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VRMMOで吸血姫になった俺は幼馴染と一緒に女学園に入学する!?  作者: ゼクスユイ


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第81話 対談

「というわけであのバカップルがイチャコラチュチュし始めたから、こっちで暮らすことにしたわ」


 二人の告白を聞き終えたカーミラが一度、平行世界に戻り、色々な報告を済ませて戻ってきたのはそれから数日である。ずいぶんと早い帰還だと思った麗華が聞くと、平行世界間の移動で時間の進み具合が変わることがあるそうだ。つまり、向こうの錬金世界で数週間過ごしても、こちらでは数日しか経っていない。逆もしかりだ。


「ワタクシの部屋は金で物を言わせて他の人よりも少しばかり広いので構いませんが、そんなに?」


「ええ、もう。見ているこっちが恥ずかしくなるくらい」


「たまっていた思いが一気に爆発したというわけでしょうね。向こうの様子は?」


「協会の連休にあれやこれやと聞かれはしたけど、崩壊速度は()()変わらず、タイムリミットはあと1年あるかどうかってところね」


「ほぼ?」


「誤差に近いけど、崩壊速度が減少しているみたい。私たち側の手が有効だったのか、こっちで何かがあったのかは分からないけど」


「黒幕の意図していないこと……それがなにか分かれば、解決に動けるのですが。それと頼んでおいた例の調査は?」


「ゲーム機の調査でしょう? でも、このゲームに吸血姫のデータは入っていないっていう推測あっているの?」


「いくらレア度が高いとはいえ、日本だけでも数万人のアクティブユーザーが居て2年半も発見されていないキャラがいるのはおかしいですわ。それが分かっても、多少の炎上はあれど当たり前のように受けられている。これは明らかに異常。認識阻害の影響が残っていると考えられるわ」


「本当に認識阻害なら、それすらも疑問に思わないはずだけど」


「存在さえ知っていれば、心や頭が否定してこようが、理性で判断できますわ」


「どんだけ図太いメンタルしているのよ。私が吸血鬼の力を使えたとしても、失敗しそうね」


「褒められたと思っておきますわ。で、結果は?」


「ビンゴ。このゲームには錬金術の要素が取り入れられている。この機械を使うと、プレイヤーの魂の一部を仮想的に作られた世界へと飛ばす。今の私がやっているのとほぼ同じね」


「つまり、ヴァーチャルリアリティではなく異世界転移に近いということですわね」


「その異世界が人為的に作られたものとは思うけど。あと、魂の転移技術に関しては私たちの世界よりも1、2歩先を進んでいると言わしめたほどよ」


「魂の転移……それが黒幕の目的に何か関係あるのかしれませんわね」


「吸血姫の方は引き続き調査中。何かわかれば戻るけど、それまでは最悪、こっちでゲームしながら食っちゃ寝生活して過ごすことにするわ」


「そういう自堕落な生活は許しません」


「でも、学生じゃないもの」


「学生なら問題ないというわけですわね」


 麗華がガサコソと机の中から茶封筒を取り出す。それを受け取ったカーミラが中身を見ると、そこには留学手続きと自身の学生証が入っていた。


「なっ……」


「外国から飛び級してきた天才留学生という設定で作らせておきましたわ。夏休み開けたら、ワタクシたちと同じクラスになるように先生方の根回しも完了済みですわ。そっちの方がフォローしやすいですし」


「ちょっと、私、この世界の科学?ってのは詳しくないわよ。数学は共通だろうけど、言語も貰っている知識はあくまで基本だから読み書きはある程度できても難しいのは。それにこの国の歴史だって――」


「だから勉強してもらいます。ちょうどいい機会でしたわね」


「あくまーー!!」


 カーミラの泣き叫びながらも、渡された参考書を片手に現代日本の常識を学んでいくのであった。



 カーミラがそんな目に会っているとは思っていないミクとカエデの二人は、元偽ギルドを拠点にしてクエストを進めていた。この数日で分かってきたことは、地上で特定の人物から受けることができる特殊クエストを達成することで、所属ギルド毎に偽ギルドを切り盛りしている人物が変わり、ギルド内で買える品物も変動する(と言っても最終段階は同じになるのではないかと推測されている)システムということだ。

