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VRMMOで吸血姫になった俺は幼馴染と一緒に女学園に入学する!?  作者: ゼクスユイ


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第92話 沈没船

 沈没船の中を探索していき、階段を下ろうとすると浸水しており、【潜水】のスキルが無いと先へ進めなくなっている。仕方なく階段を上っていき、部屋の中を探索しながら、視聴者たちと雑談していく。


「ところでさ、船内にこんなにも空気があったら沈没しないんじゃないの? それに外で見た時より広い気もする」


『wwwwww』


『突っ込んではいけないところをwww』


『ゲーム中だとモンスターに襲われてダンジョン化すると魔法でなんたらかんたらで外界とはつながっていない異空間と教えてくれるモブがいる』


『いわゆるご都合主義である』


「そんなことを教えてくれた奴、覚えがねえぞ?」


『いたよ、はじまりの街に』


「わりい、ギルド職員と店員さん以外ほとんど話してねえわ」


『話せよwww』


『町の人と話せよ』


『後発組は特に重要なことを言わないNPCの会話は飛ばしちゃうよね』


『(攻略に)が抜けているぞ』


『気持ちは分からなくもないけどね』


『ゲーマーはとりあえず、すべてのNPCと話す』


「俺、そこまでゲーマーじゃないんだけど……」


『だよね~』


『まあ、そこはミクちゃんのやりたいように』


『玄人気取りのコメは気にしたらだめよ』


「おう、そうだ『ぎゃぁ!』なんだ?」


 叫び声が聞こえた隣の部屋にいくと、ゆっちーが宝箱に化けていたミミックに頭からパクリと食べられていた。


「くらいよー、こわいよー」


「お前はエルフじゃないだろうが!」


 ミクがツッコミを入れつつ、ミミックを叩き割ってゆっちーを救出する。適正レベルであるレベル70台ならパーティーが壊滅するレベルの難敵だが、レベル100越えならば苦戦することなく対処可能である。とはいえ、毎回引っかかりたくはないので、ミクは視聴者たちにミミックの判断方法を聞くことにした。


『盗賊がいればスキルで1発』


『それ以外の職は引っかかるしかない』


『偽装状態だと攻撃しても、ダメージ表示ないのが姑息』


「めんどくせえ……」


『だからダンジョン攻略には盗賊職がパーティーに必須なのよ』


『罠解除もできるしな』


『タンク・前衛・レンジャー・ヒーラー・後衛の5人はパーティーの基本』


『その5人いたら@1はぶっちゃけ自由だよな』


「俺たちは?」


『ミクちゃんは回避タンク兼前衛だろ』


『ゆっちーは前衛もいけなくはないけど基本後衛、猫にゃんは後衛』


『ヒーラーとレンジャーがいないの致命傷すぎる』


「大丈夫だって。行き方しか見てなかったけど、あたしたちって実装された時より未来の装備つけているし~」


「ごり推せるにゃん」


「アイテムはたっぷりあるしな。いざとなれば【GLUTTONY】で底上げできる」


 楽天的に考えているみゅ~の面々はさらに進んで機関部にたどり着く。そこには浸水した床に露出したケーブルが浸かっており、電気がビリビリと流れている。試しに猫にゃんがホムンクルスを歩かせようとすると、麻痺で動けなくなったところに継続ダメージが発生し、なすすべなく破壊される。歩いて渡るというのは難しそうだ。


「空は相変わらず飛べないし、どうやって突破するんだ?」


『倉庫に行って中ボス倒してゴム長靴を手に入れる』


『その前に倉庫の鍵を手に入れるために食堂に行って拾う』


『長靴手に入ったら、奥にあるブレーカーを落とす』


『艦首前の電磁ゲートが消えてボス戦に行ける流れ』


「なんでこんなに壊れているのに電気流れているんだよ。ブレーカー……うっすらと見えるあの制御盤みたいな奴か」


「ここから壊せそうじゃない?」


「やってみるにゃん」


「物騒だな、おい!」


 下手な鉄砲数撃てば当たる理論でほたるんの尻ビーム、猫にゃんが作った多数の大砲が制御盤に当たろうとした瞬間、半透明のバリアみたいなものに触れて消滅してしまう。


『魔法で攻撃しようとすると打ち消されるトラップ』


『魔法で作った物も対象だ』


「ってことは俺みたいに鉄球を投げたり、矢で撃ち抜いたりすれば良いってわけか」


『ホーミングスキルの射程外だけどな』


『そこはしっかりとやっている運営』


「おもしれえ。フォアボールになる前に討ち取ってやるよ」


「ミクミク、すごくわるそうな顔している~」


「イキイキしているにゃん」


 深呼吸をして、まっすぐ前を見つめるミク。その真剣なまなざしに視聴者たちもコメントを忘れるほどに固唾をのんで、その行く末を見守る。最初の1球は制御盤の前に転がり落ちる。思ったより遠くにあるようだ。2球目は力を入れすぎたのかあらぬ方向に行き制御盤が備え付けられた壁にぶつかる。


(今ので距離感はだいたいわかった。あとはコントロールだけ)


 3球目は制御盤のわずか上。これには思わず「惜しい」と叫ぶギャラリーたち。スリーボール。そして、運命の4球目。制御盤へと向かう強烈なストレートが突き刺さり、小さな爆発を引き起こした後、スンと落ちる。それと同時に水面に流れていた電撃も消えて歩けるようになった。


