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移ろう季節に想いを馳せる君 (BI Second)  作者: とらすけ
第一部 夜の帳が下りる刻
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7話 崩壊


7話 崩壊



 張り付けにされている刹那は両腕を切断され血塗れになっている。転倒した弥生は、足だけでなく体全体を”頬撫(ほおな)で”の白い手に押さえ付けられていた。


・・・なんとか刹那を助け出さないと ・・・


 弥生は必死に”頬撫で”の白い手から逃れようとするが、”頬撫で”の数はどんどん増えていき、今まで静観していたような”白坊主(しろぼうず)”も弥生に向かって漂うように近付いてくる。


パタパタ、パタパタ、パタパタ、パタパタ、パタパタ、パタパタ


 背後からの音も間近に迫っていた。そして、”瀬戸大将(せとたいしょう)”がまた刀を振り上げる。


ズバァ!!ズバァ!!!


 刹那の両足が付け根から切断され、血を噴き出しながら吹き飛んだ。


「ああぁぁぁーーーーーっ!! 」


 絶叫する刹那の首に狙いを付けた”瀬戸大将”は、弥生の顔を見てニヤリと笑うと、刹那の首目掛けて刀を振った。


バシュッ!!


 嫌な音と共に血を噴き出しながら刹那の頭が宙に舞う。”瀬戸大将”はさらに宙に舞う刹那の頭に刀を突きだし、串刺しにした。弥生は目の前で惨殺された刹那の姿に体が震えて止まらなかった。


「ごめんなさい、刹那 私が先輩のように強かったら…… 」


 弥生は、串刺しにされた刹那の頭を涙で滲む目で見つめながら押さえ付けられ動けずにいた。


パタパタ、パタパタ、パタパタ、パタパタ、パタ……


 そして、背後に迫っていた音が途絶えたかと思うと巨大な何かに押し潰されるように弥生は体を潰されていた。


「ごばぁっ 」


 弥生は口から血を吐いて苦しむ。そこへ眼前に迫った”白坊主”が刀を抜いて弥生の右腕に狙いを付けた。弥生は逃れようと体を動かそうとするが”頬撫で”に押さえ付けられ、巨大な何かに踏みつけられた状態で体を動かす事が出来なかった。


・・・このまま、何も出来ずにやられるわけにはいかない 私だって青姫の名を継いでいるのだから ・・・


 弥生は倒れたまま素早く真言を唱え両手の扇子を飛ばす。そして、宙を舞う扇子は高速で回転しながら、刀を振り下ろそうとしていた”白坊主”を切り裂いた。


「ほ、ほーい………… 」


 ”白坊主”は煙をあげ消滅していく。


・・・まず一体です ・・・


 弥生が戻ってきた扇子を再び飛ばそうとした時、右腕の付け根に鋭い痛みが走り抜ける。弥生が右側に顔を向けると”瀬戸大将”が切断した弥生の右腕を掴み放り投げるところだった。


「う、うわぁぁーーーっ!! 」


 絶叫する弥生の左腕も切断される。そして、弥生の両足も切断されてしまった。四肢を切断された弥生は、仰向けにされ”頬撫で”の白い手で押さえ付けられる。”瀬戸大将”は弥生の体に跨がると刀を構え、弥生の顔を見つめた。弥生は苦痛に歪む顔で、それでも真言を唱えようとしていたが”瀬戸大将”が刀を弥生に突き刺す方が早かった。


ザシュッ!


 弥生は胸を貫かれていた。弥生の体が硬直し途中まで唱えていた真言も途切れてしまう。”瀬戸大将”は刀を抜くと再び弥生の胸に刀を突き刺した。


ザシュッ!


 弥生はもう抵抗する事も出来ず、涙で滲む目で”瀬戸大将”がまた刀を構え自分を突き刺すのを見ていた。


ザシュッ! ザシュッ! ザシュッ! ザシュッ! ザシュッ! ザシュッ!


