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VRMMOで吸血姫になった俺は幼馴染と一緒に女学園に入学する!?  作者: ゼクスユイ


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第78話 誇り

 ゲーム内チャットでギルドメンバーに取り合っていくが、どこもかしこも新エリアの探索中や魔王側に寝返りを考えている人が多い。これは【星の守護者】の前身である【漆黒の翼】が闇属性キャラ主体のギルドだったということと、闇属性キャラの強化があるなら魔王側にそういったイベントがあるだろうというメタ読みが大きい。そのため、普段ならば手を貸してくれる人たちも人類側につくことにしたミクたちと一緒に戦うのを敬遠してしまう。


「ダイチさんたちは来なかったけど、ハクエンさんが来てくれたのは心強いぜ」


「ふっ、堕天使の頃なら裏切り一択だったが、大天使の私なら人類側に着くのは至極当然だ」


「おいおい、俺も忘れるなよ」


「ワタクシもですわ」


「わかっているって、ジーク、レイカ」


「でも、ジークさんが来てくれたのって意外。ダークエルフだからてっきり魔王側につくのかと」


「大悪党の盗賊より正義の義賊の方がかっこ良いだろ。ルパンとか鼠小僧とかな」


「ああ、わかる」


「そういうものなの?」


「「そういうもんだ!」」


「これだから男の人というのは……ワタクシにはわかりませんわ」


「女の子のミクを男呼ばわりにするのはやめたほうが……本人たちが気にしないのであれば良いか」


 パーティーの枠は1つ余っているが、他のギルドに情報を流さないためにもまずはこの5人でクエストを受けることにした。さっそくアイスマウンテンに行こうとしたとき、カエデに呼び止められる。


「なんだよ、さっさと行こうぜ」


「その前にリンさんにカイロを作ってもらわないと」


「カイロ? そんなに寒いのか?」


「アクセサリーのカイロを装備しておかないと敏捷値、つまり回避率や命中率が下がる地域だ。しかも場所によっては継続ダメージが発生するエリアもあるんだぜ。実装当時は素材が落ちる火山エリアが無かったから、俺みたいな避け重視のキャラは阿鼻叫喚だった」


「あと靴も滑り止めの効果をもつ物に変えたほうが良い。素材が足りてないなら譲っても構わん。素材自体のレアリティは低いからな」


「でも、敏捷値が……」


「スリップするよりかはマシ!」


「そもそも飛んでいたらスリップ関係ないし……」


「相手が対空攻撃してくる可能性もあるぞ」


「備えあれば患いなしってやつだ」


「わかったよ!そういうことならリンの姉御に連絡とるよ」


「その後は作戦会議ですわよ」


 周りの先輩プレイヤーに圧されたミクはチャットでリンに連絡を取り、不足している装備品を作ってもらってからアイスマウンテンへの登山へと挑むのであった。



 雪が吹き荒れ、木々が凍てつき、登山道はスケートリングかと思うほどに凍り付くほどの雪山を歩いていくミクたち。依頼内容によれば山の中腹、3本の木が三角形状に並んでいる場所で3000万Gと人質交換という話だ。幸いにもミクが大金を所持しているため、身代金自体はすぐに用意できた。出てくるモンスターは序盤ということもあって苦戦することもなく、すいすいと進み、指定場所にたどり着く。そこには白髪のすらりとした長身の女騎士がアリスをわきに抱えて立っていた。


「お前たちが王の使いの者か?」


「そうだ。アリスは無事だろうな!」


「無論だ。何かしゃべれ」


「ミクモさま――!!」


「心配するな。助けてやる」


「姫様を解放する前にまずは金だ」


「ああ、わかった。だが、まずは半分だ。その後、アリスを引き渡してもらってから、残り半分を渡す」


「ずいぶんと慎重だな。騎士たる私が約束を違えるとでも? 姫様は必ずお前たちに返す」


「裏切り者は信用できないってな(レイカの入れ知恵だけど)」


「くっ……まあいい、金を手にさえすれば」


 ミクがイザベラのもとに歩いていき、1500万Gを手渡す。そして、突き飛ばされたアリスを抱きかかえた後、残りの1500万Gも渡していく。所持金は減ったものの、無事にアリスを取り返したミクは周りに伏兵がいないかきょろきょろと見ながら仲間の元へと向かっていく。


