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VRMMOで吸血姫になった俺は幼馴染と一緒に女学園に入学する!?  作者: ゼクスユイ


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第55話 フィッシング

 港町ファイズに着いたミクたちはキングレインボーサーモンを吊り上げる道具をそろえるために釣具店に来ていた。値段が高い高級な釣り竿から一番安いぼろい釣り竿、エサやルアーまでそろっており、使う道具によって魚の種類やHIT率が変わるようだ。


「とりあえず、一番高い釣り竿を買えば良いのか?」


「それが違うだよね。キングはこのぼろい釣り竿じゃないと釣れないんだよね」


「えっ、説明文だと一番釣れないんだろ」


「そうそうクラゲしか釣れないやつ~」


「最低でもこれくらいの値段がする釣り竿じゃないとクラゲ祭りになるにゃん」


「だから苦行と呼ばれるんだよ。ルアーはミミズ固定、糸は関係ないからできるだけ頑丈な奴を買って……これでよし」


「よく知っているな」


「さすがにゃん」


「頼りになる~」


「いや、それほどでも~」


 安い釣り装備を整えたところで、釣り船に乗せてもらい、釣りポイントまで移動していく。カエデが船長に指示したポイントは港町から少し離れている無人島の河口付近だ。ギルド対抗戦が控えていることもあって、近くには釣り船は一隻もなく、PK行為に警戒することもなく、ゆっくりと釣りをすることができる。


「……しかし、釣れねえな」


「まだ始まって10分だよ」


「……長くつ」


「素が出ているじゃん」


「……なぜ、あんなキャラ付けにしたのか昔の私に問い詰めたい」


「知らないし~。はい、クラゲ」


「逃げられた……」


「……ああ~!もっと簡単に釣れる方法とか無いのかよ」


「そう簡単に手に入らないから『キング』なんだよ」


「……空き缶。ノーマルはまだ釣れるのに」


「だよね~」


 それから更に1時間が経過。釣れるのはごみか素材としてもほとんど役に立たないクラゲだけである。ここまで釣れないとなると、最初は意気込んでいたミクも集中力が欠けてきており、うつらうつらとした顔を取り繕うとさえしない。


「釣れないね~」


「……うん。わかめ」


「あ~、逃げられた。ショック~」


 さらに数時間が経過し、何も釣れないミクは天を仰ぎ、ゆっちーは猫にゃんがゲーム内で購入した携帯ゲーム機でプレイしているミニゲームをのぞき込んでいる始末。まともに釣ろうとしているのはカエデだけである。


「釣れないね~今日は諦めようか」


「そうするか。現実世界だと夕時だしな」


 ミクが竿をしまおうとしたとき、竿が大きくしなる。そのしなり具合を見る限り、かなりの大物が引っ張っているようだ。


「ぎぎぎ……こいつ、力が強いぞ」


「地球でも吊り上げた?」


「ちげーよ、多分。って、うぉっと」


 余りの力にミクが引きずり込まれそうになるのを、カエデたちが必死に抑える。糸が切れるのが先か、食いついた魚が根負けするのが先か、勝負の行く末はまさに天のみが知るといったところだ。


「みっちゃん、絶対手を離さないでよね」


「ああ!」


 少しずつリールを回していくにつれて、海面に近づいてくる黒い影。その大きさや形はこれまでのごみやクラゲと違い、完全に魚の形をしており、かなりの大物だ。期待感が膨らんでいく中、飛び跳ねた魚が虹色の光を照らし出す。


「出た!レインボーサーモン!」


「私たちが釣り上げたノーマルな奴よりも大きいじゃん」


「うん。これはもしかすると……」


「ぜってー釣りあげてやる!」


 ぐぎぎぎ……と歯を食いしばりながら、ゆっくりと、だが着実に糸を巻いていく。この大物を逃さんと船員たちも網を持って、万が一、糸が切れても逃さんとフォローする体勢を整えていく。


