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VRMMOで吸血姫になった俺は幼馴染と一緒に女学園に入学する!?  作者: ゼクスユイ


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第48話 ヨーコのクエスト

 鉱山が近くにある街、トリス。レベルが低い初心者の頃ならともかく、今となっては低級のアイテム稼ぎ以外で訪れることがほぼないトリスに戻ってきたミクたち。そんな街の中を歩いて、見落としそうな細い路地を通って1軒の家屋にたどり着く。


「『Cランク以上の錬金術師をパーティー内に入れたうえで訪れると、鍵のかかった家の扉が開く。その後は流れじゃ』だとよ」


「高レベルの錬金術師なら金欠でもない限り、わざわざここに来ることは無いから、その条件は盲点だったよ」


「……今回は私がいるから大丈夫」


「じゃあ、開けるぞ」


 一軒家に入ると、ベッドの上でごほごほと咳をしている少女とその傍らには母親らしき母親が看病している。そして、ミクたちの存在に気づいた母親がはっと振り返る。


「ど、どなたですか?」


「俺たち、怪しい者じゃないです」


 ミクたちがギルドカードを見せて、自分たちの身分を証明するとクエストが発生する。母親の話を聞くと、最近、子供たちを中心に風邪のような症状の病気が流行っており、このまま放置すれば命にもかかわるらしいとのことだ。


「街の医者の方が言うには対処療法しか手はないと言われました。冒険者様、お願いです。この子を助ける治療薬を持ってきてください」


「治療薬か……」


「ポーションとか状態異常回復できる薬とかだとダメなのかな」


「……私、いろんな薬ある」


「さすが錬金術師」


「どのような薬が効くのか分からない以上、治験するしかありませんわね」


「……エントリーナンバー1番、ポーション(HP)」


 猫にゃんがベッドで横たわっている女の子に青い瓶に入っているポーションを飲ませる。すると、少し顔色が良くなったと思いきや、すぐさま顔色が悪くなる。


「はずれみたいですわね」


「2番。ポーション(MP)」


「…………」


「効いてないな」


「3番。解毒薬」


「…………」


「効いてないね。HP回復系が良いのかな」


「4番。ハイポーション(HP)」


「1番と同じ反応ですわね」


「5番。万能薬。これで味変」


「ラーメンじゃないんだけど……でも、ちょっと効いた?」


「6番。エリクサー」


「そんな貴重なものを使って良いのかよ」


「……1個だけ作ったけど、一度も使ってないから大丈夫」


「ゲホゲホ……ママ、体が熱いよぉ」


「すごい熱! 身体を冷まさないと……オアシスの水を飲むと体がよく冷えると聞くけど、こんな山奥だと手に入らないわ。冒険者様、お願いします」


「オアシスの水なら持っているよ」


「この前、行ってきたからな」


「ああ、ありがとうございます」


 母親がゆっくりと水を飲ませると、熱にうなされていた少女がおとなしくなっていく。だが、彼女からの額はまだ熱く、苦しそうにしている様子には変わりはない。


「ママ……」


「どうしたの?」


「……あ、くま…………」


「悪魔?」


「それって、病気じゃなくて悪魔に呪われているってことか?」


「そうかもしれません。冒険者様、この子にかかっている呪いを解いてください」


「……今度は聖水の番」


 猫にゃんが少女に聖水を飲ませると、少女がのたうち暴れるのでミクたちは慌てて少女を取り押さえる。数分して、力尽きたのか眠りについた少女を見て一安心する。とはいえ、また体は熱く、呪いは解けていない。


「聖水が通用しない……」


「ここは白魔導士である私の出番だね」


 カエデが解呪の魔法を放つと、黒いオーラのようなものに阻まれ、少女の体に届かない。どうやら、呪いを解くには、生半可な魔法では通用しないのかはたまたアイテムのみ効果を受け付けるようになっているのかだ。


「あとは教会にいるシスターや神父さんに解いてもらうしかないかな」


「確か、この街にもあったよな。行ってみようぜ」


 ミクたちが教会に行くと、普段見ることのない人だかりができていた。人だかりの中心には心配そうなシスターや子供たち、深刻そうな顔をした神父がギルド職員と話しており、何か事件が起こったことがうかがい知れる。何が起きたのかとやじ馬の青年に話しかけてみることにした。


