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懐いてた年下の女の子が三年空けると口が悪くなってた話  作者: 古河新後
40章 老兵達

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第685話 ワタクシが一緒に居てあげますわ!

『兄さん。今度からは本当に気をつけてよ……』

「ジジィ一人居なくなっただけでいちいち騒ぎ過ぎだ」

『そのジジィが『殺意与奪』の権利を持ってて国の監視網に引っ掛からなかったら無視できないのよ。引退したって考えてるのは兄さんだけなんだから……』


 何とかジョージと接触できた『霞部隊』は、彼とセナを車に乗せて、アパートへ向かっていた。その車内で、渡されたスマホと繋がる妹――烏間美琴の愚痴をジョージは聞く。


『もう、梟医院に向かってもらうわよ。明後日は手術でしょ? 事前検査とかしておかないと』

「昨日、実家でやったから必要ねぇ」

『とにかく! 人の眼の届く範囲に居て! 後、そのスマホは絶対に手放さないように! GPS入ってるから!』

「わかった、わかった。電話口で怒鳴るな……」


 連絡手段を忘れた自分が悪いこともあり、それらの提案を全て受け入れてジョージは通話を切る。


「奥さんですか~?」


 隣に座ってその会話を聞いていたセナは、少し親身な会話からジョージの妻なのかと尋ねた。


「過保護な妹だ。正直、面倒でかなわん」

「ジョーさんって~かなりの資産家とかだったりします~?」


 突然現れた男達にペコペコされるジョージは、彼らを知っている様子だった。わざわざ探していた様子からセナはジョージが富豪か何かかと推測する。


「少しばかり国に貸しがあるだけだ」

「そうなんですか~」


 セナは漠然とした返答を、のほほん、と呑み込む。変に考えてもしょうがないと悟った様子だった。

 対して運転しているセグ1と助手席に座るセグ3は、“少しばかり”じゃないですけどね……と額に汗を流す。


 ちなみに、ゲンとルリの二人とは商店街で別れ、セグ2とセグ4の車にて家路を送って貰っていた。


「今日は助かったぞ、セナ。ワシ一人では立ち行かぬ事も多々あった」

「ふふ~。お役に立てたなら何よりです~」


 セグ1は、この婦人は彼とどんな関係だ? と会話や雰囲気から探っていたが、『神島』とは関係のない一般人であると認識。ジョージも自身の身元は仄めかしている様子なので、自分達が下手な事は言わない様に口を閉じる。


 ジョージとセナは本日の事を振り返る様に楽しげに話していると、いつの間にか見知ったアパート付近の道へ着いていた。


「ありがとうございました~」


 とセナは御礼を言うと車を降りる。


「…………」


 そして、扉を閉める際にジョージが少し考えている様子に、


「最後にケンゴ君の部屋、見に行きます~? 帰って来てるかもしれませんよ~?」

「……いや……今日は――」

「一番最初にケンゴ君に会いに来たんですよね?」


 最後のお節介、と言いたげなセナの微笑みにジョージは、やれやれ、と笑う。


「こっちの扉を開けてくれ。片手じゃかなわん」

「はい、は~い♪」


 セナは車の周りを回るとジョージ側の扉を開けてあげた。






「アヌビス。神として、もてはやされた偽神だったか。本物であったのなら、あの程度ではあるまい」


 赤羽は『スイレンの雑貨店』の用事を終えて原付でアパートへ帰る。すると、見慣れない乗用車が門の横に停まっていた。

 エンジンはかかった様子で停車している。


「ふむ。すまない、少し良いかな?」


 軽く車のドア窓を、コンコン、とノックするとウィーン、とガラスが下がる。


「すまないが、ここに停車するのは止めてくれるかい? 誰かを待ってるならそこの駐車場を少し使っても良い」

「あ、そうですか。すみません」


 運転席に乗っていたセグ1は、赤羽に謝ると指定された駐車場へ車を走らせた。


「やれやれ」


 元は人の少ない静かなアパートで丁度よい老後なのだが、ここ数年は何かと――


“鳳健吾です! これからお世話になります! このお菓子を納めてください!”

“鮫島瀬奈と申します~。これから宜しくお願いしま~す。リンちゃんも~”

“鮫島リンカです! よろしくです!”


「騒がしい事だ」


 立地は良いが、何かと防音に難のあるこのアパートに永く住む者は居ない。それでも良かったのだが、古馴染のツテでやってきた若い者たちは、何かと眼が離せなかった。


 数年したらこのアパートの管理は不動産に全部任せて、自分は世界を回りつつ往生する予定だったが日本で彼らの行く末を見守るのも良いと思っていた。


“タイガ、ワタクシが一緒に居てあげますわ! なに、人の寿命などワタクシにとっては瞬きと同じことですのよ! おほほほ!”

“その気になりゃ俺様も殺れそうだな、アンタ。良いぜ。アンタが死ぬまで、ごみ捨て場は俺様の縄張りにしておいてやるよ! ゲハハ!”


「彼らも楽しんでるだろう」


 部屋の隣の隙間に原付を入れるとカバーをかけてチェーンでロックする。盗難対策は万全だ。その時、


「残念です~」

「気にするな。こう言う日もある」


 二階から、カンカン、と人が降りてくる気配。一人は二階の住人であるセナだと声色で解る。しかし、もう一人は――聞き忘れない声だった。


「…………」

「少し、大家にも挨拶をする。先程、帰って――」


 と、階段を降りてきたジョージを見て赤羽はヘルメットをスッと取る。


「『神島』が私のアパートに何の要件だ?」

「お前は……。まさか、あの爆発で生きていたとはな……赤羽大河(あかばねたいが)


 赤羽は敵意を宿す眼でジョージを見た。

邂☆逅☆

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