「確かに返すと言ったが、使いの者を生かして返すとは言っていない」


 ミクの背後に襲い掛かるイザベラだったが、プロテクションに阻まれ剣が通らない。


「ちっ……」


「だから言いましたわよ。裏切り者は信用できないと」


「いつでもプロテクションを張れるようにして正解だね」


「サンキュー、カエデ。レイカ、アリスを見てくれ」


「作戦通り、私が結界を張っておきますので、安心して戦ってくださいませ」


 アリスをレイカに預けたミクはイザベラに向き合う。こちらはC~Bランクとはいえ5vs1、いやレイカにアリスを任せている関係上実質4vs1。それでも数では上回っているはずなのに、イザベラの顔には焦りの色は見えない。持っていた剣を地面に突き刺し、呪文を唱えるとイザベラに似た氷の人形がわらわと湧き始める。


「貴様らに私のアイスドールを破れるか!」


「数が多いならブラッディレイン!」


「シャイニングシャワー!」


 血の雨と光の粒子が氷の人形を撃ち抜いていくも、欠損した手足に降ってくる雪が触れると再生していく。ゾンビのような再生力を持つアイスドールはまさに不死の軍団といえよう。


「天候が私に味方をしている限り、負けはない!スノースモーク」


「煙幕か!」


 大量の雪煙に紛れてイザベラが姿を消す。アイスドールが氷の剣を持っているため、パッと見のシルエットはイザベラ本人かは判断ができない。ジークが背後から来た敵の気配を感知し、短剣を投げつけてもそれが自己再生するアイスドールでは意味がなさない。


「こういうときにアルゴがいてくれりゃあ、助かるんだが」


「無いものねだりしても仕方がない。今は昼。ならば、このモンスターを召喚できる。行け、ホルスよ!」


 ごうごうと燃え盛る炎を身に纏った不死鳥が天より舞い踊り、辺り一面の氷や雪を解かさんばかりの熱波を放ち、雪煙を晴らしていく。イザベラ本体へのダメージは無いに等しいが、その手下であるアイスドールはその熱で溶け始める。


「スローダガー」


 ジークが投げた短剣がアイスドールの腕を欠損させても、自己再生することはない。こうなれば弱いゴーレムに等しい。このまま押し切れると思いきや、イザベラの前に複雑な魔法陣が描かれる。


「その程度で逆転できるとでも? 封印術式アイスコフィン」


 魔法陣からホルスに向けて強力な冷気を放ち、一瞬にして氷漬けにする。逆転できると思って矢先にこれではミクたちの精神的ダメージは計り知れない。その中でも、一番驚いたのはハクエン本人だ。


「バカな、火属性は凍らない特性があるはず!?」


「ただの氷ではない、封印だ。そして、この術式で氷漬けにされたモンスターがいる限り、術者は新たにモンスターを召喚することもできない呪いを付与する」


「なんだと!? 」


「オールキュアー!」


 呪いなら状態異常回復魔法で解除できるかもとカエデが魔法を唱えるも、ハクエンの顔に刻まれた黒い模様は消えない。そして、ハクエンがホルスの召喚を解除しようとしてもこちらからの操作は一切受け付けない。もはや、ホルスの氷塊は有害な置物と化していた。


(まずい、俺がウラガルや機械兵、隷属したモンスターを出しても、氷漬けにされたら別のモンスターを召喚できねえってことか)


 ミクたちのパーティー、いや【星の守護者】全般に言えることだが、トップ層と比べもの足りない火力を召喚獣による手数で補っているプレイヤーにとって、この魔法は厄介極まりないものだ。もはや真正面から殴り勝つ。それしかイザベルに勝つ手段はない。


「ジークの旦那」


「ああ、俺たちのコンビネーションでなんとかするしかねえな。【超加速】」


「【加速】」


 速度で上回るジークがイザベラの裏をとり、ミクが正面からイザベラを相手取ろうとするも、アイスドールたちが立ちふさがる。だが、彼らの高速コンビであればアイスドールをイチイチ相手取る必要もない。イザベラ本人と比べれば、アイスドールのぬるい剣戟を躱し、急接近する。


