第58話 犯人は誰だ?
「ラッキー、ゴー!」
ゆっちーが召喚したラッキーがクンクンと嗅いで、下手人を探そうとする。ラッキーの後を追って、部屋を移動するとそこにはおじさんとクレセリアが話しており、彼女の足元でワンワンと吠える。
「まあ、犯人の遺留品の匂いをかがせないといけないよな」
「この家にいる方の匂いの方が強く残っているでしょうし、仕方ありませんわ」
「それにちょっと甘い匂いがする。香水かな」
「はい。この間、ちょっと奮発して買った海外のブランドものです。このあたりだと滅多に買えないんですよ」
「悪くはない。しかし、これだけの被害を出すとは……元Cランクの君にしてはいささか可笑しくは無いかね」
「申し訳ございません。賊は広範囲に睡眠魔法を仕掛けたようで、起きた頃には……」
「奪われていたとはいうわけか。奪われた代物は闇オークションで購入したものばかり。入手方法が方法だけにギルドに連絡するわけにもいかんな。やはり、君たちが頼みの綱だ」
「おう、俺たちに任せておけ」
「でも、証拠がないと……ねえ」
「それにしても、この荒れよう……盗むにしてはひどい気がしますわ」
「掃除でもする?」
「こういうのって現場保存が大切って映画でもやっていたぜ」
「だよね~」
「とはいえ、このままでは証拠も見つからないですわ」
「片付けながら、証拠を探すにゃ」
「それが手っ取り早いか。良いか、おじさん」
「ああ、構わないよ。私も被害の確認はしておきたいからね」
タンスの中を物色していたのか散らかった衣服を集め、割れた花瓶のかけらを拾い上げていき、部屋の中を清掃していくミクたち。その一方で、おじさんたちは盗まれた品々のリストを作成していき、最低でも数百万Gの値打ちのあるモノが多く盗まれていた。
「なんでゲームの中で掃除しているんだろうな」
「言えてる~」
「レトロなゲームならボタン1つで進めるだけかミニゲームで終わる作業なのにね」
「なんでもかんでも体験させるVRゲームの弊害にゃ」
「このクエストを最後まで進めた人を聞いたことがないのって、【厄災PANDORA】が情報を独占していたこともあるけどここでめんどくさくなって匙を投げたのかも」
「効率重視なら後回しにしてもおかしくはありませんわね」
「しかし、まあ、よくこんだけ荒らすよな。いくらやってきりがない」
文句を言いつつもミクが割れた瓶のかけらを拾い上げる。その破片から甘い匂いがして、部屋に漂うにおいの原因はこれかと思いながら、ごみ袋の中へと入れていくと、『H・H』と刺繍の入ったハンカチを見つける。フリルのついたハンカチを見るに男性よりも女性が持ちそうなものにメイドの誰かが落としたのかと思い、一人一人聞くも全員が首を横に振る。
「誰のものでもないってことは……」
「犯人のモノってことだよね」
「ラッキー、匂いを辿れる?」
『クゥ~ン……』
「香水のにおいが充満して辿れないみたい」
「くそ、せっかく見つけた証拠だっていうのに!」
「ですが、犯人が推定女性、イニシャルがH・Hなのが分かった以上、それらの特徴を持つ犯罪者を探すというのはどうでしょう?」
「でも、この荒れ方を見ると物取りに慣れてなさそうな気もするし、これが初犯っていう可能性はあるぜ」
「その場合は仕方ありませんわ」
「わかった。でも、どこで探すんだ?」
「現実なら警察が調べることですから、この世界においては……おそらくギルドになりますわね」
「レイレイ、ギルドに話すのはダメって言ってなかった?」
「そこはぼかすしかありませんわね」
「よし、フォーゼに戻ってH・Hの怪しい人物がいないか調べるか」
