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VRMMOで吸血姫になった俺は幼馴染と一緒に女学園に入学する!?  作者: ゼクスユイ


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第105話 悪夢攻略

 龍堂が開けられた扉からそっと部屋の奥を覗くと、倒れているミクを引きずりながらベッドに座らせて怪しげな機械をかぶせて、彼女を見張っているナイトメアの姿があった。


(ミクの奴、倒されているじゃねえか。どうするんだよ、俺!?)


 ナイトメアにはバレていないようなので、このままトンズラこいても追いかけられることはないだろう。


(とりあえず身の保証は守られる。これ以上トラブルに巻き込まれることもない……)


 だが、たった数日とはいえ、一緒に暮らしている女の子を放り投げて『日常』に戻るのは龍堂のプライドが許せなかった。


(何か使えるものといっても。絶賛圏外のスマホしかねえし……まてよ、たとえ圏外でもアラームは流せる。それを使えば……)


 流すのは今から1分後。スマホを床に滑らせ、部屋の中心にある機械をはさんでミクが眠らせられているベッドの反対側、なるべく奥の方に行かせる。そして、♪テッテッテーと大音量のアニソンが流れる。


「何事です」


(今だ!)


 大音量のスマホに気をとられて、そちらに向かっている隙に、龍堂はミクの下へと走り出す。足音はアニソンがかき消してくれる。ミクの元に駆け寄った龍堂がヘッドギアを外すと、そこにはすやすやと眠っている。


(寝ているだけか。とりあえず安心したけど…………)


「何者です?」


(これ、どうやって逃げ出せばいいんだ?)


 ミクを背負っている龍堂の前に現れたナイトメアを見て、切り抜ける方法を考える。ナイトメアを無視して逃げるのは、龍堂一人でも厳しいのに意識のないミクを背負っているこの状況下ではまず不可能だ。


「見たところ、貴方はそこの彼女と違ってただの人間のようだ」


「それなら、見逃してくれるとか? (とにかく打開策が出るまで会話を続けるしかない)」


「面白いことを言いますね。夢魔たるワタクシがそのような甘い手を打つとでも?」


「夢魔……サキュバスなら喜ぶけどインキュバスは勘弁だ(つまり、ミクを含めコイツに夢……眠らされているってことか)」


「フフフ……ワタクシとしても貴方の薄い魂を食べたところで、さして力になりません。ですが、余計なトラブルは避けなければ。貴方に催眠をかけてこの機械に繋げるだけです」


「そもそもその機械はなんだ!」


「別に答える義理はありませんが、冥土の土産に教えてあげましょう。この機械はさる御方々から頂いたもの。機械に詳しくありませんし、むしろ憎んでいますが、ワタクシの力を取り戻すにはあーだこーだと言ってられない状況でしたので。やむなく乗ったというわけです」


「人目を忍んで東京都内にこんな大掛かりな施設を作れるわけがねえ!」


「創造主たる御方々であれば可能です」


(創造主、ミクはこの世界がゲームの世界だと言っていた。やはり、このゲームを作った人間が黒幕ってわけか。いや、待てよ。御方々ってことは複数人……下手すればゲーム会社そのものが真っ黒ってことじゃねえか!? とにかくこの状況を切り抜けてミクに伝えねえと……何か無いのか。俺の持ち物で)


「おしゃべりはこれまでにしましょう」


「近づくんじゃねえ!」


「弱体化した今の私は遠距離催眠をかけるにも一苦労なのですよ。こうやって近づかねば」


(こうなりゃあ、自棄だ! アイツが機械音痴な可能性に賭ける)


 龍堂は自分のポケットに自動車のリモートキーをナイトメアに見せびらかす。突如として見せられた鍵を見て、?を浮かべるナイトメア。


「それはなんです?」


「こいつはさっき、機械に仕掛けておいた爆弾の起動キーだ。それ以上動いたら、このボタンを押してやるぜ」


「機械を壊されたところで、創造主たる御方々に作ってもらえば……」


「おっと、その手は乗らない。さっきから言い回しから見るにお前から創造主に連絡を取る手段はないんじゃないの? もし、あると言うのなら、今!この場で!呼び出してみな!」


「ぐぬぬ……」


(これでハッタリがバレるまで少しは時間稼ぎができる。と言っても、1、2分稼げば良い方か。早く目覚めてくれよな、ミク)




 少し時間をさかのぼり、夢の世界でミクは必死になってナイトメアの攻撃を避けつつ、鎌やら手やら頭部に攻撃を与えていたが、それらのダメージは全て0であった。


「お手玉は飽きてきましたよ。そろそろ終わらせましょう」


 空気の刃を躱した先に青い球が放たれ、体勢を崩したこともあって被弾してしまう。ナイトメア自体の攻撃力が高くなかったおかげで耐えたものの、何回も耐えられるわけではない。しかもスキル封印の影響で【自己再生】が使えない以上、無理もできない。


 執拗に放たれる弾攻撃を剣ではじき返すと、ナイトメアの頭部に当たり、HPが削られる。しかも、痛がっているせいで、逃げ出すには絶好の機会だ。壁を背にするかはマシだとナイトメアの横を通り抜けて、通路側へと逃げる。


「このワタクシに傷を負わせるとは……」


「そうか、俺からの攻撃は無敵だけど、あいつ自身からの攻撃は無敵じゃないんだ」


 そうと決まればとナイトメアに向き合い、はじき返せる魔導弾を放つまで攻撃を躱すことに専念する。


(風の刃を数回躱した後、アイツは必ず魔導弾攻撃を放ってくる。それを狙えば……)


