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第13話 装備を整よう

 翌日、これ以上紅葉の家に寝泊まりするのは悪いと思った三雲は曇天のうちに自分の家へと戻った。日光が差し込まないようにしている自分の部屋の明かりをともし、さっそくゲームの中へと飛び込む。


「お金も素材も溜めたぜ」


「うん、こっちもメインでギルドの鍛冶師のリンさんに話をつけておいたよ。今日はフォーゼの市場で作った装備を売っているみたい」


「リンね。よし、フォーゼに戻るか」


 相変わらず、NPCとプレイヤーが多くは入り混じる街の中でリンというプレイヤーを探していく。すると、ダイチとアルゴが目つきの鋭い赤髪の女性と話していた。


「ダイチさん、アルゴのおっちゃん、こんにちは」


「ミクとカエデか。そうだ紹介するよ、鍛冶師のリンだ」


「へえ~、あんたたちが……装備作ってほしいんだろ。素材を出しな!」


「これであっているか?」


「その半分で良いよ。初心者にフルプライスで売ろうなんて思ってないよ。専用スキルを使って……ほら、完成だ」



 パラソル(製作者リン:日光の影響を抑える+水属性のダメージを抑える)を手に入れました



「おお!吸血鬼の弱点、一気に補える!とんでもなく強いぞ!」


「はーっはっは、拝み給え!」


「よっ、リンの姉御、最高!」


「姉御か、良いね!じゃあ、他に作ってほしい装備とかあるかな」


「じゃあ、MPアップできる奴。腕輪以外で」


「任せな。闇の石とかはあるかい」


「大量に」


「よし、こいつらを使って……完成だ」



 闇のネックレス(MP+50、闇属性の攻撃アップ)を手に入れました



「攻撃面もアップ!? これは付けねえと!」


「おいおい、気前良いな。俺たちにもサービスしてくれよ」


「じゃあ、後輩と一緒に海にでも行けばいいんじゃないか。ちょうど水属性の素材を切らしてな。今なら高く買ってもいい」


「しゃあねえな。ミク、カエデ、お前たちはどうする? 断っても構わないぞ」


「行く行く!行くよな、カエデ」


「もちろん。強いモンスターと当たってもダイチさんとアルゴさんなら安心できるよ」


「と言っても、レイドイベントが近いからある程度の数を討伐したら、引き上げにはなる。それでもいいか?」


「ああ、構わないぜ」


「よし、決まりだ。リン、素材仕入れてくるよ」


「おう、行った。行った」


 リンに見送られて、アクアクラブが多く出現する浜辺へと向かう。カエデと二人きりで戦ったときは悪戦苦闘した場所だが、パラソルを装備したことでHPの減少は防がれている。これならカエデも他の人の回復に手を回すことができる。


「まずは挑発を撃ってと……」


「ヘイトを奪うのは良いけど、アクアクラブの攻撃は範囲攻撃。その盾じゃあ防ぎきれないぜ」


「なら、こうするまでだ。ビッグシールド」


 持っていた盾が巨大化し、地面に突き刺さる。泡が盾にパチパチとぶつかっては消えて防いでいく。その盾が消えた瞬間、灼熱に染まったアルゴが突っ込んでいく。アクアクラブの泡などなんのその。シャボン玉程度にしか思えない彼が大斧を振るうと竜巻が発生し、アクアクラブを上空へと巻き上げる。


「シャイニングスパーク!」


 天より降り注いだ雷光でアクアクラブがまとめて焼かれていく。浜辺にこんがりとした良い匂いが漂い、食欲をそそられる。


「これ食えねえかな」


「そういうのはレストランに行けば食べられるよ。ゲーム内だからいくら食べても太らない」


「あとで行ってみるか。そうだ、次は俺が攻撃してもいいか?」


「良いよ。この魔法、クールタイムが長いからね」


「よし、行くぜ、新魔法、ブラッディレイン!」


 上空より降り注いだ血の礫がアクアクラブに降り注ぎ、ダメージを与えていく。昼間ということもあってアクアクラブを倒し切ることはできなかったが、そこはアルゴやカエデの弱めの攻撃でも倒し切れる範囲内。強攻撃と交互に撃てば、それなりのペースでアクアクラブを倒せそうだ。