「もらった!」


 背後からジークの剣が襲う。もし、ジークの攻撃を対処しようとするのであれば時間差で正面からくるミクの攻撃を躱すことはできない。まさに絶対必中の攻撃だ。


「ドールチェンジ」


 イザベラの姿が瞬時に消え、イザベラのいた場所にアイスドールが現れ、離れたアイスドールの位置にイザベラが現れる。そして、二人の攻撃はアイスドールを破壊するも、自己再生能力を持つアイスドールの前ではほぼ意味をなさい。


「おいおい、攻撃の瞬間に消えるのってマジかよ。これ、どうやって攻略するんだ」


「普通に考えればアイスドールをすべて破壊するのが条件だけど……」


「それができるはずだったホルスは……」


「この雪が降る極寒の地ならば、私は無敵だ」


 吹雪いている雪を憎く思いながら、打開策を考えるミク。ウラガルや機械兵を一瞬でも召喚して、アイスドールを全て破壊し、再生するまでの間にイザベラ本人を倒せるかと言われれば答えはノー。もし、アイスドールをどこかに隠していれば、その時点で詰みだ。他に自分の持っているスキルや魔法で何かないかと考える。


「せめて、雪が降っていなければアイスドールの再生能力を失わせることができますのに……」


「雪か……そうか、雪が無ければいいのか!いくぜ、【鮮血の世界】」


 辺り一面が暗闇へと変わり、吹雪が止み、足元から吹き出る鮮血により、足元にあった雪は飲み込まれて消えていく。ミクの使う【鮮血の世界】はフィールドを書き換えるスキル。相手が有利なフィールドであるのであれば、その土台ごとひっくり返せばいいのだ。


「カエデ!」


「シャイニングシャワー!」


「ブラッディレイン!」


 二人の範囲攻撃が再度アイスドールに降り注ぎ、破壊していく。そして、今度はそれらが復活することはなかった。これにはイザベラの顔もゆがむ。


「くっ……ならば、アイスミラージュ」


「今度は分身かよ。厄介にもほどがあるぜ」


 前線でイザベラの相手をしていたジークが2体に分裂したイザベラたちの攻撃を捌きながら、体勢を立て直すため後退する。厄介なアイスドールを封じたら次はこれ。肩で息をしているジークを休ませるためにも、今度はミクが前に出る。


「術者を倒せば、この変な空間も消え去るはず!」


「そうはさせねえ。【灼熱の血】【血限突破】」


 相手は苦手な水属性の使い手。どうせ当たれば1撃でやられるのは目に見えている。となれば防御力を殴り捨てるのはデメリットになっていない。むしろ、それらを捨てて攻撃力と速度を上げたほうが生存力は高まる。


「一気に行くぜ!」


「舐めるな!」


 イザベラが氷の刃を飛ばし、ミクを襲い掛かるも、これまで戦ったことのある集中攻撃と比べれば数は少ない方である。どちらが偽物で本物なのかは分からないミクは直感で右のイザベラを襲うことにする。


「ダークスラッシュ!」


「ぐっあ……」


 それらを躱して、ようやく一太刀を浴びさせることができた。しかも、ダメージを受けた影響下、偽物の姿が消えるおまけ付だ。だが、イザベラのHPはまだまだ残っている。これからが本番だと気合を入れなおし、ミクが畳みかける。


「この私が押されるだと!」


「イザベラ、こんなにも強いお前がどうして裏切ったんだ」


 吸血姫としての力をフルに使ってイザベラの剣を弾き、その隙をついたジーグの投擲した短剣が彼女に突き刺さる。


「お前たちに何が分かる!ろくな補給もできず、私が率いていた仲間たちが失われていく私の気持ちが!」


「だったら撤退すれば良いだけだろうが!」


 イザベラのぼろぼろなメンタルを象徴するかのようにミクの斬撃がクリーンヒットする。


「しようとしたさ。だが、私が強すぎたせいで順調よく奥深くまで進んだおかげで、無事に撤退できたのは私だけだ。だから、金が要るんだ!」


 イザベラが距離をとり、魔法陣を張る。何が起こっても対処できるように散開していくミクたち。


「これで終わらせる、アブソリュート・ゼロ!」


 自身の周りにあるすべてのものを一瞬にしてすべての原子運動を凍てつかせる絶対零度にする即死魔法がさく裂し、前線にいたジークはおろか結界内にいたレイカやアリスまでもが氷像のように固まりつく。


