』より抜粋
あの時、その花を受け取らなければ、後にあのような苦痛に身を浸すことはなかっただろうか?
……いいや。
後の運命を知っていても、私はその花を手にし、友に誓っただろう。
いつまでも貴方の騎士であり続けると。
とある人物の手記より抜粋