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VRMMOで吸血姫になった俺は幼馴染と一緒に女学園に入学する!?  作者: ゼクスユイ


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第97話 初期ダンジョン

 はじまりの街に着いたミク。昨日のうちにリンに装備品を強化してもらったり、新たに魔法やスキルを習得したおかげで、SPも強化素材もすっからかんとなっており、他のメンバーが集まるまで、自分のステータスを眺めることにした。


 ミクLv104

 SP:0

 種族:吸血姫

 職業:なし

 所属ギルド:【星の守護者】

 武器1:ヴァンパイアソード+30(攻撃+80、【吸血鬼】を所持し、夜の場合さらに攻撃+50)

 武器2:ヴァンパイアロッド+30(知力+80、【吸血鬼】を所持し、夜の場合さらに知力+50)

 頭:黒魔術の帽子+15(知力+45、MP+20、闇属性の攻撃アップ)

 服:ファラオのドレス+15(女性のみ装備可能。防御+45、敏捷+50、運+20、魅了成功率大幅にアップ、回避率アップ)

 靴:ヴァンパイアシューズ+30(敏捷+80、【吸血鬼】を所持し、夜の場合さらに敏捷+50)

 アクセサリー1:パラソル(日光の影響を抑える、水属性の軽減)

 アクセサリー2:投擲グローブ(投擲時、命中率、与ダメージ、射程距離が上昇する)

 アクセサリー3:約束のペンダント(闇属性のダメージを大きく軽減+状態異常耐性アップ+即死耐性付与)

 アクセサリー4:闇のネックレス(MP+50、闇属性の攻撃力アップ)


 HP382/382

 MP452/382+70

 攻撃912/832+80

 防御247/202+45

 知力737/612+125

 敏捷862/732+130

 器用さ210

 運124/104+20


「夜になれば攻撃のステが2000いくのに、俺の球を片手で捕まえられるんだよな」


 思い返すのはこの間のRISAとの攻防。あのときはスキルで夜になっていた。相手のスキル次第とはいえ、ステータス上ではこちらが上にも関わらず、こちらの攻撃は通用せず、むしろ、反撃すらもママならなかった。それはミクとRISAとの決定的な差を如実に示していた。


(他の人のステータスを見る機会はあったけど、全ステータスを最大限に上げていないんだとは思ってはいた。でも、ステータスがフィジカルならスキルは技術。ボディービルダーが球を投げたとして、素人相手には通じても、技術を持ったプロなら打ち返せるってわけか……)


 そう思って今回のスキルや魔法の習得に走ったわけだが、それが正しいのかまだ分からない。ネット上には吸血鬼のテンプレ構築はあるが、吸血姫である自分にそれがそのまま当てはまるわけではない。それどころか、テンプレの汎用スキルばかり求めたところで、RISAたちのような上位プレイヤーには読まれるだけだ。しかも、吸血姫のデメリットである職業制限のせいで差別化ができないのが、ここにきて致命的な弱点となってきた。


「出し抜くには奥の手、俺にしかできないことを求めるべきなんだけど……う~ん……」


 一番の武器である投擲は上位陣には通用しないと言われたばかり。さてどうしたものかと考えていると、カエデたちからパーティー申請がやってきたので、考え込むのは中断し、Secret OS探しに専念することにする。


「ごめん、待った?」


「ん、いや。俺もさっきログインしたところ」


「全員そろったところで配信始めるにゃん」


『おっ、始まった』


『ワイプあるΣ(・□・;)』


『2画面配信?』


「今回は新機材のテスト配信にゃ。不評だったら、次回からは通常画面になるにゃん」


『なるー』


『見づらいなぁ』


『ガンバッテ』


『どこ行くの?』


「みっちーがこの編集に慣れてないこともあって、今日は森と山にあるダンジョンで変なことが起こらないか実証したいと思いまーす」


『変なこと?』


『前のSecret OS? とかいう裏ボス?』


「そうそう。裏ボス探し」


『でも、実装最初期のダンジョンなんて粗方調べつくしたしな~』


『やることないよな』


『目隠し配信できるレベル( *´艸`)』


「でも、裏ボス見つかってないよね。というわけで今回はお友達と一緒に行くにゃん」


 事前に打ち合わせしたように、二手に分かれての別行動。ミクたちは冒険者が戻ってこないと言われている山の洞窟へと足を踏み入れる。一番最初のダンジョンということもあって、階層は2層しかなく、罠の仕掛けてある場所はうっすらと赤く塗られている。注意深く観察すれば引っかかることはない。


