第1話 チュートリアル戦闘
ミクが目を開けると、そこには人が往来する街の中、目の前にある半透明のディスプレイにはメニュー画面の開き方などが書かれており、今はその画面を閉じることにした。
「さてと、紅葉……じゃねえカエデはどこかな」
あたりにいる人の上には名前がついている。一般プレイヤーは青文字で書かれ、白文字はNPC、PKは赤文字で書かれる。青文字でカエデを探していると、あたりをきょろきょろと探している水色の服を着た女の子がいた。リアルと同じく栗色の髪の毛、顔つきもほぼ同じ、違うのは瞳の色が青色なのと耳がとんがっていることくらいか。
「おーい、もみ、じゃなかったカエデ!」
「え~っと、どちらさま?」
「俺だよ、三雲」
「みっちゃん!? なんで女の子になっているの!このゲーム、性別は変えられないはずなんだけど」
「いや~、種族ガチャで『吸血姫』ってのを引いたから、男の俺でも女になれたんじゃねえ」
「吸血姫? 吸血鬼じゃなくて?」
「吸血姫だぜ。ほら、ステータスにも」
「……本当だ。吸血姫って書いてある。いろんなサイトを覗いたけど、こんな種族出ているって報告は聞いたことないよ」
「そうなのか?」
「うん。吸血鬼ならメインのフレンドにいるけど、吸血姫は100万くらい突っ込んだ人の動画でも出てこなかったよ」
「すげーな、その人」
「うん。だから、もしかすると、みっちゃんが初の吸血姫プレイヤーかも」
「マジか。俺って、運が良いな。ギャハハハ」
「まずはメニュー画面に描かれているようにギルドに行くんだけど、先にプレゼントBOXから色々受け取ってから進んだほうが楽だよ」
「そうなのか。えっ~と、何々、装備品にお金に、いろんな薬と素材? 色々もらえるんだな」
「1周年で実装された初心者支援と2周年イベの報酬だね。さっそく装備してみたら」
「SPってのはなんだ?」
「スペシャルポイント。本当はギルドで説明されるんだけど、これで魔法やスキルを覚えたり、ステータスを伸ばしたりできるよ。初期に100、初心者支援で150、2周年イベで100、合計350かな」
「なるほどな。今は使えないようだから、装備変更だけしておくか」
メニュー画面から装備変更画面を開き、もらったアイテムを装備していく。すると、デフォルトの服から冒険者風の格好へと変わる。
「装備変更したはいいけど、似合っているのか?」
「うん。すごく似合っている。美少女戦士って感じ」
「う~ん、せっかく吸血鬼になったから、それっぽい恰好はしたいよな」
「吸血鬼用装備が出るダンジョンの推奨レベルは60。当分先だね。それに、おしゃれにはお金かかるよ~沼だよ~」
「マジか……とりあえず、これで妥協するよ。魔法はどうやって覚えるんだ?」
「ギルドに行ってチュートリアル戦闘を終えてから。ギルドは向こうにあるでっかい建物」
「ああ、あの時計がついている建物か」
「そうそう。さっそく行ってみよう……っと、その前にC日傘を渡すよ。UC以下なら無料で譲渡できるから問題ないし」
「なんで、日傘が必要なんだ?」
「吸血鬼は日傘がないと継続ダメージがすごく痛いの。だから、アクセサリーの1つは日傘系列でうまっちゃう。それでも上昇倍率は高いから一昔前は流行っていたけど、今となっては枠つぶしのデメリットが大きくなってガチでは見られなくなっちゃったの」
「そうなのか。今は枠空いているし、日傘サンキュー」
ミクはさっそく日傘も装備すると、なんとなくだが涼しく感じられる気がする。そして、ギルドに着くと長髪のお姉さんが受付嬢をやっていた。
「冒険者ギルドの受付をやっておりますロビィといいます。以後、お見知りおきを」
「こちらこそ、お願いします」
「本ギルドに所属することで、冒険のサポートや各種クエストの受付、ギルドに所属している冒険者と新しくギルドを結成することができます。冒険者ギルドに入りますか?」
「入ります」
「では、こちらにサインを」
「ミク……と」
「では、ギルドカードを発行させていただきます。今、貴方のギルドランクはFです。チュートリアルクエストをクリアすることでEランクに昇格することができます。そこから、D、C、B、Aと上がっていきます。ランクが上がると、報酬も増えますので強くなったと思ったら昇格試験を受けるといいでしょう」
「なるほど。わかりました」
「ではチュートリアルクエスト開始です」
ひげ面のギルド職員に連れてこられたのは町の外にある草原だ。そこにはスライムたちが元気よく飛び跳ねまわっている。
「スライム3匹狩ったら合格だ。まずはあそこにいるはぐれたスライム1匹を倒せ。そっと近づけば、気づかれずに先制攻撃ができる」
「そっと……ね」
ゆっくりゆっくりと歩いて、こちらに無関心のスライムに剣で貫くと光の粒子となって消える。
