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移ろう季節に想いを馳せる君 (BI Second)  作者: とらすけ
第一部 夜の帳が下りる刻
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20話 絶体絶命


20話 絶体絶命



 林を抜けた弥生と刹那は印契を結び真言を唱える。すると、苦しげな唸り声が響き調整池の水面が波立ってきた。


ザバァ!!


 ”ミヅチ”が現れ、敵とみなした弥生と刹那に襲いかかってくる。巨体のわりに素早い動きで、鋭い牙を覗かせた口で二人に噛みつこうとするが、弥生と刹那は難なく”ミヅチ”の攻撃をかわしていた。


「朱姫っ! ”ミヅチ”の体の中心に翠玉というものがある筈です そこを狙って下さい 」


「分かった 青姫 」


 刹那が”ミヅチ”を注視するとぐねぐねと動く”ミヅチ”の胴体に丸い深緑色の玉が見えた。しかし、動き回っている”ミヅチ”のその一点を狙うのは至難の技と云えた。


「一の型”流星” 」


 後方から八千穂が”ミヅチ”の動きを止めようとするが、八千穂の放ったビー玉は”ミヅチ”に弾かれ地面に転がる。


鶴の衝撃(クレインインパクト)”千陣” 」


 千羽鶴が”ミヅチ”の行く手を塞ぎ周りを固める。


「いいぞっ! 玄姫 」


 柚希の援護で刹那は瞬時に”ミヅチ”との間合いに入る。


「夢想剣”百舌鳥(もず)” 」


 光速の突きが”ミヅチ”の翠玉を貫いたかに見えたが、刹那は体を硬直させて動きを止めていた。


・・・いけないっ ・・・


 弥生は”ミヅチ”が動くより早く飛び込み、刹那を抱え素早く退き、池に目を向けるとそこに人影が立っていた。


・・・”水蛭子(ひるこ)” 不味いです、早く”ミヅチ”を倒さなければならないのに、ここで出てくるとは ・・・


 白姫と玄姫に”水蛭子(ひるこ)”の足止めをしてもらおうと目を向けると二人は牛の頭をした巨大な猿人のような妖怪と戦っていた。普段の二人より動きが鈍く感じるのは、”ミヅチ”の毒が体に回ってきているからと推察出来た。


「すまん、青姫 攻撃する一瞬の隙をつかれた 」


 刹那が、もう大丈夫と立ち上がる。


「二人の動きが鈍いです かなり毒がまわってきているのでしょう まず、あの”牛御前(うしごぜん)”を倒しましょう 」


 弥生と刹那は二人の救出に向かおうとするが、”ミヅチ”がその巨体で行き手を塞ぐ。


「どきなさい! 斬舞”円月” 」


 弥生の手から離れた扇子が高速で回転し、十字に”ミヅチ”を切り裂く。”ミヅチ”はまた水に戻り一旦消えるかと思われたが、今度は弥生の斬撃を受けても体が崩れずにそのままとどまっていた。


「くそっ!なぜ崩れない? 」


 刹那も木刀で斬りかかるが、刹那の気を込めた太刀を受けても”ミヅチ”はびくともせず巨大な口を開けて咆哮する。その後ろでは毒であきらかに動きの鈍くなった八千穂と柚希が”牛御前(うしごぜん)”になぶられていた。


「ゴバァ 」


 鳩尾に痛烈な拳を入れられ八千穂が吐瀉物を吐きながら宙に舞う。その隙に柚希が”牛御前(うしごぜん)”の背後から組み付こうとするが、”牛御前(うしごぜん)”の強力なバックブローをカウンターで顔面に受けてしまう。


「ガハァ 」


 柚希も血を吐いて後方に吹き飛んだ。”牛御前(うしごぜん)”は地面に倒れた二人に悠々と近付いていく。八千穂はビー玉を撃ち出し”牛御前”を狙い撃つが、その威力は目に見えて落ちており”牛御前(うしごぜん)”を足止めする事は叶わなかった。そして、近付いた”牛御前(うしごぜん)”は地面に転がる柚希の腹部に激しい蹴りを入れる。柚希は、また血を吐いて宙に舞い地面に激しく叩き付けられた。


「ううう 」


 呻き声を上げる柚希を油断なく横目で見ながら”牛御前(うしごぜん)”は八千穂の髪を掴みそのまま持ち上げる。八千穂を軽く左腕一本で持ち上げた”牛御前(うしごぜん)”は右拳を固く握りしめた。八千穂は”牛御前(うしごぜん)”の腕を掴みなんとか逃れようとしているが、その無防備な八千穂の腹部へ思い切り右拳を叩き込んだ。


「はぼぉ 」


 吐くもののなくなった八千穂は涙を流し胃液を吐いて苦しむ。その腹部を押さえて苦しむ八千穂の左腕を掴んだ”牛御前”は、まるでマッチ棒を折るように簡単に八千穂の左腕を折ってしまった。


「ひぎゃぁぁ!! 」


 八千穂の絶叫で気が付いた柚希が救援に行こうとするが足がふらつき無様に倒れてしまう。その柚希の見ている前で”牛御前(うしごぜん)”は八千穂の右腕も折ってしまった。八千穂は力なく両腕をだらんと下げて”牛御前(うしごぜん)”に髪を掴まれて怯えた顔で涙を流しぶらぶらと揺れている。これから自分が何をされるのか想像し恐怖で震えていた。その、まるで無防備な八千穂の顔面、胸、腹部をサンドバックのように”牛御前(うしごぜん)”は滅多打ちにしていった。