おじさんたちと別れたミクはフォーゼのギルドに戻り、H・Hで強盗をするような人物に心当たりがないか聞き込みをする。受付嬢が奥の部屋に行ってから数分後、分厚いファイルに閉じられている資料を取り出す。
「H・Hの前科者となると、ヒューズ・ハミルトン(男性)、ヘレン・ハート(女性)、ハワード・ヘルナンデス(男性)、ヒルダ・ホール(女性)の4名となります」
「女性に絞ったとしても2人か……他に絞りこめれる要素あったかな」
「う~ん……どうだろう?」
「小難しいことはレイレイにパス」
「パスにゃ」
「そうですわね。では、この二人の内、催眠系の魔法を使えるのはどちらかしら。できればランクも教えていただけると助かるのだけど」
「どちらも逮捕前はBランクに昇格する見込みがあった有望な冒険者ですが、ヘレン氏は元戦士なので魔法の扱いにたけているわけではありません。ですが、ヒルダ氏は元魔導士。催眠系の魔法を扱えるとしたら彼女でしょう」
「ヒルダ様はどちらに?」
「出所する際に田舎に戻ると言っていたので、彼女の出身地であるゼガンに戻ったのではないかと思われます」
「情報提供ありがとうございます」
ギルド職員から貰ったヒルダの顔写真をじっくりと見る。そこには人相が悪い赤髪の女性が映っており、うっかり人間違いをしそうにもない。情報を得たミクたちはさっそくゼガンへと向かい、情報収集しようとまずは土産屋の娘たちに話を聞くことにした。
「ヒルダさんですか。その人でしたら、ついこの間、酒場で働いていましたよ」
「酒場か。さっそく行くぜ」
「でも、昼間は見かけたことが無いから、夜に行くと良いかもしれません」
「夜ね。それまでは近くのモンスターでも狩っておくよ」
日が暮れるまでは多少時間があるため、周辺の敵を倒すこと1時間。暗くなって家の灯火が漏れ出すゼガンの村の中でも一層輝いている一軒の酒場の中に入る。そこには昼間、農作業をして疲れをいやしにしてくる農家の人や、NPCの冒険者がワイワイと談笑していた。
「ヒルダはどこだ?」
「あの人じゃない? 赤い髪だし」
カエデが指さした女性は酒場でも目立っている女性だ。写真と比べると釣り目でキツイ印象を受けるのは同じだが、メイクでもしているのか肝っ玉が据わっているカッコイイ女性といった印象の方が強い。とはいえ、他に似た人相の人はおらず、その人物に話しかけることにした。
「すみません、ヒルダさんですか」
「そうだが。ガキの入店はお断りだ。さっさとウチに帰りな」
「ワタクシたち、強盗事件の犯人を捜しておりますの」
「そうかい。アタイには関係ない話だね」
「それが大いに関係ありますわ。このハンカチに見覚えは?」
「そいつはこの間、どこかで落としたアタイのハンカチじゃないか。どこで見つけたんだい?」
「犯行現場に落ちていましたわ」
「なんだって!」
「このハンカチを貴女が自分の持ち物であると認めた以上、貴女が一番の容疑者ということになりますわ」
「アタイはやっていないよ!」
「おいおい、喧嘩なら外でやってくれ」
「わかったよ、マスター。おい、アンタたち、外でアタイと決闘しな。アタイが勝ったら、金輪際関わってくるんじゃねえ!」
「わかりましたわ。こちらが勝てば、こちらの質問に包み隠さず話してもらいましょう」
「決闘成立だ」
村の外に出たヒルダがメイド服を投げ捨てると、写真と同じ魔導士をやっていた時と同じ服装に変わる。向こうの準備は万全、舐め腐るような真似はしないといったところだ。
「来い、オルトロス!」
呼び出された双頭の黒犬が黒い炎をまき散らし、ミクたちに襲い掛かる。それを見たミクは【灼熱の血】を温存し、上空へと退避。チームメンバーを守るため、レイカが氷の壁を作るも数秒も持たずに溶かされて貫通してしまう。
