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VRMMOで吸血姫になった俺は幼馴染と一緒に女学園に入学する!?  作者: ゼクスユイ


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第49話 悪魔を祓え!

 母親の吐血量は明らかに命に係わるものだと、医療に詳しくないミクたちでもわかるほどだ。何が起こっているんだと立ち尽くすミクたちに見せつけるかのように、母親から黒いモヤがモクモクと出てきて形を作り出す。そうして出てきたのは、ウラガルと同じ異形の悪魔であった。ウラガルと違うところを上げるとすれば、小太りなところだろうか。


「悪魔が母親にとりついていたのか!」


「待って、それだと母親が自分の子を呪ったってこと?」


「ニヒヒヒ、それは違うぜ、お嬢ちゃん。俺様はまず手始めにそこらのガキに呪いをかけまくった。弱い呪いだが、その分広範囲に負ける優れものよ」


「どうして子供に呪いなんか……」


「死にゆくガキを見ている親はどうする? 目の前に悪魔が現れたら藁にすがるつもりで俺様と契約するだろ。この女も契約したのさ。そのガキを助けたら、命をいただくってな!あとはガキが死ぬくらいに弱まった後に契約を履行すれば、残されたガキは親を求めて俺様と契約する。1つの呪いで2つの命を奪える。これほどうまい話はないぜ」


「ただのマッチポンプじゃない!」


「ママを返して!」


「契約した以上履行はする。もし止めたいなら、俺様を倒すことだな。ギャハハハハ」


「止めてやるぜ!」


「神父さん、シスターさんは子供たちとその子のお母さんを安全なところに!」


「わかりました。女神マリアのご加護があらんことを」


 神父たちが体の治癒をしながら、生気を失っている母親を背負って教会の外へと出ていく。中にいるのはミクたち4人と悪魔だけだ。まずは小手調べと言わんばかりに悪魔が呪詛をまき散らし、プレイヤー全員に呪い状態を付与させようと仕掛けてくる。


「それくらいはお見通し、ディスペル!」


「だが、次の魔法を唱えるまでに呪いをかければいい。カースブレード」


 頭上にずらりと並ぶ数十本の黒い剣がカエデに向かって襲い掛かる。それをプロテクションで防ごうとするも、砕け散り、少なからずのダメージを受ける。


「呪い付与付きの攻撃……でも、聖水で回復すれば」


「まずい、カエデに集中砲火を食らったら。【挑発】」


 ミクがヘイトを奪ってカエデを楽にしようとした時、RESISTの文字が出てくる。そう、この悪魔には挑発などの精神異常系のスキルや魔法は無効なのだ。つまり、よほどの火力がないと攻撃対象はヒールヘイトを稼いでしまうヒーラーになってしまう。


「カースドボム」


「……そうはさせない」


 猫にゃんがゴーレムを操り、頭上から降り注いでくる爆弾からカエデを守らせる。わが身とは引き換えに放ったが、ゴーレム1機の損失でヒーラーを守りきれたのは大きい。とはいえ、そう何度も通用する手ではない。


「ならば、ゴーレムごときでは防げない攻撃をするまでよ。カースド……」


「させるか!」


「アイスジャベリン!」


 投げつけた閃光の剣と氷の槍が襲い掛かっても、悪魔の攻撃をキャンセルできるほどのダメージを与えるどころかカエデへのヘイトを奪うことができない。


「カースドイレイザー」


「アイスウォール!」


「【高速召喚】、錬金生物生成」


「サイクロプス、盾になれ!」


「ホーリーシールド!」


 狙われたカエデの前に肉壁と氷の壁と光の縦が立ちふさがる。悪魔から放たれた一撃は肉壁となったモンスターを蹴散らし、氷の壁を溶解させ、光の盾に突き刺さる。


「きゃああああ!」


「カエデ、大丈夫か!」


「う、うん。でも、回復無効の状態異常が付いたから、次の攻撃で終わると思う。せめて囮くらいには……」


「そうはさせねえよ」


「その程度の攻撃で何ができる」


「俺にはまだ切り札があるんだぜ。行くぞ、【鮮血の世界】!」


 ミクが魔法を唱えると、あたり一面が闇に覆われていき、頭上には赤い月が哀れないけにえを照らすかのように輝いている。そして、足元には赤黒い血が噴き出て、あちこちに水たまり、いや血だまりを作っていく。


