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VRMMOで吸血姫になった俺は幼馴染と一緒に女学園に入学する!?  作者: ゼクスユイ


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第100話 閉鎖遊戯都市 東京

「とりあえず、コスプレ感ある恰好じゃなくてよかったぜ」


 今、着ている服はゲーム内で来ていた服。もし、これが水着みたいな恰好だったら、警察に連れていかれたかもしれない。服装がゲーム内の服装ということはここは現実ではなく、ゲーム内の世界ということが分かり、そんなことはないかもしれないが。


「メッセージウィンドウは出るけど、ログアウトはできないか」


 念のため通行人にばれないようにメニュー画面を出して、ログアウトボタンを押してもうんともすんとも反応しない。視聴者たちの反応も途切れたままだ。フレンドへのチャット機能で話を聞こうにもエラーが起こり、こちらの状況を伝えることができない。


「東京の道なんてわかんねえし、どこ探索すればいいんだ? モンスターもいなさそうだし……」


 通りすがる人たちがモンスターに襲われている様子もない。とにかく情報収集が先だと、辺りをぶらつくことにした。店頭に貼られている値札は物価こそ現実と同じだが、円ではなくゲーム内と同じくG単位。そして、今のミクの手持ちはダンジョンで手に入れたわずかな資金となけなしのアイテムのみ。


「ネカフェで寝泊まりすれば一晩くらいなら持つけど……とりあえず情報収集もしたいし、探すか」


 適当に大通りを歩いていると、1件の小さなネットカフェを見つけたので、個室でこの東京のことを調べることにした。


「日付は今日の日付だな。それにしてもYAH〇〇のトップページ、やけにWCOの宣伝が多いな。ゲーム内だからか?」


 適当にページを開くと、RISAの写真が映し出され、今季最強プレイヤーになったことでトロフィーを受賞されたそうだ。他にも、ダイチなどの有名プレイヤーにWCOで強くなる秘訣を聞いてみたやこれから来るプレイヤー5選などが書かれていたが、それらの記事に違和感を覚え始め、ネット検索でWCOについて調べることにした。


「龍堂の名前がどこにも書かれてないぞ。それに……」


 ハクエンではなくコクエン名義のインタビュー記事が見つかる。これだけなら、ハクエンとして活躍する前の記事かもしれないが、日付が6月。コクエンのアカウントを消してから数か月が経過している。わざわざコクエン名義にする必要はない。


「最強プレイヤーランキングにもない。どうしてないんだ? 掲示板で聞いてみるか」


 掲示板で龍堂について問い尋ねることにする。返答を待つまでの間、東京で金を稼ぐ方法が無いか調べると、ハンバーガーチェーン店のアルバイト募集の要綱に「WCOのレベル80以上」と書かれているのを見て、見間違えたのかと思わず目をこする。


「見間違いじゃない……な。つーか、これもあれも募集要項にWCOプレイヤーであることが前提になっているぞ」


 いくらゲームの中とはいえ、ここまでやるのかと思いつつ、今度は東京で異変が起こっていないかを調べるが、出てくるのは適当なほら話。こちらはあまり期待できなさそうだ。そして、掲示板に戻ってくると、そこに書かれていたのは「知らない」「誰?」といった書き込み。まるで龍堂というプレイヤーが初めからいなかったかのような反応だ。ただ1つのレスを除いて。


「レスの名前が龍堂。会いたいから連絡お願いしますと捨て垢のメアドか……今は手掛かりもないし、かけてみるか」


 自分も捨て垢のメアドで連絡をすると、今から1時間後にスカイツリー前で待ち合わせとなった。赤い帽子を着た男性とのことだが、5分前になっても中々来る気配はない。


(ちょっと早く着すぎたか……)


「HEY。彼女、今一人?」


「俺たちと遊ばな~い?」


 いかにもチャラそうな男性二人がミクに話しかけてくる。はっきり言ってうっとうしいので、追い払うようなしぐさをしたら逆上して切れかかるような声を上げる。


「ああん!せっかく俺たちが親切にしているのになんだその態度は!」


「なめてんのか!おら!」


「俺様たちはランカー様だぞ!」


「なにあれ、喧嘩?」


 ギャラリーが立ち止まり、スマホでその様子を撮影し始めるも、三人を仲裁する気配はない。今にも殴り掛かりそうにわめく男らに対してどうしようかと考えていると、すみませんと群衆を押しのけて輪の中に入ってくる男性。年は20代ほど、黒い服を着ており、赤い帽子をかぶっている


「あん ? 誰だ、てめえ」


「親戚の子が迷惑をかけてしまって申し訳ございません。ほら、謝って」


「ごめんなさい、龍堂のおじさん」


「俺じゃなくてね」


「ちぇ、保護者がいたのかよ」


 チャラ男たちが渋々といった様子で引き下がり、それを見たギャラリーも何事もなかったかのように解散していく。


「女の子なんだから突っかからない」


「アイツらから突っかかって来たんだよ……確認するけど、龍堂であっているよな」


「そうだ。そっちこそ、ミクちゃんであっているだよな」


「そうだけど」


「とりあえず合流できたし、近くのサ店で話そう」


「俺、金ねえんだけど」


「女の子に金を出させるほどダサくないよ」


「サンキュー」


「……なじみの店だから、コーヒー安くしてくれるし。あの量で400円は破格だぜ」


「へえ~、そうなんだ……400()?」


 ミクは引っかかりを覚える。このゲームの通貨単位はG。円ではない。だが、ゲームのキャラクターも当たり前にGで支払っている。だが、今、横にいる龍堂と名乗る男性は現実の単位である円と言った。それが意味することは一つしかない。


