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第15話 レイドイベント(後編)

 日が落ち始め、夜に代わったころ。レイカたちはゴブリンキングの群れを通り越してさらに奥へと進んでいく。その群れから太い腕が彼女たちにめがけて振りかざされるも……


「邪魔だ、ブラッディネイル!」


 夜になったことで約2倍のステータスとなったミクが瞬殺していく。昼間ではステだけならば中堅程度でも、夜という条件であれば上位陣に食らいつけるほどだ。昼間見かけたダイチと同様、ゴブリンキング程度では足止めにすらならない。


「このままゴブリンジェネラルの討伐に参加しますわよ」


 ゴブリンキングの群れを潜り抜けると、そこにはキング以上のサイズで鎧を身に纏い、プレイヤー巨大な大剣を振りかざすゴブリンジェネラルたちが立ちふさがっていた。


「でかっ!? 何mあるんだ!10m以上はあるだろ」


「レイドボスに相応しいボスですわね。フレイムアロー!」


 そのうちの一体に炎の矢でゴブリンジェネラルを攻撃するも、分厚い鎧に阻まれて効いていない。口から炎を吐いて、ゴブリンキングをぎりぎりで突破してきたプレイヤーたちを焼き尽くしていく。


「厄介ですわね」


「だけど、関節部とかは覆われてねえだろ!シャドーボール!」


 ゴブリンキングに直撃し、ようやくパーティー内でまともなダメージを与えられる。とはいえ、このままでは他のパーティーの邪魔にしかならない。さて、どうしようかとレイカが考えているとき、SPICAの曲調が変わる。


「モードチェンジ☆SPICAの歌でレイレイを凶暴化させるよ」


「クソ親父、しねえええええええええええええ!!」


「お、お嬢様!?」


 バーサーク状態が付与されたレイカの防御力が大幅に減少する代わりに、攻撃力が大幅に強化される。それに伴い、鎧を貫くほどの炎の矢がゴブリンジェネラルに大ダメージを与える。


「はあ、はあ……なんかとんでもないことになった気がしたような?」


「レイレイ、じゃんじゃんバリバリ打っちゃって!」


「アイススピア!」


 狂化されたレイカの氷の槍がゴブリンジェネラルを貫く。その間、ミクは兜の隙間を縫ってゴブリンジェネラルの顔を狙って、ヘイトをとり続ける。ゴブリンジェネラルが大剣を振り下ろしても、ミクはすでにその場にはいない。


「へっ、こんなのノックよりも簡単だぜ。ブラッディボール」


 何度も頭部に攻撃を受けたことでゴブリンジェネラルが脳震盪を起こし、倒れる。生身がむき出しになったところをミクが吸血し、ゴブリンジェネラルを倒すのであった。だが、倒したのはまだ1体。レイドボスのおかわりはゲージを見る限りまだまだいるため、経験値稼ぎとしても役立ちそうだ。


「まだまだいくぜ!」


 上位層と比べるとゴブリンジェネラルを倒すペースは遅いが、ミクたちが着実に倒していく。とはいえ、レベル的には無理している状態が続き、特に防御が薄いミクにとってゴブリンジェネラルの一発は即死だ。もらってはいけないというプレッシャーが続いている中、ヘイトを稼ぎすぎたことで他のゴブリンジェネラルもミクを狙い始める。


「まずっ!?」


 たまたま回避軌道上にいたゴブリンジェネラルがこちらを振り向き、いままさにミクにゴブリンジェネラルの攻撃が直撃しようとしたとき、黒い影が割り込み、その攻撃を防ぐ!


「その程度の攻撃!」


 ふんと押しのけ、ゴブリンジェネラルに尻もちをつかせる。すげーと感心していたが、助けてもらった礼を言ってなかったと思い礼を言う。


「み……ミク殿、礼には及ばんよ」


「なんで俺の名を?」


「それはだな……」


「俺たちが話したからだ」


「アルゴのおっちゃん、ダイチさん!」


「わりぃ、経験を積ませようとしたこっちのタンクがヘイト取り損ねてそっちに行っちまった。大丈夫か?」


「この黒いおっさんが助けてくれたから大丈夫だ」


「おっさん……」


「そういえば、なんていうんだ? おっさん」


「我の名は闇の支配者(ダークロード)。周りからダクロと呼ばれている」


「すげーネーミング。俺の幼馴染もそうだけど、ごっさん……犬に雷神と書いてゴッドオブサンダーとか呼ぶの流行っているの?」


「いや、俺たちから見てもそれは……」


「かっこいいではないか!」


「そういうのはダクロだけだと思ったぞ。その幼馴染くん?ちゃん?とは会ってみたいところだな」


「女な。もしかするとあっているかもしれないぜ。俺はサブしか知らないけど、メインは【漆黒の翼】所属って言っていたから」


(ギクッ)


