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第8話 いざ、吸血魔城へ

「キィーキィーキ……」


「このエロ蝙蝠!」


 うす暗い森に入ったところで現れ、目がハートになった蝙蝠に向けて、血の球を投げつけてダメージを与え続けていく。ダメージを与えたところで蝙蝠が戦闘態勢に入り、音波のようなビームを放ってくる。


「おっとあぶねえ……魅惑の魔眼!」


「キキキ!」


「うわ~、魅了ハメ殺し。サキュバスも顔負けだね」


「いるのか!?」


「いるよ。今のみっちゃんみたいに魅了系のスキルてんこ盛り。これからサキュバスって名乗る?」


「うれしくねえ!吸血姫のほうがマシだ!マシなのか?」


「さてと、みっちゃんがヘイトをとっている間にシャイニングシャワー!」


 光の雨が降り注いでミクを追っている蝙蝠たちを一掃する。そして、魔眼のクールタイムが回復を待ってからあたりをウロチョロ歩いて蝙蝠とエンカウントするのを待つの繰り返しだ。入口近くなため、蝙蝠たちのレベルは50台前半と低く、10程度のレベル差なら光属性による弱点を突けばほぼ一撃で倒せる。これを繰り返しているうちにミクのレベルは50に、カエデのレベルは49になっていた。



 固有スキル【飛行】を覚えた



「空を飛べるようになったぞ!これは強いんじゃないか」


「でも、空を飛ぶとヒールの範囲が届かなくなるどころか、日光の影響を強く受ける=昼だと即死って聞いたことある罠スキルだよ」


「実質夜限定かよ!」


「そう甘い話はないってこと。普通ならレベル100のスキルなんだし、慣れるためにも余裕があれば使っておこう。さてと、もう少し奥まで進むよ。蝙蝠ならレベル56が最高レベル。それ以上進むと、蝙蝠以外の敵も出てくるから効率が一気にがた落ち。とにかく蝙蝠を狩りまくってレベル55まで上げるよ」


「それにしても、俺がやっているのって囮係だよな」


「そうだよ。頑張って回避タンク!」


「ここだと日光の影響受けないといっても、回避しないといけない身にもなってくれよ~」


「そこは見切りのスキル上げのためにも苦労しないと。3までは上げやすいけど、4からはレベルアップに必要な戦闘回数が増えるからね~」


「とほほ……楽に強くなる方法はないってわけか」


「筋トレとかと同じだね」


 入口から少し奥、吸血魔城と呼ばれている古びたお城が大分近く感じられるところで絶滅するのでないかと思うほど蝙蝠を狩り続け、二人はレベル55に到達するのであった。



 固有スキル【斬撃強化Lv1】を覚えた

【投擲Lv4】にアップしました

【遠投Lv4】にアップしました

【見切りLv4】にアップしました

【採取Lv3】にアップしました



「おっ、今度は剣士系の職業スキルだね。爪攻撃にも適用されたはずだから、使い勝手はいいと思う」


「定職に着ければよかったんだけどなぁ……」


「そこは固有スキルの先取りできているわけだし、文句は言わない」


「なんだかなぁ」


「これ以上はさすがに二人パテだときついからフォーゼに戻ってログアウト。夕食終えてからパーティー募集しているパテに入って吸血魔城の攻略!つまり、ボス戦!」


「ボス!ってことは強い奴と戦えるってことだろ。腕が鳴るぜ!」


「そのためにも腹が減っては戦ができぬ!だね」


「ああ!早く街に帰ろうぜ!」


 街に戻ったついでに今まで集めたモンスターの素材を必要とする採取クエストをクリアだけしといてSPを荒稼ぎし、二人はログアウトするのであった。


 そして、お風呂に入って寝巻に着替えた二人は再びゲームの世界へとログインする。


「じゃあ、さっそく冒険者ギルドに――」


「その前に服屋に行くわよ」


「なんで?」


「まさかそんな怪しげな服装でいくつもり?」


 ミクは昨日のプレイヤーキラーから奪った装備を身に着けており、全身が真っ黒の格好。それはまるで探偵ものに出てくる真犯人のようだ。このゲームはともかく、RPGくらいはやったことのあるミクにとって、装備をそろえていく過程で水着に立派な盾を装備させるなどちぐはぐな装備になるのはそういうのもゲームなんじゃないかと思っていた。


「あたりを見ればわかるけど、みんな普通の格好でしょう?」


 改めて街の中にいるプレイヤーを見る。魔導士は三角帽子にローブ、戦士や騎士は鎧を着て盾や剣を持ち、錬金術師は怪しげな本を抱えている。しかもどれもこれも統一感のあるデザインだ。少なくとも、ミクのようなキメラ装備は見受けられない。


「そういえばそうだな。なんでだ?」


「スキン変更で装備を変えずに見た目だけ変えることができるの。最初は初期装備の格好しかないけど、服屋での購入や課金でスキンを増やすことができる。これを利用して、自分が何の装備をしているのか隠すっていうテクニックもあるよ」


「ってことは、俺はこれから……」


「明日の予行練習もかねてお着換えタイム!さあ、さあ、さあ!」


「マジかよ……」


 カエデに押される形で服屋に入っていくミク。そこには見た目からは判断できぬほどに広く、女性ものが8割くらい占めていた。


(こんなとこ、女じゃなくて男で遊んでいたとしても入りづらいぞ……)


「さてと、どの服が似合うかな」


「ひらひらしたものは動きにくいからズボンで良いぞ」


「えっー!それじゃあ、可愛くできないじゃん!」


「可愛さは二の次だろ!」


「ぶー。だったらリアルの方は楽しませてよね」


「あーわかった。わかった。ワゴンにある安物で良いな」


(言質とった!ラッキー!)