「なに、この魔法……?」


「最大HPと防御も半分になる代わりに、夜しかない世界を作り出す魔法だ」


「デメリットありといっても当たらなければどうということはないし、常時全ステ2.2倍はやってはいけない領域だよ」


「1日に1回しか使えないから、みんなには内緒だぜ。【魔力付与(光)】【飛行】」


 弱点属性である光を付与した剣を持ち、ミクが空高く飛んで勢いをつけながら悪魔へと向かっていく。


「先よりも早い。だが、その程度なら迎撃してくれるわ。カースブレード」


「そうはさせるか、ブラッディウェポン、ウィップ!」


 ミクが地面にある血だまりを利用して作ったムチが飛んでくる剣を叩き落とし、距離を詰めていく。


「もらった!」


 夜の力で強化されたミクの一閃が襲い掛かるも、悪魔はピンピンとしている。


「手ごたえはあったはず……なのに、なぜ」


「俺様は無敵だ!」


(おかしいですわね。夜になったミクの火力は上位プレイヤーにも引けを取らないはず。それがただ通用しないのであれば、ヨーコはどうやって倒したのでしょうか?)


 ミクが悪魔のヘイトを奪っている間、レイカは余計な攻撃をせずにこの悪魔について思考をめぐらせていた。このクエストの発動条件は錬金術師がいること。となれば、この悪魔を倒す方法も錬金術師がカギを握っている可能性は高い。


「猫にゃん、このエリアを調べることはできますの?」


「……任せて。探査用の錬金生物のストックは十分にある」


 猫にゃんが探査用である鳥型の錬金生物を飛ばし、あたりをくまなく探していく。ソナー機能を持つ蝙蝠型の錬金生物も使っての大捜索、それを見た悪魔がまずいと思ったのか攻撃の一部を猫にゃんへと向けていく。


「おっと、そうはさせないぜ。【灼熱の血】」


 炎をまとって速度を上げたミクが飛ばしてきた剣を叩き落として、猫にゃんを守っていく。一番厄介なのがミクだと思わせたことで、悪魔の攻撃が再度ミクに集まりだしていく。


「ええい、すばっしこいやつめ。だが、この攻撃からは避けられん!カースストーム」


「これはかわせねえ……【自己再生】」


 巨大なノイズ交じりの竜巻を受けたHP1でなんとか耐えきる。本来ならば、呪いのスリップダメージも入って食いしばり系スキルで耐えることのない広範囲攻撃ではあったが、ミクの場合はペンダントの効果で状態異常を防いでいたため、踏ん張ることができたのであった。

 とはいえ、事態は好転しているわけではない。CTが終われば、悪魔はすかさずカースストームを撃ってくるであろう。そうなれば、ミクに防ぐ手段はない。


「早く逆転の手を見つけてくれよ……」


 ミクがCTというタイムリミットまで時間稼ぎをしている間、猫にゃんたちは必死に逆転の一手を探していると、1匹の蝙蝠型の錬金生物がとある地点をぐるりぐるりと旋回し始める。


「何か見つけた!」


「行きますわよ」


「うん!」


 悪魔を引き付けているミク以外の3人がその地点を向かうが、そこには何もない。不審に思った猫にゃんがペイント玉を適当に投げつけると、何もない空間にぺちゃりと色がつく。


「げっ、ばれちまった!?」


「2足歩行の……カメレオン?」


「たぶん、悪魔の本体なんだと思う」


「……つまり、ミクミクと戦っているあの悪魔は偽物」


「ばれたら仕方がねえ。この呪殺の悪魔カメリーオ様がお前たちを倒してやる」


 正体を明かしたことで、今まで悪魔と表記されていたボスの名前がカメリーオ(偽)、目の前のカメレオンにカメリーオと表記される。とはいえ、偽物悪魔の脅威は消え去っておらず、カメリーオの戦力は未知数。以前、苦しいことに変わりはない。


「もう一度、喰らえ!カースストーム」


「頼んだぜ、ウラガル!」


「偽物ごときに負ける我ではない」


 召喚されたウラガルがダークストームを霧散し、偽物にダメージを与えていく。持てるカードをすべて切って全力を出しているミクで互角に渡り合えている現状、カメリーオ本体は3人で対処しないといけない。