「そうなのか。こっちは大所帯のギルドだから気づいてなかったかもな」


「今日で実質ギルドも解散。追うことは難しいだろう」


「その幼馴染探しなんてする気もないけどな。そうだ、俺たちのレイドパーティー、5人くらい空きあっただろう。そこに入れてやるのはどうだ?」


「本来は遅刻したメンバー用だが、この時間帯まで来なかったら仕方ないか」


「レイドパーティー?」


「レイド戦は6パーティー36人で戦うことができる。大手ギルドだと時差や遅刻してくる奴のことを考えて24人ずつに分かれることが多いな」


「今、俺たちのパーティーは30人だから全員誘うよ」


 ダイチたちのレイドパーティーに入れてもらったミクたちは、【漆黒の翼】がゴブリンジェネラルの群れを一掃していくのを見て戦慄する。


「炎を纏え!煉獄の太刀!」


「あのダクロのおっさん、アルゴのおっちゃんまではいかねえけど、すげー削っているぞ」


「攻撃特化の俺がパワーで負けたらさすがに凹む」


「とはいえ、鈍足アタッカーのデュラハンの真骨頂はこれからだ」


「うむ。今しがたクールタイムが回復した。行くぞ、固有スキル【怨霊強化】!」


 ダクロが倒した敵の魂を吸い取り、自身の力へと還元していく。怨念の力を宿ったダクロがゴブリンジェネラルに一太刀を与えると、いっきにそのHPを2/3以上を消し飛ばす。


「倒したキングの数が少なかったか」


「まだ上がるのか、すげーなおっさん!」


「今回はジェネラルの取り合いになる故、そこそこしか倒していなかったからな」


「よ~し、こっちも負けてられないぜ!SPICA、俺にも凶化バフくれ!」


「作戦変更!ワタクシたちもミクに支援バフを。マジックアップ」


「は、はい!私は身体強化を!」


「畏まりました。クリティカルアップ」


「行くよ、アンコール☆」


 もとからミクの防御力が低いため、そこからさらに削られようが、ゴブリンジェネラルにワンパンされるのに変わりはない。むしろ、火力を上昇させるメリットの方が大きい。SPICAの曲に合わせて、ジェネラルの兜にめがけてブラッディボールを投げつけると、頭部を貫通するほどの威力を叩き出す。


「ひゅ~、バフてんこ盛りとはいえ俺よりもやばくねえか」


「あれだけの威力となると龍堂クラスだろ。初心者が出していい火力じゃないな」


「とはいえ5人がかりでようやく龍堂1人と考えると、奴のおかしさがよくわかる」


「今いくつだっけ、あの人のステータス?」


「前見たときは大半のステが1400くらいあったな」


「俺、攻撃に特化してそれくらいなんだが……」


「それでも化け物だからな」


「ちげえねえ」


「龍堂ってどんな奴なんだ?」


「あそこで戦っている、今、火を噴いたのが龍堂。その横で飛んでいるのがコクエンさん」


 ミクが指をさしたほうを見ると、そこにはドラゴンがゴブリンジェネラルに対して火を噴いて殲滅し、黒い翼をもつ堕天使風の女性が闇の中へと沈めていた。もはや戦いではなく殲滅、蹂躙といった言葉がふさわしいほどだ。


「ドラゴンも使えるのかよ」


「正しくは竜人の固有スキル【竜化】な。クリティカルが出なくなる代わりに、ドラゴンになって身体能力が大幅に強化される壊れスキルの一つだ」


「巨体になるから回避も難しくなるが、防御力も当然アップ。生半可な攻撃じゃあまともにダメージを与えることができねえ」


「俺たちが連携して倒しているゴブリンジェネラルを雑魚扱い。そりゃあ、最強なのも納得」


 まだまだ遠い場所にいる龍堂から目をそらし、今は目の前にいるゴブリンジェネラルを見据える。


(だがな、紅葉の居場所を奪ったお前だけは許さねえぜ。いつかは追い越してやるぜ、龍堂!)


