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懐いてた年下の女の子が三年空けると口が悪くなってた話  作者: 古河新後
6章 彼女のヒーロー

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第72話 お尻透けてたよ

「は? そんな事になってたのか?」


 オレはリンカに射的の仕組みを暴露していた。

 一番の目玉商品を選別するペンキ缶は落ちにくくはあるが、落とせないレベルではない。実際に上手く当てれば動いたし、30発くらい連続で最適射撃すれば落ちるだろう。


「だから一組一回の10発までなんだよね」


 同じ流れでの射撃を防ぐための措置として、回数制限が一つ。


「人が代われば、当て感も代わる。そんでもって、落ちないと疑問を口にすれば店員さんが缶を持って中は空っぽだとアピールする」

「それで、位置を元に戻すのか?」

「そそ」


 射撃カウンターから的まではそれなりに距離があり、多少前に置き戻したとしても気づかないだろう。


「元々、ペンキ缶は重くて動きづらいからね。絶対に10発じゃ落ちないし、誰かが中身を気にしたら証明するフリをして場所はリセットだ」


 しかし、仕組みを理解した上で人の少ない時を狙って連続で行けば取れる可能性は高い。


「じゃあ、そっちが全部撃てばいいじゃん」

「はは。まぁ、今回は見送ろうよ。折角祭りに来たんだしさ」


 今しか味わえない雰囲気を捨ててまで、他に熱中するのはちょっと勿体ない。


「本当にいいのか?」

「いいよ。それとあんまりリンカちゃんは前のめりにならない方が良いかも」

「? なんでだよ」


 本人は気づいてない様子。そりゃそうか。


「その浴衣って伸縮性の高いヤツでしょ?」

「お母さんはそう言ってた」

「それに夏用で涼しさを追求してるし」

「? 何が言いたいんだ?」

「……透けてた」

「なに? 聞こえない」


 オレはリンカだけに聞こえるように少し顔を近づけると、


「お尻透けてたよ」

「!」


 思い出したようにリンカは自分のお尻を見る。今はそうでもないので、先程の射的の態勢を思い出して顔を赤くした。


「……なにが見えた?」

「……何も」

「……本当か?」

「うんうん」

「……黒は目立つんだけどな」

「いや水色でしょ?」

「あ?」

「あ……」


 ひ、卑怯な! パンツの色を誘導尋問とは! く、くそぅ……ここまでか……!


 オレは浴びせられる罵声を覚悟していたが、リンカから向けられたのは手だった。


「手……」

「……手?」

「手! を繋いだら……もう気にしない……」


 と、顔を赤くして眼をそらすリンカ。

 え……そんなことでいいの? 昔散々手を繋いで走り回ったと言うのに今さら感。いや、まて……言葉の裏を読め! 国語力を全開にしろ!


「……嫌か?」

「! そんなことないよ! オレも丁度繋ごうかと思っててさ! 人並みも増えてきたし!」


 不安そうなリンカの声から深読みし過ぎたと反省。

 ステージに近づくにつれて人の行き来も多くなっている。はぐれると面倒なので、ステージに着くまでは昔のように手を繋ぎますか。

 オレはリンカの華奢な手を握ろうと伸ばした。


「――――」


 その時、オレの中のニュータ○プが危機を知らせる。強烈な視線と殺気!? どこからだ?!


「――なに? どうした?」


 急に辺りを見回す行動を取るオレにリンカは不思議がる。

 この殺意……覚えがあるぞ……どこだ? どこ――


 ふと、人混みの中にダース・ベ○ダーのお面を着けた奴が、コーホー、とこちらを見ていた。リンカからは死角だ。


「――ヤツだけじゃないな……」


 殺意は二方向から向いている。もう一つの強烈な視線の先には――


「……なんだありゃ」


 ストームト○ーパーのお面の上から眼鏡を着けたヤツがいた。

 奴ら、ヤベぇ殺意だ。帝国がオレを殺しに来たのか?!


「おい、さっきから何を――」

「リンカちゃん、良く聞いて」


 真剣にオレはリンカの肩を手を置くと、は、はい! と彼女は畏まる。


「オレが奴らを引き付ける、君はステージ会場に行くんだ」

「……は?」

「いいね? 会場で合流だよ!」


 オレはそう言うと、リンカから離れる。すると、ベイ○ーとトルー○ーも追いかけてきた。


「あ……おい! こら!」


 と言うリンカの声。許してくれ、君を護るためだっ!






 ペタペタとサンダルに男モノの浴衣を着た男が人混みを歩いていた。


「ったくよぉ……どこに行ったんだぁ~?」


 無精髭にくたびれたサラリーマンを彷彿とさせるのは箕輪錬治(みのわれんじ)

 彼は人波ではぐれたツレを捜してふらふらと歩いている。

 絶えず携帯はチェックしているが既読もつかない。恐らく当人は、はぐれた事に気づいていないのだろう。


「パトロールは結構だけどなぁ~。逆に捜す身にもなれってんだよぉ~」


 気だるそうに愚痴る。

 と、輪投げ店にお菓子が景品で並んでいるのを見つけた。

 スッと寄り、ほいほいっ、と輪を投げる。比較的に難易度の低いお菓子の詰め合わせを取ると、それをムシャムシャと食べながら再度歩き出す。


「やれやれ……面倒だねぇ。さっさと帰ってビールを飲みてぇなぁ」


 なんやかんや言いつつも祭りを堪能する箕輪。しかし、楽しく酔う為にもさっさとツレを見つけておきたい所だ。


「あ~?」


 すると、妙な奴らが人混みから抜けるのを見た。

 ダー○・ベイダーとス○ームトルーパーが知った顔を追っている。


「鳳じゃねぇか。相変わらず面白そうな事やってんなぁ~」


 空になったお菓子の袋を近くのゴミ袋に捨て、箕輪はツレの捜索人員を増やすために歩き出す。

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