「そんなやわな氷じゃあ、アタイの炎は防げないよ。それに吸血鬼もいるのか、厄介だね。ショットガンアイス」
「水属性の攻撃も使うのか」
広範囲にばら撒かれる氷のつぶてがミクに襲い掛かる。元々の威力が小さいため、弱点攻撃と言えどもダメージはそこまでではないが、避けにくい弱点攻撃を持っているため、弱点攻撃に弱くなる【灼熱の血】がうかつに出せなくなる。
「みっちゃん、遮蔽物の無い上空で戦うのはマズイよ」
「わかった。すぐ戻る」
「雑魚も固まると厄介だ、プチメテオ」
上空から防御貫通の隕石を落としてくる。弾速自体は遅いので避けること自体は容易だが、とっさに統率をとることができないミクたち5人はばらけてしまう。
「オルトロス、奇襲!」
闇夜に紛れて姿を消していたオルトロスがゆっちーの背後から爪を立てて、攻撃を仕掛けてくる。たった1発でHPの1/3を持っていかれ、さらにはオルトロスは再び闇の中へと消えて姿をくらます。
「ステルス持ちの召喚獣……それなら、探知型のドローンを飛ばすにゃ」
「アタイのことを忘れたら困るよ。ショットガンアイス」
猫にゃんがステルス対策のドローンを使ってもすぐさま破壊を仕掛けてくるヒルダ。こちらの打つ手をことごとく潰してくるあたり、Bランクに昇格する期待のあった魔導士という評判は伊達ではないということを思い知らされる。
「こうなったら、【機械兵召喚】」
フライヤー、ナイト、ガンナー、それぞれ2機、計6機の機械兵が戦場に降り立つ。見たことのない兵器を見たヒルダがぎょっとした顔をするも、すぐさま平静な顔つきに戻す。
「はん、どうせ見掛け倒しに決まっている。フレイムストーム」
炎を纏った竜巻がロボットに襲い掛かり、装甲を溶かしながらも、その攻撃を耐える。そして、そのお返しお言わんばかりに銃弾の嵐がヒルダに襲い掛かる。
「ちっ、転移」
「ワープしやがった!どこに――」
「ミクミク、後ろにゃ!」
「まずは一人、アイスジャベリン!」
「そうはさせませんわ、グランドウォール」
飛来した氷の槍を盛り上がった土の壁で防ぐレイカ。その隙にとカエデが光弾を放って一発与えるも、すぐさまワープで姿を消す。それと同時にオルトロスの警戒が緩くなったことも相まって、背後からの奇襲攻撃で手痛いダメージを負ってしまう。
「カエデ、大丈夫か」
「大丈夫。これくらいならハイヒールで治せる。でも、このままだとじり貧だよ。ヒルダさんが機械兵に構っているうちに逆転の手を打たないと」
「でも、どうやってするにゃ?」
「せめて居場所さえわかれば……」
「う~ん……なあ、カエデ。シャイニングレイとかで辺りを照らし出すことはできないか」
「やってみる。この際、威力は無視、スプラッシュレイ」
辺り一面に強烈な閃光が広がり、そのまぶしさに光に照らし出されて姿をあらわにしたオルトロスが目をつぶる。その刹那の硬直を見逃さず、【加速】で速度を上げたミクがオルトロスにとびかかり、噛みつく。
「もう逃がさねえぞ!」
オルトロスが闇に紛れようとも、背中で噛みついているミクの姿は消えない。居場所さえわかればこちらのものと言わんばかりにレイカたちの攻撃がオルトロスに向かって放たれていく。
「このゴーレムは囮か。だけど、だいたいの仕組みは理解したよ。これで終わりだ。マグネティックボム」
ヒルダが広範囲に広がる強力な磁場を放つ。それはEMP攻撃と同等の効果を持ち、機械兵の機能を完全に停止させることに成功する。ステルス状態のオルトロスへの攻撃が当てられるようになったのは噛みついて離れない吸血鬼が原因であると瞬時に理解する。
「これで終わりだ、吸血鬼。アイスピラー」
