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第18話 オカルト同好会

 翌日の放課後、三雲たち3人はオカルト同好会の部室へと向かうと、中から生徒会長が出てきて、こちらを睨め付けた後、どこかへと去っていく。


「なんだよ、感じ悪いな」


「明らかに敵意むき出しって感じだね」


「少しでも自分の功績が欲しいのでしょう。あんなやましい人間が生徒会長とは嘆かわしい」


「それなら、麗華が生徒会長すれば? 私なら、今の生徒会長よりもいいと思っているよ」


「無論、立候補しますわ。ワタクシが立候補した際は、清き一票のほどを」


「おう、入れておくぜ」


 オカルト同好会の部室に入ると、生徒会長に何か言われたのかぐったりとした様子の部長たちがいた。自分たちのいない間に何があったのか席について話しかけると、部員がこの世の終わりのような声で話す。


「生徒会長から……文化祭に実績を見せないと廃部にするって」


「? 生徒会長は通常2年がなって、3年の夏前に引退するはず。文化祭には今年の2年に引き継いでいるのでは?」


「今の生徒会長、私たちと同じ2年なんです。北条院グループのご令嬢で保護者が彼女の傘下で働いていることが多いから、去年は2年に対抗馬もなかったこともあって異例の1年の生徒会長に。今年も生徒会長だと言われています」


「北条院グループといえばワタクシのライバル企業ですわね。それならば、ワタクシが生徒会長になるしかありませんわ!」


「おいおい、大丈夫かよ」


「大丈夫も何も。すでに彼女が前例を指示してくれている以上、ワタクシが生徒会長になってもおかしくはありません。親の力は……あまり使いたくありませんが、向こうが使うのであればこちらも使わせてもらいますわ!」


「さすがは鈴星コンツェルンのご令嬢……」


「とはいえ、ワタクシが生徒会長になるためにもわかりやすい手柄が欲しいところ。この同好会の再建なんてわかりやすいですわね」


「……!? じゃあ……」


「部長様、ワタクシたちがこの部を救ってあげますわ!」


「勝手に俺たち、頭数に入れられているな」


「う、うん……」


「あ、そういえば自己紹介してなかったね。私は藤崎綾香。よろしくね」


「わ、私はオカルト同好会の部長、須藤愛花です」


 互いに自己紹介をすましたところで、部長たちに自分たちの事情を話していく。平行世界の入れ替わり、男であったことは明かさずに長身で野球できたくらいには健康であったこと、そして、それらの認識を知っているのは自分たち二人だけであったことを。


「平行世界の住人との入れ替わり……そんな戯言みたいなことが起こるわけ――」


「あり得るわ!この写本によれば、パラケルススは基礎理論までは作り出していたの。実現するには莫大なお金、人材、土地が必要だけど可能性は0じゃない!」


「……ミク、貴女はどこかのご令嬢でしたの?」


「そんなわけねえ!入れ替わる前も後もただの一般家庭だよ!」


「でも――」


「平行世界を渡れる技術があるのであれば鈴星コンツェルンのご令嬢であるこのワタクシが知らないわけがありませんわ。ですがライバル企業ならば話は別。秘匿されていてもおかしくはありませんわね」


「可能性があるなら北条院グループってわけか」


「見えましたわね。ワタクシが生徒会長の選挙で勝ち、敗北した北条院に平行世界関連の技術が無いか問いただす。そのためにも、まずは成果が重要ですわ。オカルト同好会としてわかりやすい成果はないですの?」


「せ、せいかは……その……」


「全くないんだよね~」


「成果はなくとも調査中くらいの案件はあるでしょう。この際、全部吐き出しなさい」


「は、はい!」


(あの部長……顔が髪で隠れているからよく分かんねえけ、すげー怯えているぞ)


「主にやっているのは写本の解読。そして、その調査の最中得られた怪奇現象の調査です」


「怪奇現象? どんなのだ?」


「それを説明する前にVRゲームって知っている?」


「知っていますわ。ついでに言うと、この二人もよく知っているので、前置きは結構」


「これはVRゲーム黎明期に起こった出来事。とある女の子がVRゲーム中に心不全を引き起こして死亡。両親はVRゲームが原因で死んだとゲーム会社に告訴したけど、関連性は認められず敗訴。とはいえ、企業からすればブランドイメージが傷つけられたこともあって、そのゲームのサービスを終了した。普通はこれで終わりなんだけど、女の子は自分が死んだことを知らずに意識だけがインターネットに残され、あらゆるVRゲームに顔を出して遊び続けているっていう噂よ」


「結構ホラーな話が来たな……」


「みっちゃん、怖い?」


「こ、怖くなんかねえよ!」


「ふ~ん……」


「ともかく!その女の子はどうしているんだ?」


「私たちの調査の結果、『World Creation Online』でログアウトもせずに遊んでいるプレイヤーがいるって聞いた私たちはゲームをやり始めたんだけど、まだ出会えていないの!」


「……聞いたことあるなあ、そのゲーム」


「…………うん、私も。幽霊プレイヤーは知らないけど」


「あれえ? 驚かないの?」


「さっきははぐらかしたけど、その俺たちが平行世界を渡った原因が『World Creation Online』だと考えているんだ」


「………………お父様が作ったとはいえ、一度お祓いしてもらった方がよろしいかもしれませんわね」


「呪いのゲーム、面白そうじゃない……イヒヒヒ」


「部長、やっぱゲームで黒魔導士選んだほうがよかったんじゃないですかねえ」


「……あれは陽の私だから」


「ゲームとリアルのキャラ、逆にすればモテますよ」


「無理。陰と陽のバランスが崩れる」


「そこは即答なんですね」


「部長様がどんなキャラを使っているかは知りませんが、他にやっていることは?」


「錬金術、魔法の再現。でも魔力なんて無いからできません」


「できればわかりやすい成果になりますが、魔力なんてわかりませんわね」


「みっちゃん、吸血鬼パワーとかをリアル持ち込みしているとかいうご都合主義な力とかない?」


「ねえよ!虚弱体質で吸血鬼っぽい体質だからって、人間だよ!!」


「でも、少しくらいはあるかもしれない。イケニ……触媒にして同類を呼び出す儀式を……」


「今、生贄とか言ったよな!生贄とかなりたくねえんだけど!」


「大丈夫、ちょっと血を抜くだけだから」


「それくらいならいいけど……」


「儀式の準備には多少時間はかかるから、都合がいい日が決まったら話すわ」


「となると、その幽霊の子が実在するか調べるためにも、運営に直接――」


「それはダメ!」


「どうしてですの?」


「風情がないってやつだな。こういうのは自分たちで調べるから面白いんだよ」


「これだから庶民は。非効率も甚だしいですわ。ですが、今のワタクシはあくまでもオカルト同好会の一員。郷に入っては郷に従えとも言いますし、運営に直接問い合わせるのは最終手段としておきましょう」


「ゲーム内で人探しするんでしょう。だったら、フォーゼで待ち合わせってのはどう? 親睦もかねて一緒にパーティー組んで」


「別に構わないわ」


「でも、ゲームだと人相変わるだろうし、わかるかしら?」


「それなら俺、ゲームでもそのままの姿だから目印代わりに中央の広場の時計の下で待っておくよ」


「決まりですわね」


 そうと決まればと、自分たちの部屋に戻った三雲たちは各々のヘッドギアをつけて、ゲームの世界と飛び込んでいくのであった。

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