『RTA勢歓喜の瞬間』


『【悲報】RTAするのに野球か弓道を学ぶ必要がある』


『あいつらならやるやろwww』


『先生、アーチェリーでも行けますか?』


『狙撃ライフルならいけるんじゃねえの?』


『おう、普段300mくらいの距離で戦っている奴が600m先の物を射抜ける自信があるならやってみせろや』


『徒歩7、8分くらいの距離な』


『やべえwww』


『わりかし近……いや、遠いわ』


『プロの犯行www』


『くそ、狙撃する発想があったら狙撃していた。ちょっと挑戦してくる』


『【遠投】でそこまで投げれたっけ?』


『計算してきた【遠投Lv5】以上+グローブ装備でギリ届く。なお、リアルで100mの遠投ができるものとする』


『すごさが分からん』


『プロ野球選手の投げる球が120mくらい』


『やべえwww』


『野生のプロwww』


『ミクちゃんの遠投のレベルは?』


「6だけど?」


『再計算はよ』


『1くらいならたいして変わんねえだろwww』


『今、調べたら強豪校の高校球児が100mくらいだとよ。やべえ』


『甲子園でみてえよ』


『男性球児に交じって女子一人の逆ハー、ええやん』


「何をするにも体力づくりしないとな。さてと、アイテム改修したら次はボス戦だ」


 視聴者たちのコメントを見て嬉しそうにしたミクがさらに上層へと昇り、艦首の方へと向かって歩いていくと、機能を停止した電磁ゲートがある。それを潜り抜けて艦橋へと入ると、海賊帽を被り、右手がフックになった黒ひげの男性がいた。


「キャプテンフ〇ク?」


『その名はやめろ、消されるぞ』


『ネズミーからの使者が来るぞ!』


「でも、どうみても……」


『ハハッ』


『顔は違うからセーフです』


「利き手が違うにゃん!」


「あっちは右利きだけど、こっちは左利きだし~」


「わかったよ。とりあえず、そこにいる……だれ?」


「ハッハッハー、俺様を知らないとはモグリだな。俺様の隠し財宝を盗みに来た連中でも、冥土の土産に教えてやろう。七つの海を渡り、世界中の宝を強奪した世紀の大海賊、キャプテンクロウとは俺様のことよ!」


「誰?」


『だからモブに話とけよおおおお!』


『港で話を聞けるよ』


「アイテムとか装備品を買える店を除くなら、レストランくらいしか利用してねえわ」


『おいいいいいい!』


『ちゃんと話せええええ!!』


「なにブツブツと言ってやがる。俺様が怖くなったか。なら逃げても良いんだぜ。有り金を全部おいていくならなぁ」


「それはする気ないけど……ちょっとタイム」


「良いだろう、3分待ってやる」


『優しいwww』


『ム〇カwww』


『こういうことできたんだ』


『普通はそのまま戦闘だもの。誰もタイムはしない』


「これってクロウを倒すと盗んだ宝とかを総取りできるの?」


『いや、財宝を隠している場所はクロウしかしらないから分からぬまま』


『調査してアンデ化していたクロウを倒したってギルドに報告して終わり』


「……それって倒す必要ある? 沈没していて、電気の制御盤も破壊しているなら害ないだろ。このおっさんが電気関係の免許持っていて直せるなら別だけど」


『wwwwwwwwwwww』


『ゲームの根本から否定するなwww』


『倒さないと調査完了にはならないからwww』


『やべえ、発想がぶっ飛んでるwww』


『ゲーマーにはない視点www』


「なあ、クロウのおっさん。隠し財宝ってどこにあるの」


「俺様が教えるとでも?」


「だって、ずっとここにいるんだろ。だったら、別の誰かが留守中に偶然見つけるなんてこともあるだろ」


「これだから素人は。俺様しか知らない呪文を唱えない限り、その場所は出てこない。つまり、偶然はありえない」


「呪文ね……」


 ミクがそうつぶやくと、何かひらめいたような顔をした後、ゆっちーたちに指を口に当てて黙るように指示する。


「実は俺たちの仲間がその呪文を知って、その場所に向かっているんだ。俺たちは陽動ってわけ」


「そんなはずはない。その呪文を知っているのは今や俺だけだ」


「心当たりはあるんじゃないか。裏切りそうなやつの一人や二人。海賊も1枚岩じゃないからなぁ。そいつらが口伝で子孫に伝えていたとしたら……」


「……まさか、アイツが? いや、そんなはずは」


「(引っかかった)で、どうする? お前の自慢の船は動けない。俺たちと一緒に来てくれるなら、そこに連れていくぜ」


「待て。なぜ、その情報を俺に売る?」


「あいにく、俺たちはその場所を教えてもらっていないんだ。だから、アイツらが見つけても『みつかりませんでした』と言われたら、独り占めできちまうんだ。これがな。俺たちを危険な場所に陽動で使ったのも、帰らなかったらラッキーと思っているんだろうぜ。そいつらに一泡を吹かせたいと思うのは分かるだろ」


「なるほどな。それで、俺様と手を組むってわけか。だが、財宝はやらんぞ」


「良いよ。死ななければ儲けものだ(この流れで裏切るの……心がすげー痛い)」


 良心の呵責に苛まれながらもミクたちは沈没船から脱出し、シルちゃんに乗って隠し財宝がある島へと向かっていくのであった。その背後から追手が来ていることは知らずに……

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