 ”瀬戸大将”は弥生の胸や腹部を何度も何度も滅多刺しにする。


「あ、あ、あ、あ、あ、あ、あ、あ 」


 呻き声をあげる弥生の体は、四肢を切断された上、何度も貫かれ血塗れになりピクピクと痙攣している。”瀬戸大将”はそんな弥生の姿を眺めると弥生の顔の前に近付き、弥生の涙を流す右目を指で押さえ開いたままにする。そして、刀の切っ先を弥生の右目に当てた。


「うあぁぁ 」


 力なく叫び声をあげる弥生に構わず”瀬戸大将”は弥生の右目に刀を突き入れていった。そして、そのままグリンと弥生の眼球を抉り取る。抉り取った眼球は握り潰されてしまった。


「ひゃぁぁ 」


 悲鳴をあげる弥生の開いた口を見た”瀬戸大将”は、弥生の口に無理矢理指を入れ今度は弥生の舌を掴みだし刀を当てる。


・・・先輩、みんな ごめんなさい、サヨナラです ・・・


 自分の死を悟った弥生は、卯月の姿を思い浮かべていた。そして、何の躊躇いもなく弥生の舌がスパッと切り取られ、弥生の口中に血が溢れ出す。ブクブクと血の泡を口から出し苦しむ弥生に止めをさす為、”瀬戸大将”は弥生の首に刀の刃を当てた。


ズブゥ!


 弥生の首に刀の刃が食い込んでいき、首からも血が激しく溢れ出す。弥生の体はビクンビクンと大きく痙攣を始めていた。そして……。


ゴトン…


 弥生の首が切断され転がった。弥生の意識は暗い闇の中に落ちていき、そのまま消えていった。



 * * *



 玄関から中に入り奥へ進んでいった男の子たちは一階の奥で異様な気配を発する柱を発見した。


「なあ、この柱 嫌な感じしないか? 」


「これ多分”逆柱”ってやつだ 」


「ああ、俺も知ってる 建てちゃいけないやつだろ? 」


「こんなのがあるって、ここ本当のお化け屋敷なんじゃないか 」


 男の子のたちはスマートフォンで撮影しながら”逆柱”に近付いていく。すると、その奥の闇がぐるぐると渦を巻いていく。


「何か不味いぞっ!! 」


 一人の男の子が叫び、全員が逃げ出そうとしたその時、渦の中心から黒い手が伸びてきて一人の男の子の足を掴む。


「うわっ!!! 」


 足を掴まれた男の子はずるずると引き摺られていく。


「ヒロシッ! 」


「今、行くっ! 」


 二人の男の子が捕まったヒロシに駆け寄り手を掴んだ。


「何やってんだ、トシユキ お前も手伝えっ! 」


「少し待ってくれ 」


 トシユキはスマートフォンを操作している。


「よしっ! 見つけた 」


 トシユキは三人に駆け寄ると、スマートフォンの再生ボタンをタップした。すると、トシユキのスマートフォンから真言が流れ出した。暗闇の中、真言が唱えられ、ヒロシの足を掴んでいた黒い手が逃げるように消えていった。


「大丈夫か、ヒロシ? 」


「ありがとう、みんな 助かった 」


 ヒロシが泣きべそをかきながらお礼を言う。


「トシユキ 今のは? 」


「青姫さんという人のサイトにある、真言という呪文のようなものだよ 」


「凄いな それがあればお化けなんか怖くないな 」


「いや、ダメだよ、シゲル これは弱いお化けを退散させるだけと書いてある お化けをやっつけたり、強いお化けには修行を積んだ人が直にお化けの前で唱えないとダメなんだ 」


「そりゃあ、そうか でも今のうちに逃げ出そう 」


 シゲルの提案に全員が一斉に走り出すが、何処までも闇が続き、まるで広大な暗闇の箱の中に閉じ込められているようだった。



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