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懐いてた年下の女の子が三年空けると口が悪くなってた話  作者: 古河新後
40章 老兵達

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第675話 イッヒッヒッヒ。イーヒヒヒヒ

“ナガレ、お前にコレをやる”


 と、ナガレはジョージから一つの番号を受け取った。


“これは、ワシが『ウォータードロップ号』を見つける際に協力してくれた船長への直通番号だ。名はマッケラン・ファインケル。マッケランは当時、回収した『ウォータードロップ号』の船長の航海日誌を見た。ケンゴの事を調べる前に彼からその話を聞くと良い。ワシの名前を出せば話してくれるだろう”


「やれやれ、こんな事ならもっと早く踏み込むんだったよぉ」


 『ウォータードロップ号』は沈んだ。しかし、沈む前にジョージが何らかのアプローチをかけた事はナガレも予測していたが結果は、やはり、だった。


「順を追ってって事かよぉ」


 それなりの情報は得られるだろう。航海日誌……もし読むことが出来るのなら『鳳』に聞くまでもなく、父の死の意味を知れるかもしれない。


 可能な限り、彼には詰問したく無いねぇ。辛いことを思い出せる事になるだろうしさ。それにリンカの事もあるし。


 それしか手段がなかった故に『鳳』の事を調べる決意をしたが、一旦はマッケラン船長に話を聞く方向で進めて良いだろう。


「イッヒッヒッヒ。次にどこへ向かうのか決まった様だね」

「スイさん。後で国際電話貸してくんない?」

「イッヒッヒッヒ。構わないよ。でも、その前にソイツを取らなきゃねぇ」


 椅子に座って外に出れなくて悩むアヌビス面のオレにスイさんがイッヒッヒッヒと笑う。

 そうなんだよぁ……オレの頭は未だにアヌビスだ。さっき、セナなら取れそうだったから他の人なら取れると思ったけど、スイさんじゃ無理だった。


「そんでさ……」


 いつの間にか帰ってきたローレライが、天井付近の停まり棒からオレをじっと見ている。


「ローレライ、何でオレ見てんの?」


 なんなの? 怖っ……


「イッヒッヒッヒ。これからソレを取るからさ。けど、ローは予備戦力(オブザーバー)でね。本命は別に来るよ」


 横文字も使いこなしちゃってよぉ、スイさん。しかし、本命って……


「グリーンウォッチ。これは、貸しの一つとするぞ」


 キィと、扉が開き一人の老人が入ってきた。その瞬間、マジでビビったよ。だってさ、その老人……ジョーさんと変わらない雰囲気を持ってたんだからさ。


「イッヒッヒッヒ。来たね、レッドフェザー」


 全く、可愛らしいコードネームで呼び合っちゃって。


「彼か?」

「古代部族の遺品さ。イッヒッヒッヒ。好かれたみたいでねぇ」

「あの……外れます?」


 レッドフェザーは、一度ナガレの周りを回り、マスクを全ての角度から見る。


「可能だ。だが、飛び出して(・・・・・)来るかもしれない」

「え? なに? 飛び出す?」

「イッヒッヒッヒ。居るのかい?」

「ああ。しかも、1体だけじゃない」

「イッヒッヒッヒ。ジャックを呼んでおくべきだったねぇ」

「彼女は文化祭に行っている」


 え? なになに? 今から何が始まんの?


「イッヒッヒッヒ。じゃあ、ナガレに手数の一つとなってもらうかねぇ」

「致し方あるまい。彼の魂は?」

「並み以上はあるよ。イッヒッヒッヒ」

「えっと、あの……質問、いいっすか?」

「百聞は一見に如かず。早い方が良い。始めよう」

「イッヒッヒッヒ。イーヒヒヒヒ――」

「え? あ、ちょっ……その笑い方めっちゃ怖い――」


 話を聞かない老人ってマジでヤバいよねぇ。

 ちなみに、ここから先はあんまり記憶にないよぉ。

 気がついたら夜になってて、アヌビスマスクはショーケースに封印されてて、オレは気分が滅茶苦茶スッキリしてたって事くらいかな。





「音が鳴りませんね~」

「故障している感じは無いがな」


 インターホンは押しても無音。しかし、監視カメラは動いているので、何らかの合図は飛んだと考えてしばらく待つ。すると、


“なん、なんなんで! 唐突過ぎるって!”

“誰が来たんだ? ビクトリア”

“日本! 日本が来た!”

“ここは日本だが……。何かの暗号か?”

“機嫌を損なうと、日本から出ていかないといけない相手!”


 そんな声が室内から聞こえて、ドタドタ(廊下を走ってくる音)、ザァザァ(スリッパを履く音)、ガチャリガチャン(扉の鍵が開く音)を得て、キィィ、と中から開いた。


「あ、どうもー、神島さんー。今日はどうしたんですかー? 依頼ー?」

「こんにちは」


 愛想笑いを作って扉を開けるビクトリアと、その後ろから、ひょこ、と顔を出す仮面に模造刀を持つショウコが挨拶をする。


「ビクトリア、お前は相変わらず、落ち着きの無いな」


 やれやれ、とジョージは嘆息を吐いた。


「元気なのがアタシの取り柄みたいなモノだからさ――」


 アハハ、と少し誤魔化す様にビクトリアは笑うとジョージの背後に居るセナに気がつく。


「うぉ!? でっか!」

「こんにちは~」


 笑顔で手を振るセナの一番目立つ部分を見て、ビクトリアは驚愕する。


 なにこの女性……胸でっか! ショウコもそれなりだけどさ、纏うオーラも相まって更にでかく見えるじゃん。やっばっ……近くに居すぎると思わずダイブしそうになる!


「鮫島さん?」

「あら~ショウコちゃんじゃないの~」

「? ショウコ知り合い?」

「セナ、知り合いか?」


 取りあえず、各々の関係をきっちりさせる為に中へ上がって落ち着いて話す事になった。

セナ>ショウコ>ビクトリア

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