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移ろう季節に想いを馳せる君 (BI Second)  作者: とらすけ
第二部 雷鳴の鳴り響く夜
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27話 追跡


27話 追跡



 弥生たちは如月に会議室に呼ばれていた。席につきコーヒーを飲んでいると、難しい顔をした如月が入ってきた。弥生たちは立ち上がり頭を下げる。


「楽にして下さい 」


 如月は弥生たちを座らせると、まずこれを見て下さいとモニターに映像を映し出す。


「何、これ? 」


 柚希が声を上げる。


「酷いですね 」


 弥生も震える声で言う。刹那と八千穂は声もなくモニターを見ていた。映像は、全裸になった少女が腕や脚を順番に切断されていき最後に首を切断されていた。次の少女は四肢を切断された上、首を吊られて殺されていた。最後に惨殺された少女が漏らした汚物をアップで撮影している所に、この撮影者の殺してからもなお少女を辱しめようという悪意が感じとれる。映像はそこで終わっていたが、この凄まじい動画に全員しばらく声が出せなかった。


「今、見てもらった動画は最近ネットワークで拡散されているものです 坂本巡査から連絡があり、こちらでも調べて欲しいとの事でした 警察では本物と見なして捜査しているといいますが、この動画を見てあなたたちはどう思いましたか? 率直な意見を言ってみてください 」


 弥生たちは顔を見合わせていたが、代表して弥生が口を開く。


「私もこれは本物のスナッフ動画だと思います まず、最初に犠牲になる女性は何かに取り憑かれたようですが、次の女性は本当に恐怖に怯えています 本当に殺された人間でなければ、こんな表情は出来ないでしょう 」


「なるほど、さすがに殺された経験のあるあなたたちの言葉は説得力がありますね 警察がこれを本物だと断定したのは、この動画に映っている被害者の恵利と桃子という女性の行方が分からなくなっているからだと言っていました 他に同じ高校の男子学生二人と大学生の男女も行方不明になっているそうです 」


「それで、何故私たちに? 」


「この犯行現場が見当たらないそうなのですよ 警察が行方不明者の足取りを追ってみても、海辺の砂浜が広がっているだけで何もない場所だったと言うのですよ 」


「なるほど、それでその場所を突き止めて欲しい訳ですね 」


「そういう事です あなたたちなら警察とは違う視点から調べる事が出来るでしょう よろしくお願いしますよ 」


 弥生たちは、動画のコピーを如月から受け取り会議室をあとにした。



 * * *



「何処かに誘い込まれたんだろうね そして、殺害された 」


「妖怪の仕業であるのは間違いないよね 人間を切断するような妖怪というと…… 」


「両腕が鋏になっている”網切り”が真っ先に浮かびますね 私の指も残酷に全て切り落としてくれましたし、人間を切断する事に喜びを感じる妖怪です 私の指も嬉々として切断して思い出すだけで恐怖が甦ってきます この女の子も相当怖かったでしょうね 」


 八千穂は自分が殺された時の事を思いだし、残酷に殺された少女に同情の念を禁じ得なかった。


「この女の子たちはこの廃村を目指して行って廃村で殺されました 警察も同じ廃村を探したのに見つけられませんでした という事は、この廃村は何らかの条件を満たした時に現れてくるのか、それとも、この廃村自体が妖怪で移動してしまうのか 」


「廃村自体が妖怪というのは今回は違う気がするね もし、そうなら何処かで同じ廃村が目撃されているはずだからね 」


「そうですね 私も特定の条件を満たすと取り込まれるのではと思います 」


「だとすると…… 年齢、性別、人数、あとは天候や時間なんかも考えられますね 」


「うーん、雲を掴むような話だね 年齢が10代なんてのが条件だったら私たちはアウトだね 」


「えっ、私、ギリギリ10代ですけど…… 」


 柚希の言葉に他の3人がじろりと睨み付ける。


「柚希、あなた、私たちにケンカ売っているんですか? 」


 八千穂が凄んで柚希に詰め寄る。


「何、怒ってるの八千穂 年取ると怒りっぽくなるんだね それに、大学生の二人は20代だから、年齢は関係ないと思うよ 」


 八千穂はギリギリと歯軋りしていたが、なんとか怒りを抑える事に成功した。


「そうかっ! わかった スタイルだよ 」


「へっ? 」


 柚希が叫び、他の3人が何っ?という顔をしたが柚希が続ける。


「ほら、この二人スタイル良いじゃない 女子大生もナイスバディだったみたいだし スタイル良い女子が条件なんだよ だから、私と刹那さんで行けばだいじょ・う・ぶ? んっ? 」


 柚希が能天気に叫んだ時、凄まじい殺気が弥生と八千穂から浴びせられる。


「今の発言、私がスタイル悪いように聞こえましたが? 」


「えっ? いや、私は弥生さんが胸が無くて寸胴だなんて思っても言ってませんよ そんな失礼な事、言うわけないじゃないですか 無乳、寸胴で、しかも根暗でオタクなんて 」


「新しいワード、増えてるんですけど 」


 ふーっふーっと鼻息を荒くする弥生を刹那が後ろから羽交い締めにして抑える。


「落ち着きなよ、弥生 柚希は弥生が無乳で寸胴で根暗でオタクなんて言ってないよ 」


 刹那にだめ押しされ、とうとう弥生は泣き出していた。


「弥生さん、大丈夫ですよ 弥生さんが私より胸が小さくてウエスト太いなんて誰も言ってませんから 」


 八千穂が、弥生を落ち着かせようとして更に深いダメージを与えてしまう。


「みんな、私を馬鹿にしていじめて楽しめばいいんだ 」


 駄々っ子みたいな弥生をなだめているうちに新しい情報がもたらされた。海岸の崖の上に建つ潰れたレストランで人間が消失したと云うのだ。残っていたのはレストランの前に停められた車と、どろどろに溶かされた有機物が僅かに残っているだけだった。このレストランに向かうと言っていた女子中学生2名と、車でやって来たと思われる人間が行方不明になっていた。ここは現場が現存しているため弥生たちは、まずこのレストランに向かってみる事にした。



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