「なあ、ダイチ。ここのボスを出す条件なんだったか」


「その日のアクアクラブの討伐数一定以上で確率出現。一説には100体程度とは言われている」


「よし、ボス討伐するまで帰さねえぞ!」


「「おー!」」


 アクアクラブをひたすら倒し続けていくと、海からゴゴゴと地響きが鳴り、波が高くなっていく。明らかな異常にミクたちが海に向かいあうと、巨大なアクアクラブが姿を現す。


「でけー!」


「キングクラブLv73、浜辺最強のモンスターだ。ダイチ、行けるか」


「おう、こっちだ!」


 ダイチがヘイトをとると、キングクラブの向きを変えてミクたちがバックアタックをとれるようにする。そして、アルゴとカエデがキングクラブの足を狙い始めたのを見て、ミクもそれに倣うことにした。


「あれだけデカかったらパワー重視だろ。隷属:サイクロプス!」


 サイクロプスを呼び出してキングクラブとど付き合いさせる。彼女たちの攻撃で片足のHPを失わせると、キングクラブのバランスが崩れて動きが止まる。


「よし、今のうちに攻撃を叩きこめ!」


「ブレイクアックス!」


「ブラッディファング!」


「シャイニングスパーク!」


 キングクラブにクリティカルヒットの攻撃を叩きこんでいく。みるみるキングクラブのHPが減っていく中、失われた足が時間と共に再生していく。


「ダイチさん!」


「言われなくても見えているぜ。フレイムブレス!」


 ダイチが口から火を吐くと再生しかけた足の傷口が焼かれて、傷口が塞がる。塞がった傷口では再生できないようで前方にしか攻撃できないキングクラブをハメ殺しにする。



 Lv70に上がりました

【使役強化Lv1】(使役しているモンスターが強化される)を覚えました

【闇の力Lv4】に上がりました

【怪力Lv3】に上がりました



「なんだすげー弱いボスじゃん」


「攻略方法が固まった今はな。実装当時は固いわ、範囲をばら撒いてくるわ、HP減少で発生する攻撃でHP吹き飛ばされるわで、物理アタッカー中心のパテだとこいつが出たら死を覚悟していたんだぞ」


「そんときは魔導士で固めて突破が主流だったな。懐かしいぜ」


「魔法防御が低いモンスターですからね」


「そうなのか~、俺もはやくゲームはじめたら良かったぜ。みんなで攻略方法を考えるとか面白そうじゃん」


「今はアハトマ大神殿を攻略中(推奨レベル100~110)だ。ただ、これが光属性中心のダンジョンだから魔人の俺たちとかは弱点がつけるとはいえ悪戦苦闘中」


「回避系の連中ならまだ立ち回れるんだが、俺たちは昔ながらの耐えて倒すタイプのキャラなんでな。今はセプテム大樹海(推奨レベル90~100)で経験値と金稼いで強化中だ」


「光か……吸血姫の俺だとすげー苦戦するなぁ」


「でも、これで属性は一周している上に、次のダンジョンはノイマン大魔境って名前だから、闇属性中心じゃないかって話題にはなっている」


「光飛ばしてそっちを攻略したい」


「同感だな。だから耐久系の闇属性キャラを使っている奴は次のアプデ待ち状態だ」


「さてと、俺は水の魔石が出なかったが、アルゴはどうだ?」


「こっちもだな」


「あっ、俺出たぜ」


「みっちゃん、おめでとう。防具に水属性の耐性をつけたいなら残すのもありだけど、どうする?」


「リンの姉御に渡すか。お金欲しいし」


 得られた成果をリンに報告して、必要な素材を売却して資金を得たミクは海鮮に舌鼓をうとうとレストランへと向かう。


「こちら本日の海鮮丼。ネタは黄金ウニ、ぷちぷちいくら、キングサーモン、デビルイカ、カッターマグロの5種です」


「おお、うまそ~」


「じゃあ、さっそく」


「「いただきまーす!」」


 わさび醬油をかけて食べ始める二人。海から漂う潮風を感じながらの海鮮丼は普通の海鮮丼よりもおいしく感じられる。


「このいくらぷちぷちしててうめえ~」


「このマグロ、赤身なのにトロみたいに溶けたよ」


「ウニ、にがくねえ!」


「リンさんのおすすめの店だけあるね」


「来てよかったぜ」


 育ち盛りの二人はやや物足りなく感じ、サイドメニューまで手を出していくのであった。

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