「どうしたんですか?」


「ああ、強盗に入られたらしくってね。なんでも慈愛の女神像を盗まれたらしい」


「慈愛の女神像?」


「教会のシンボルだよ。現場保存もかねて、この事件が解決するまではここの教会を閉めるらしい」


「待てよ。それなら呪いにかかったらどうするんだ?」


「僕に言われても……あっ、神父さんがこっちに来た。話しかけてみたらどうだい?」


「そうだな。神父さん!」


「ん? 見かけない顔だが、冒険者かね? すまないが、しばらくの間は……」


「呪いを解いてほしい子がいるんだ」


「聖水も解呪魔法も効かなくて……」


「ならば、今は無理だ」


「なんでだ?」


「慈愛の女神像はその御威光をもって呪いや病気の力を弱めることができる。その子の呪いが解けないのは、女神像がここにないからだろう」


「だったら、俺たちがその女神像盗難事件を解決してやるぜ!」


「そうか。ではギルドにはそのように説明しておこう。頼むぞ」


 神父と別れたミクたちはギルドで今後の方針を立てていた。

 ギルド職員から聞いた話によると、女神像は深夜に盗まれ、目撃者や犯人につながる遺留品は無いようだ。


「こういうときこそ、【動物会話】の出番だろ」


 そう思って、町中の犬や猫に話しかけるも、夜遅くということもあり、犯行現場を目撃している動物はゼロであった。捜査は早くも暗礁に乗りかかっていた。


「だめだ。手がかりが見つからねえ」


「そもそも、ヨーコちゃんたちが解決しているクエストだから、特別なスキルは必要ないはずなんだよね」


「といっても、あそこのギルドは獣人系も多いので、【動物会話】を使っているの可能性はありますわよ」


「そうだよね……」


「では、焦点を変えてだれが盗んだのか、どうやって盗んだのかを考えるよりもなぜ盗んだのかを考えていきましょう」


「……つまりホワイダニット」


「それは金もうけじゃない? 慈愛の女神像なんてレアアイテムっぽいし」


「では、次に考えるのはレアアイテムはどこで売るかですわね」


「普通に売ったら足がつくよな」


「ええ。商人が口を滑らした時点で個人が特定されます。つまり、匿名性が高い場所で売るのが一番」


「……現実だとネットオークション。つまりーー」


「地下オークション!」


「確かフォーゼにあるっていうやつか。まだ行ったことないんだよな」


「犯人が売りに出していれば、正々堂々と落札すれば取り返せる。もしかすると、犯人の手がかりを得ることができるかもしれない。資金を用意してから地下オークションに向かいましょう」


 自分らの不要なアイテムや換金アイテムを売りさばいてから、ミクたちはフォーゼにある地下オークション会場へと向かっていく。空き家となっている民家に入り、その奥にある書斎の本棚を動かすと地下へ通じる階段が現れる。そこを下っていくと、扉の前で仮面を配っているおじさんがいる。


「オークション参加者は身分を隠すため、認識阻害の仮面をかぶってもらいます」


「ありがとう」


 仮面をかぶったミクたちが扉を開けて魔方陣に乗ると、飛ばされた先にはずらりと仮面をかぶった観客たちが中央にあるアイテムを次から次へと落札していた。


「続きましては、ホルスの涙。これを飲むと、あらゆる怪我が治るといわれております。10万Gからスタート」


「12万」


「20万」


「すげー、あっという間に値段が上がっていく」


「今は治療系アイテムのオークションみたいだね」


「ワタクシたちが探している慈愛の女神も治療系アイテムの分類のはず、ちょうどいい時間ですわね」


「俺たちが用意したのは6000千万G。予算以内に収めればいいんだが……」


「最後の商品は慈愛の女神像。設置するだけであらゆる約歳から身を守ってくれる優れもの。300万Gからスタート」


「500万G」


「1000万G」


「3000万G」


「6000万G!」


「ちっ、1億Gだ」


「1億……他の方はいないようですね。では、落札者の方、どうぞ」


 落札者のお爺さんが女神像を受け取り、オークションは一度休憩をはさむ。こうなれば、直接交渉だとミクは出ていこうとするお爺さんに話しかける。


「なんだね、君は?」


「おじさん、実は……」


「……これが盗品であり、その子を助けるのに必要であると」


「そうなんだ。だから……」


「これが盗品であるという証拠はどこにもない。そもそも、これが盗まれた女神像であることを証明できるのかね?」


「うっ、それは……」


「だが、私も鬼ではない。君たちが提示した6000万Gを払うのであれば、1時間猶予をやろう。もし、これが盗まれた女神像であると証明できるのであれば、その子を助けるまでの間、貸してあげようではないか」


「返すじゃないんだな」


「1億G用意するのであれば話は別だがね」


「わかったよ。必ず証拠をつかんでやる!」


 ミクたちは6000万Gを払うと地上へと戻り、トリスへと戻っていくのであった。



 地下オークションに戻る時間を考えれば、残された時間は40分あまり。限られた時間で解決しようといそいで教会へと戻る。落札された女神像が盗品であることの証明--それをするのであれば、関係者の話は大きな手掛かりにつながるからだ。