 彼の渾身の思いを乗せたボールは兜すら打ち抜く弾丸となって闇へと消えていくのであった。




 そして、日曜日の昼間。予定よりも早くゴブリンジェネラルを討伐したため、レイドイベントが終了し、ムービーが流れる。そこにはフォーゼの城内にいる小太りの王様が真剣に悩んだ末、各地に伝達するよう大臣に命じる。


「プレイヤー諸君、この度のゴブリンによる侵攻を防いだこと誠に感謝する。だが、専守防衛だけでは民が疲弊するだけ。よって、我々は大魔境にある魔王城を攻略し、魔王ラースを討伐する!」


 そして、年内に魔王ラース討伐レイドイベントが開幕することが発表された。そのことを受け、各地のブロガーやチューバ―たちはおすすめの武器等を紹介する動画などを上げるなど、活発に動き始める。すでに露店からは闇属性の弱点がつける光属性の素材が高騰の兆しを示していた。

 しかも、プレイヤーに衝撃を与えたのはそれだけではない。一連のイベントが終わった途端、コクエンの名前があらゆるランキングから消えたのだ。そして、フォーゼの上空、ドラゴン姿の龍堂がプレイヤーたちに聞こえるよう大きな声で話す。


「コクエンは俺様との決闘で敗北し、自身のデータを消した。よって、【漆黒の翼】は俺のものだ!」


「不仲疑惑はあったけど、本当だったのか……」


「新生【漆黒の翼】はPKを許可する。せいぜい俺たちを楽しませてくれよな」


「ふざけんな!」


「俺たちが勝てるわけねえだろ!」


「ぐははは、雑魚の悲鳴がこんなにも気持ちいいなんて思わなかったぜえ」


「見るに堪えんな」


「その声は……!?」


 龍堂の前に降り立つは大きく白い翼を広げる大天使。その兜を脱ぐと、先ほど消したコクエンと呼ばれていた端正な顔つきの女性が現れる。


「コクエン、てめえ約束を破ったか!」


「破ってはないぞ。コクエンのデータはきちんと消したからな。今の私は大天使のハクエン。レベルは少々低いが、ギルド【星の守護者】のマスターだ」


「そんなギルド聞いたことがねえ」


「私のサブしか使っていないギルドだ。コクエンのアイテム・装備もこちらに移させてもらった」


「てめえ……もし、ハクエン、いや【星の守護者】に与するような奴がいれば【漆黒の翼】が優先的に排除してやる!」


「良いだろう。その挑戦、受けて立つ!」


 ギルドマスターコクエン、もといハクエンの新生ギルドの設立。龍堂の個人プレーが気に入らない者たちは【漆黒の翼】を抜け、他のギルドに。元々コクエンと仲の良かったダイチたちは誘われていたこともあり【星の守護者】へ移籍する。これにより、【漆黒の翼】1強時代は終焉を迎え、複数のギルドがしのぎを削る戦乱時代へと移り変わっていくのであった。

ミクLv77(レイドイベント終了時点)

 SP:100

 種族:吸血姫

 職業:なし

 武器1:暗黒の剣(攻撃+50、闇属性の攻撃アップ)

 武器2:ヴァンパイアロッド(知力+50、【吸血鬼】を所持し、夜の場合さらに知力+50)

 頭:黒魔術の帽子(MP+20、知力+30、闇属性の攻撃アップ)

 服:忍びの服(防御+30、敏捷+20、敵に気づかれにくくなる)

 靴:ヴァンパイアシューズ(敏捷+50、【吸血鬼】を所持し、夜の場合さらに敏捷+50)

 アクセサリー1:パラソル(日光の影響を抑える、水属性の軽減)

 アクセサリー2:魔法の腕輪(MP+20)

 アクセサリー3:闇のネックレス(MP+50、闇属性の攻撃アップ)


 HP301/301

 MP391/301+90

 攻撃572/522+50

 防御167/137+30

 知力492/412+80

 敏捷584/514+70

 器用さ167

 運77


 技・魔法

 ブラッディネイル、ファング、シャドーボール、ブラッディファング、ブラッディアロー、

 ブラッディボール、隷属:サイクロプス、ダークボール、ダークスラッシュ、隷属:人食い植物

 隷属:アクアクラブ、ブラッディレイン


 固有スキル

【吸血】、【吸血鬼Lv4】、【吸血姫Lv4】、【魅惑】、【闇の力Lv4】、

【動物会話】、【真祖Lv3】、【隷属】、【怪力Lv2】、【魅了強化】、

【自己再生】、【魅惑の魔眼】、【飛行】、【斬撃強化Lv2】、【霧化】

【闇魔法Lv1】、【使役強化Lv1】、【敏捷強化Lv1】


 汎用スキル

【投擲Lv4】【遠投Lv4】【見切りLv5】【採取Lv3】【ジャイアントキリング】

【加速】

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