「身体強化バフを与えるにゃん」


「よし、これで……どうだああああ!」


 釣り竿を振り上げると船体にボトンとレインボーサーモンが落ちる。その大きさは自分たちよりも大きく、2m近くはある。


「こいつは間違いねえ。キングだ!」


「本当か、船長さん」


「ああ。俺が言うんだ。間違いない」


 船長のお墨付きをもらい、これでクエストが進められると思った矢先、船体が大きく揺れる。船から放り出されないように近くのものにつかまり、耐えていると海中から大きなイカが姿を現す。


「あれはデビルオクトパスの永遠のライバル、デビルクラーケンだ!」


「デビルオクトパスっていえば、試験に出てきたあいつか。それなら、舐めずに行くぞ、【飛行】」


 空から攻撃を仕掛けようとするミクに対し、ウネウネとした触手で襲い掛かるも、逆に切り落とされていく。このままではまずいと思ったのか、デビルクラーケンが広範囲に墨を吐いてミクの視界を覆いつくす。


「まずっ……」


「防壁の結界!」


 ミクの周りに四角錘のバリアが展開され、デビルクラーケンの墨攻撃を防ぐ。


「もう、一人で突っ張りすぎ」


「わりい、カエデ」


「あたしたちがいることも忘れない。さめちゃん、ゴー!」


 注意を受けたミクが気を取り直して、今度はゆっちーが召喚した黒いサメ、デビルシャークと一緒にデビルクラーケンへと向かっていく。まずは【挑発】でヘイトを稼いだミクにデビルクラーケンの触手による叩きつけ攻撃が襲い掛かる。その間、デビルシャークがデビルクラーケンの懐に飛び込み、触手を根本からかみちぎる。


「触手による防御が薄くなれば、砲弾による攻撃も有効だにゃん」


 猫にゃんが船に設置した大砲からどかどかと打ち出し、デビルクラーケンをひるませていく。その隙にミクが剣を突き刺し、デビルシャークが硬質化させたヒレで切り裂き、デビルクラーケンにダメージを与えていく。彼女たちのレベルがこのあたりの敵よりも高いこともあり、拍子抜けするほどあっさりと倒れたデビルクラーケンは海の藻屑へとなっていくのであった。


「よっしゃー!」


「楽勝じゃん!」


「強くなったにゃん」


 自分たちが強くなったことを実感しながら、港へと帰航していく。すぐにでも、ロボッピのところに行きたいが、さすがにそれは現実で夕食を終えてからだ。



 それから数時間後、就寝前にログインしたミクたちは半壊したスーパーの跡地で待つロボッピのところへと向かう。


「ワーイ、キングレインボーサーモンデス」


「ところで、お前の言うご主人様って誰なんだ?」


「御主人様ハ御主人様デス。タスケテモラッタ礼モアリマス。御主人様ノトコロマデ案内シマショウ。ワタシノ後ヲツイテキテクダサイ」


 ロボッピに案内され、たどり着いた場所は半壊したビル。その中に入って、地下に降りていくと地下通路が広がっていた。侵入者防止のためか迷路のように入り組んでいる地下通路を右に言ったり、左に言ったりと複雑な経路をたどると、一つの電子ロックがかかった扉が現れる。そこにロボッピが赤外線通信するとロックが開かれて中に入れるようになる。


「中にいるのはどんな奴なんだ?」


「御主人様シカイマセンヨ。イマ、モドリマシタ。料理作リマスネ」


 ロボッピが中に入ったのを見て、ミクたちもその中に入っていく。その中にいたのはヴェールで顔を隠し、黒い長手袋やストッキングで肌の露出を控えた貴婦人が優雅に本を読んでいた。