「結界が解けない……ということは!」


「てめえ!」


 頭上から剣を振り下ろされ、とっさにそれを受け止めるも自身の持っていた剣も鎧も絶対零度の影響下すなわち、もろくなっている。それに対し、ミクは血液さえあればいくらでも新しく武器を作り直すことができる。勝負は火を見るよりも明らか。ミクの振り下ろした剣はイザベラの剣と鎧を砕き、大ダメージを与える。


「こんなところで負けるわけには……」


「何がお前を突き動かしているんだ!」


「決まっている私の騎士道(プライド)だ!」


「裏切ったお前が言うのか!」


 魔法で氷の剣を作ったイザベラとぶつかり合う。空を飛んで勢いよくぶつかるミクに対し、アブソリュート・ゼロの使用でMPがほとんど残っていないイザベラは己の技量でミクの攻撃を受け流すのがやっとといったところだ。


「違う。仲間を助けるためにも、私は、私はああああぁ!」


「隷属:サイクロプス!」


 目の前に突如として現れる一つ目の巨人。その姿を見てイザベラはアイスコフィンを使おうかどうかと迷ったが、残りMPが少ないイザベラにとってその程度の雑魚にMPをさくのはもったいない。そう判断し、サイクロプスを一刀両断する。そして、目の前には突っ込んでくるミクの姿。


「もらった!」


 この戦いではまだ見せていないカウンター攻撃がミクに叩き込まれる。勝ちを確信したイザベラであったが、姿が消えたミクを見てハットした表情を浮かべる。


「偽物だと!」


「悪いな、【幻影の血】の偽物だ」


 サイクロプスの巨体でイザベラの視界を防いだミクは偽物を進行方向に向かわせ、自身はさらに上昇し、イザベラの視界から外れたのだ。そして、イザベラにバックアタックが決まる。インナーだけになった彼女だが、まだ闘志は折れず、フラフラになりながらも氷の剣を杖のように持ってまだ立ち上がろうとする。


「仲間のためにも私は……」


「もうやめろ、お前の負けだ!」


「まだ……負けていない。私のプライドにかけて……」


 もはや目の焦点があっておらず、剣を振り回して襲ってくるイザベラ。もはや先ほどまでの技の切れもなく、満身創痍なのは傍から見てもわかる状態だ。


「何かがおかしい……ウラガル!」


「我を呼ばなくとも勝てると思うが」


「勝つじゃねえ!助けるんだ、イザベラもな!」


 イザベラに蹴りを入れて距離をとるミク。それでもゆらりと立ち上がってくるイザベラに恐怖を感じるほどだ。HPがあるからといえば、そこまでだが、違和感を感じたミクは魔法に精通しているウラガルに見てもらうことにした。



『なぜ、誇りある彼女が……』

『理由を考えるのは後だ』



 王様との話で後回しにした答え。もし、彼女が仮に洗脳されているのであればウラガルに解いてもらうことが可能かもしれない。そう思っての召喚だ。


「わかったぞ、光属性で足元を狙え!」


「わかった!【魔力付与(光)】!」


「封印術式アイスコ――」


 満身創痍がゆえにアイスコフィンを放つのが遅れたイザベラの足元に光属性を帯びた鉄球がぶち当たる。すると、ダメージエフェクトが発生すると同時に、イザベラの影がにょきにょきと実体化し、黒いイザベラが現れる。


「お前は誰だ!」


「俺、じゃなかった。私の名前はプライド。この女騎士(負け犬)さんがプライドを捨てて仲間の命を助けてくれって泣きわめくものだから、体の所有権を貰ってわけ」


「ひでえ真似を」


「依り代をつぶされたんだ。お互い様って奴だ。面倒ごとは嫌いだから、命乞いしたことは忘れさせたんだけどな。まあ、重症の仲間を助けるために姫様をさらうのは俺も想定外ってやつだ。また、俺って言った。女の体は慣れねえな」


「それは分かる。胸がでかいと邪魔だし、お手入れとか面倒だ。特に髪」


「やっぱそうだよな。なんだか気が合うんじゃねえ、俺たち。ってなわけで身体くれる? コレクションにするわ」


「断るって言ったら?」


「力づくでも手に入れてやるよ。グリードやラストに勝った実力見せてもらおうか!」

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