第69話 配信実況2
「ここが依頼者がいる城。一応、マップで正式名称を確認できるんだけど、俺たちは黄金城とか金ぴか城で通している」
『金ぴか城www』
『趣味わるっ!』
コメントからは散々な言われような金ぴか城へと入っていき、探索していく。ミクが探索し始めたころは強敵であった警備ロボットも、戦闘に特化させた機械兵の前では形無しである。
『雑魚は雑魚だな』
『と思うじゃん。この場所に出てくる雑魚、耐性ありまくりでソロはきついぞ』
「俺も初めて来たときは苦労したぜ。ゾンビは魔法攻撃が効きにくいし、ロボットは物理攻撃が効きにくいしで……」
『ほう……』
『ここにきて両刀育成が活きるチャンス!?』
『パーティー前提だろwww』
『あるいはサモナー優遇? 召喚するモンスターを切り替えれば対応できるし、ここに来るのにも必須っぽいし』
『それはあるかも』
コメント欄では続々と黄金世界に入ってきたプレイヤーが攻略情報を語りだし、彼らのコメントを読み上げては全てとまではいかないが、来たらすぐにわかる情報くらいは渡していく。そして、城の2階にある1室に入ると金ぴかの王子らしき彫像が置かれている。
「ここに依頼者がいるらしいにゃん」
「ってか、サイコのおばさんを除いたら生きている人間いねえだろ。だれが依頼するんだよ」
「ロボッピがいるにゃん」
「同じじゃん」
『誰( ゜Д゜)』
『おーい、俺たち、そこまでストーリー進んでねえ~』
『雑魚が……武器を破壊してくるからうざい……』
『し、市役所が遠い……』
「ダイチさんならカウンター攻撃でさっさと行っていたぞ」
『一般ぴーぽーにはきついです』
『数が多いと焦るんだよ(´;ω;`)』
『回避。回避はすべてを解決する』
「だ、だれかいるのか?」
「ん?」
『ん?』
『ん?』
「男の声が聞こえたけど、誰も居ねえよな……猫にゃん?」
「調べても何もないにゃん。ゆっちー?」
「こっちもナッシング!気のせいでけってーい」
「気の……せいではありません……こちらです……」
『あの像、動いてねえ?』
『さっき右手下がっていたよな?』
『ちょっと動画見直すわ』
「像?」
ミクが往時の彫像をじっくりと見つめていると、右手がゆっくりと下がる。それを見たミクはすかさず、距離をとって剣を抜く。
「ゴーレム系の敵か?」
「ち、違います。こ、これでも元人間です。信じてくださああああい!」
『今、すげー重要なこと言わなかった?』
『ネタバレしまくりなんじゃが』
『とりあえず、ネタバレ注意張っておけ』
『今更www』
『遅すぎwww』
「信じるよ。というより、知っているよ。お前たちの王様がやってきたこともな」
「うぐっ……ってことは、あの悪魔のことも?」
「ああ、事情も聞いたうえで退治したよ」
「すずやかな声に似合わず豪胆なのですね」
「わりいかよ。何も無いなら帰るぞ」
「待ってください。依頼があるんですぅううう!ここに来たってことは使い魔に頑張って入力してもらった依頼を見たのでしょおおおおう」
「先に言え。あと自己紹介もな」
「自己紹介が遅れました。私はこの国の第一王子リチュエルです。我が父の影響が薄くなったのかこうしてしゃべることができるのですが、あいにく見ることも移動することもできません」
「それで俺たちに何をしてほしいんだ?」
「ええ、実は私には婚約者がいました。いたはずなのです」
「ん? いたはずってのは?」
「今の私には彼女の名前も、顔も、覚えだせない…………確かに愛していたはずなのに……」
「つまり、依頼ってのは、その婚約者を調べて来いってわけしょ」
「よくあるタイプにゃん」
「ええ、そうです。見ることはできませんが、名前だけでも知ることができれば思い出せるかもしれません」
リチュエルから依頼を受け取ったミクはどこから探しに行こうかと猫にゃんとゆっちー、視聴者たちに話しかける。
『とりあえず、城中じゃね?』
『重要な書類とかって保管されてそうだし』
「と思うじゃん。本棚の本とかは金塊になっているんだ」
『役に立たねえええ』
『どこで調べるんだよ!』
「金ぴかになっていないところになるにゃん」
「となると、市役所とか? そもそも王様たちの婚姻みたいなのって市役所に提出するものなのか?」
『俺たちに聞かれても知らねえよ』
『ゲームとかだと、王様が認める→即結婚!』
『でも、事務手続きは必要だよね』
『嫌だよ。王子様とお姫様が市役所に婚姻届けもっていく姿みるの』
『ブラックでジャックな人が保険証見せてくださいと言うのと同じくらいアウト』
『逆に見てみたい感はある』
『ロマンねえわ』
「激しく同意」
「こればかりは夢が大事にゃん!」
「市役所で調べるのは反対!」
「え~、こういうのは堅実に……」
『これはミクちゃんが悪い』
『うん』
『わかる』
「わかったよ。じゃあ、市役所を調べるのは最後の手段な。ってなると、どこだ?」
『チラッ』
「ちらっ」
「任せたにゃん」
「結局、俺が考えるのかよ!」
『www』
『人任せwww』
「とりあえず、フォーゼで調べようぜ。王子様の結婚となれば、諸外国にも情報は伝わっているはず。大きな国なら残っている可能性は高い」
「OK。さっそく行ってみよう」
「行くにゃー!」
黄金世界から飛び出し、ミクたちはフォーゼへと向かっていく。まずはフォーゼにある図書館で歴史書を読み解いていく。さすがに資料を集めるパートととなり、視聴者も少なくなっているが、肝心のフラグを見逃すわけにはいかないと、見続けている人たちもいるようだ。
「そもそも黄金世界ソーラクについての記載がねえな」
「まるで初めからなかったかのような扱いにゃん」
「ゆっちーはどうだ?」
「Zzz……」
『せんせー、ゆっちー寝ています』
「よし、廊下に立たせろ。ついでに水バケツも持たせろ」
『廊下どこだよwww』
『いつの時代だよwww』
『昭和www』
「むにゃむにゃ、もう食べられないよぉ」
『お手本のような寝言www』
『演技? 演技じゃないよね??』
「こういうときは、ここを押すと……にゃんと鳴くにゃん」
「にゃああああああああああん!!?」
『ヒエッ』
『怖っ』
「何したんだ?」
「ちょっとツボを押しただけにゃん。さぼるならもっと痛いところ押すにゃん?」
「イエ、ケッコウデス」
「……ゆっちーが起きたのは良いけど、次はどこを探すつもりだ?」
「大昔のことだから、文献もほとんど残ってなさそうにゃ」
「生き証人がいればいいんだけどね~」
「おいおい、ソーラクって人がゾンビやスケルトンになるくらいの年月が経っているんだぜ。当時の人間は全員死んでいるだろ」
「……そうとは限らないニャン。ここはファンタジー。寿命の長いエルフなら知っているかも」
「にゃるほどね。猫にゃん、冴えている~」
ミクたちは読んでいた本を返却した後、エルフの村へと向かっていくのであった。