「もしかして、プレイヤー?」


「ただのプレイヤーじゃない。円に反応するってことは俺と同じ立場ってことだろ、ミクちゃん。詳しい話はサ店で」


 喫茶店に入った二人はアイスコーヒーを頼み、情報を交換し始める。最初に情報を明かしたのは龍堂こと、丸山勉だ。


「事の起こりは今から1年くらい前。その日、【漆黒の翼】のメンツと遊んでいた俺はログアウトしようとしたとき、謎のノイズに飲み込まれた。で、気が付いたら現実世界の通貨が円からGになっていたんだ」


「待ってくれ。現実の世界が……だと!? ここはWCOの世界じゃないのか!」


「そんなわけないだろ。現にWCOをプレイできるし」


「いったいどういうことだ……?」


「話を戻すけど、この異変の原因がノイズにあると思った俺はもう一度ログインしたんだ。そしたら、俺のプレイデータがめちゃくちゃになっていて、一気に無名のプレイヤーに転落。アカウントの乗っ取り被害を運営に訴えても帰ってくる返事はノー。途方に暮れながらも、ひとまずはアルバイトしようとしたらとんでもないことが分かったんだ」


「とんでもないことってもしかして……」


「その様子だと知っているようだけど、この世界だと学歴と同じ、いやそれ以上にWCO歴が重要視される。全人口の9割がWCOのプレイヤーだとか。冗談みたいな話だろ」


「コ〇コ〇のマンガじゃねえぞ……」


「だよな。カードとかベイブ〇ードとかビー〇マンでももうちょいマシな設定考えるだろと思いながらも、糞雑魚になった俺のキャラの再育成しつつアルバイト暮らし。底辺扱いされながらもなんとかかんとかマシになったのが数か月前てわけだ。次はミクちゃんの番な」


 話を振られたミクは自分が平行世界の人物で元々男であったこと、黒幕が錬金術の力を使い世界崩壊の危機を招いていること。それを阻止するため、WCOに隠されているSecret OSを破壊しようとしていること、そして――


「ちょい、待て。この世界がWCOの世界だと。ありえねえだろ」


「だから、俺も驚いていたんだよ。俺から見ればこの世界はゲームの世界。だけど、龍堂さんから見たら、この世界は現実。どっちが正しいのかってな」


「俺からすればここが現実って言いたいけど、錬金術だの世界崩壊だの俺の知らない裏事情を知っているミクちゃんの意見を反故にするわけにはいかない。う~ん、とりあえず、この問題はいったん棚上げにしよう」


「棚上げは良いけど、これからどうするかが問題だよな」


「どうするって言われても……とりあえず、ミクちゃんを寮まで送るよ。近くの駐車場に車止めてあるから」


「助かるぜ」


 会計を済ませた二人は車に乗り、学園まで向かうことにした。都内からの移動となると、学園に着くのは夜遅くになる。それはそれで色々と問題になりそうだなと思いながらも、窓の外を眺めているとトンネルに入る。


「あれ?」


「どうしたんだ?」


「いや、神奈川県との境にトンネルなんてあったかなと思って……」


「あるんだからあるんだろ?」


「いやいや、神奈川の県境って川だぜ。トンネルなんか無いって」


「でも、ここって平行世界なんだし、微妙に地形が違うってのはあるかもよ」


「そうなのかなぁ……まあ、俺も生活基盤を整えるのに必死でこの世界の地形とかろくに調べては……って、おい!嘘だろ!?」


「何があった!?」


「標記を見ろ!」


 龍堂に言われて前を見ると、そこには東京に入ったことを意味する標記が書かれていた。すぐに車のカーナビを見ても都内から出る道ではなく、都内に向かう道となっている。


「途中でUターンでもしたのか?」


「そんなわけねえだろ。周りを見ろ、逆走してねえよ!俺たちはいつの間にか都内に向かう道に戻らされているんだ」


「いつ?」


「知らん。窓の外を見ていたんだろ。何か変わったことはなかったのか?」


「ねえよ。間違いなくまっすぐ走っていたぜ」


「ってことは何か。俺たちは東京都から出ることはできないってわけか」


「そういうことになるよな」


「くそ、俺はゲームが趣味の一般人なんだぞ。こんなへんてこ現象何度も喰らいたくねえよ」


「それはこっちも同じだ」


「だよな。ミクちゃん、泊まるところ無いんだろ。とりあえず、俺んちに泊まれ。汚いけど、掃除すれば寝泊まりできるスペースくらいある」


「助かるぜ。こうなったら一蓮托生。ちゃん付けはしなくても良いぜ」


「だったらさん付けもしなくても良い。この閉鎖空間の東京から出る方法が分かるまで俺とお前は同士だ」


「ああ、わかったぜ。龍堂」


「本当は丸山だけどな。そっちで呼びたいならそっちでも構わねえよ」


 ということで、龍堂の住むマンションまで車を走らせることになった。

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