『見どころないな~』


『基本敵がワンパンだからね』


『行き止まりも調べているみたいだけど、新発見はなさそう』


 壁をペタペタと触ったり、コンコンと叩いたりしても、何か変わる気配はない。その様子に視聴者たちも飽きてきたのか、最初よりもその数を減らしている。そして、ダンジョン奥にいるボスであるトカゲモドキ、もとい翼と左目を失って弱っているドラゴンがミクたちに吠える。


「ずいぶんとぼろぼろだな」


『ストーリー上だと昔、冒険者にボコられて逃げ延びた設定』


『見えていない左側を陣取るとか、溜めが長くて避けやすい火球攻撃を誘発させるために距離をとるとか敵に合わせた行動をとることを教えてくれる良ボス』


『しかも、設定のせいで弱体耐性もスカスカだから、あらゆるデバフを駆使できる』


『低確率ドロップの【ドラゴンキラー】をとるために延々と狩り続けられる可哀そうなドラゴン君』


『100周しても落ちないときはキレそうになった』


『噂だと1/4096とからしいし……』


「ずいぶんと思い入れがあるボスなんだな」


 コメント欄で当時の思い出が語られている中、トカゲモドキが口の中で火球を作り出して、【挑発】でヘイトを稼いだミクに狙いをつけている。そして、放たれた火球がゆっくりとミクに向かうが、【加速】を使わずとも避けることは容易だ。そして、ミクとじゃれあっている中、レイカとカエデ、猫にゃんの攻撃が突き刺さり、ワンパンで倒れてしまう。


「よわっ……」


『だって最初期のダンジョンだよ』


『レベル10あれば行けるレベルやし……』


『レベル100で苦戦するレベルはあかん』


『裏ボスでなかったな』


 クリアしたことでダンジョン外に飛ばされたところで、作戦会議の時間だ。Secret OSが森側にいる可能性もあるが、そちらはゆっちーに任せるとして、こちらのやれることは何かを話していく。


