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移ろう季節に想いを馳せる君 (BI Second)  作者: とらすけ
第一部 夜の帳が下りる刻
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8話 集合地点


8話 集合地点



 刹那は、弥生の後ろについて歩いていたが不思議な事にいつの間にか弥生の姿を見失っていた。


・・・どういうこと? すぐ後ろを歩いていた筈なのに ・・・


 刹那は何故弥生が慌てたように再びこの家の中に飛び込んだか分かった気がした。


・・・まだ、ここには妖怪が潜んでいる ・・・


 周囲に注意を払うが、もうとても家の中とは思えない空間に誘い込まれている事に気付いた刹那は木刀に気を込め戦闘態勢をとる。そして、慎重に進んで行く。この家に入ったと思われる男の子たちや、すぐ先に入った警察官の姿もない。刹那は一人暗闇の中で考えた。


・・・子供たちや警察官はともかく、弥生が簡単に捕らわれるとは思えない 何か秘密がある筈だ 弥生はこの家を見つめていて慌てて飛び込んでいった 何かあったんだ ・・・


 刹那は思い出そうとするが、弥生が感じた違和感が何だったのか思い至らなかった。


・・・こういう時、澪さんならどうするか? ・・・


 考えていて刹那は可笑しくなってきた。


・・・澪さんが細かく考える訳がない とにかく行動あるのみ ・・・


 刹那は精神を集中する。そして、朱姫の力を発動する。


「夏の夕立 」


 雷鳴が轟き激しい雨が降ってきた。


・・・なるほど 朱姫の力が使えるなら結界に捕らえられたわけではないか すると此処は異界と同じような空間 ならば、真言で破れるかも ・・・


 刹那は印契を結び真言を唱えた。すると、今まで暗闇に包まれていた空間の遥か前方に白い光が見える。


・・・よし あの光だ ・・・


 刹那は光に向かって走り出す。白い光と見えていたのは発光する一枚の壁だった。その壁の前に何かが転がっている。そして、地獄の亡者と云われる”餓鬼”が集まり、その転がっている物を食べていた。刹那が木刀を構え近付いても逃げる様子もない。


・・・何を食べているんだ? ・・・


 刹那は慎重に近付いて一匹の”餓鬼”が手にして食べている物を見ると、人の腕のようであった。先に入った子供たちか警察官が殺されてしまったのかと怒りが湧いてきた刹那だったが、よく見ると大人の女性の腕のように見える。刹那は心臓の鼓動が早くなるのを感じた。


・・・まさか ・・・


 足に噛りついている”餓鬼”もいる。その足は膝上までの黒いソックスに青いローファーを履いている。


・・・そんな事、あり得ない ・・・


 刹那は飛び出し”餓鬼”に向かって次々に木刀を叩き込んだ。”餓鬼”を倒した後には、バラバラにされ食い散らかされた人間の体があった。その手足や頭が無い体の部分は、腹が切り裂かれ内臓が食い荒らされている。そして、その体が着ている洋服は血や内臓で汚れてしまっているが、青い襟のセーラー服だった。


・・・そんな これはまやかしだ 弥生が”餓鬼”なんかに殺られるわけがない ・・・


 その時、刹那は発光する壁の前に転がっている丸い物体が目に入った。日本人形のような髪の人間の頭に見える。顔の右半分は”餓鬼”に食い荒らされて骨が見えている。刹那は恐る恐る頭に近付くと下になっている顔の左半分を確認した。


「うわぁぁーーーっ! 」


 思わず絶叫してしまった刹那に壁から触手が伸び刹那の両手両足、そして、胴にも絡みつく。刹那はそのまま壁に張り付けにされた。刹那に絡み付いた触手は、どくどくと刹那の生気を吸い取っていく。刹那は精神的なショックを受けた上に生気を吸い取られ気絶してしまっていた。そこへ、刀を持った”瀬戸大将”が現れた。”瀬戸大将”は刀を構えると刹那の右腕を肩口から斬り飛ばす。次に左腕。そして、両足。


「かひゅっ、かひゅっ 」


 四肢を切断され張り付けにされている刹那は、次に自分の首に狙いを付けている”瀬戸大将”を見て過呼吸になっていた。


・・・こんな所で最後を迎えるなんて 澪さんに申し訳ない ・・・


 刹那の両目から涙が溢れるが、その涙が落ちる前に刹那の首が切断された。



 * * *



 以前、卯月がチェックしていた別の怪しげな屋敷に澪たちは探索に来ていた。


「あれ? タダユキ、栞 何処に行ったんだ 」


 それまで一緒に探索していた二人の姿が見えなくなり澪は呼び掛けるが二人から返事はない。それどころか辺り一面今までの闇とは違う暗闇に包まれている。


・・・なるほどね お出ましってわけか ・・・


 澪は辺りを見回し印契を結ぶと真言を唱えた。


・・・もう朱姫の力は無いけれど、これまで修行してきた真言の力はそこそこあるんだよ 舐めてもらっては困るわ ・・・


 ゆっくりと長い真言を唱え終わった澪の目に、遠くにポツリと白い光が見えた。澪は、その光に向かって走りながらスマートフォンを手に取る。


「タダユキ、栞、聞こえるか 」


 グループ通話にして澪が呼び掛ける。


「白い光が見えている筈だ その前に集合だよ 」


「了解 」


「ふんふん OKです 」


 発光する壁の前に辿り着いた澪は、その壁に張り付けにされた刹那の体と、転がっている弥生の体やバラバラにされた二人の手足を目撃する。そして、壁の下には弥生と刹那の切断された頭が置かれていた。その時、スマートフォンからタダユキの声が聞こえた。


「澪 これはいったい? 」


 しかし、それには答えず澪は栞に呼び掛ける。


「ふんふん 私も着きました これは急いだ方が良いですね 」


 栞も一見して事態を把握したようであった。


「刹那と弥生には悪いことをしてしまったよ 私と卯月の指導力不足だよね 」


「ふんふん それは違うと思いますよ これは仕方のない事です 」


「ありがとう、栞 それと、あの二人は呼んでくれたかい? 」


「ええ、大丈夫です 今頃あの家の前で待機している筈です 」


「よし、それじゃあ始めるか 」


 澪はスマートフォンで二人に指示をだした。


 

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