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転生未遂から始まる恋色開花  作者: にぃ


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第61話 ラブコメ特有のタイミングの悪さ

※性的描写が若干ございます。

 苦手な方はご注意ください。


 夕食があまりにも貧相なものとなったので、僕と雫の二人はスーパーで食品を買いあさっていた。

 花恋さんも着いてこようとしたが断固拒否した。

 お米とキャベツを殺すだけのマシーンと化した花恋さんはもはや料理人権はないのだ。


「随分買い込んだね」


「空っぽの冷蔵庫を埋めるにはこれくらいの物量は必要なのだよ」


「でも僕と花恋さんには宝の持ち腐れな気が……こんなに食材あっても調理で使い切れる気がしないよ」


 食材、果物、調味料、飲料、他たくさん。確かに冷蔵庫は潤いそうだけど、消費期限内に使いきれるか? コレ。


「大丈夫。キュウちゃんが自炊独り立ちできるまで雫ちゃんがお料理手伝ってあげるからね」


「えっ!? 本当!? いいの!?」


「いいよ」


 迷う素振りもなく笑顔で即答してくれる。あれ? 天使かな?


「できる限り毎日くるよ。みんなでエロゲもやる約束したもんね」


「う、うん」


 男1女2でエロゲを行うスケジュールを入れているのきっと全国で僕らくらいなんだろうな。

 ていうか耐えられるか? 僕。花恋さんと二人きりの時ですら理性を保つのがギリギリだったのにそこに雫も加わるんだよ? しかも寝室でそれをやるんだよ?。


「ねぇ、雫。やっぱり考え直さない? 3人でエロゲやる約束なんて普通じゃないよ」


「私が考え直してもキュウちゃんと雨宮さんは2人でエロゲやるんでしょ?」


「……やるんだろうなぁ」


 僕はともかく花恋さんはやる。そして花恋さんは僕を逃がしてはくれない。結局は2人並んでエロゲをプレイする図へと行き着いてしまう。


「じゃあ私もやる。キュウちゃんの貞操が心配」


「花恋さんのじゃないんだ」


「うん。今の覚醒雨宮さんはちょっぴり危険な気がするよ。襲うとしたら雨宮さんからの気がする。キュウちゃん押しに弱そうだからあっさり押し倒されちゃう気もするしね」


「僕が押し倒される側なんかい」


「押し倒す側なの?」


「……理性によっては」


「二人共オオカミさんなんじゃないか。やっぱり雫ちゃんの監督が絶対必要だこりゃ」


「いや、雫も襲われる可能性があるんだよ? 怖くないの?」


「へへーん。怖くないもんねー。襲えるものなら襲ってみろ~」


 どうして余裕なのかこの子は。

 まぁ、信頼しているんだろうな僕のことを。

 雫の信頼を裏切るような真似だけはしないようにしなくちゃ。襲いそうになったら手の甲にナイフでも刺そう。そうしよう。


 ぽつ……ポツ……


「「あ……」」


 空からの水滴に気づき、僕と雫が同時に声を漏らす。

 ありゃ。天気崩れそうだなと思っていたけど本当に振ってきちゃったか。


「雫、走れる?」


「うん! ダッシュだキュウちゃん」


 スーパーから家まで約5分。

 本降りになる前に家に付ければいいのだけれど。







「あはは~。駄目だったね。雫ちゃんびしょ濡れ」


「弓ちゃんもびしょ濡れ」


 想像以上に雨脚が強く、結局二人共思いっきり雨に打たれた状態でアパートに到着した。

 雫をチラッと見ると、頬や髪から雨雫が滴っていてやたら色っぽい。どうやら雫は雨雫と合わさると色気がパワーアップするみたいだ。名前の期待に存分に応える子であった。


「雨宮さんただいまー。びしょ濡れの雫ちゃん帰宅だぞー」


「わわわっ! 大変です! た、タオル持ってきますね!」


