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懐いてた年下の女の子が三年空けると口が悪くなってた話  作者: 古河新後
40章 老兵達

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第680話 黒帯を越えたレインボーだ!

 クレープをゲンが頼んでいる間、ルリはふとキラキラが目に入った。

 それは、ゲームセンターの光。騒がしい音も好奇心の対象であるルリにとっては、その喧騒は魅力的に映っただろう。

 吸い寄せられる様に、外から見えるクレーンゲームへ駆けていく。


「ユニコくんだー」


 クレーンゲームの中にユニコ君のヌイグルミ(フルアーマーver(新作))を見つけて眼を輝かせる。

 しかし、自分はお金を持ってないので、ゲンを頼りに行こうとした時、


「わっ」


 ぬぅ、と“番長”が通り過ぎた。

 ルリは大柄なマッスラーであるゲンに慣れている事もあって体格の良い人間は逆に怖れない。しかし、番長の体格よりも学ランと言う見たことのない服装をしていたので興味本位から、こそっと後をつける。

 すると、


「見つけたぞぉ!」


 奥の筐体に座るノリトに番長は声をかけていた。しかし、ルリの興味は番長→筐体へと移る。

 なんだか面白そう、と言う好奇心から、とてとて、と筐体へ近づき――


「ユニコ君よりも俺の方がヤバいって教えてやるぜ」


 不意にノリトが立ち上がり、ルリは目の前で停止。その顔は良く見ると見覚えがあった。

 じぃと泳ぎの練習に行った時に、目の前に現れた――


「――」


 ノリトが視線に気がつき、ルリを見る。

 ルリは返り血を浴びたノリトの笑顔がフラッシュバックしていた。


「ふぇ……」






 ルリがフラッシュバックすると同時に、ノリトもデジャヴしていた。


 なんだ……? こんな幼い子が一人でゲームセンターに居るハズは無い。きっと親御さんと一緒なのだろう。しかし……どこかで見たことがあるシチュエーションだ。どこだったか……いや……ちょっと待て……この子――


「ふぇぇぇ……」


 ノリトを思い出し、蛇に睨まれた蛙のようにその場で硬直し泣きそうになるルリ。あの時はリンカが居たが今は完全に一人だ。

 恐怖心は前と比べ物にならないモノだが、あの時とは違い、ルリの中には一つの思いが存在している。


 ルリはもうすぐしょーがくせい。しょーがくせいは……泣かない!


 ぐっ、と涙を堪えてノリトを見る。

 見ただけである。そこから声を出すまでの勇気はない。しかし、その可愛らしくも強い視線にノリトは、うっ……と怯む。


 この子……前よりも強くなっている。正直、泣き出してあの怪物ジィさんを召喚するかと思ったが……逆に堪えてくれて助かった……

 こんな所で声を上げて泣かれた時にはユニコ君に蹴り出されても弁明出来る自信がない。後は……次の俺の言葉次第か……


「君は――」

「なんだ! このチビは!」


 ノリトが平和的(ピースフル)な会談にしようとした瞬間、横から世紀末思考の番長が、ずいっと割り込む。


「この間男を倒し、俺は嫁を迎えるのだ! 邪魔をするな! このチビ!」


 この野郎……誰が間男だ! 鬼灯はお前と一切合切関係ねぇだろ!

 と、大声で怒鳴り散らしてやろうと思ったが番長の怒声にロリっ子が、ふるふる、しながら何とか耐えている様子に自分が下手に大声を上げるとトドメになりかねない。

 自分が原因で決壊したらもう弁明もクソもないのだ。故に黙るしかない。


「1分1秒も惜しいのだ!」

「…………」


 ロリっ子は、精一杯の強い瞳を作ったままだ。これは……怖くて動けないパターンだな。て言うか……


「おい……お前。相手は子供だぞ?」

「ふん! 関係ないわ! ストレジェプレイヤーは老若男女、全て戦士! 俺の目の前に立つのならそれが赤ん坊でも全力で潰すのみ!」


 コイツ……少しは改心したかと思ったら、前よりもヤバくなってるじゃねぇか!

 商トモがユニコ君を喚びに行った。しかし、ロリっ子の恐怖が決壊するまで既に秒刻みに入っている。あれ? これって……俺も番長の味方みたいに映ってる? やべ……


「そこを退けぃ!」


 ぐぉっ、と遂に番長がロリっ子に手を出そうとした瞬間、俺はその手を止めるように掴んでいた。






「何の真似だ? 貴様とは外で雌雄を――」

「この子はお前よりもずっとずっと強そうだからな。先に俺が相手をしてやるよ」


 とにかく、ロリっ子から遠ざける。俺は残った手で番長の腰を掴む。


「甘いわっ!」


 シュッ! と番長は流れる様に俺に正面を合わせると逆に腰を掴んでいた。

 早っ!? コイツ……柔道を――


「伊達に黒帯を剥奪されてはおらん! そして、鍛え直したこの俺は今や黒帯を越えたレインボーだ!」


 意味わからん事を叫ぶ番長。ふわり、と足が浮く感覚。しかし、まだ対応できる――

 重心を狂わせて投げをミスらせようとした時、ルリが視界の端に映る。

 今、番長と、もつれて倒れればロリっ子を巻き込む――


「どっせぇあ!」


 その葛藤の間にノリトは近くのメダル筐体に投げられた。


「ぐうっ!?」


 激突した衝撃が筐体を不正に揺らしたと判断。ビー! ビー! ビー! と警告音が鳴る。ノリトはその前に座り込む。

 クソっ……馬鹿力が……


「ふんっ! 他愛もないわ! 所詮貴様も口だけよ! きっちりトドメを刺してくれるわっ!」


 ずんずん! と番長はノリトへ近づく。

 あわあわ、と商トモ。

 誰がユニコ君喚べ! と叫んでいる野次馬。

 ビー! ビー! ビー! とメダル筐体。


 誰も番長を止める者は……


「ぬぅ!?」

「……なん……」


 番長とノリトは間に入って両手を広げる人物を見る。それは――


「よわいものイジメ! ダメ!」


 ぷるぷると震えるルリだった。

ユニコ君は審判者

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