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移ろう季節に想いを馳せる君 (BI Second)  作者: とらすけ
第二部 雷鳴の鳴り響く夜

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15話 四面楚歌

今回、凄惨な描写がありますので苦手な方は御注意下さい


15話 四面楚歌



 柚希は千陣を抜け襲いかかる小鬼を次々に倒していく。柚希の白く輝く拳を突き入れられた小鬼は、塵となって消滅していった。まさに一撃必殺の拳だ。柚希はさらに足にも玄姫の力を発動させる。これは、先代の玄姫である柊佳(とうか)が発案し実用化させた技であるが、柚希は両腕だけでも十分戦えた為、今までは体力を消耗するこの技を使おうとは思わなかった。だが、こうして他人数相手に一人で戦っていると、この手脚をフルに使い死角のないこの技がいかに有効であるか身に染みて分かった。


・・・柊佳(とうか)おばさん このために私にこの技を伝授してくれたんだ ・・・


 はぁ?何言ってんの。あんたが私より弱いから教えたんだよ。そんな憎まれ口を叩く柊佳の顔が柚希の頭に浮かんだ。

 柚希はもう迷いなく鬼の大群に一人で立ち向かう。くるっと体を回転させて回し蹴りを叩き込むと、次の鬼の間合いに入り拳を叩き込む。二体の鬼が瞬時に塵となって消えていく。なんとか柚希の体を押さえ付けようとする鬼たちだが、拳と脚を使った柚希の変幻自在の攻撃に翻弄され、手も足も出ず塵となって消えていった。まさに無双。今の柚希を止められる者はいないのではと思われた。

 しかし、いくら玄姫が無双の力を誇るとはいえ柚希は人間である。無尽蔵に玄姫の力が使えるわけではなかった。


ハァハァハァハァハァハァ


 柚希の息遣いが荒くなってくる。柚希は自分の体が重くなってきたのを感じた。


「まだまだぁ 」


 自分に気合いを入れながら柚希は戦い続ける。その時、柚希の動きが鈍くなったと感じた小鬼が一斉に棍棒で殴りかかってきた。柚希は全てをかわす事は諦めて目の前の鬼との間合いを詰め、確実に1体を倒し、そのまま裏拳で横の鬼も倒し、そのまま横に飛び退(の)く。が、柚希の頭目掛けて棍棒が振り下ろされていた。


・・・避(よ)けきれない ・・・


グシャッ!


 嫌な音が響く。左腕でガードし、頭への直撃を避けた柚希だったが、その代償として左腕は甚大なダメージを負ってしまった。以前の柚希であれば、もう心が折れ崩れていってしまっただろう。けれど、今の柚希は覚悟が違った。おそらく骨にヒビが入ったであろう左腕を庇(かば)いながら、右手と脚を使い戦い続ける。柚希の左腕を負傷させ、もう抵抗は出来ないだろうと軽く考えていた鬼たちは驚愕する。この人間はなぜこんな絶望的な状況の中で戦えるのだ。鬼がいくら考えても分からない事だった。柚希を今、支えているのは、ここを死地と決めた自分の”覚悟”と、良美と弥生たちの為戦い抜くと決めた”信念”だった。そして、自分が”覚悟”を持って”信念”を貫き通せば、自分が倒れても仲間が後を引き継いでくれると”信頼”していた。


・・・左腕が使えないのは、かなりの痛手だけど でも私は玄姫 まだ戦える ・・・


 柚希は蹴りをメインの攻撃に切り替え、まだまだ鬼を寄せ付けない。しかし、鬼も馬鹿ではない。柚希の機動力を奪うため脚に攻撃を集中する。


・・・動きを止めたら殺(や)られる ・・・


 脚への攻撃に注意しながら鬼を倒し続ける柚希の目に何かが光ったのが映った。咄嗟に避(よ)けたつもりだったが、柚希が思っている以上に体の動きが鈍くなっているようだった。右の太ももに激痛が走り、見ると矢が深々と突き刺さっていた。


・・・しまった ここで飛び道具か ・・・


 それでも柚希は歯を食い縛り、どこから狙っているのか確認する。弓を使う鬼はそう多くないが存在する。柚希は激痛に耐え目を光らせた。すると、左の木の陰に弓を構えている鬼の姿を発見した。


・・・そこか ・・・


 一直線にその鬼の元へと駆ける柚希は、今度は左の太ももの裏に激痛を感じ転倒した。が、すぐに回転して起き上がり、柚希に飛びかかろうとした小鬼を蹴りで倒す。しかし、今まで柚希の蹴りを受けた鬼は塵となって消滅していたが、今の鬼は血を吐いて倒れただけだった。どうやら脚に受けた負傷で玄姫の力が消えてしまったようだ。それまで白く輝いていた腕も光を失ってしまっている。


・・・弓を使う鬼は1体じゃなかったのか ・・・


 柚希の弱体化を悟った鬼たちは気勢を上げ勢いを増し襲いかかってくる。それでも柚希は1体1体確実に倒していくが、両足に受けた負傷はかなりの足枷になっていた。そして、ついに柚希は捕らえられてしまう。柚希の両手、両足が無数の鬼にがっしりと掴まれ、ボキッと骨が折られる。