「うん。ありがとう。ついでにお風呂も沸かしてもらってもいいかな?」


「ふふん。花恋さんは出来る子なのでもう沸かしてあります。褒めてください」


「えらいえらい」


 料理以外の家事はすごく出来るんだよなこの子。気も利くし。


「雫、良かったらお風呂入って行って。そのままじゃ風邪ひいちゃうよ」


「わわ。良いの? 嬉しい。でもキュウちゃんもびしょ濡れだし……」


「じゃあ一緒に入ろうか」


「うん♪」


 買い物袋をテーブルに置き、僕らは二人で脱衣所へと向かおうとする。

 その様子を見ていた雨宮さんが慌てて止めに入った。


「『うん』じゃありません! ていうか弓くんも自然と女の子をお風呂に誘わないでください! 私が誘っても断固拒否するくせにぃ」


「花恋さんが止めてくれると信じていたからちょっとふざけてみただけだよ」


「ていうか雨宮さんもお風呂に誘ったことあるんかい。キュウちゃんの発言は冗談だとわかったけど、キミの発言は冗談かどうかわかりづらいな」


「それはともかく——ほ、本当に二人一緒に入るのでしたら私も一緒に入りますよ!」


 この子はこの子でとんでもないこと言ってくる。

 雫が今の覚醒花恋さんを警戒していた理由が良くわかるワンシーンだった。


「じゃ雨宮さん一緒に入ろー!」


「えっ!? い、いいんですか!? 3人で入っても!」


 花恋さんが嬉しそうにチラチラこちらに視線を投げてくる。


「わ・た・し・と! 2人で入るの! ……まぁ、キュウちゃんがどうしても入りたいのであれば? 別に3人でもいいけど?」


 雫も同じようにチラチラこちらに視線を投げてくる。

 僕はそんな二人を尻目に二人の元を通り過ぎ、寝室の扉を開ける。


「んじゃ、二人が出た後に僕は入るんで。二人もゆっくり入っておいで」


 それだけ言い残すとバタンッと寝室の扉を閉めた。

 扉の外から『ケチ―!』という二重音声が響く。

 いやいや普通に無理だから。あの美少女二人と一緒にお風呂とか。


「さっさと着替えよ」


 邪念を追い払うように無心で髪をタオルで拭く。

 二人が風呂に入っている間に全部着替えてしまおう。

 無造作に服を脱ぎ捨てる。

 下着まで完全にビショビショだ。

 下着入れからボクサーパンツを取り出し、今履いているトランクスも脱いだ。

 新しい下着に足を通そうとした、その瞬間だった——


 コンコン ガチャ


 控えめなノック音の後、なぜか寝室の扉が開かれた。


「ごめんキュウちゃん。服貸してもらってもいいか……な…………」


 言葉が尻すぼみになってゆく。

 雫の視線が顔から徐々に下へ。

 ある一点でじっと視線が固定される。

 口元を抑え、顔が瞬時に真っ赤に染まる。

 僕もたぶん同じくらい——いや雫以上に赤面状態になっていた。


「きゃああああああ! ご、ごごごごごごごご、ごめ、ごめ!! ごめんなさい!」


 今まで聞いたこともないくらい甲高い悲鳴を上げながら雫は慌てて寝室の扉を閉めた。

 み、みられた。

 完全に全裸の姿をみられて、しまった。

 あまりに急激な展開過ぎて前を隠すことすら頭から抜けていた。

 雫の真っ赤な顔を思い出してガクンッ崩れ落ちるように両膝を床についていた。


「み、水河さん!? どうしました!? すごい悲鳴が聞こえましたけど」


 扉の向こうで花恋さんの声がする。見えてはないけど脱衣所から慌てて出てきたのだろう。


「わ、私が、不注意で、その、キュウちゃんが着替え中にドアを空けちゃって、裸を……って、うぉぉぉい!? 雨宮さんも全裸じゃねぇかい!」


 ぶふぅ!

 花恋さんそんな恰好でこの扉の向こうに——って僕も今同じ格好だった。


「水河さん! 弓くんの裸を見たのですか!? ずるいです!」


 うん。その感想はおかしいかな?

 もっと違う言葉をかけてあげるべきなのではないのかな?