「ゾンビじゃない……?」


「あら、失礼ね。初めて会う女性に投げかける言葉がそれ?」


「すみません」


「この状況だし、ゾンビというのもあながち間違いじゃないわ」


 女性がヴェールをとると、その正体にミクたちは目を見開く。そこにあったのは白い頭蓋骨。どうやら彼女はゾンビではなくスケルトンのようだ。


「驚いたようね」


「ああ。でも、なんであんたは外にいるゾンビたちと違って理性的なんだ?」


「だって、アタクシまで正気を失ったらそこにいるポンコツと機械兵のメンテ、誰がするのよ」


「ってことは、あんたはメカニックか何かなのか?」


「あんたじゃないわ。アタクシは天才科学者Dr.サイケの娘、Dr.サイコよ!」


「「「「誰?」」」」


「ムキー!アタクシを知らないなんてとんだモグリね。もう口、聞かないから」


「やべえ、怒らせちまった」


「ミクミク、何か気を引かせるようなものとか無いの?」


「気を引かせると言われても……そうだ、あの日記」


 科学者つながりで研究所に会った日記になにかヒントが書かれていないか見ようと、アイテム欄から取り出した時、サイコがガシッと腕をつかむ。


「その日記帳、見せてもらえるかしら」


「ああ、良いぜ」


「………………これ、パパの日記帳よ」


「つまり、サイコの父親は……」


「発狂し、自我を保てなくなった。外にいる被検体の一味になったと考えるべきでしょう。久しぶりに人間だったころを思い出せたわ……それにしても、あのポンコツ、戻ってくるの遅いわね」


「あたし、見てくるね」


 ゆっちーが奥の部屋に入ってみると、そこには出来立ての料理を持ったまま微動だにしないロボッピの姿があった。こんこんと叩いても反応はせず、電池切れでも起こしたようだ。だが、ロボッピをじっくり見てもケーブル穴やコンセントらしきものは見当たらない。


「おばさん、ロボッピ、バッテリー切れっぽい」


「おば……!? お姉さんとお呼び」


「はーい」


「バッテリー切れね。外になら電池が転がって入るかもしれないけど、か弱いアタクシでは外を出歩けないわ」


「あたし、電池なら持っているよ」


「あら、準備いいわね」


 サイコがロボッピの背後に指を押しつけると、装甲の一部がスライドし、使い終わった電池が露出する。電池を交換し、再度指紋認証ならぬ骨認証をすると装甲が閉じてロボッピが再起動する。


「これで元通りよ」


「アリガトウゴザイマス。オ礼シナイト」


「そうね。世話になったし、秘蔵の機械兵でも渡すわ。ついてらっしゃい」


 サイコの後を追い、さらに地下へと潜っていく。そこには、格納庫に2m超のロボット3機が収納されている。右のロボットは細身で背中から羽が生えており手には銃を持っている。左はその逆でどっしりとした体型で手持ちの大き目の銃や肩にキャノン砲が備え付けられている。そして、真ん中は左右と比べるとバランスが取れた体型で槍や盾といった騎士のような装備を身に着けている。


「アタクシが暇つぶしに開発した次世代機械兵、空戦機体のNMA-01フライヤー、護衛機のNMA-02ナイト、砲撃機のNMA-03ガンナーの3機よ」


「これ全部くれるのか」


「召喚士以外は一機よ。この機体の動力は魔力とのハイブリッド。複数の召喚に慣れている者以外が複数機扱うとなると、リソース切れで本来のスペックを発揮できない。ただ、ある程度は量産しているから、希望している機体が重複しても構わないし、後から変更しても構わないわよ」


「召喚士のアタシは3機選べるみたい。ラッキー」


「俺は【飛行】もあるし、空中でも一緒に戦ってくれるNMA-01で」


「回復役だから護衛機にNMA-02。あっ、名称は変更できるみたい」


「砲撃機のNMA-03。ダサい名前は後で変更にゃ」


「だ、ダサイ……」


 落ち込んでいるサイコからロボットを渡されたミクたちのスキル欄に【機械兵召喚】が追加され、選んだロボットがいつでも召喚できるようになった。さっそく新しいスキルを試したいところだが、今日はもう遅いということもあって、お開きとなるのであった。

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