 にんまりとしながらカエデは会計をすましているミクを見る。そして、スキン変更のやり方を教えてスポーティーな恰好に着替えたミクと一緒にギルドへと向かう。そこにある掲示板の一角。


【吸血魔城周回pt募集(レベル80以上、要:ヒラ)】

【吸血魔城周回pt募集(レベル80以上、要:タンク)】

【吸血魔城周回pt募集(レベル80以上、要:魔導士)】


「どこもかしこもレベル80以上で募集しているな。しかも職業制限付いているから、どこにも入れねえ……どうするんだ?」


「う~ん、まだあの二人が来てないからもう少し待とう」


「あの二人?」


「よっ、昨日の嬢ちゃんと隣にいるのは友達かい?」


「(サブだとばれないように)友達のカエデです」


「吸血魔城募集の掲示板を見ているということは、ずいぶんとレベルを上げたようだな」


「ダイチさんとアルゴのおっさん!」


「お、おっさん!? 俺はダイチと同じ年だぞ」


「そりゃあお前が老け顔だからだよ。こうして会えたのも何かの縁。どうだい、俺たちと一緒に周回するってのは」


「良いのか!」


「いいとも。火力もタンクも俺たちで十分。友達の子、見た目からの判断だが、白魔導士であっているよな」


「はい。回復も攻撃もできますよ」


「それは頼もしい。あと二人はできればスカウト系がいればなおよしだが、最悪適当に見繕えばいいだろ」


「わかった。その条件で掲示板に貼り付けておくぞ」


 掲示板に職不問・レベル60以上で募集し始めるとちょうど2人飛び込んできた。一人はメイドのような恰好、もう一人は金髪ロールとわかりやすいお嬢様だ。


「おーほっほっほ、私たちを選ぶとは下賤な者たちの中にも、私たちの価値を知る者も少しはいるようですわね」


「レイカお嬢様の発言を意訳しますと、どこの募集にも断られて寂しかった。貴方たちのパーティーに入れてよかったとおっしゃっております」


「メイ、余計なことは言わない!」


「畏まりました。お嬢様」


「お、おう。これはまたクセが強そうなのが来たな……」


「ダイチ、大丈夫か、このパーティー?」


「大丈夫だ、問題ない……はずだ。戦力的には」


「軽く自己紹介しておくか。俺はアルゴ。こいつはダチのダイチ。俺たちは魔人の戦士だが、ダイチがタンク寄り、俺がアタッカー寄りだ」


「次はワタクシですわね。ワタクシはレイカ。人間の魔導士ですわ!」


「私はレイカお嬢様のメイドの……いいえ、機械人形の暗殺者です」


「俺は吸血鬼だ。始めて間もねえから職業は考え中」


「最後は私だね。エルフの白魔導士のカエデです。よろしくお願いします」


「よし、自己紹介も済んだところで吸血魔城へと行くぞ」


 森の奥深くへと入っていく6人。今朝、ミクたちが引き返した場所よりもさらに深く入ると、青肌の怪しげなおじさん、敵としての吸血鬼が森の茂みから現れる。


「こっちへ来やがれ、【挑発】!」


 ヘイトがタンク役のダイチに向けられ、吸血鬼の鋭い牙による噛みつきを盾で防ぐ。


「しっかり噛んでおけよ、アルゴ!」


「おう!」


 巨大な斧を振るい、吸血鬼を狩り取ろうとすると霧状になって躱す。


「ちっ、低確率の【霧化】か!運がねえ」


「魔導士の二人、任せた!」


「はい、シャイニングアロー!」


「アクアプレッシャー!」


 光の矢と水流によって霧になった吸血鬼を打ち抜き、消滅させる。


「俺、なんもやってねえ」


「始めて間もないならしょうがない。職業で迷っているなら、つぶしが効くのは戦士か魔導士だ。攻撃特化型の重戦士や黒魔導士と違って覚える汎用スキルも幅広いのも特徴だ」


「課金要素になってしまうが、気に入らなかったら後で職業を変更することもできるぞ」


(そもそも職業を選べないんだよなぁ……)


 上位プレイヤーである二人のアドバイスはうれしいし、素直に受け取りたいがそれができないのが悩みだ。吸血姫という特殊な種族であることを誤魔化すためにも、考えておきますと言ってお茶を濁すことにした。


「闇の石ゲット、今日は幸先良いね~」


「闇の石?」


「闇属性の武器を強化するのに必要な素材。ここのボスのカーミラからは、低確率だが上位種の闇の魔石も手に入る。俺たちが必要なのはそれらだ」


「吸血鬼のミクなら、ドロップ武器も美味しいぞ。専用装備なだけあって、下手な店売りよりも強い」


「そりゃあ楽しみだ」


「はしたないしゃべり方ですこと。上品な気振る舞いを覚えるべきですわ」


「へいへい、わかりましたよ。お嬢様」


「所詮は下賤な者ですわね」


(やれやれ、女の子同士の戦いって止めにくいんだよなぁ……)


 リーダーのダイチは若干ギスギスしているパーティーをどうまとめようかと考えながら、吸血魔城の中へと足を踏み入れるのであった。

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