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移ろう季節に想いを馳せる君 (BI Second)  作者: とらすけ
第三部 冷たい風が吹く黎明に
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67話 撃破

橋姫たちを追い詰めたムーングロウと対峙する八千穂たち。

もう敗北は許されない戦いが始まる。



67話 撃破



「高速 ”虹斬り” 」


 あっという間に月夜の忍刀でムーングロウ三日月頭の胴が真っ二つに切断されていた。しかし、切断された胴はすぐにくっつき元の身体に戻ってしまう。


「なるほど、切断しただけでは再生してしまうのですね とすれば再生出来ないように破壊すれば良いわけですか 忍くん、こいつの動きを止めておいて下さい、大技を使います」


「了解です、チーフ 忍刀”三日月”疾風迅雷 」


 忍は、三日月型の忍刀をムーングロウに向かって投げつける。三日月は不規則な軌道で強力な電撃を帯びながら風のように高速でムーングロウに襲いかかる。しかも、忍が投げた三日月は一刀ではなかった。三刀の三日月がムーングロウを斬り刻んでいく。ムーングロウは再生に力を取られ、動きが止められていた。そして、月夜の忍術が発動する。


「最終忍術 ”暗夜紅炉(あんやこうろ)” 」


 それは、この場にいる誰もが目を疑った。月夜の姿が残像で100人にも見える。忍もカトリーヌも、そして八千穂も、月夜の動きに驚愕していた。しかし、それはまさに最終忍術。人間の限界を遥かに超えた光速の動きで月夜の全身の筋肉もぶちぶちと千切れていく。だが、ムーングロウもその途切れる事のない連続の斬撃に粉々に斬り刻まれていく。それは暗い闇夜の中、手も足も出ず四方八方から斬り刻まれるようなものだった。だが月夜の”暗夜紅炉(あんやこうろ)”はそれだけではない。タンジンの術も応用しているこの忍術は、その光速の斬撃で斬られた細胞を炉のように発火させる。ムーングロウは斬り刻まれた体から火を噴き塵となって消えていった。



 * * *



「うおおおおおおぉぉぉぉぉーーーーっ 」


 八千穂が大声で雄叫びを上げてムーングロウ半月頭に向かって飛び出す。八千穂の体も残像で月夜同様100人にも見えていた。


・・・八千穂が雄叫びを上げるなんて初めて聞いたよ 頼む3分頑張って、八千穂 私も最高の拳を叩き込んでやるから ・・・


 柚希は拳に玄姫の力を集中する。柚希の両拳が白く輝いていく。そして、柚希の周りの大気も凍りつき、キラキラとダイアモンドダストが舞っていた。ムーングロウは八千穂の光速の攻撃で、防戦一方になっているが、光速の動きを続けている八千穂の鼻や口から血が流れ出していた。しかし、八千穂は歯を食いしばる。


・・・この戦いは全員が全てをかけている 私も私の全てを絞り出す 玄姫が最大の火力を発揮出きるまで敵を引き付けるのが私、白姫の役目 ・・・


「秋のカシオペア 」


 光速の動きを続けながら八千穂は白姫の技を発動する。カシオペアの形に打ち込まれた打点が爆裂する。ムーングロウは一瞬ぐらつくが、すぐに再生し立ち直っていた。


「秋の落葉乱舞 」


 八千穂はまた続けて白姫の技を放つ。飛び回る刃でムーングロウはズタズタに切り裂かれていく。が……。


「がはぁっ 」


 八千穂は大量に吐血し崩れ落ちていた。限界を超えた動きで手足の筋肉は激しく痙攣をおこしている。


「ありがとう、白姫 」


 倒れた八千穂の横を入れ替わりに柚希がムーングロウ目掛けて飛び込んでいく。柚希が走り抜けた後に、ダイアモンドダストがキラキラと輝いていた。それを見た八千穂は確信する。


