第96話 文化祭、その後
文化祭を終え、部室にはオカルト同好会の面々が勢ぞろいしていた。それもそのはず、生徒会長の刹那からこの部活が廃部になるか維持されるかが聞かされるからだ。
「集計の結果、オカルト同好会の順位は……22位です」
「惜しい!」
「あとちょい!」
「あともう少しだったのに~」
「廃部決定ですね、部長……」
健闘空しく、20位以上に入れなかったことに悲嘆の声が上がる中、刹那はさらに続けて発表する。
「……ですが、生徒会では不人気な部活や同好会が存続している中で、今回改善傾向がみられた同好会を廃部にするのはいかがなものかという意見もあり、来年度の部費の削減に留まりました」
「……ってことは?」
「来年以降も活動を許可するということです」
「やったぜ!」
「で・す・が!今後、不人気な部活に回す部費があるのであれば、人気のある部活に回すべきではという意見もあり、次の生徒会選挙次第ではありますが、不人気続きな部活・同好会の廃部も検討しております。首の皮一枚でつながっていることをお忘れなく」
そう言い残して、刹那が去っていくと同時にみゅ~の3人が部室に入ってくる。そして、麗華が壇上に立ち、ホワイトボードにすらすらと文字を書いていく。
「というわけで、廃部の危機を乗り越えたのは喜ばしいですが、今度は世界の危機を乗り越えないといけません」
「こう聞くとスケールが違いすぎるなぁ……」
「本当だね~」
「先日の文化祭で男の三雲と遭遇したと聞きました」
「男の三雲って……俺、中身は男なんだけど……」
「まあまあ、みっちゃん。麗華ちゃんから見たら、初めて会った時から女の子なんだから仕方がないよ」
「細かいところはさておき、その時の話をみゅ~から聞くことにしましょう」
そして、みゅ~から文化祭の様子について話される。
みゅ~の三人は午前からお昼にかけて外で頑張ってるクラスメートたちの写真を撮っていた。とはいえ、その日は太陽がまぶしいほどの快晴。じりじりと照り付けられた三人は一通り回った後、冷房が効いた校舎内に避難することにした。
「まずはミクミクのとこに行ってみよう!」
「いいね」
「……飲み物も売っている。ちょうどいい」
三階まで登っていき、オカルト同好会の部室に入っていく。そこではカーミラと部長が切り盛りしていたが、肝心の三雲たちの姿はない。聞いてみると、ついさきほど休憩もかねて出ていったようだ。
「惜しい~」
「でも、せっかくだから注文しよう」
「……うん。のどがカラカラ」
三人がドリンクを頼んでいる間、麗華たちが働いている様子をカメラに収め、展示しているポスターを眺めていく。裏事情を知っている彼女たちにとって、すごい説得力のある誤魔化し方と内心で笑いながら、展示物を見ていた。
そして、お金を支払った後、部室から出た時、顔色の悪い男性が入ろうかどうか迷っているように右往左往していた。
「何しているんですか?」
「ああ、いや~うん、なんでもないよ」
「……怪しい」
「怪しくないって。ちょっと妹がこの学校の生徒だから見に来たんだけど、いなくてね」
「連絡してあげましょうか?」
「別に良いよ。気持ちだけは貰っておくよ。それじゃあ」
手を振って走り去っていく男をパシャリと写真を撮る恵。この時は、その妹とやらに見せたら喜ぶのではないかと思った行為だったが、結果として黒幕に繋がる手掛かりとなったのだ。
「その妹って……もしかして俺か?」
「その時いなかったのは私とみっちゃんだけど、私は弟が居ても兄はいないから、みっちゃんのことでしょ」
「うげ~、なんで異世界の自分に妹扱いされないといけないんだ」
「女の子だからでしょう」
「そもそも血のつながってない赤の他人では?」
「……義妹と兄の禁断の関係。ごくり」
「おい、自分に股を開くつもりはねえからな」
「冗談はさておき、その後調べてもこれ以上の手がかりはなし。冥に調べさせましたが、無人駅のトイレから突然現れたとのことで、足取りを追うことができませんでしたわ」
