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第10話 バレた吸血姫

「よっしゃー!カーミラに勝ったぜ!」


「「「「じー」」」」


 勝負に勝って喜ぶもつかの間、事情を知らないダイチたちから冷たい視線が向けられる。それもそのはず、吸血鬼が通常のレベルでは覚えられないスキルをふんだんに使った戦闘だからだ。


「ここまで一緒に戦ってきた仲だ。どうして【隷属】などのスキルが使えていたか教えてくれ」


「場合によっては運営にチートツールの使用で通報せねばならん」


「ああ、わかったよ。俺は吸血鬼じゃなくて吸血姫なんだ」


「吸血姫? 聞いたことない種族だな。ステータスを見せてくれないか」


「良いぜ」



 ミクLv60

 SP:20

 種族:吸血姫

 職業:なし

 武器1:暗黒の剣(攻撃+50、闇属性の攻撃アップ)

 武器2:アイアンロッド(知力+30)

 頭:黒魔術の帽子(MP+20、知力+30、闇属性の攻撃アップ)

 服:忍びの服(防御+30、敏捷+20、敵に気づかれにくくなる)

 靴:スピードシューズ(敏捷+30)

 アクセサリー1:日傘

 アクセサリー2:魔法の腕輪(MP+20)

 アクセサリー3:


 HP240/240

 MP280/240+40

 攻撃430/380+50

 防御130/100+30

 知力330/270+60

 敏捷450/400+50

 器用さ150

 運60


 技・魔法

 ブラッディネイル、ファング、シャドーボール、ブラッディファング、ブラッディアロー、

 ブラッディボール、隷属:サイクロプス、ダークボール、ダークスラッシュ、隷属:人食い植物


 固有スキル

【吸血】、【吸血鬼Lv4】、【吸血姫Lv4】、【魅惑】、【闇の力Lv3】、

【動物会話】、【真祖Lv3】、【隷属】、【怪力Lv2】、【魅了強化】、

【自己再生】、【魅惑の魔眼】、【飛行】、【斬撃強化Lv1】、【霧化】

 汎用スキル

【投擲Lv4】【遠投Lv4】【見切りLv4】【採取Lv3】【ジャイアントキリング】

【加速】



「本当に吸血姫って書いてあるな。別種族なら吸血鬼とはスキルを覚える順番が違うといったところか」


「おかげで無職だけど」


「デメリットがきつくないか。いや、早期に高レベルのスキルを覚えられるなら妥当なのか」


「型が一つしかないのは相当なデメリットだ。なにせ、対策されやすくなる。ともあれ、君が不正を働いていないってことが分かっただけでも良かったよ」


 アルゴも通報ボタンから手を放して、メニュー画面を閉じる。そして、意識を失っていたカーミラがゆっくりと立ち上がって、まだイベントが続いていることを彼女たちに意識させる。


「この私が負けるはずが……」


「もう一度、やるか。でも、そのときは6対1にさせてもらうぜ」


「ぐっ……今日のところは引いてあげるわ。くれぐれも追ってこないように!」


 霧になってカーミラの姿が消える。一応、吸血魔城のボスを倒した扱いになっているため、ドロップアイテムは手に入っているが、お目当てのものはまだ手に入っていない。


「ボスを倒したとはいえ闇の石も欲しいから他のところも探索したいんだが、それで大丈夫か?」


「ワタクシは問題ありませんわ!」


「お嬢様がそういうのであれば」


「私も」


「俺も」


「よし、まずは地下からだな。メイ、罠チェックは頼めるか」


「お任せを」


 メイが罠を解除しながら進み、襲い掛かる吸血鬼や幽霊を倒して奥の部屋に向かう。その部屋の一角にある本棚を迷わず動かすと地下へと続く階段が現れる。そこにある部屋の一つを開けると、アイアンメイデン等の拷問器具が置かれた部屋の中央に星形の魔法陣、その真ん中には空の棺桶が鎮座してあった。


「本来はここでカーミラが目覚めたフラグがたって――」


「キィエエエエ!」


「中ボスのヴァンパイアロード(Lv64)戦だよな!」


 吸血鬼の青年がヘイトをとったダイチに向かい、攻撃を盾で防がれる。そしてアルゴが大斧で殴るのはこれまでと同じだが、その斧が白く光っていた。


「シャイニングアックス!」


「ギャアアアア」


 光属性を帯びた斬撃がヴァンパイアロードに叩き込まれて、そのHPを大きく削る。そこにすかさず2撃目を振るう。


「少々MPがかさむが、これも持っていけ!破魔の一撃!」


「ギャアアアア……」


「おっ、クリティカルか。今日はツイてるな」


「おいおい、中ボスたった2撃死んだぞ……」


「ステも汎用スキルも火力につぎ込んでいるからね~」


「おっ、よく知っているな」


「有名ですから」


「かわいこちゃんにも知れていい気分だ。変わったイベントも見れたし、今日は最高か!」


「ったく、アルゴ、お前はすぐ調子に乗る。こんな感じで中ボスを倒したら赤い鍵が落ちる。最上階に向かって赤い扉のボス部屋でカーミラと戦うんだが……どうなっているんだろうな、この状況」


