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第131話 Aランク試験(後編)

 3階層に入ると人工的に作られた壁になっており、そろそろ終わりも近いかと期待させてくる。MP切れが心配な後衛二人に戦闘への負荷をかけないように、ミクは機械兵を召喚し、後方からの支援に回す。


「しかしまあ、今度はトラップ地獄だな」


 シータが文句を言いながら転移罠や地雷、ガストラップに落とし穴の開閉スイッチやらを解除する。そこそこあった1階層よりも種類も数も多いのだから至極当然だともいえる。


「モンスター感知まで手回る?」


「ちょいっとキツイけどなんとか……」


「ケアミスしてもらいたくないけど……ウィンとヒラリーは?」


「僕は戦闘魔法専門だ。守備範囲じゃない」


「2階みたいに死霊系なら……」


「ここでみかけたのガーゴイルだしな。死霊はでてこなさそうだ。最悪、その場その場で対処――」


 そういっていると、自分たちを感知したガーゴイルが飛来してくる。ただ彼らの本文は石像に成りすましての奇襲。正面からくる分には弱い。ミクがあっさりと両断し、切り捨てる。


「魔法を撃つ必要もなかったね」


「ああ、罠が多い分、この階層のモンスターは弱いみたいだ」


「あっ、やべっ……デカ物が来るぞ。こいつは地面からだ!」


 4人が急いで後ろに下がると、先ほどいた場所をぱっくりとサンドワームの亜種であるダンジョンワームが飲み込んでいく。その巨大な口をミクたちに向けて突進してくる。


「プロテクション」


 ヒラリーの作ったバリアに阻まれるも、一発の衝突で大きくひびが入り、2度目の衝突は耐えそうもない。ダンジョンワームが次の突進を仕掛けようと体を大きくくねらせた無防備なところを【加速】したミクが懐に飛び込み、剣で叩き斬る。


「ガーゴイルみたいに一撃で倒せないか。だけど!」


 ミクがさっと身を引き、自分の身で隠していたウィンのサンダーボールを当てさせる。麻痺で動きが取れないところに背後に回ったシータがバックアタックを決め、さらに硬直。すかさずミクが再度斬りかかり、ダンジョンワームを倒すのであった。


「ナイス連携!」


「私たち、良い感じだよね」


「悪くないな」


「ああ、このまま進もうぜ」


「油断大敵だけどな」


「分かっているって」


 ちょっと浮かれ気味のメンバーを落ち着かせて、さらに進む。ダンジョンワームの奇襲が数回ほどあったもののほぼ同じ方法で対処していく。そして、無敵の進軍してきたミクの前には豪華な装飾が施された扉。おそらく、この先にダンジョンのボスが居るのだろう。


「シータ、近くに敵は?」


「……いねえみたいだな」


「慌てて入る必要もない。少し休憩してから入ろう」


「賛成。あのでかいミミズのせいで体力もMPもキツキツ……」


「僕も同じだ」


 誰かが休めていた1、2階層とは違い、この階層では休む間もなかった3人は疲労困憊。機械兵は弾切れのためクールダウン中。プレイヤーであるミクは肉体的な疲れこそなかったものの、ダンジョン通して集中しないといけない場面も多く、精神的に疲れていた。

 それから10分ほど経過し、ベストコンディションでなくともあと1戦くらいならやれるくらいには回復した4人は中に入る。

 天井も高く、ただ広い部屋の中に居たのは山羊頭のいかにもな悪魔系モンスター。大きな翼を広げ、大声を発し、室内に風が巻き起こる。


「出し惜しみは無しだ。いくぜ、トカゲ野郎!」


「トカゲじゃねえよ、ドラゴンだろ!?」


 ヴァンパイアドラゴンを見た悪魔が巨大化し、それに呼応するかのように両者は激突する。力比べはほぼ同じ、いや魔法で強化しているのか悪魔側が押している。だが、圧倒できるほどの差は無く、悪魔の動き自体は封じ込めているので、シータのパラライズナイフが切り付けるも麻痺にはならない。


「巨体過ぎて状態異常の効き目が弱いか」


「ならば僕たちの魔法で、シャイニングレイ」


「セイントフレア」


 ウィンとヒラリーの光魔法がぶつかり、怯む。ダメージを通せる二人を主軸にして戦いたいが、問題は残りMP。多少休憩したとはいえ、完全には回復しきっていない。となれば、ミクが出す指示は一つだ。


「ヒラリー、回復も防御魔法もシータがやばい時だけ使え!他は攻撃に回すんだ」


「ミクは!?」


「攻撃を全て躱す。【灼熱の血】」


 炎の羽を広げて飛び立ち、上空から光属性を付与した鉄球をぶつけると、ウィンたちと同じように怯む。どうやら光属性の攻撃のみ通用するようだ。


「フォーゼを乗っ取ろうとした魔族と同じなら、負けるわけにはいかねえよな」


 今度は聖剣で目を切りかかり、悪魔が思わず斬られた箇所を抑える。その隙にヴァンパイアドラゴンが押し倒し、マウントをとってボコスカ殴り始める。そして身動きが取れないならウィンたちも、今残っているすべての魔力を込めて威力のある攻撃を撃つこともできる。


「喰らえ、ライトニングボルト!」


「ジャッジメントフレア!」


 二人の魔法がさく裂し、悪魔が思わず悲鳴を上げながらも、ヴァンパイアドラゴンを押しのけようとする。マウントをとるのが難しくなったヴァンパイアドラゴンがブレス攻撃をしようと飛び上がり、入れ違いにミクが聖剣を悪魔の左胸に突き立てる。たたらを踏む悪魔にヴァンパイアドラゴンのブレスが聖剣を体内に押し込み、貫く。


「ぐおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」


 最後の絶叫が終わると同時に、地に伏し、その姿を消す。それと同時に外に通じる転移の魔法陣が現れ、4人はギルドへと戻るのであった。

 そして、ミクと同行した3人がギルドの受付嬢に呼ばれ、奥の部屋に連れていかれること10分。受付嬢から、今回の試験結果が伝えられる。


「お持たせしました。戦闘力に加え、適切な指示、チームワークやコミュニケーション能力が高く評価され、無事Aランク合格です。同行した3人からも機会があればもう一度一緒に冒険したいとのことです」


「良いな、それ」


「ということで、今日から貴女は世界各地にある様々な高難易度クエストを受注することができます。様々な困難が待ち受けているとは思いますが、今回の試験を思い出し、一人で戦っているわけではないことを胸に刻んでください」


「分かっているって。俺だけじゃあ、あのダンジョンクリアできなかったしな」


 無事Aランクに昇格したミクは今まで受けることのできなかったクエストを探しに行くのであった。

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― 新着の感想 ―
すっっごい面白い作品!全部見ました 続き書いてほしい〜 これでしか得られない栄養があるんです
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