「あぎゃーー 」


絶叫しながら柚希は抵抗するが、そのまま森の中まで連れていかれてしまい、両側の大木からロープで大の字にギリギリと縛られてしまった。折られた手足を引き伸ばされ激痛で柚希の目から涙がポロポロと零(こぼ)れ落ちる。そして、ボロボロのセーラー服とスカートが剥ぎ取られると、その下の下着まで切り裂かれてしまった。服を全て剥ぎ取られ大の字にされて泣いている柚希の無様な姿を見て鬼は一斉に笑い出した。そして、鬼は赤いペンキで柚希の胸に丸い的を描き、離れた位置から弓を構える。どうやら柚希を弓の的として楽しむようだ。


ヒュン


矢が風を切る音がして柚希の体に突き刺さった。


「あぐぅぅーー 」


描かれた胸の的からは大きく外れていたが、柚希の太ももに矢が突き刺さりブルブルと震えている。


ヒュン


続けて二撃目の矢が柚希の顔をかすめ、後方に飛んでいった。なかなか上手く当たらないと考えた鬼はだんだんと柚希に近付き、至近距離から狙いをつける。そして、矢を放った。


ズンッ


「ゴバァッ!! 」


 それは柚希の腹に深く突き刺さっていた。柚希は口から血を吐いて苦しむ。鬼は続けて矢を射ち続けた。


ドスッ、ドスッ、ドスッ、ドスッ!!


 立て続けに矢が柚希の体に突き刺さる。左腕、右太もも、左脇腹、そして、下腹部。柚希は体中に矢を射ち込まれ、呻き声を上げている。鬼はまた間髪を入れず矢を放つ。


ドスッ、ドスッ、ドスッ!!


 大の字にされた柚希の足の中心に立て続けに3本の矢が集中して突き刺さり柚希は顔を歪め絶叫する。


「ごがぁぁぁーー 」


 獸のように絶叫する柚希の股間から透明な液体が溢れ出した。柚希の下の地面に水溜まりが出来ていく。


「あうぅぅぅーーー 」


 もう何本の矢が柚希の体に突き刺さったのか、苦しげな声を上げる柚希の体がビクビクと震えている。


ドスッ!


 また矢が放たれ柚希の下腹部に矢が深く突き刺さった。


ドスッ、ドスッ!!


 今度はヘソ、そして、また下腹部。柚希の体は激しく痙攣をおこしていた。どうやら、鬼はわざと心臓を外し柚希を苦しめて楽しんでいるようにみえる。至近距離から矢を放つが、的に当てずに他に狙いをつけているのが明白だった。


ドスッ、ドスッ、ドスッ!!!


 今度は柚希の胸に矢が突き刺さるが、それは心臓を外し、柚希の胸の膨らみに突き刺さっていた。


「あうぅぅぅーーー 」


 口から血を吐きながら、柚希の呻き声が悲痛に響く。


ドスッ、ドスッ、ドスッ、ドスッ、ドスッ、ドスッ、ドスッ!!!


 容赦がなかった。もう柚希の体は頭と心臓を除き、矢の突き刺さっていない場所はなかった。いくら柚希が耐えようと確実に肉体の最期の時が近づいてきていた。


・・・ごめんなさい 私はここまでです でも精一杯戦ったよ やることは全部やった 褒(ほ)めてくれると嬉しいな あとはお願いします ・・・


 柚希は顔を上げると前で弓を構える鬼をキッと睨(にら)み付ける。その柚希目掛けて鬼は矢を射つ。


ドスッ!


「あがががが 」


 矢は柚希の口の中に突き刺さり後頭部に貫通していた。


ドスッ、ドスッ、ドスッ!!


 柚希の口中に次々に矢が突き刺さり貫通する。


「あばばばばば 」


 血の泡を口から吹いて力なく柚希はガクッと項垂(うなだ)れるが、髪を持たれ顔を上げられる。


ヒュン


 次に飛んできた矢は、柚希の涙を流す右目に突き刺さり眼球を破壊し貫通した。


「あっ、びゃぁーーーー!! 」


 4本も矢が貫通する口で柚希が絶叫する。その柚希の左目にも矢が突き刺さり貫通した。


「はひゅーっ、はひゅーっ 」


 かろうじてまだ生きている柚希は最後に思う。


・・・もう、最後だから泣いて良いよね うぅ、痛いよぅ 苦しいよぅ 怖いよぅ 死にたくないよぅ 誰か助けてぇ ・・・


 柚希は心の中で1人の少女に戻り号泣していた。その柚希に向かって最後の矢が無情に射たれる。


ドスッ、ドスゥッ!!


 矢は柚希の胸と額に正確に突き刺さり、柚希の心臓と脳は破壊された。柚希の体はビクンと大きく痙攣(けいれん)したあと静かになっていった。鬼たちは、もう動かなくなった柚希を地面に降ろすと、巨大な鉈(なた)のような武具を使い、柚希の両腕を肩口から切断し、両脚も付け根からゴリゴリと切断してしまう。胴体も中心から上下2つに切断され、最後に首にも鉈(なた)が当てられズバッと切断された。そして、バラバラにされた柚希はそれぞれ槍の穂先に突き刺され高く掲げられ見せしめにされる。柚希の頭が、胸が、下半身が、腕が、足が、7本の槍の先で踊るように動いていた。その周りで鬼の勝利の雄叫びがいつまでも木霊していた。


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