「喰らえ、ブラインドフラッシュ」


 カメリーオの目が光りだし、カエデたちを盲目状態にする。とはいえ、盲目状態を解除できる目薬を猫にゃんが素早く使い、レイカが逃げ出そうとするカメリーオに向けて氷の玉を放つ。


「逃がしはしませんわよ」


「ええい、こうなったら……いでよ我がしもべたち」


 地面から釘を持った藁人形がわらわらと生えてきてレイカを襲ってくる。見た目が弱そうなこともあって、弱い攻撃で反撃したところ、藁人形が倒れると同時にレイカに呪いが掛かって、HPが減っていく。


「これは……」


「まずい、倒せば呪いを付与してくるゴーレムなんだ。気を付けて」


「気を付けてと言われましても、この数をどう対処しろと!範囲攻撃をしかければ一瞬で呪い殺されますわ!」


「……任せて」


 猫にゃんがゴーレムを操り、藁人形をなんなく倒していく。藁人形の通常攻撃である釘刺しはゴーレムの高い防御力の前では無力なうえ、一番厄介な呪いは倒したゴーレムに行くため、猫にゃんはノーダメージ。ゴーレム1体で粘っている間に、次から次へとゴーレムを繰り出して藁人形の行進を食い止めていく。


「前線が持ってくれれば、敵一体を狙い撃つのは容易ですわ。アイスピラー!」


「ぐげぇ!」


 カメリーオの頭上から降り注ぐ氷柱が突き刺さり、彼のHPを削っていく。削り幅を見るに、本体はそこまで強くはなく、ネタさえばれれば怖くない相手だ。


「こうなったら、カメリーオ様特製ゴーレムの出番だ!」


 カメリーオの前に巨大なお地蔵さんと数多くの藁人形がひしめき合う。今ある藁人形の相手でさえ手一杯というのに、それを上回るほどの量を出されては呪い殺されるのが先だろう。


「あっちもやばそうだな。【幻影の血】、ブラッディレイン」


 その様子を見たミクが分身を飛ばし、範囲攻撃を仕掛ける。藁人形からの呪いはペンダントで防げるも、お地蔵さんから飛来するホーミングする電撃攻撃は受けきれず、分身がかき消されてしまう。


「みっちゃん、ありがとう!」


「これで狙い撃てますわよ。アイスジャベリン!」


 飛来する氷の槍がカメリーオに突き刺さると、お地蔵さんから電撃が襲い掛かる。それをプロテクションで防ごうとしても、それすら容易に破壊し、レイカに大ダメージを与える。


「大丈夫!? 今、回復するから」


「ええ、なんとか」


「……アレがあるとカウンターを決めてくるみたい」


「しかも、ブレイク性能付きでね」


「厄介ですわね。何か策はないのですの?」


「……ゴーレムに殴らせてはいるけど、1発入れたら即退場。数が足りない」


「あの電撃を防ぐを方法を考えないと」


「……思いつきましたわ。チェーンバインド」


 チェーンバインドは相手を束縛する魔法。それを敵であるカメリーオに使わず、味方であるゴーレムに向かって放つ。


「つづいて、ウィンドカッター」


 鎖の根本を断ち切り、自由に動けるようなったゴーレムは鎖を引きずりながらカメリーオに向かって突撃する。そして、ダメージを与えようと拳をふるった瞬間、お地蔵さんから落雷が放たれる。だが、ゴーレムのみを焼き尽くすはずの電撃はより電気を流しやすい鎖に伝わり、地面へと逃げていく。


「ぐへばぁ!」


「なるほど、鎖をアース替わりにしたんだ」


「ご名答。金属製のアクセサリーや水筒を身に着けていたことで落雷から生還した人がいると聞いたことを思い出して、即興で試しましたが、無事成功したようですわね」


「おのれ……」


「……チェーンバインドなら私もできる」


 ゴーレムに鎖を巻き付かせて、電撃対策をしていく二人。藁人形を突破され、お地蔵さんはもはやでくの坊。打つ手を失ったカメリーオは偽物と合流しようと走り出そうとするも、氷の壁が生えてきて逃げ場を封じられる。


「アイスウォールにはこういう使い方もありますの」


「もう逃げ場はないよ!」


「ひいいい、お助けを~」


「……ダメ」


 猫にゃんが操るゴーレムの鉄拳に押しつぶされたカメリーオのHPが0となり、それと同時に偽物も消滅し、元の教会へと戻っていく。倒れたカメリーオから人魂が出ていくと、ふわふわと浮かんで母親のもとへと帰っていく。


