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懐いてた年下の女の子が三年空けると口が悪くなってた話  作者: 古河新後
6章 彼女のヒーロー

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第73話 優しくして……

「し……信じらんない!! ばか! こんのぉぉ!!」


 リンカはこちらが反応する前に走り去ったケンゴの背中に思いっきり叫びそうになるも、注目される視線に気づく。

 何とも言えない感情を抑えつつ、狐のお面をつけると人通りから外れ、近くのゴミ袋へ移動し、


 ばかばかばかばかばかばか――――


「あの……くそばかがぁぁ!」


 感情と共に吐き出したい事をお面越しにゴミ袋の中に叫ぶと、はーはー、と肩で息をしつつようやく冷静になれた。


「――はぁ……」


 感情が冷却され、ふらふらと近くのベンチへ座る。


 何かと動き回るのは彼の長所であり短所だ。昔は一緒に走り回ってくれる彼にとても嬉しく感じたが、今はもう少し落ち着いて欲しいと思っている。


「ずっと変わらないよね。ほんとにさ」


 驚いたり、謝ったり、笑ったり、たまにカッコよかったり。彼の一喜一憂を結果的には許してしまうのは惚れた弱みなのかもしれない。


「……まったく」


 ケンゴの走り去った方をリンカは見る。合流場所は中央広場のステージ会場。今度はちゃんと手を……


「一歩ずつ……」


 最終的には彼はちゃんと戻ってきてくれる。しかし、この件はどうやって咎めてやろうか。


 と、考えながらお面を外して少し休んでから立ち上がろうと思った時、目の前を横切ろうとした青年と眼が合った。


「――――君」

「?」


 青年は近寄ってくるとリンカの手を取る。


「俺と一緒にステージに出てくれないか!」

「…………は?」


 なんだコイツ? とリンカは眉をひそめる。






 オレは公園でも人気の少なく、祭りの光が少ない茂みの向こう側へ移動する。

 ガサガサと移動しながら後ろ目で追跡者を確認すると、ダース・ベイ○ーとス○ームトルーパーが追って来ている。

 標的はオレの様だ。しかし、海のナンパの時のように別動隊の可能性を考えると……


「ここでいいか……」


 オレは止まる。すると、ベ○ダーとト○ーパーも止まった。


「急に殺気を向けて来やがって。オレが何かしましたですか?」


 スターウォー○の住人に恨まれる心当りはない。

 ここなら他の人の迷惑にはならないし、いざとなれば暗がりを利用して逃げ、祭りの人混みに紛れて撒く。


「お前の事は……気にかけていた」


 ベイ○ーが口を開く。少し息が上がっているのか、コーホー、と言う声がたどたどしい。


「故に……許せんのだよ」


 眼鏡トルー○ーが続ける。近眼のト○ーパーとか、戦闘用クローンとしては廃棄モノだろ。

 しかし、二人の声には聞き覚えが――


「……佐藤と田中か?」


 脳裏を横切るのは、1ヶ月前の派遣ヘルプの事。鬼灯先輩の大活躍で窮地を脱した一件で居合わせた派遣先の社員である。

 会社は違っても入社時期は一緒で気の良い奴ら。しかし、一度闇に落ちると凄まじい怨恨を身に宿す(主に女性関係)。

 身に覚えのある殺意は間違いなくその時のモノだ。


「これは神からの使命だ。お前を消せってな」

「シスの啓示を受けやがって……!」


 ベ○ダー(佐藤)が言葉の最後に、コーホー、と息をする。


「背中を押されたんだよ。ガンジーからテメェを殺せってなぁ」

「お前のガンジーは悪魔が成り代わってんだろ」


 ト○ーパー(田中)が眼鏡を一度整えてオレを見た。


「だが、死ぬ前にあの娘との関係を話して貰おうか」


 ベ○ダー(佐藤)の発言。死ぬのは確定かよ。だが、事情を知ればこいつらも少しは気を使うかも知れない。一応は社会人だし。


「昔から面倒を見てるアパートの隣部屋の女の子だよ」

「それはどういう経緯だぁ?」


 ト○ーパー(田中)の疑問。


「母子家庭で、忙しい母親の代わりに世話してあげてるんだ」

「……それはどれくらい?」


 お、ちょっとベ○ダー(佐藤)の声が戻った。正義のフォースが流れ込んできたか?


「一緒に遊んだり、ごはん食べたり、ゲームしたり、お昼寝したり」

「……」


 ト○ーパー(田中)の沈黙。お面で表情が読み取れない分、何を考えているのかわかりづらい。


 ちなみに今二人の脳内では、泉に見せて貰った幼いリンカとケンゴの今までの生活が妄想再生される。


 こっちこっち、と手を引くリンカ。

 おいしいねー、と美味しそうにご飯を食べるリンカ。

 手加減してよー、とゲームで愚痴るリンカ。

 優しくして……と、はだけた浴衣でベッドに横になるさっき見たリンカ。


「うぉぉぉあああ!」

「ぐぁぁぁぁ!!」

「うお?! なんじゃあ!?」


 いきなり本気の雄叫びを上げて、頭や胸を抑えて苦しむヤツらに、オレはガチでびびった。びびって田舎言葉が出た。


 なんだコイツら?! 血の涙を……勝手にダメージを受けてやがる……!?


「……リア充……死すべし」

「……判決……死刑」


 くっ! 殺意が増した……!?

 オレは軽率な事を口走ったかと後悔する。しかし、奴らがどんな考えに至ったのかは知るよしもない。


「一応、聞く。オレを見逃す気は?」

「「ない!!」」


 良いハモリを見せやがって、クソが!


「ここで死ねぇぇ! 鳳ィ!」

「死体は鮫の餌にしてくれるぅぅ!」

「チィィ!!」


 完全に暗黒面(ダークサイド)に落ちやがった! こんな奴らをリンカに近づけると何をするかわからんぞ!

 オレはこれ以上の被害者が出る前に二人は始末せねばならない。 

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