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懐いてた年下の女の子が三年空けると口が悪くなってた話  作者: 古河新後
40章 老兵達

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第670話 変則NTRってヤツ?

「アメン・ラーさん~。その被り物は~何かのイベントですか~?」

「そ、そうなんですよぉ~。近々、都心の博物館でエジプト展をやることになりましてねぇ!」

「イッヒッヒッヒ」

「…………」


 セナは明らかな偽名である事を看破。しかし、個人的な事情があるのだと察し特に追求はしない。

 スイレンはナガレの事情を知っているだけに、えげつない縁だねぇ、とイッヒッヒッヒ。

 変わった声質と顔を隠したナガレは一般人にはその素性がわからない。しかし、ジョージは立ち姿と重心のかかり方、そして『スイレンの雑貨店』を利用する人間を消去法で判断して、


「おい、お前何をやって――」

「おおっとぉ! こちらのお客さん! 片手を怪我されている! ささっ、座って下さい!」


 ジョージが何かを言う前に、ガー、と椅子を除雪機の様に持って近づく。


「ジョーさん。何でセナと一緒にここに来たのか聞きたい事は沢山ありますけど。個人的な事情で彼女と会うのは避けてるんですよぉ(小声)」

「…………後でちゃんと話せよ」

「うっす!」


 ジョージに必死な様子を理解して貰い、ほっと胸を撫で下ろす。


「凄いですね~品揃え~見てるだけで楽しくなるわ~」


 そんな一人だけ必死なアメン・ラーよりセナの注目は店内に移った。


「イッヒッヒッヒ。何かお求めかい?」

「特にコレと言っては~。この赤い石は何ですか~?」

「そいつは賢者の石さ。イッヒッヒッヒ」

「賢者の石~? あのハ○ー・ポッターに出てくる~?」

「イッヒッヒッヒ。レプリカだけど、オリジナルの一部を混ぜてあるのさ。持ってるだけでご利益はあるよ」

「10万~高いです~」


 セナは手に取っていた賢者の石を元の位置に戻す。

 どうやら……彼女にはオレの事はバレていない様だ。アヌビスマスクに顔が覆われて、何故か声も変わっている。最後に話したのは6年ほど前だし……気づく方が無理な話しか。


「……」


 店内を徘徊する彼女は相変わらず、猫の様に落ち着きがない。マイペースな様子だが、この場に気を使う子供はいない事もあって、程よくはしゃいでいる。


「声をかけんのか?」

「……背中を押されてますんで」


 椅子に座るジョージが、話しかけたそうにしているアメン(ナガレ)に告げる。しかし、彼は中途半端な事をする気は更々無い。


「ジョーさん。前に里にお邪魔した時に――」

「このガラス細工~。綺麗ですね~」

「イッヒッヒッヒ」

「ちょっ!」


 セナがスイレンに店を案内されている間にジョージに例の件を訪ねようとしたアメン(ナガレ)は、ガラス細工の人形(罠)に手を伸ばす様子に割って入る。


「ストップ! フリーズ!」


 とにかく、止まる事を意味する言葉を放ちながら罠に引っかけようとしている魔女を阻止する。


「イッヒッヒッヒ。なんだい、アメン・ラー」

「どうしました~?」

「それ、結構壊れやすくて値が張るからさぁ。触らない方がいいよ?」


 アメン(ナガレ)の助言に下敷きの様にちょこん、と解りにくく置かれている値段をセナは見る。


「ほんとだ~1億円~」

「イッヒッヒッヒ。アメン・ラー、営業妨害は止めな」

「いや……寧ろ商品を助けた部類だよぉ……」


 やれやれ……好奇心旺盛なセナとスイさんのペアは目を離すと危険だな。


「こっちの部屋は~衣装部屋~?」

「イッヒッヒッヒ。コスプレに興味あるかい?」

「ありまくります~、娘もここへ~?」

「イッヒッヒッヒ。試着は自由だよ。汚したり破ったら買い取って貰うけどね」

「写真を撮って貰う事は出来ます~?」

「イッヒッヒッヒ。保存用かい?」

「娘に自慢しま~す。メイド服着たいで~す」

「イッヒッヒッヒ。無料でいいよ。ただし、撮った写真の肖像権はこっちにくれるかい?」

「それだけで良いんですか~?」

「ちょっとぉ!」


 とんとんに話を進めていた二人にまたもやアメン(ナガレ)が口を挟む。


「イッヒッヒッヒ。アメン、さっきからなんなんだい?」

「あ、いや……ほら、セ――鮫島さん、スタイル良いっしょ? だからサイズの合う服はあるかなーってさぁ」


 このまま流されれば、ネットのカタログがセナのメイド服姿に差し替えられる。


「アメンや、セナ嬢の胸ばかり見てると公言したねぇ。イッヒッヒッヒ」


 あ! この婆さん……オレをセナから遠ざける為に陥れようとしてやがるよぉ!


「ふふ~。アメンさん~気にしないで下さい~。(コレ)を視られる事は宿命だと思ってますから~」

「イッヒッヒッヒ。じゃあ、余計な横槍が入らない様に着替えながら話を詰めようかい」

「ちょい待ち!」

「イッヒッヒッヒ。しつこいねぇ、アメン・ラー」


 くっ、この婆さん。オレとセナの関係を解ってやってやがるよぉ! 何て言うの、コレ? 変則NTRってヤツ? もうワケわかんねぇが! 素性を隠したオレがセナを撮った写真をどうこうする事は出来ねぇ!

 このまま写真を撮らせる事だけは絶対に阻止しなくては!


「イッヒッヒッヒ。アメンや、あんたにセナ嬢の決断をとやかく言う権利はあるのかい?」

「お構い無く~」

「くぅ!」


 ド正論過ぎて何も反論出来ねぇ! クソ……こうなったらもう正体を明かし……って! マスク取れないじゃん!!


「イッヒッヒッヒ」


 笑う魔女。この……婆さん! ここまで手の平だったのかよぉ!? 気づくのが遅すぎた! クソ! 鍋(真鍋)と一緒に来るんだったよ!


「特に何も無いなら行こうかい? イッヒッヒッヒ」

「は~い♪」

「うぐぐぐぅ……」


 悶絶する様に悔しがるアメン(ナガレ)を見かねたジョージは、はぁ、と一度息を吐くと、


「アメン、そんなにお前もコスプレしたいならセナと一緒に写れば良いだろ」

「え?」

「そうなんですか~?」

「イッヒッヒッヒ。ジョーや……」


 スイレンは唐突なジョージの横槍に笑いつつも、そんな言葉を洩らした。

若者がわたわたしてるのを見るのが好きなジョージ

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