オルトロスが頭上から降り注ぐ氷柱の落下地点にたどり着き、背中にいるミクを葬り去ろうとする。それは確かに身動きが取れないミクにヒットしたが、【自己再生】で復活してしまう。
「ちっ、原種と同等の再生能力か。だが、再生にはエネルギーがかかる。連続で再生はできないはずだ。【高速詠唱】アイスピラー」
「スキルまで使ってくるのかよ」
「手ごわいボスだね、ハイプロテクション!」
頭上のアイスピラーを今度はカエデが防ぐ。オルトロスのHPも少ない上に、自身の攻撃を完全に防いだことで、ヒーラー兼防御役のカエデを早く倒さないと思ったのか、すぐさまワープして背後をとる。
「もらった!」
「二度目はありませんわよ。アイスコフィン」
ヒルダが攻撃を仕掛けようとした瞬間、胸元から足元まで一瞬にして凍り付く。相手の身動きを封じる氷結状態にするこの技は効果が強力がゆえに成功率が低いためバックアタックやカウンター前提となるほか、消費MPも相応に高く、ソロで使えば作った攻撃のチャンスを生かし切れないこともままにある。だが、パーティー戦ならば別だ。
「あたしの召喚獣、レッツゴー!」
「ホムンクルスたちで攻撃にゃー!」
そして、火力要員のミクが手出しできない状況下でも、ゆっちーと猫にゃんならば足りない火力を手数でカバーできる。さらに召喚したモンスターもゴーレム系やオーク系の鈍重だが火力のあるモンスターだ。防御が低めの魔導士であるヒルダがそれらの攻撃を耐えきれるわけもなく、KOとなった。
「アタイの負けだ。でもね、アタイは盗みなんてしてないんだ」
「私たちが勝っても盗んでいないって言っていることは」
「本当に盗んでいないってわけか」
「でしたら、このハンカチをどこで落としたかわかりますか」
「フォーゼから帰るときに気づいたから、フォーゼのどこかで落としたんだとは思う」
「フォーゼは人が多いから、誰が拾ったか分からないね」
「だな。結局、偽証拠しか掴めなかったってわけか」
ミクたちがこれ以上の進展はないと思っている中、レイカは一人で思考していく。偽証拠が置かれていた以上、どの情報が本当に正しいのか脳内で整理する。
(盗まれたものは高価なものばかり。つまり、犯人は目利きのできる人間)
この犯人が部屋を荒らすような真似をするだろうか。無論、高価なものが大切に保管されていた可能性はある。だが、安物の花瓶(それでも十数万Gはする品)を割ったり、衣装箱やタンスの中にある衣服をまき散らす必要はない。
(つまり、荒れていた部屋は犯人の偽装工作。だとすれば、なぜ犯人は部屋を荒らしたのか)
荒らされた部屋を第三者が見たら、どう思うか。当然、物取り、外部の犯行だと思われる。
(だとすれば、犯人は内部の人間? 論理が飛躍しているように見えますが、犯行時のアリバイのあるおじさんは除外すれば、容疑者は屋敷にいたメイドたち。でも、どうやって、ここから絞り込めますの? 犯人に繋がるものといえば、このハンカチだけ――)
だが、それは偽証拠。何の役に立たない。そう思いながら、取り出したそれから漂う甘い匂い。
『はい。この間、ちょっと奮発して買った海外のブランドものです。このあたりだと滅多に買えないんですよ』
「おーい、レイカ。突っ立てないで屋敷に戻ろうぜ」
「屋敷に戻らないといけませんわね」
何かを確信した笑みを浮かべながら、レイカはミクたちの後を追い、屋敷へと戻るとおじさんとクレセリアが玄関ホールで出迎えてくれる。他のメイドたちは屋敷の清掃で忙しいようだ。
「犯人は捕まったのかね」
「実は――」
「ここはワタクシが話しますわ。よろしいですわね」
「ああ、構わないぜ」
「では、この旅の窃盗事件の犯人はまだ捕まえておりませんが、目星はついております」
「本当かね。それで犯人はいったい?」
