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移ろう季節に想いを馳せる君 (BI Second)  作者: とらすけ
第一部 夜の帳が下りる刻
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15話 対決

15話 対決



 異界に残った弥生たちは、ポツンと佇む社を見つめる。


・・・ここは間違いなく先輩がひどい目にあった場所 そして、ここにいるのは ・・・


 弥生たちが戦闘態勢をとりながら社に近付こうとすると横の森から人影が現れた。


「あれ、あなたたちもここに来てしまったのですか 」


 それは屋敷に入り行方が分からなくなっていた二人の警官だった。


「この社は何ですかね? 」


 若い警官が興味津々という顔で社を開けてしまう。社の中には硫黄の匂いする小さな石が安置されていた。


「いけない!! 早くこちらへ!! 」


 弥生が叫ぶのと同時に、闇の渦が巻き起こり渦の中心に着物を着た女性の姿が現れる。


「な、なんだ? 」


 警官たちは慌てて後退る。


「おやおや、また会ってしまいましたね もう挨拶は済ませましたので遠慮なく殺しますよ 」


 玉藻の前の口が耳まで裂け、ニヤリと笑う。


「く、口裂け女か 近付くな 」


 警官二人が拳銃を構え、玉藻の前を威嚇する。


「口裂け女? わたくしをあんな低級な妖怪と一緒にするとは万死に値しますね 」


 玉藻の前は悠々と近付いて来る。


「お巡りさん、早く逃げてっ!! 」


 弥生が叫ぶが警官の二人は逃げようとしない。


「市民を守るのが我々の責務だ 君たちを必ず守ってみせる 君たちこそ今のうちに逃げなさい 」


 年配の警官が若い警官に、君も彼女たちに付いていけと命令する。若い警官は躊躇していたが、年配の警官に押し切られ弥生たちに向かって駆けてくる。そんな事は玉藻の前は意にも介さないように、不気味に笑いながら弥生たちの方へ向かってくる。年配の警官は玉藻の前の足元に向けて拳銃を一発発射した。玉藻の前の足元の地面に弾丸がめり込むが、一向に慌てた様子もなく玉藻の前は歩いてくる。


「お巡りさん、駄目です 拳銃など、この化け物には無意味です 早く逃げて下さい 」


 弥生がなんとか警官を逃がそうとするが、警官は銃を構えたまま動こうとしない。たまらず弥生が飛び出して警官を庇おうとするが、その飛び出した弥生に向かって玉藻の前が腕を振る。すると、その振った腕から”鎌鼬(かまいたち)”の真空刃のように斬撃が弥生を襲った。地面に転がりかろうじて避けた弥生だったが、地面に転がった弥生に向かってまた真空刃が襲う。弥生は転がりながら扇子を広げ真空刃を受け流し、逆に玉藻の前に斬撃を浴びせた。


キィン


 しかし、玉藻の前は腕で軽く弥生の放った斬撃を弾き返す。その時、弥生が危険だと判断した年配の警官が拳銃を発砲し玉藻の前に命中した。


「やった 」


 弾は、玉藻の前の胸に命中し警官は弥生に駆け寄ろうとしたが、玉藻の前は何事もないように警官に向かって真空刃を放った。


「うぐぅ 」


 弥生が警官に飛び付き真空刃の直撃は免れた警官だったが、拳銃ごと手首が切断されてしまう。警官の腕から血が噴き出し噴水のように辺りに飛び散った。


「いけない 早く止血を 」


 八千穂が警官の腕を縛り血を止めようとするが、そこへまた玉藻の前が真空刃を放つ。弥生と刹那が真空刃を叩き落とすが、玉藻の前が放つ真空刃の数がどんどんと増えてくる。


「ふはは、そろそろ死になさい 」


 玉藻の前が高らかに笑う。弥生たちに迫る真空刃の数はとても対応できる数ではなかった。その時、後方で気を込めていた柚希が折り鶴を飛ばす。


鶴の衝撃(クレインインパクト)”千陣” 」


 それは文字通りの千羽鶴の壁だった。弥生たちの前に折り鶴の壁だ出来、玉藻の前の真空刃を防御したのち、次々に玉藻の前に襲いかかる。


「ほお なかなか小癪なまねをしますね 」


 それでも玉藻の前は余裕で自分の周囲に闇の障壁を展開し折り鶴の攻撃から身を防いでいた。


「がはぁ 」


 が、余裕をみせていた玉藻の前が突然血を吐いた。玉藻の前の胸から血が流れている。


「おがぁ 」


 続けて手足からも血が噴き出し、玉藻の前は踊るように手足を動かし血を噴き出しながらよろけていた。


「四の型”彗星(すいせい)” 」


 八千穂の攻撃で、拳銃で撃たれてもダメージすら受けなかった玉藻の前が血を噴き出しダメージを負っている。 


「夢想剣”百舌鳥(もず)” 」


 玉藻の前がふらつき一瞬眼を閉じた瞬間、刹那が一気に玉藻の前の間合いに入り突きを繰り出す。玉藻の前は腕でガードするが、刹那の剣は玉藻の前の腕を突き抜け、玉藻の前の身体に深く突き刺さる。


「斬舞”遠呂知(おろち)” 」


 そして、弥生の身体が高速で回転し、扇子を持った腕がまるで”ヤマタノオロチ”のように8本にみえる。その8本の腕が玉藻の前に襲いかかった。


「ぐぎゃぁ 」


 玉藻の前の腕が足が、そして首が切断されバラバラに吹き飛ぶ。


「今のうちです 早く逃げましょう 」


 弥生たちは負傷した警官たちを連れ森の奥へと走り出す。刹那と柚希は呪符で脱出点を探りながら走っていた。


「凄いですね 拳銃で撃っても平気な妖怪を倒せるなんて 」


 若い警官が年配の警官を支え走りながら驚きの声で言う。


「いえ、あんな事で玉藻の前は倒せません あれで倒せるなら先輩たちの合体技で消滅していたでしょう これはほんの時間稼ぎです 」


 反対側から年配の警官を支えている弥生が硬い表情で答えた。


「いけない 玉藻の前がもう再生を始めています 」


 しんがりで警戒している八千穂が叫ぶ。


「あそこだ あそこに歪みがある 」


 刹那が叫び、柚希が折り鶴を飛ばし空間の歪みを破壊する。そして、出来た空間の裂け目に弥生たちは飛び込んでいった。


「無事で良かった 救急車は呼んである 怪我人がいたら早く 」


 異界から戻った弥生たちの前には、澪たちと子供たちが心配そうな顔で立っていた。弥生たちは年配の警官を救急車に乗せ、やっと安堵の息を漏らした。




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