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第121話 クリスマスパーティー

 ローマで起こった原因不明の集団幻覚事件がいまだにテレビから消えぬ中、世間はクリスマスムードを漂わせていた。そんな世の中の情勢で、学園内では期末テストも終わり、学生たちはすっかり冬休み気分だ。それはオカルト同好会も例外ではない。


「というわけで、クリスマスパーティーの日時を一日早めて23日に変更ですわ」


「年末イベが世界の命運がかかる一戦だもんね。フル出場しないと」


「……普通は信じない。でも、私たちは信じる」


「そうそう。こんな動画が流れても今更って感じ」


 美香がスマホでミクとネロが対峙している動画を見せる。現実世界に来て早々、【鮮血の世界】を使ったので、動画時間は短いが観客たちの困惑、悲鳴、パニックは言葉が分からずも見てわかる。


「血は実体化していたのか」


「この後の火もね」


 別の動画を再生すると、手にしていたパンフレットを突っ込んで燃えていることが分かる。あの場で実体を持っていないのはミクとネロの二人だけのようだ。


「あの場で逃げさなかったら俺たちの攻撃の巻き沿いになっていたかもな」


「だとしたら運が良かったわね」


「これなんて実際に報道された奴~」


 現地ニュースを上げている動画だが、ヘリからの撮影で火事の様子が大きく映し出され、コロッセオの中心で戦っている二人の姿も同時に撮影されていた。だが、距離が離れているせいでぼやけており、誰かなのかまでは分からない。


「これだけの騒ぎになったら、みっちゃんのことバレているよね~」


 今度は考察動画。ミクが【鮮血の世界】を発動する前に撮った動画を引用し、みゅ~が撮影してきた動画からミクとの比較されている。同一人物であることからゲームキャラが実体化した、軍の秘密兵器だと真実にわりかし近いところまで迫っている。だが、コメント欄を見ると、そんなことできるわけないと否定的な意見が目立ち、コスプレイヤーや映画の撮影じゃないのとか言われている。


「こういった動画で正体ばれしているから警察来るかと思ったけど、そんなこと無かったな」


「誰にも気づかないように数時間で密入国して帰国する。しかも、帰国時間はわずか数分でというのがそもそも無理な話ですわ」


「……ジェット機でも無理」


 もし、そんなことを主張する警察官がいるのであれば三雲の下ではなく病院に連れて行ってあげた方が良いレベルだ。動画に映っているミクとゲームプレイヤーのミクは似ている別人。そう思われるほどまでに事実と常識はかけ離れているのだ。


「具体的な手段は分からずも対抗手段が存在していたという情報だけでも喜んでいたわ。だけど、吸血鬼にならずとも不老不死を達成していることから、おそらくは私たちの世界よりも錬金術方面で進んでいる+世界のリソースを全て注ぎ込んだの結果ということを伝えるとすごく落ち込んでいたわよ」


「……それはそう」


「俺たちの世界なんて科学で不老不死なんてところじゃないしな……」


「幽霊や妖怪はいるけどね」


「……死んでる」


「あれはノーカンだって」


「そういう超次元的存在を除けば、私たち人類が太刀打ちできない状況。やはり、一番の解決策はこの世界にいる黒幕を止めることになりますわね」


「そこに吸血鬼がいるのが厄介よね。生半可な人間なら太刀打ちできないわ。私が吸血鬼のボディならともかく、私たちが作っている『保険』が必要になるわね」


「カーミラは部長たちと一緒に何を作っているんだ?」


「それはまだ秘密。どこで黒幕が聞き耳立てているか分からないし、秘密を共有する人員は最小限の方が良いわ」


「分かったよ。とりあえず、冬休みの間は俺と紅葉、みゅ~はできる限り年末イベントをやってネロの野望を阻止する。麗華は実家に戻って親父さんに話を聞く。部長たちとカーミラは保険づくりで良いんだよな」