「この窃盗事件の犯人は……クレセリア、貴女ですわ!」
名探偵がするようにレイカがビシッとクレセリアに指をさす。
「わ、私、やっていません!」
「無論、根拠もなしに人様を犯人呼ばわりしませんわ。私の推理を聞いてもらいますわよ」
「適当なことを言ったら、名誉棄損で訴えますよ」
「良いでしょう。犯人である貴女はこの屋敷にあるものを盗もうとしました。ですが、単に盗めば、犯人は内部の者だと疑われてしまいます。そこで貴女は偽装工作として屋敷の中を荒らし、ヒルダ様のハンカチを落とした。前科がある彼女なら、やりかねないと思うでしょうね」
「それなら、私以外の人でもやれますよね。私がやったという証拠はあるんですか?」
「ワタクシの話はまだ終わっていません。ヒルダ様のハンカチを盗んだ際、貴女はミスを犯した」
「ミスですか?」
「ええ。そのハンカチにあなたの香水の匂いが移ったのですわ。その香水はレアもので貴女しか持っていないと自分で証言していましたよね」
「うぐっ……」
「その匂いをごかますためにも偽装工作をした。あれだけ荒れていたのであれば、香水の瓶が割れていても不自然には思われませんから」
「そういや、あのハンカチ、割れた瓶の近くで見つけたな」
「た、たまたま犯人が香水の近くでハンカチを落としただけかもしれません!証拠はあるんですか」
「ハンカチを盗まれた際、ヒルダ様はこう証言していました。盗んだ女性からそのハンカチと同じ匂いがしたと」
「つ……」
「つ?」
「ついにぼろを出しましたね」
「ぼろというのは?」
「あの女はすられたことも気づきもしませんでした。女性と断言することはないんですよ。このインチキ冒険者!」
「ええ、そうですわね。ヒルダ様はどこで落としたのか分からないと証言していました。つまり、ヒルダ様のハンカチを『どうやって盗んだのか』を知っているのは犯人しかいないのです!」
「あ、あああ……」
「さて、クレセリア様。なぜ、貴女が犯人しか知りえないことを知っているのか教えてもらいましょうか」
「そ、それは……」
「言えないなら、教えてあげましょうか。それは貴女が犯人だからです!」
「ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」
「ク、クレセリア君。君が本当に……」
「くっくっくっ……」
(雰囲気が変わった?)
「そうだよ、ジジイ。私がやった」
「君たちに不自由な真似はさせていないはずだ。なぜ、こんなことを?」
「決まっているだろ、金だよ、金。金があれば、健康も、美容も、恋人もすべて買える。いや、法律さえも捻じ曲げることすらできる。この世のすべては金で出来ているのさ」
「残念だよ。私が裏の世界を見せたばかりに、君は悪いところだけを真似するようになったんだね。頼む、君たち、彼女を捕まえてくれないか」
「わかりましたわ」
「あたしたちも同じCランクなんだから勝てるしょ」
「くっくっくっ、同じ? それは違うわ。私は契約したの、悪魔と」
クレセリアの衣装が胸元が大きく広がっているセクシーな女幹部といったものに早変わりする。
「色欲のクレセリアが貴方たちの相手をするわ、覚悟なさい!」
「色欲ってことはグリードのお仲間か!」
「強欲を知っているなら話が早いわ。大罪の能力が一つ、【LUST】は相手の異性の能力を下げ――」
言いよどむクレセリア。何を隠そう、ミクたちのパーティーは同性の女性しかいないパーティーだ。【LUST】がいかに強力なデバフ能力であろうとも、対象が異性に限られている以上、意味をなさないものとなる。
(セェェェフ。俺、今、女で良かった。よくねえけど)
なんだか締まらない雰囲気で、7つの大罪との戦いが始まるのであった。