第84話 暴食
翌日、グラトニーの誘いを受けた4人は魔界にある『DEVIL's KITCHEN』へと向かう。配信機能は昨日に引き続き、ONにしている。昨日の配信後、数多くのプレイヤーがチャレンジにあえなく撃沈したため、グラトニーに挑んだ者はまだいない。そのため、今日の配信は普段よりも多くの視聴者が集まっている。
「おいらと戦う?」
「今日はドンパチじゃなくて、大食いだろ」
「よくわかっていて良い。だけど、どちらにしても勝つのはおいらだから」
「今回の大食いバトルでは全5品の料理が用意されています。もし、制限時間内に1皿でも食べきれなかった場合はその時点で相手の勝利です」
「じゃあ、最後の料理をどっちも食べきった場合はどうするんだよ」
「そ、それは……」
「そのときはおいらがお前たちを認めるど~」
「だそうです」
「要は最後まで食べろということにゃん」
「考えなくて済む分楽~」
「頑張ろう」
司会の男性の指示に従い、自信満々のグラトニーとミクたちがテーブルに座ると、大盛りの料理が運ばれる。まず1皿目は山のように積み上げられている焼きそばの上に目玉焼きがこれでもかというくらいに覆いつくしている。口直し用に温かいお茶も出され、準備ができる。
とりわけのさらに焼きそばと半熟の目玉焼きを乗せて、ミクと猫にゃんは無理しないように自分のペースで、SORAは口の中に入れて流し込むように、ゆっちーは美味しそうに食べつつもミクたちよりも早いペースを保ちながら一定のスピードで食べていく。
『あかん。俺、この皿だけで満腹になりそう』
『バトルするか聞いているから、発生条件さえ満たせばこの大食い勝負を避けられるはず』
『そもそも発生条件的に、バトルの方が難しいのでは?』
『バトル展開したらスキルが取れない可能性もある』
『ああ、そういった可能性もあるか』
視聴者が見守る中、グラトニーが余裕の貫録を見せながら先に食べ終える。それから遅れること数分で女子チームも完食する。
「にひひ、ゆっくり食べていたけど、よく食べるねえ~」
(やべ、これ……あと2、3品くらいしか食べられなさそう)
(キツイにゃん)
「早く次、ちょうだい~」
2品目はこれもまた山のように積み上げられた唐揚げ。しかも、1個1個が大きく、4つくらい食べたら満足感が得られるほどにジューシーだ。
『見た感じ、から〇しくらいはあるぞ、アレ』
『何個あるんだよ』
ここで、ゆっちーが手を上げて、塩コショウとライスを注文。それを見たSORAもソースやレモン汁を頼み始める。どうやら、味変で乗り切る方針のようだ。
『なんでご飯の追加注文をしているんですかねえ、あの黒ギャル』
『初見か』
『お米のギャルだぞ』
『初めて聞いたぞ』
『お米の黒ギャル略してコギャルやな』
『コギャルってそういう意味だったのか……』
変なあだ名が尽きそうになっている中、2品目もグラトニーが先に完食。だが、女子チームの完食が10分ほど遅れ始める。まだ制限時間内なのでセーフだが、これ以上遅れるのはまずそうだ。
(まずい、結構きつい……)
(……きつい)
ミクと猫にゃんがグロッキーになり始めている中、運ばれてきたのは山のように積まれた大量のホットドッグ。SORAが水を頼み、口に詰め込んだホットドッグを流し込んでいくのに対し、ゆっちーはマスタードソースやチリソースで味を変えながらパクパクと食べていく。
『二人死んだな』
『口はもにゅもにゅ動いているけど、手が止まっているもんな……普通はそうなる』
『実質2vs1、きついか』
『このペースだと制限時間ギリって感じだな』
