甘吉の短編集 1
『行かないで。』
その言葉は人を混乱させる。
もちろん俺もその1人だ。
だから俺はその言葉が嫌いだ。
行かないでだとか離れないでとか正直重いしウザイ。
俺と関係を持った女共はそれを言ってきたから別れた。めんどくさかった。
もう恋とかしない。
する訳ない、心底めんどくさい、って
思ってた。
でも俺はある人を好きになってしまった。
そいつはかっこよくて、可愛くて
優しいやつだ。
俺よりも頭が良くて、才能もある。
今にでも俺のものにしたい。
だが1つ、問題がある。
そいつは男だ。
この俺が男をすきになるなんてこと
ありえないって思ってたが段々と話をしていくようになり好きになってしまった。
俺のものにしたい。手の届くところに君がいて欲しい。愛したい。
俺は告白することにした。
「付き合ってください」
男が男を好きになるなんて分かってもらえないと決めつけていた。
振られる覚悟だった。
返ってきた言葉は
「僕でよければ」
まぁ当然そうだよな?そうなるんだ。
そう、そうそう、え?
いいのか、、俺で?と最初は思ったが
付き合ってみると[友達]の時とは全然違う「彼」の一面が見れて幸せな気持ちになる。
この関係がこの時間がずっと続いて欲しいなと思っていた。
それが簡単なことでは無いと気づいたのは、
付き合って約半年、一緒にも住み始めて少ししてからのことだった。
愛する彼を傷つけてしまって彼が家を出て行ってしまった。
「もう君とは居られない。」
その言葉が君の口から出てきたことに驚きを隠せなかった。
あいつと離れるなんて絶対に無理だ。
俺にはあいつしか居ないんだ。
俺はあの時なんで、あんなことを言ってしまったんだ。
頭が真っ白だった。
出ていった彼が帰ってくるまで考えたり、時には泣いたこともあった。
彼は帰ってくる、そう信じて
また一緒にいられることを願って、
彼を待っていた。
ガチャ···
ドアの開く音がしてすぐさま玄関に走っていってみると、そこに居たのは俺が待っていた彼だった。彼は思ってた通り俺のとこに帰ってきた。当然だ。 こんなにも愛し合っているんだから。
俺の元からは離れられないんだ。
「おかえり」 待ってた、この時を。
「あのね、あの時は、俺が、」と、言葉を絞り出す。すると、食い気味に彼は「出ていくから。もう帰ってこない。君とも別れる。」と言った。 最愛の彼の後ろ姿を見ながら追いかけることしか出来ずに伝えたいことを整理していた。 《俺は、俺は、》彼は俺を見ることも、俺に何を言うこともなくドアノブに手をかけた。その時··
「行かないでくれ。」
俺の口から出たのは俺の大っ嫌いなその言葉だった。
「俺の嫌いな言葉」を読んで頂き、ありがとうございました。
私の初めてしっかりと書いた短編小説になりますので、こういった形で投稿できるのはすごく新鮮で嬉しかったです。
また別の短編小説も読んでいただけたら幸いです。
甘吉。