 そして、狙い通りやってきた青い球をはじき返してナイトメアの体力を削る。そして、口からの炎攻撃、目からレーザー、風の刃と続き、再度行われる魔導弾攻撃を跳ね返す。炎の壁を背にすることが無くなったことで、逃げるスペースも十分にある。攻撃もパターン化されているとなれば、スキルが無くとも避けること自体は容易だ。

 これを数度やり返した後、ナイトメアの殻が紫色へと変わる。


「なんだ?」


「良い気に乗るなよ、ニンゲン!」


 持っていた鎌が消え、手が2対増える。合計6つになった手がミクの周りをぐるぐると回りながら青と赤の魔導弾を放つ。


「今度は下手な鉄砲も数撃ちゃ当たる作戦かよ」


 敵の攻撃方法の変化で、さっきまでの勢いが削がれてしまい、再び防戦一方となってしまう。そんなとき、赤い魔導弾がミクの振った剣に触れた瞬間、大きな爆発が起きて、彼女の軽いからだが壁にたたきつけられてしまう。


「ぐっ……赤い奴は爆発するのか」


 HPはミリ残り。もはや1発も受けることができない状況でカウンター不可の攻撃混じりの魔導弾の中から青色魔導弾だけをはじき返してナイトメアに当てないといけない。再度ミクの周りを取り囲んだ両手から赤と青の球を発射する。


「サイクロプス!壁になれ!」


 通路ぎちぎちにはまったサイクロプスが後ろから迫ってくる魔導弾をミクの代わりに喰らう。残るは前方からくる3つの球。それらをスライディングして躱し、ナイトメアから距離をとる。


「逃げてばかりでは勝てませんよ」


「分かっているっての!アクアクラブ、泡の弾幕だ」


 アクアクラブが後方に泡を吐き出すと、青い球は泡を破って貫通するが、赤い球は泡に触れえた瞬間に誘爆し、追ってきたナイトメアにわずかながらもダメージを与える。


(なるほど。赤い球は相手の近くで爆発させて、青い球は跳ね返せば、ナイトメアにダメージを与えられるギミックってわけか)


 並のプレイヤーならそれらを一瞬で判断しないといけない時点で何のヒントにもなっていないというかもしれないが、中学で130km/h級のボールの軌道を見続けたミクにとって色の判断くらいであれば迷うことはない。


(だけど、問題は数。スキルが使えるか、せめて手数が半分なら攻勢に出れるってのに!)


 今は守勢に回らざるを得ない状況。そう思っている間に後ろを任せていたアクアクラブがやられ、ミクに魔の手が襲い掛かろうとする。もはや、これまでかと思われた時、6つの手がぶれ始め、その内3つが霞のように消えていく。


「なんだ、時間制限的なものでもあったのか?」


「邪魔が入りましたか。ならば、今すぐにでも倒さねば!」


「よくわかんねえけど、この機を逃すわけにはいかねえ!火炎トカゲ、行くぞ!」


 身を翻し、肩に火炎トカゲを乗せたミクがナイトメアに向かっていく。


「そのような弱小モンスターに身をゆだねばならぬなど、笑止千万!」


 3つの手から青、青、赤の球が放たれる。それを向かい撃つのは火炎トカゲの火炎放射。炎が赤い球に触れたことで誘爆した瞬間、青い球がはじけ飛びピンボール球のように壁を縦横無尽に飛び回りながら、ミクに襲い掛かる。


「どうです。球の数が少なくなった分、弾に込める魔力の濃度を調整すればこのように。もはや、逃げ場所はありません」


「俺を打ち取りたいなら、ボー球は効かねえよ!」


 ミクにとって変化球のように曲がるわけでもない、ただの真っすぐなボールの軌道を見極めるなど朝飯前。1発目の球をしゃがんで躱し、起き上がると同時に2発目の球が迫ってくる。そして、剣を振り抜いてナイトメアに特大ホームランを叩きつけると、彼の姿が消え去っていく。




 そして、夢の中で決着がついた瞬間、ミクは夢から覚めて、龍堂が自分を背負っていることに気づく。しかも、目の前には先ほど倒したはずのナイトメアが健在である。


「どういう状況だ、これ!?」


「さっきまで寝ていたんだよ。早くアイツを倒してくれ」


「それでスキルが使えなかったんだな」


「ええい、もう一度ナイトメアワールドを……」



 ナイトメアはナイトメアワールドを唱えた。だが、MPが足りない。



「ぐっ……魔力切れか」


「眠らせられないなら、こっちのもんだ!」


「ミク、行け!」


「おう、【超加速】」


「ぎゃああああああああああああああああああああ!!」


 ミクが一気に距離を詰めて、ナイトメアに魔法すら使わせる暇もなく、一刀両断する。それと同時にレベルアップし、新しいスキルと封印石のかけら2が手に入るが、まだ何も起こらない。


「やっぱ3つ、4つ目がいるみたいだ。あとはここにいる人たちを地上に出したら、この機械も壊しておくか」


「誰かに再利用されても困るからな」


 偶然にも地上には誰もいなかったので、誰にも見られずに意識不明の人たちを地上に連れ出した二人はナイトメアの機械を壊してから渋谷の街を後にするのであった。

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