「俺に言われても困る……」


 一行は不安になりながらも、カーミラが待っていると思われる赤い扉の部屋まで向かっていく。先と同じタイマンならともかく、6人で、いやダイチとアルゴが参戦してくれるだけで勝負ありなこの状況。ボス戦であっても問題はないはずだと、ミクがその扉を開ける。


「待っていたわ。ここを貴方たちの墓場にしてあげる!」


「さっき来るなって言っていたじゃん」


「うるさい!鍵かけていたのに勝手に入ってきたからこっちもやるしかないの!」


「それより、カーミラの名前おかしくないか?」


「ん?」



 恋するカーミラLv57



「んん?」


「これ、絶対みっちゃんのせいでしょう」


「先の魔眼がきっかけで恋に……女同士というのも新しい恋愛のカタチなので否定はしませんわよ」


「わわわ、私が恋するなんてありえないですわよ」


 カーミラの顔が赤くなって、魅了状態になっているのがまるわかりな状態で戦闘に入る。そのため、初手はプレイヤー側で圧倒的に有利だ。


「【士気高揚】でパテの攻撃力上げて……よし。アルゴ、攻撃の準備は良いか」


「もちろんだ!いくぜ、破魔の一撃!」


 カーミラの背後からアルゴが対魔特攻の思い一撃を繰り出し、カーミラのHPを半分以上吹き飛ばす。彼の攻撃で目が覚めたカーミラは後ろを振り向くと、その視界の端にミクがチラリと映る。


「【魅惑の魔眼】!」


「そ、そんなものに惑わされませんわ!」


「隙ありだ!アクアブレード!」


「暗剣殺」


 ダイチが弱点攻撃である水の力が宿る青白い剣でカーミラを切り付け、メイが天井より無数の黒いナイフを投げつけてクリティカルを叩き出す。さらにこれだけの時間が稼げば、後列組も強力な魔法を唱える準備ができる。


「行きますわよ、アクアウォール!」


「シャイニングスパーク!」


 滝のような水流に飲み込まれたカーミラに雷光が降り注ぐ。水で電気の通りがよくなっているところに落ちた電撃はその効果を増幅させ、いつもより大きいダメージを叩き出す。レベル差と弱点攻撃を叩きこまれたカーミラに逆転の余地はなく、あっというまにそのHPが削られるのであった。



「くぅ~、次に会ったらコテンパンにしてあげるんだから!」


 と捨て台詞を吐くと、カーミラの姿が消えていく。これでダンジョンは制覇となり、森から抜けるまではモンスターは出なくなる。一行はカーミラから手に入った報酬などを確認していく。


「さすがに得られる経験値は下がるか」


「だが、ドロップアイテムは同じようだ。闇の魔石が手に入ったぞ」


「こういう時に限ってアルゴが先にドロップするのかよ……ついてねえ。ミクちゃんたちはどうだった?」


「俺は闇の石ってのは落ちた」


「私も似たようなものかな」


「ワタクシたちはメイに吸血鬼装備が落ちましたわ」


「ミク様にお譲りしましょうか?」


「良いのか!? あっ、でも、吸血姫に装備できるのか? 【吸血鬼】スキルはあるけど」


「それならば問題ないかと。正しくは【吸血鬼】のスキルを持つプレイヤーにのみ装備なので、吸血鬼装備と呼ばれているだけですわ。しかし、これはレアドロップ。貧乏人は手を出せない高額で出してあげても構いませんわよ」


「意訳しますと、他のプレイヤーに横取りされないように高めの価格設定で出すので、お金はかかりますが、確実に入るように手配すると言っております」


「メイ、余計なことは言わない!」


「畏まりました」


「そういうことか。サンキュー、レイカ、メイ」


「よし、森から出たらもう一度入りなおして周回するぞ」


「入りなおしたら同じイベントが見れるのか検証したいところはあるからな」


「よっしゃー!吸血鬼装備、そろうまでシャトルランだ!」


「「「「「おー!」」」」」


 気合を入れて、森の中を再び突き進む。そして、城の中へ入るとカーミラのタイマンバトルは発生せず、一度きりだったかと思いながら、カーミラとの戦いの場に赴くと……


「また来たの!?」


 レベルも57に下がったまま、ダイチたちはこれは美味いなと思いながら内心ほくそ笑む。彼らにとって経験値稼ぎ場所は別のダンジョンであり、レベル差がありすぎるここでの経験値は多少下がったところで痛くないのだ。【真祖】がなくなったことで全ステータスがダウン+魅了状態で開始し、周回時間の大幅短縮できる方が彼らにとって都合がよいのだ。


「もう、こーなーいーでー!」


 同情するほどにカーミラを倒した一行は夜の12時を過ぎたこともあり、解散するのであった。

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― 新着の感想 ―
[一言] カーミラ可哀想
[一言] 周回するのはゲーマーの習性だよ
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