 イザベラが運搬の護衛だけでなく、切り盛りまでしてるこのギルドはとにかく人手不足ということもあって、同じポーションでも地上で買う時よりも少し高めだ。だが、クエストを進めることで値段が下がったり、品数が増えていったりしている。今となっては、地上の街をあちこち回らなくて済む分、少々割高でも手間暇を考えれば楽といった感じだ。


「さてと、今日はどれから回る?」


「どれでもいいけど……残っているクエストも減っているし、魔王城にでも行こうぜ」


「でも、攻略サイトによると裏切りルートでしか城下町と魔王城には入れないみたいだよ」


「少し試したいことがあるんだ」


「なにするつもり?」


「行ってからのお楽しみだ」


「ケチ~」


 カエデが文句をつけたところで、敵を避けつつ、二人で魔王が治めている城下町まで向かっていく。城下町をぐるりと取り囲む城壁に空を旋回しているワイバーン、そして、城門の前には2人の黒い鎧姿の騎士が6人のプレイヤーたちと言い争っている。しばらくすると姿が消え、代わりの門番が瞬時に転送された。


「戦闘に入ったみたいだね」


「はたから見るとあんな感じなのか」


「そうしないと、囮使って強行突破なんてできるもん」


 それもそうかと思いながら遠くから眺めていると、門番が戻ってきたが、プレイヤーの姿は見えない。どうやら負けてしまったようだ。


「【モノクロ】の人たち6人で無理ってなると、私たち2人だとさらに無理だけどどうするの?」


「こうするのさ。【変身】」


 ミクが姿を変えていく。その姿はかつてフォーゼの国王に化けていた魔族の青年だった。それを見て、ミクのやりたいことが分かったカエデは怖がる振り(大根)をしてミクの後ろについていく。


「ハイド、生きていたのか!」


「この俺が人間ごときにやられるわけねえだろ」


「負けたのに相変わらず偉そうだな。後ろの女はなんだ?」


「傷をいやすのに時間がかかったうえに手ぶらで帰ったら、俺もクビが飛ぶ。俺に楯突いてきた女を手土産にしてきた」


「コワイヨー、タスケテー」


「あまりの恐怖でちゃんと喋れてないみたいだぜ」


「ちげえねえ。しかもそこそこの魔力を持っているエルフか。しかもかわいいと来た。魔王様の献上品にしておくのもったいないぜ」


「せっかくだから、俺たちで――」


「やるか、てめえら!」


「ひえっ!?」


「そんなわけだ。通すよな」


「いいぜ、許可証は?」


「……戦いの最中に落としたみたいだ」


「またかよ。前もそれで始末書書いただろ」


「始末書書けば落としても構わないだろ」


「まったく。前も同じことを言って怒られなかったか。今回だけだぞ」


「次も頼む」


「次が無いようにしろよ!」


 黒騎士たちが笑いながら、門を開けてミクたちを通していく。城下町というだけあってアーリアの街よりも活気があり、フォーゼと見比べてもそん色ないように思える。だが、出歩いている人たちは魔族が大半で、獣人や人間が紛れている程度だ。二人は人目のないところに行って、これからどうするか話し合うことにした。


「とりあえず、魔王城に入ってみるか」


「そうだね。門番がいうにはハイドっていう人、魔王と面識あるみたいだもん。四天王でなくてもそれに近い幹部なのかも」


「まあ、フォーゼを内部から乗っ取ろうとしたくらいだもんな。重要な作戦を任されているなら、それくらい高い立場にあってもおかしくないか」


「決まりだね」


 二人は視界に移る魔王城へと歩みを進めていく。城の前にも門番がいるかと思いきや、そこには誰もおらず、閉じられている扉だけがあった。あまりにも不用心だと思いながらも、手で押していくと、ずっしりとした重量感を感じながらも扉が開き、中へと入る。


「誰もいないみたいだな」


「とりあえず、上に上がってみよう」


 二人が階段を上っていくと、玉座に座っている一人の男性がいた。座っているため、正確な身長は分からないが、ずいぶんと大きく見える。2mは優にあるのではないかというほどだ。それでいて、モデルのように優美さを感じる美しい顔。頭にある二つの角が魔王らしさを出しているが、それがなければ、この人が魔王とは思えないほどだ。