「上出来だ。次は、あのスライムだ。だが、こちらの存在に気づかれたようだ。こんな時は魔法の出番だ」
「シャドーボール……こいつを投げつければいいのか。それなら本領発揮だぜ!」
闇の弾を投げつけるとスライムを倒す。残るは1体。そんなとき、ミクの背後からスライムがとびかかり、攻撃がクリティカルヒットし、HPを減らす。
「むっ、いかん。気を取られてスライムに背後を奪われたようだ。背後を奪われると、このように攻撃が必ず急所にあたる。逆にいえば、こっちが背後をとれば大きなチャンスだ。次は吸血鬼の固有スキルを使うぞ。スライムに噛みつけ!」
「これか、ファング!」
スライムに噛みつくと、ソーダゼリーのような触感と味と共にミクのHPが回復する。
「【吸血】は噛みつくとHPを回復することができる。スキルをうまく使うと、不利な状況からも逆転できる。ステータス・技・スキル、その三拍子がそろわないと一人前の冒険者にはなれないぞ」
そして、クエストが終わると同時にレベルアップし、ステータスが上昇する。
「能力が上がったようだな。これは先生からの餞別だ」
ミクはジョバンニから10SPとHP回復ポーション3個、MP回復ポーション3個もらった
「SPを使うと、ステータスを伸ばしたり、技の習得ができるスペシャルなポイントだ。振り直しはできないから、よく考えて使うように。技や魔法を覚えたいときはジーマ教官、スキルを覚えるときはルックス教官に習うといいぞ」
「わかりました」
チュートリアルクエストが終わり、Eランクになったことでできることが一気に広くなる。まずは覚えられる魔法や技、スキルの中身を確認していく。強そうな技や魔法はレベルやランクが上がらないと覚えられないし、MP消費も大きい。レベルが上がるまでは、SPを温存するのもありな気もするほどだ。
「このスキルは覚えたいな……あと、これとこれ」
汎用スキル:【投擲Lv1】(投擲時の威力と命中が上がる)を覚えた、10SP消費
汎用スキル:【遠投Lv1】(投擲の射程アップ)を覚えた、20SP消費
汎用スキル:【見切りLv1】(命中と回避率がアップ。効果量は器用さに依存)、40SP消費
技:ブラッディファング(鮮血で強化された牙で噛みつく)、30SP
魔法:ブラッディアロー(血の矢を放つ)、10SP
魔法:ブラッディボール(血の弾を作り出す)、10SP
「100くらいは残して、SPは攻撃30、知力30、器用さ20、敏捷10に振って……できた」
ミクLv2
武器1:旅人の剣(攻撃+10)
武器2:
頭:旅人の帽子(防御+8)
服:旅人の服(防御+10)
靴:旅人の靴(敏捷+10)
アクセサリー1:日傘(日光の影響を軽く抑える)
アクセサリー2:
アクセサリー3:
HP23/23
MP23/23
攻撃53/43+10
防御23/5+18
知力43
敏捷35/25+10
器用さ27
運3
技・魔法
ブラッディネイル
ファング
シャドーボール
ブラッディファング
ブラッディアロー
ブラッディボール
固有スキル
【吸血】:噛みつき時に相手のHPを奪う効果を付与する
【吸血鬼Lv1】:ドレイン効果上昇、夜間の戦闘時ステータス上昇+昼間の戦闘時、自身に継続ダメージ追加、水・光属性に弱くなる
【吸血姫Lv1】:固有スキルの効果がさらに上昇する
次の固有スキルはレベル5解放されます
汎用スキル
【投擲Lv1】【遠投Lv1】【見切りLv1】
「いい感じに振っているね~それに、みっちゃんはリアルだとピッチャーだから、投擲も使いこなせると思う」
「だろ、我ながらいい考えだと思うんだ。いいスキルがあれば教えてくれよ」
「あまり私が言いすぎるとテンプレになりかねないけど、【採取】もおすすめかも。拾った石とかの数が増えるから、投擲の弾切れが起こしにくくなるし、アイテムや装備品を作るのも楽になるよ」
「そうか。だったら取っておくか。ルックスさん、すみません。【採取】もお願いします」
これで準備万端。適当なクエストを掲示板から選んでいると、カエデが「あっ」と小さく声を漏らす。
「どうしたんだ?」
「出たよ、『森のさざめき』クエスト……」
「なんか問題でもあるのか?」
「普段はジャイアントボアを倒すだけのクエストなんだけど、1万分の1くらいの確率でグリーンドラゴンが乱入して初心者狩りしてくるの」
「勝てるのか?」
「メインならソロでも勝てる。このサブが持っている装備をガチってリザーブしているポイントを全部振れば……どうだろう」
(言い淀んだってことは戦力になる奴がいれば勝てるみたいな話か)
このクエストの受注をどうするかと悩んではいたが、ドラゴンが出るのはごく低確率。狙っても出くわさない相手だと考えて、『森のざざめき』を受注するのであった。