「……というわけで、盗まれた女神像が盗品であることの証明しないといけないんだ」


「どんな些細な事でも構いません。例えば、女神像に破損部や補修後があるのであれば、落札された女神像と照らし合わせることで証明ができますわ」


「そんな恐れ多いことしませんわ」


「ええ。みんな大切にしている女神像にそのようなことは……」


「私からも同じ意見です」


 シスターや神父に話を聞いていくも、大切な女神像だけに傷つけるような真似はしていない。時間だけが刻々と過ぎていく中で、教会で身を預かっている子供たちにも話を聞いていく。


「なあ、君たち。女神像について何か知らない?」


「例えば、落書きしちゃったとかボールをぶつけたとか」


「そんなことしないよ」


「シスター怒るもん」


「だよな……」


 わいわいと外で遊び始める子供たちを見ながら、メニュー画面を開いて時刻を確認する。残り時間はあと20分強。何か方法はないかと犯行現場である教会の中に戻っていく。荘厳な雰囲気を放つ教会で、異質を放つKEEP OUTのテープで囲まれた場所。そこが元々女神像がおかれていた場所だそうだ。


「ギルド職員が調べた後なだけに何も残されておりませんわね」


「うん、なんかの破片でも落ちていたらいいんだけど……」


「なさそうだよな」


「みゃ~」


「クロ、中に入らないで」


 外から黒猫が教会の中に入り込み、女神像がおかれていたところに寝転がる。それを抱きかかえる女の子が外に出ていくのを見て、ミクは彼女を呼び止める。


「どうしたの、お姉ちゃん?」


「その猫、ここで飼っているのか」


「違うよ。だけど、一緒に遊んでくれるの」


「一緒にね……【動物会話】。クロ、盗まれた晩、女神像のところにいたか?」


【その日はいなかったにゃ。でも、女神像を盗むなんて許さない。あそこは僕のお気に入りの場所だったのに】


「お気に入り?」


【雨とか寒いときは女神像の上で寝るのが一番。冷えている体がぽっかぽっかに温まるんだにゃ】


「他に何かないか?」


【何かといわれてもにゃあ……】


「……猫にゃん、猫用の餌とかないか」


「ここに●ュールのようなものがある。本当はサモナー向けのアイテムだけど、錬金術師ならいくらでも作れる」


「この黒猫の前においてくれ。山のようにな」


「……わかった」


「クロ、隠し事は無しだ。お前が知っていることをすべて話せば、この餌を全部くれてやる」


【全部とにゃ!? と言われも僕が女神像にしたことなんで、頭の上でしょんべんを漏らしたことや、爪とぎをしていたくらいで……】


「爪とぎ? どこでやっているんだ」


【女神像の背中側だにゃ。あの辺、衣服のしわ表現でギザギザになっているからちょうどいいにゃ】


「背中の服のしわ部分だな」


 有力な情報を得たミクたちは約束の時間に間に合うように教会を後に資、再び地下オークション会場へと向かった。オークション会場ではアイテムの落札が続いている中、女神像を落札したおじさんが大きな箱を傍らに置いていた。


「約束の時間よりも少々早いようだが? 証拠は見つかったのかね」


「ああ、証拠じゃなくて証言だけどな」


「いいだろう。この女神像が盗品である証拠とは?」


「それが盗品なら……背中に猫のひっかき傷があるはずだ!」


 落札おじさんが箱の中から女神像を取り出し、その背中を見る。そして、ミクたちにも見せるかのように女神像をぐるりと回す。その背中をよく見ると、猫がひっかいた傷が残されていた。


「君たちはこのオークション会場でこの女神像の背中を見ることができない位置に立っていた。つまり、背中を見たのはこれが初めてなはず。ふむ、どうやら盗品というのは嘘ではないようだな」


「じゃあ……」


「嘘はつかんよ。私が落札したこの女神像を一時的だが貸してあげようではないか」


 おじさんから女神像を受け取ったミクたちは急いで教会へと戻り、女神像を設置し直す。そして、病気の女の子と母親をつれて教会に行き、神父に呪いを解いてもらおうとする。神父とシスターが祈る中、少女の身体が光り輝くと同時に黒いオーラがそれを弾き返そうとあがこうとする。


「くっ……なんという邪気」


「神父さん、頑張って」


 見守ることができないミクたちが神父たちを応援していく。そして、神父たちの祈るが通じたのか少女から噴き出た黒いオーラが霧散していく。


「解けたのか……?」


「ママ……」


「よかった。無事で……ゴフッ!」


「ママ!?」


 無事に解決したと思いきや、今度は母親の方が吐血して倒れてしまうのであった。

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