「この俺様が負けるなんて……」


「まだ生きていたのか」


「処す?処す?」


「待ってくれ!そうだ、錬金術師がいただろ。そいつにカメリーオ様特製のゴーレムの作り方を教えてやるから、見逃してくれ」


「どうする?」


「ワタクシは反対ですわよ。こういう輩は再犯を繰り返すと相場が決まっていますわ」


「私も。みっちゃんは?」


「悪さしないっていうなら、今回は見逃してもいい。次はねえけど」


「で、肝心の猫にゃんは?」


「私は……魔法を覚えておきたいから、見逃す」


「2対2ではありますが、猫にゃんの意思を尊重して見逃してあげましょう」


「た、助かったぜ。ほら、俺のゴーレムの作り方だ」


 猫にゃんは藁人形の作り方を覚えた

 猫にゃんはお地蔵さんの作り方を覚えた

 猫にゃんはダミーデビルの作り方を覚えた


「ちゃんと覚えたな。じゃあ、あばよ!」


 カメリーオの姿が消え、どこかへと去ってしまう。そして、約束通り落札おじさんに女神像を返却したところでクエストは終了し、経験値と報酬が送られるのであった。そのおかげでみんなのレベルは1つ上がる。


「一応、クエストは終わったけど、結局犯人は捕まえていないし、女神像は取り戻せていないし、カメリーオは逃げたままだよな」


「これは続きのクエストがあるんじゃない? あのおじさんに1億G払ったらクエストスタートとか」


「どうやって集めるんだよ、そんな大金……」


「……カジノで一発逆転」


「それ、転落人生まっしぐらですから、やめた方がいいですわよ」


 続きのクエストは気になるものの、ちょうど区切りがいいこともあり、4人はログアウトボタンを押してゲームをやめるのであった。




 三雲たちが目を覚ますと、そこは初日に休憩をした登山口近くの木陰であった。自分たちのスマホを見ると昨日、つまり、クラスメートと別れてからさほど時間がたっていなかった。


「さっきのは夢?」


「妙にリアルな夢を見た気がしますわ」


「うん……これは?」


「どうしたの? 恵ちゃん」


「ゲームのステータス画面でしょうか?」


「うん。自分のキャラのステータスが確認できるアプリ。これを見て」


 そこに映し出されている習得した魔法やスキルの欄。そこにははっきりと夢で出てきた藁人形を作れるようになっていたのだ。


「じゃあ、あの夢は現実?」


「それだと時間が合いませんわ」


「こういう時はヨーコちゃんに会いに行くの一番です。この道を上っていけばまた出会えるかもしれません」


「そうですわね、急ぎましょう」


 5人は急いで山道を登っていくと、最後尾にいる他の班と出会う。一緒に山を登っていくと、あっという間にキャンプ場につくのであった。そこではクラスメートたちが三雲たちのグループを待っており、他のクラスはテントの準備に取り掛かっていた。


「あれ? 橋は?」


「橋? そんなものはなかったはずよ。それはともかく、全員そろったわね。これより、インストラクターの方から説明と注意事項があるので、よく聞くように」


 インストラクターの男性がテントの張り方などを教えている中、三雲たちはひそひそと話をしていた。


「あの橋、というか谷底の川ってもしかすると三途の川的なものだったりして」


「橋を渡ったらあの世だとか異世界だとか……アニメや漫画の世界だけにしてくれよな」


「いいえ、そうとは限りませんよ。恐山の伝承にある狐の神隠しを体験したのかも」


「私たち、悪いことをしていないのにね」


 三雲はふと思った。悪者は狐に化かされて姿を消す。つまり、神隠しは意図的に選ぶことができるということだ。だとすれば、ヨーコは自分たちに何か伝えたいことがあったのではないかと。


(あのときは全く信用してなかったけど、ヨーコが言う通りこの体が吸血鬼に準ずるものなら、今の俺は何者なんだ?)


 普通の人間とは違い、日の光に弱く、血なまぐさい栄養ドリンクや数々の薬を飲まなければいけない体。今まで見て見ぬふりをしてきた自分の身体について、いつかは向き合わなければならないときが来たのかもしれないと思い始めるのであった。

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