「そうですわね。では、本日はこれにて解散ですわ」


 部活が終わり、ミクはクリスマスパーティー用のプレゼントを買いにショッピングモールを訪れていた。自キャラの強化も必要ではあるが、あれだけの騒ぎになればゲーム内でも付きまとうプレイヤーも多く、ほとぼりが冷めるまではゲームから離れたいというのもあった。


「さてと、何買おうかな」


 オカルト同好会の顔を思い浮かべながら、適当な店に入って商品を物色する。


(みゅ~はともかく部長はこういったアクセサリーよりも本とか買ったほうが良いのか? いや、興味ない本とか買われても困るし、メモ帳とか手帳とかの方が良いかも)


 飾りっ気のない陰キャ気質の部長のプレゼントを心の中で決めつつ、みゅ~の三人に会うアクセサリーを探すことにする。目についたのはイヤリングやネックレスといった装飾品。


(しかしまあ、こんな小さいやつで数千円は高いよな)


 男の時は論外として、女になってからもおしゃれして出かけるというのはあまりやらない。だいたいが紅葉たちに言われて渋々といった感じだ。センスが無い自分にイヤリングなんかの着飾るものを選ぶ目はなさそうだと思いつつ、他のものを探す。


(恵は猫好きだし、猫系のやつ探すか。色違いあれば3人分買っておけば、仲間外れ感ないだろうし)


 貰って使わないものではなく、できれば実用性があって安いもの。そういったのを探していると、ゆるキャラっぽい猫のストラップ。POPをみるとアニメのキャラらしいが、そういうのには疎い三雲には分からない。


(何種類かあるみたいだし、コレにするか)


 適当に3つ買って会計を済ませる。次に部長用の手帳を探しに本屋に。まっすぐ文具コーナーに向かい、どの手帳にするか見定める。


(部長に可愛いものは似合わないし、無難に……いや、ゲーム内であれだけハジけているから、意外と可愛い物好きかも? う~ん……まあ、無難なやつ選ぶか。綾香はこっちの明るい色のやつにしておこう。一緒にいることが多いし、おそろいの方が良いだろ)


 二人のプレゼントをカゴに入れたところで、麗華とカーミラのプレゼントを考える。


(カーミラは……学者だし、手帳よりメモ帳の方が良さそうだ。金持ちの麗華が一番難しいな。欲しいものが思いつかないぞ)


 カーミラ用のメモ帳もカゴに入れて、会計を済ませつつ麗華へのプレゼントに悩む。今まで、同好会を引っ張て来たこともあってなんらかの労いができるものが良いなと思いながら店を回る。


(栄養ドリンクでも渡すか? ネタとしては面白いけど、やったら怒られるだろうな)


 何も思いつかなかったら真面目に選択肢として考えつつも、店に入って前々から紅葉のプレゼントとして考えていた品物を買う。これで残すは麗華1人。もう栄養ドリンク案で行くかと思った時、ある商品が目についた。


(……まあ、栄養ドリンクよりかはマシか)


 その商品を購入し、ショッピングモールを後にするのであった。



 12月23日。冬休みということもあり、学生の大半が家族と一緒に年末年始を過ごすことを選んでいる中、オカルト同好会の面々は会議室を貸し切りにしてクリスマスパーティーを開いている。机の上にはケ〇タのチキンバレルやスナック菓子、ジュース類が置かれており、部屋の隅に置かれているクリスマスツリーがそれらしさを醸し出している。


「ようやくローマの騒動がひと段落した感じだ」


「クリスマスが近づいたらそれ一色だもんね」


 12月初めはあれだけ大騒ぎしていた集団幻覚事件も、今や見かけることすらなくなっていた。死傷者無し、未だに原因不明、続報無しとなればそうなるのも必然なのかもしれない。それを見計らって三雲がログインしても数人に呼び掛けられるくらいで、少し話すとあっさりと引き下がる。イベントが明日に控えているのも大きいのかもしれない。