グラトニーの食べるペースは依然衰えを見せず、制限時間を半分ほど残して完食。それに対して女子チームはミクたちが足を引っ張異ながらも数分前に完食する。そして、4品目は巨大な器に盛られた巨大カレーだ。ご飯ものということでゆっちーがうきうきしながら取り皿に盛りつける一方で、SORAの手に勢いがない。
『あ~、これ無理じゃね』
『ほぼタイマンか』
『制限時間、間に合うか!』
グラトニーが完食し、残り時間10分を切ったところでホットドッグでやられていたミクが意地を見せてカレーを食べ始める。ガツガツと音を立ててはしたないかもしれないが、恥は捨てた。残り1分を切ったところで、スプーンが転がり、無事完食の合図が鳴り響く。
最後に出てきたのは超巨大プリン。味変しようにも容易ではない、似た味が続く巨大プリンが門番のように立ちふさがる。
「猫にゃん……任せた」
「……頑張るにゃん」
ミクが脱落したが、ここで3戦目途中から回復に努めていた猫にゃんが最初から参戦し、3人でプリンの山を削り取っていく。だが、同じ味が続くためどうしても飽きが生じ、食べる速度が遅くなっていく。
「醤油、ちょうだい」
『プリン+醤油といえば』
『ウニの味www』
『ぜってーならねえ奴じゃん』
『試した奴おりゅう?』
だが、そんなことお構いなしにゆっちーが醤油をかけてプリンを食べ始める。甘いプリンと醤油のしょっぱさで無理やり味変することで、食べる速度を維持する作戦だ。それに見習いSORAたちも醤油便を手に取り、頑張ってプリンを食べる。
『まずい、あと5分!』
『間に合わねええええ』
「ここまで来て負けるかよおおお!」
休んでいたミクが根性を入れなおして、プリンを削り取り、4人でプリンを食べ始める。そして、刻々とカウントダウンが近づいていく中、最後の一口をゆっちーが口の中に入れた後、タイマーストップ。残り時間2秒の奇跡を起こし、勝利するのであった。
「お前たちを認めるど。特にそこのチョコみたいな女、お前ならおいらと契約を結んでも良いど~」
「良いよ~」
ゆっちー、SORA、ミク、猫にゃんは【GLUTTONY】(消費アイテムの消費量が2倍になる代わりに効果が増大する。ON・OFF可能)を覚えた
ゆっちーは【悪魔召喚術式(暴食)】を覚えた
『8888888』
『8888888』
たぬかす¥1000
うさかす¥1000
『たぬかすさん、うさかすさん、いつもありがとう byみっちー』
「今日の配信はこれまで。みんな、僕の春風の満腹チャンネルと」
「あたしたちのみゅ~のチャンネル登録してね」
配信が終わり、ぐったりとした様子で椅子に座りこむ。会計自体はグラトニーがすましてくれたらしく、1時間はここで休憩しても良いとのことだ。
「これで7つの大罪の5つGET」
「良いなぁ~、僕はこれで2つ」
「これとグリードと見たにゃん」
「正解。それ以外の条件、教えてよ~」
「じゃあ、憤怒と嫉妬の情報を持っていたら交換するよ」
「憤怒ってラースでしょう。確か魔王の名前もラースだから、魔王自体が憤怒の悪魔じゃないの」
「ああ、そういやそうだったけ?」
「……ストーリー飛ばす派だから覚えてないニャン」
「あたしも同じく~」
「もう、ちゃんと読んでおかないと。嫉妬は分からないけど、憤怒と同じ名前を持つ魔王。これは何かありそうじゃない?」
「それもそうだな。だったら、こっちも情報を渡すよ。大罪の内一人は金が必要だ」
ラストの情報を渡したのは、得られるスキルが先のギルド対抗戦で多くのプレイヤーに見られており、対策もされ始め、習得条件を知られたとしても痛みが少ないからだ。
「金が必要ね……あのクエストかな。ありがとう、ちょっと試してみるね」
心当たりがあるのか、SORAが出ていき、少し遅れてミクたちもたぷりと大きくなったお腹をさすりながら、レストランの外に出ていくのであった。