「今までのSecret OSってボスと会話してから、。ということは、何かしらの会話がキーになっているのでは?」


「でも、相手はドラゴンにゃん。会話できないにゃん」


「会話か……ドラゴンも動物だから【動物会話】でいけるか?」


『アウト』


『モンスターだからアウト』


「そうだよ、みっちゃん。【動物会話】はあくまでも敵対していない動物限定。モンスターは対象外」


「でも、誰もやっていないってことは試してみる価値はあるんじゃねえか?」


「そうですわね。他に意見がなければ試してみましょう」


「まずは試してみるにゃん」


 というわけで再度ダンジョンに潜り、駆け足でトカゲモドキのところまで戻っていく。


「行くぜ、【動物会話】」


「グルルルアアアアア!!」


 だがトカゲモドキは吠えるだけ。何も変わる気配もなく、ワンパンで沈められてダンジョンクリアとなった。


「打つ手ねえぞ」


『さっそく行き詰ったか』


『すぐに分かれば、判明しているよなぁ』


「誰か、トカゲモドキの専門家はいないにゃん?」


『いるわけねえwww』


『wwwwww』


『いたら驚くわ』


「ぼろぼろになった姿って男の子に人気なんでしょ。もしかしたらファンアートを書いている人はいるかもしれない」


『いねえよ』


『見た目トカゲだもん』


『名前もトカゲモドキだしな』


「ところで、森側はどうなんだ?」


『こっちも裏ボスの出し方が分からなくて苦戦中 byみっちー』


「そうか……他に人のボスがいるとか?」


『隠しボス説か?』


『それが裏ボスなんだよなぁ』


「じゃあ、隠し部屋みたいなのがあるのは?」


「間取りを見る限り、そのようなスペースはありませんわね」


『このダンジョン何か変……とかになったらすぐ気づく』


『壁壊せないかとか隠しスイッチ探すよな』


「ってなるとボスはトカゲモドキなのは変わらないっていうのは大前提にした方がよさそうだよね」


「う~ん、それだとなんとかしてあのトカゲモドキと話さないといけないんだけど」


「敵対している以上、スキルが使えないですわね」


「武器捨てて、敵じゃないアピールしてみるのはどうにゃん?」


『装備縛りか?』


『実装時には厳しくても、今なら素手でも余裕だよな』


「防具も判断されるかもしれないから、全装備解除だな」


『待て、スキン次第だと見た目では剣を持っている』


『つまり、水着姿が最適だ』


「……それ、てめえらが見たいだけじゃね?」


『YES』


『YES』


『ジト目ありがとうございますう』


「欲望に忠実だなお前ら。まあ、言っていることは一理あるけど、どう思う?」


「TPOに合わない服装を着るのはどうかと思いますわ」


「スキンアイテムが判断基準になるとは思えないけど……」


「皆に合わせるにゃん」


「はい、反対多数で否決だ」


『くそー』


『見たかった』


「残念だったな。次は装備無しでダンジョン攻略な」


「一応、アイテムもギルドに預けてからにしよう。前の件もあるし、PKしても旨味が無いようにした方が良いと思う」


「そうですわね。今のワタクシたちなら、消耗することはありませんわ」


「賛成にゃん」


 というわけで、一度出直してからダンジョンの中へと入り、トカゲモドキと対峙するも、やはり会話はできずにボコスカと素手で痛めつけてダンジョンクリアとなった。


「う~ん、どうすればいいんだろうね。みっちゃん、良い考えある?」


「そうだな……いっそのことドラゴンに変身して騙してみるってのはどうだ?」


『そういえば変身スキル持っていたんだな』


『忘れていた』


『新規以外とれないスキルwww』


「ああ、そういえばそんなこと聞いた覚えがある……」


『ミクちゃんの悪魔の習得方法までは判明したけど、【変身】を手に入れるには見破る過程が必要。それができなかったプレイヤーが大半だから、新規勢しかとれないスキルになった』


『それが必須ならどうしようもない』


『(´・ω・`)』


「まあ、そうじゃないことを祈れ……いや、祈ったらダメなのか」


 とにかく、装備無しでもう一度ボス前までいったミクはドラゴンに変身し、扉を開けてもらう。そして、動物会話で話そうとするも、容赦なく攻撃されてしまい、また倒さざるを得なくなった。無理ではという重い空気の中、あるコメントが目につく。


『そもそも元気いっぱいな同族が来たら、自分を喰らいに来たと思うのでは?』


「それはありえるな。HP減らしてからの方が良いか」


『それでも、後ろに人間の仲間がいるのもおかしくね?』


『ソロでオワタ式?』


『でも、そういうプレイしている人がいるかもしれないぞ』


『縛りプレイの範疇だしな』


「となると、ただそういう行動するだけではなく、なんらかの差別点が欲しいですわね」


「じゃあ、途中までは進めて、ボス前で私たちがドラゴンになったみっちゃんをPK。ぎりぎりまでHPを減らしてから、ボス部屋に逃げ込ませて助けを求めるふりをさせるのはどう?」


「それ、一歩間違えたら俺、死ぬよな」


「【自己再生】あるからへーきへーき」


「オワタ式プレイしている人でも演技まではしてないはずにゃん」


 というわけで、ボス前の扉の前でドラゴンに化けたミクがパーティーから離脱し、レイカから攻撃を浴びてHPを削る。


「タスケテ~」


「待て~」


「オーホッホッホ、ドラゴンの素材を高値で売ってあげますわ」


「三枚おろしにしてやるにゃ」


『い つ も の』


『これはひどい』


『棒読み演技www』


『大根役者www』


『これ、騙せる奴いねえだろwww』


 そんな視聴者たちに反して、トカゲモドキは追いかけられているミクを助けるかのように後ろにいるカエデたちに向けて火球を放つのであった。

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