「では、プレゼント交換の時間と行きますわ。一番手はこのワタクシから」


 麗華からプレゼントの箱を受け取る。全員が同じ形状、同じラッピングをしていることから、中身は同じものなのかもしれない。その中身をみると、ロケットペンダントが入っていた。中身を見ると、ギルド対抗戦の祝賀会でのスクショ写真が入っていた。


「いつの間に撮っていたんだ?」


「撮られていることを知られたらサプライズになりませんので、冥に密かに撮らせていただきましたわ」


「お嬢様に気が早すぎると進言したのですが、聞き入れられず……」


「計画というのは何か月も前から準備をするものですわ」


「今度はみゅ~一同からのプレゼント」


「……3人ひとまとめにしたのは金欠不足のメンバーを誤魔化すため」


「いや~、マイクが壊れたのが痛かったね。でもプレゼント選んだのは私だから許して」


「アタシは許そう。でもみんなは許すかな」


「許して~でないと後日のお小遣いなくなっちゃう」


 と少し笑いを誘ったところで、みゅ~のプレゼントを受け取る。周りのプレゼントをみると形状や大きさが違い、それぞれ別の品物らしい。三雲の箱の中にはマニキュアが数本入っていた。


「ミクミクはこれを使って、おしゃれに目覚めて欲しい」


「元男だからって駄目だよ。塗り方は教えてあげるから」


「……精進します」


 周りをみると、栄養ドリンク1箱を送られていた麗華がわなわなと手を振るわせていた。栄養ドリンク案を選ばなくてよかったと思いながら次のプレゼント交換に移る。


「次は錬金術師組でいくわ」


「う、うけっとてください」


「部長、緊張しすぎ」


 錬金術師組からのプレゼントを開けると、銀色に輝くリングと金属製のチェーンが付いており、ネックレスにしても良し、そのまま指輪にしても良しといった感じだ。


「大人っぽい。高かったんじゃない?」


「錬金術で作ったから原料はリーズナブルよ」


「へえ~そうなんだ」


「この光沢、この重量感……本物のプラチナですわね?」


「おい、さっき錬金術で作ったって言ったよな。もしかして……」


「……」


「…………」


「………………少なくともこの世界の法には触れてないわ」


「よし、次は俺だ」


 やっちまったんだなと思いながらも、三雲がプレゼントを渡していく。


「……ぬこ」


「こっちは猫サムライ」


「たれ猫だね」


「……どっちも欲しい」


「じゃああげる」


(せめて俺がいないところでやってくれない? 渡したプレゼント、すぐ他の人に渡されるとくるものが有るんだけど)


 とはいえ、喜んでいるから良いかと思いながら、錬金術師組にプレゼントを渡していく。


「私たちの世界より紙質は上等だから助かるわ」


「大人っぽくて良い」


「一纏めにされた感じだけど、まだ買ってなかったらOK」


 今度は麗華にプレゼントを渡す。彼女が箱の中身をあけるとキョトンとした顔をする。


「ハンドクリームですわね」


「みっちゃん、なんで?」


「俺ってこんな体だから夜寝付けなくて、夜中に軽いジョギングしているときがあるんだけど、麗華の部屋って夜遅くまで明かりがついているし、季節柄肌荒れとかしやすそうだから買ったんだ」


「栄養ドリンクよりかはマシですわね」


 危うく栄養ドリンクが2箱になるところだったとは言えず、最後に紅葉にプレゼントを渡す。プレゼント箱の中からは赤いマフラーが出てくる。


「紅葉は寒がりだからな。それに昔から赤色好きだろ」


「うん。でもね……」


 そう言って紅葉が三雲にプレゼントを渡すと、箱の中からは赤いマフラーが出てくる。


「ダブりましたわね」


「……相思相愛」


「考えていることは同じか」


「えへへ。明日からは双子コーデだね」


「良いけどな」


 最後に紅葉からのプレゼントを渡して、プレゼント交換が終わる。それからしばらくして、話すこともなくなり、解散の流れとなった。

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