「他の者は下がらせておいた。姿を現してもいいぞ、冒険者たちよ」


「バレていたか」


「女であったか。男だと思っていたが、我の勘も鈍ったか。それに、我を前に畏まらない度胸、気に入ったぞ。何しに来たか申し上げよ。よもや和平とは言いださまいな」


「いや、違うけど」


「どっちかというと……」


「「観光?」」


 特に目的はないのである。これがフォーゼから和平交渉してくれというクエストならば、そのように伝えかもしれないが、特にそういうクエストを受けているわけではない。城下町に入れて、どんな武器やアイテムが売られていて、できればクエストが転がっていないかなと調べに来たといえば聞こえはいいが、要は観光である。

 この答えに魔王も予想していないかったのは、思わず吹き出して笑ってしまう。


「フハハハハハ、実に愉快。我を笑い殺すつもりか」


「そんなつもりねえけど」


「それによく見れば、大罪の悪魔を複数倒しているではないか。気に入った。これをくれてやろう」


 魔王が指を鳴らすと、頭上から六角形の紋章が落ちてきたので、それを両手でキャッチする。そこにはドクロマークが描かれており、装備したら呪われそうだ。


「なんだこれ?」


「これはこの街に入るための許可証だ。魔族だけでなく行き場のない者も招き入れていたが、お主らのような面白き者にも配ることにした」


「行き場のない人たちっも入れて大丈夫かよ」


「それくらいの度量がなければ、地上を治めることなど到底不可能。我は地上を我が手に納め、永遠の繁栄を築き上げるのだ。フハハハハハハ!!」


「永遠ねえ……政治は詳しくねえけど、共存共栄とかできねえの?」


「和平は受け入れぬといった。だが、今日の我は気分が良い。無知のお主らにもわかるように教えてやろう」


 余りにも尊大な態度にイラっとくるが、そこは抑えて魔王の話に耳を傾けることにした。


「良いか。此度の戦争は長きにわたっており、どちらが先に戦端を開いたのかはもはや重要ではない。善悪で語るのはとうの昔に過ぎている。勝者こそが今もそしてこれからの歴史を決める。ゆえに勝たねばならん。和平など疲弊した地上側の時間稼ぎよ」


「でも、魔族側も疲弊しているんじゃないのか?」


「無論だ。貴様が倒したハイド。奴は四天王に欠員が出るようなことがあれば、次期候補に名を連ねた可能性はあったであろう人材だ。惜しいことをした」


「えっ~と、それはごめん」


「謝る必要はない。だが、領民のためにも更なる領地が必要なのだ。地上の王には降伏ならば、受け入れると伝えておけ。傀儡政権にはなってもらうが、流す血は最小限にすると約束しよう」


「待てよ、ハイドを王様に化けさせたのは……」


「そうだ。我らに親しい政権を作るためだ。それはもう二度と敵わぬ夢となり果てたがな。ゆえに我は暴力で手に入れることにした」


「させねえよ、そんなこと!」


「冒険者風情が戦争を止めようなど思い上がりも甚だしいぞ!」


「だったら、俺たちと勝負しやがれ!」


「今のお前は蟻と同じ。勝負にもならん。そうでないというのであれば、大罪の悪魔を全て倒してからにしてこい!」


「3人は倒したから、後は残りの憤怒、嫉妬、暴食、怠惰の4人」


「よし、こうなったらその4人を見つけて倒そうぜ!」


 二人は玉座の間を出て、まずは魔王城の中を探索しようとする。玉座の間に入る前と違って、サキュバスのメイドや、執事服の悪魔が徘徊しておりこちらを時折見てはひそひそと話をしている。


「許可証のおかげでいきなり襲ってこないって感じかな」


「それはいい。聞き込みしたり、部屋の隅々まで調べようぜ」


「じゃあ……すみません、大罪の悪魔の居場所って知っていますか?」


「大罪の悪魔? ああ、スロウスのデブのことか。それなら、地下室でさぼっているんじゃないのか。正直なところ、ごく潰しだから、あんたらに倒されるならせいぜいするよ」


「ひでえ言われよう」


「働く気がない奴は、それだけで邪魔なのさ。地下室にはこの先にある曲がり角を左、右、右と曲がれば階段が見えるから、そこを下っていけばいい」


「ありがとうございます」


 あっけないほど簡単にスロウスの居場所が分かった二人はさっそく、悪魔の指示に従って地下室へと向かっていくのであった。

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