「ひぃぃーー!! 」


悲鳴を上げる八千穂の顔は”牛御前(うしごぜん)”の容赦ない拳で瞼は腫れ上がり、鼻も潰れ鼻血が流れている。そして、唇も裂け、歯は折れ吐血していた。


「もう、許してくださいぃぃ…… 」


泣きながら許しを乞う八千穂だが、相手が人間ならともかく人外の“牛御前(うしごぜん)“では無駄な事だった。さらに激しく滅多打ちにされる八千穂。顔は勿論、胸も腹部も赤いアザが無数に浮き出ている。それでも、号泣する八千穂を“牛御前(うしごぜん)“が容赦なく殴り続けていると、八千穂の下の地面に水溜まりが出来ていた。八千穂の足からポタポタと透明な液体が流れ落ちている。そんな八千穂を”牛御前(うしごぜん)”は汚いものでも見るように蔑んだ目で眺め、八千穂の下腹部を集中して殴り始めた。すると、まるで絞り出されたかのように八千穂の下に流れ落ちる液体の量が多くなっていく。ポタポタと垂れていたものが、しゃーと勢いよく流れ落ちていた。その哀れな八千穂の姿を見て柚希は体の震えが止まらなかった。それから“牛御前“は地面に出来た水溜まり目掛け八千穂を思い切り叩きつけた。ビシャッと液体が辺りに飛び散る。八千穂は自分自身で作った水溜まりの泥にまみれた。それが楽しかったのか”牛御前”は何度も何度も八千穂を地面の水溜まりに叩きつけた。


「あ、あ、あ、あ、あ 」


 呻き声を上げ苦しむ八千穂を今度は髪を掴んだままグルグルと振り回した”牛御前(うしごぜん)”はそのまま空高く八千穂を放り投げる。そして、落下してくる八千穂目掛けて突進していた。


ゴキャ!!


 ”牛御前(うしごぜん)”の激しいタックルを浴びた八千穂は、嫌な音を立て人形のように地面に転がる。”牛御前うしごぜん”は落とした玩具を拾いに行く子供のように楽しげに八千穂に近付くと、また髪を掴み持ち上げグルグルと振り回す。そして、また高く放り投げた。落ちてくる八千穂を狙う”牛御前(うしごぜん)”であるが、今度はタックルではなく”牛御前(うしごぜん)”の頭に生えた巨大な角で八千穂を串刺しにする考えのようだった。


「や、やめろぉ! 」


 柚希が叫ぶが”牛御前(うしごぜん)”は落ちてくる八千穂に角を向けて突進する。


ドスゥ!!!


 鈍い音がして、その直後に八千穂の絶叫が響いた。八千穂の腹部を”牛御前(うしごぜん)”の二本の角が貫き、背中まで貫通していた。”牛御前(うしごぜん)”は頭の角にビクンビクンと痙攣する八千穂を突き刺したまま柚希に向かって歩いてくる。そして、柚希の前まで来ると頭を振り、無造作に八千穂を地面に落とした。そして、仰向けに横たわった八千穂の顔面を踏みつける。


ドスッドスッドスッドスッ!!


すでに意識のない八千穂は“牛御前(うしごぜん)“に踏みつけられる度に手足は跳ね上がり腹部の角で貫通された傷からは血が噴き出していた。


「やめて もう許してあげて 」


あまりの八千穂の惨状に柚希が思わず呟くが“牛御前(うしごぜん)“はかまわず八千穂をいたぶり続けた。そして、壊れた玩具にはもう興味がないという顔で、今度は柚希に目を向ける。


「ひっ 」


柚希は抵抗しようとするが、もうほとんど体の自由が効かない。逃げる事も出来ず”牛御前(うしごぜん)”に両足を掴まれてしまった。”牛御前(うしごぜん)”はそのまま逆さに柚希を吊り上げ、柚希の両足を左右に開いていく。限界を越えてもなお無理矢理に開かされていく柚希の足や股間からミシミシと嫌な音が聞こえてきた。


「あわわわわわ!!! 」


 柚希は口から泡を吹いて苦しんでいたが、腰の辺りからゴキャッと股間接が外れてしまった音が響く。


「あぎゃぁぁ!! 」


柚希は涙を流し絶叫する。柚希の足はもう水平まで大きく開かされているが”牛御前(うしごぜん)”はそのまま柚希の足を引き股間から二つに引き裂こうと更に力を込めていた。


「お願い もう許して 」


 柚希の性格からは考えられない言葉が、柚希の口から漏れていた。成す術もなく殺される恐怖に柚希は号泣しぶるぶると震えていた。そんな柚希の顔面に“牛御前(うしごぜん)“は思い切り膝を叩き込む。


「おばぁぁ!! 」


 膝蹴りの一撃で柚希の顔面は酷い状態になっていた。鼻血が溢れ歯も折れてしまっている。


ガスッガスッガスッガスッガスッ


 “牛御前(うしごぜん)”は柚希の股を裂きながら顔面に膝蹴りを入れ続けていた。


 八千穂と柚希の命が風前の灯火になった時、弥生と刹那も現れた”水蛭子(ひるこ)”によって窮地に追い込まれていた。


 

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