「今まさにキミの裸も見ているけどね!? って、こらこらこら! 何、扉を開けようとしているんだよ!」


「私もラッキースケベを装って弓くんの裸を見ようかと」


「それはただのスケベだよ! ていうかキミも全裸だからここを空けたら全部見られるからね!?」


「私は全然かまいませんよ?」


「キミ以外全員構うんだよ! だぁぁぁっ! 早くこっちくる!」


「うわぁぁぁん! 殺生なー! 水河さんだけオカズゲットしてずるいです~!」


「お、おおおお、オカズとか意味わからないし! し、雫ちゃんは純真無垢だからそんなことに使わないし!」


「嘘ですー! 今日にでも使う気だー! ずるいです~! ずーるーいー…………」


「………………」


 二人の声が遠ざかっていく。

 どうやら雫が花恋さんを風呂場まで引きずっていってくれたのだろう。

 心臓がバクンバクンいっている。

 雫に全部を見られた。

 そんな経験勿論初めてだ。この後顔を合わせられるだろうか? 自信がない。

 それにもし雫が花恋さんを止められず彼女がこの扉を開けていたら全裸の男女がご対面していたのか。

 ……ほんのちょっとだけ勿体ないなと思ってしまった感情は心の奥底にしまっておくことにしよう。







 二人がお風呂から出た後に僕もシャワーを使うことにした。

 美少女二人が入浴した後の風呂にいるというのは結構な背徳感がある。

 欲情しないよう若干冷ためなシャワーで心を鎮めることにした。


「浴場だけに……ね」


 意味不明なダジャレが言葉に出るくらい僕の心はかき乱されていた。







 風呂場から上がると花恋さんと雫が談笑していた。

 この二人も仲良くなったものだなぁ。

 瑠璃川さんや僕が間に居なくてもあんなに楽しそうに話すようになったのか。


「お風呂早かったですね弓くん。ちょうど今弓くんの裸について語り合っていた所なんですよ」


「なんて話題で語り合ってるんだ!? キミら!」


 仲良くなりすぎだキミ達。

 自分の裸体について語られている現場を目撃して僕はどうすればいいのか。


「ち、ちちちちち違うからね!? 勘違いしないでキュウちゃん! 雫ちゃんそんなエロくないからね!?」


「う、うん。大丈夫。大丈夫だから」


 先ほどの全裸目撃事件があったせいで雫の顔がまともに見れない。

 対面に座るのは気恥ずかしいので花恋さんと対面で雫とは隣の席に座った。

 ……隣は隣で気恥ずかしいことに気づくのは座った後だったりする。


「水河さんのお話ですと、弓くんのアレ(・・)は意外と大きくて逞しい感じみたいですね。ピンク色部分もしっかり見えていたとか」


「雫ちゃんどエロじゃないか!?」


「うわーん! 違うのー! 尋問されたから答えちゃっただけなのー!」


 顔を両手で隠しながら照れてみてももう遅い。


「まあまあ弓くんそう怒らずに。弓くんはいいことをしたんですよ? 1人の女の子に素敵なオカズをプレゼントしただけなんですから」


「だから! おかずになんかしない!」


 しないのか。


「今弓くんが『しないのか』って残念そうな顔しましたよ?」


「キュウちゃん!?」


「してないしてない! そんな顔ちょっとしかしてない!」


 そう。ちょっとしかしてない。

 少しくらいは慰めに使ってほしいなんてちょっとくらいしか思ってない。


「願わくば私にもそのオカズをおすそ分けして欲しいと考えているのですが」


「ねえ! キュウちゃん! 私にばっかりエロ指摘しているけど、どうしてこの子は放置なの!? 絶対雨宮さんの方が頭ピンクだよ!?」


「うん。それはもう分かりきっていることだから、別に今さら指摘する必要ないかなって」


「失礼な。私だってそこまでエロくないですよ」


「「キミはもう何を言っても言い訳できないからね!?」」


 僕と雫のツッコミが寸分違わず重なった。

 覚醒花恋さんは本当に欲望に忠実だ。

 一人暮らしを初めてから『実は自分はこんなに頭ピンク色でした』ということを隠さなくなってしまった。

 高校時代の清純なイメージの花恋さんは理想な美少女感強くて素敵だったけど、どこか線引きされている印象があり、僕もやや遠慮がちに接していた。

 逆に今は線を引きちぎった状態であるがとっつきやすさはある。もはや互いに遠慮なんて一切ない。


「そうだ! 水河さん! イラストにして残しましょう! 記憶が鮮明なうちに描いてみましょうよ! そしてその絵を私に売ってください」


「この子、とんでもないこと言い出した!?」


「……な、なるほど、イラスト……イラストか……」


「雫!?」


「う、うそうそ! 描かないよ! うん! ……でも別に紙とペンを持ってきてくれても構わんよ」


「速攻で持ってきますね!」


「待てえええ! ほんと待って! この子の絵クオリティ鬼だから! 鬼クオリティの僕の陰部が描きあがってしまうから! だから花恋さんを行かせてなるものか!」


 ラグビーのタックルのように僕は花恋さんの身体に両腕を巻き付けて阻止をする。


「ぐぬぬ~。弓くんが本気で引き留めにきました。そんなにも私にオカズ提供することを嫌いますか」


「当たり前だよねぇ!?」


「そこまで嫌がるのでしたら仕方ないですね。イラストは諦めます」


 心から残念そうにしながら花恋さんが観念する。

 よかった。ようやくこの話題から解放される。


「私は弓くんに抱きしめられているこの感触をおかずに鎮めたいと思います。もちろん妄想の中では弓くんは裸です」


 言われ、僕はようやく花恋さんの身体を抱きしめていることに気づく。

 慌てて離れながらも彼女の言葉にツッコミを返す。


「妙にリアルだからやめて! 妄想でも僕を裸にするのやめて!」


「でも女の子が一人でするときは相手の方は全裸ですよ? ね? 水河さん」


「雫ちゃんはそんな不埒なことやったことないからわからない」


「嘘です! 水河さん今さら純真ぶらないでください。統計で女性の6割は一人でやっているって知っているのですから」


「雫ちゃんは4割側なのだ」


 なんでそんな統計を花恋さんが知っているのかツッコミたかったけど、それ以上に妄想の中で何度も裸にされていた事実に言葉が出なかった。

 まぁ、そうだよね。僕もそうだし、女の子側もそうなるよね。

 それにしても雫、本当に一人でやっていないのだろうか?

 意外と彼女はポーカーフェイスで、その表情からは一切探ることができなかった。

※幕間は後5~6話で終わる予定です

 そして幕間だからといってやりたい放題しすぎている気がしてきました(汗

 2章になったら本当に真面目になりますので……!(滝汗

 読者離れせずが起きていないことを今はただ祈っております

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