「人目のつかないところで転移したってところかしら。錬金術に長けているなら、事前準備込みでそれくらいはできるかもしれないわ」
「一応、無人駅の周辺を調べていますが、足取りにつながるかは不明ですわ」
「結局、分からずじまいか……」
「いえ、今回の接触で全くわかっていなかった黒幕陣営のことが少しでもわかったことは前進ですわ」
「でもさ……」
「それに、三雲のことを妹と思って見に来るくらいには身内の情があるということが分かったのであれば、とれる策もありますわ」
「策ってのは?」
「例えば、三雲ゲーム内で黒幕に目を付けられるほどに活躍し、目障りな存在になったとなれば排除したくなるはず。そうなれば、お兄さんは妹を保護しようと何かしらの接触をはかるかもしれません」
「……それって俺が囮になれってことだよな」
「そうですわね」
「嫌なんだけど」
「世界のためですわ」
「断る選択肢は?」
「あると思いで?」
「ひでえ」
「まあまあ、みっちゃんを囮にするのは良いとして――」
「良いのかよ!そこは恋人の身を案じて反対する流れだろ!」
「みっちゃんは男の娘だから大丈夫」
「子のニュアンス、違くない?」
「気のせい。気のせい。で、囮にするのは良いけど、具体的にはどうすればいいの?」
「それは私から説明するわ」
カーミラが壇上に上がり、まずはと言って向こうの世界についての情報を説明していく。Secret OS ver5を倒したのと同時期に崩壊速度の減少が見受けられたらしい。これにより、Secret OSには異変を維持する機能のほかに崩壊速度の促進といった機能も持ち合わせていることが判明した。
「寿命が延びたと言っても来年の10月くらいが峠だけどね」
「1、2か月延びたくらいか」
「貴重な時間はいくらあっても良いわ。で、今後の活動としてはまだいるかもしれないSecret OSの撃破。それをできれば配信してほしいところね」
「その配信は私たちがやれば良いってこと?」
「そうよ。みゅ~の築き上げた基盤を利用し、多くの人に見てもらうことで、世界中のプレイヤーを黒幕へのカウンターに変える。反攻作戦の第1歩よ」
「それは良いけど、肝心のSecret OSの場所が分からないぜ。Ver4と5があるからVer1~3は居てもおかしくないけど、Ver100000とかあったら、いくらなんでも倒し切るのは難しいんじゃないのか?」
「その可能性はなくもないけど、4番目に実装されたフォーゼと吸血魔城にVer4、5番目に実装されたファイズと海にver5。つまり、実装された順番にSecret OSが1機ずつ隠されている可能性は高いと睨んでいるわ。つまり、ゲーム内に存在するのはで9機(内2機は撃破済み)」
「あと、実装された都市と同時期に実装されたダンジョン内にいるボスキャラが変異するのも共通点ですわね。これだけでもむやみに探すよりかはマシになりますわ」
「ってことは俺たちはダンジョン巡りすることになるのか」
「そういうことになりますわね」
「でも、ダンジョンと言っても数はあるだろ。アテはあるのか?」
「ありませんわ」
「無いのか……」
「それが分かれば苦労はしませんわ。ということで、当面はワタクシたちもみゅ~のゲストとして加わり、ダンジョン探索ですわね」
「まずははじまりの街にある簡単なダンジョンから探そう。クリアにさほど時間もかからないし。2手に別れたら効率もよさそう」
どちらかのチームがSecret OSに遭遇しても大丈夫なように猫にゃんとゆっちーは別チームにし、種族や職業が被らないように決めていく。
チーム:猫にゃん…カエデ、三雲、麗華
チーム:ゆっちー…AYAKA、カーミラ、SPICA
「これで被り無し。完璧ですわね」
チーム分けが終わり、今日のうちに宿題とダンジョンに向けた準備をした後、明日の朝からダンジョンに潜ることを決めて解散するのであった。