・・・私たちの勝利ですね 今の柚希は最強です あんな敵に負ける訳がありません ・・・


 柚希はムーングロウとの間合いに飛び込む。


「うぉおおおぉぉぉぉーーっ 」


 雄叫びを上げた柚希が正拳をムーングロウに叩き込む。


「最終拳 極星ポーラスター”ポラリス” 」


 柚希の白く輝く拳がムーングロウに打ち込まれる。ムーングロウは両手でそれを受けようとするが……。


ピキィーーーンッ


 柚希の拳に触れた瞬間ムーングロウの手が凍りついたかと思うと、分子運動が停止され塵となって崩壊していく。柚希の拳はムーングロウの体を突き抜けていた。柚希の、玄姫の拳をまともに受けてしまったムーングロウの体は崩壊していくが、それに抵抗するように必死に再生速度を早めていた。しかし、最早、柚希の攻撃は止まらない。


「玄姫奥義 連弾 北斗七曜の拳 」


 柚希の白く輝く両拳がムーングロウに連続で打ち込まれる。


「おおおおおおぉぉぉぉーーーーーーっ 」


 再び雄叫びを上げ、全身凍りついたように動きが止まっているムーングロウを無慈悲なまでに滅多打ちにする柚希の姿は、日本神話に記述のある荒ぶる氷の神”井氷鹿(いひか)”のようであった。


「おごごごっ 」


 柚希の前でムーングロウは細胞の結合が失われ消滅していた。



 * * *



 ムーングロウ満月頭は土蜘蛛の糸でがんじがらめに絡められ動きを封じられていた。


「ここまま引き裂くのは簡単ですが、バラバラにしても再生してしまうのですよね プラナリアみたいな奴ですね 」


「ふん、プラナリアと同じなら、コイツら心臓もない上に、脳を破壊されても再生するわけか」


「どうすれば死ぬんでしたっけ? 」


「俺に訊くな、土蜘蛛 おい、橋姫 知ってるか? 」


 月面に横たわっていた橋姫は半身を起こす。


「お前たち、二人揃ってそんな事も知らないのですか 十鬼神の恥さらしですね いいですか、プラナリアは熱に弱いのです 熱の刺激を与えると個体崩壊を起こして死にますよ 」


 橋姫は馬鹿にしたように言うが、それが分かっていて何故コイツに負けているんだと逆に問われ言葉を失っていた。


「おい、天狗 お前の団扇を貸せ お前ら本当に何やってるんだ 頭が抜けてるとしか思えんな 」


 大嶽丸は大天狗太郎坊から団扇を受けとると、土蜘蛛の糸で動けないムーングロウに向けて精神を集中して団扇を振る。


「神通力 ”燎原(りょうげん)の炎” 」


 団扇から地獄の業火のような炎が噴き出しムーングロウを包み込んでいく。


「うごおぉぉーっ 」


 ムーングロウは断末魔の悲鳴を上げると燃え尽き跡も残らず消えていた。



 * * *



「弥生と刹那の所へ急ぐぞ 神が相手となると生半可な攻撃は通じないだろうが、俺たちでも捨て石くらいの役にたつかも知れないからな 」


 橋姫を背負った大嶽丸が全員に気合いを入れる。忍に背負われた月夜も、柚希に背負われた八千穂も、最後の戦いに向けて皆決意を新たにしていた。


「よし、行くぞっ 」


 大嶽丸たちは走り出す。が、抗議の声が上がっていた。


「おいおい、なんだこの待遇の違いは 」


「わたくしと、その女を交換しなさい大嶽丸 」


 大嶽丸に背負われている橋姫と違い、九尾と太郎坊は土蜘蛛の糸に巻かれ、ズルズルと月面を引き摺られて移動していた。


「人手が足りないのだから仕方ないだろう ほっといても良かったが連れてきてやったんだ有り難く思え 」


 大嶽丸の背中で橋姫はケラケラと笑うと、ぎゅっと大嶽丸に抱きついていた。


ムーングロウを撃破した八千穂たちは、弥生たちと合流するため明日菜たちを追う。

無事に合流する事が出来るのか。


最後の戦いへのカウントダウンが始まる。


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