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懐いてた年下の女の子が三年空けると口が悪くなってた話  作者: 古河新後
39章 文化祭編3 姉妹

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第656話 浮気したら○すからね

「えっとね……ヒカリ。お隣さんと付き合う事になったよ」


 帰り道。駅に向かう最中、リンカは隣を共に歩くヒカリに恥ずかしそうにぽつりと切り出した。最初に伝えるのは、親友だと決めていたからである。


「やっと?」

「…………今までご迷惑をおかけしました」


 ヒカリのリアクションは、ようやくかよ、と言った感じに、こうなることは解っていた様子である。


「まぁ、ケン兄もこれで少しはフラフラしなくなるでしょ。彼氏なら今以上にリンの側を離れるなんて考えないだろうし」

「うん。浮気したら○すからね」


 いつもの笑顔でリンカは躊躇いなく宣言する。

 片想い期間が長過ぎたせいで恋愛感情が相当深くなってるなぁ。これは重症どころか不治の病レベルだ。

 事件にならない様に私も二人の事を見守って行かねばならぬか……


「まぁ、深淵LOVEも全然良いけどさ。一方的に決めつけるんじゃなくて、ある程度は冷静に見てから行動しなよ?」

「うっ……あたしってそんなに危ない?」

「ケン兄限定でね」


 片想いってある意味呪いだなぁ。


「ケン兄って昔からラッキースケベな側面あるじゃん。まぁ、ケン兄の行動力が招いてる結果だと思うけどさ」

「そこは……○す前に相談する」

「○す方向は無しで行こうよ。誰も死なないのが一番なんだから。それに、リンも自覚しなよ」

「何を?」

「ケン兄にとって、リンが一番ってことをね」


 ふふーん、とヒカリは自分の事のように嬉しそうに言う。


「若い肉体! 大いなる実り(胸)! 可愛い顔! 今まで男受けの良い巨乳(コレ)をケン兄が我慢できてたのはリンを“妹”として見てたからよ」

「…………」

「でも、その垣根を二人はぶっ壊したの。この意味は解る?」

「……えっと……合法的に添い寝できる?」


 テヘっ、とリンカは恥ずかしそうに言うがヒカリが、違ーう!! と叫んで、びくっ、となった。


「夜のピー(自主規制)よ! ピー(自主規制)! 妹でもお隣さんでもない男女が一つの部屋で一夜を共にするなんて事は……その可能性が高くなったって事! いい!? 昔はケン兄のイカれた防壁を壊す為に身体で迫るような事を助言したけど、今は状況が違うの!」


 昔、ヒカリも身体で迫るように煽ったじゃん、とリンカは言おうとした事を先に捕捉されて潰された。


「長年溜めに溜めてきたモノを止める事が出来なくなった事で間違いが起こる事もあるわ」

「……間違いって?」

「社会的に“死ぬ”間違いよ。一夜の過ちで全部壊れるの。想像してみて。もし、感情に任せてデキた場合、リンは高校には通えなくなるしケン兄は逮捕よ! タイーホ!」

「……で、でも避――」

「その考えが甘いっ!」


 リンカの考えを諌める様にヒカリは眼前で額をつんとする。


「一度、経験すると後は歯止め無いの! 坂道を転げ落ちる事と同じなのよ!」


 ぜーぜー、息を切らしてでも捲し立てたヒカリは、それに……と呼吸を整える。


「私は嫌よ。リンと一緒に卒業出来ないなんて」


 親友の本気で心配する言葉に、ケンゴと恋人になれて舞い上がっていたリンカは少しだけ熱が冷める。


「…………そうだね。わかった。気を付けるよ」


 これからは今まで以上にボディタッチは控えよう。きちんと説明すれば彼も解ってくれるハズだ。


「ケン兄のビーストモードを断りきれないとかなったら、トイレに逃げて連絡して。パパを派遣するから!」

「それはそれで……色々と壊れそうだけど……」

「私はリンの方が好きだから良いの!」


 リンカは心配してくれるヒカリに、うむー、と断りきれない。

 そうして話していると丁度駅に着き、待っていたエイにヒカリは、ママー、と駆け寄った。


 そのまま、また明日ね、と言って谷高母娘と別れる。

 ヒカリの言った通り、良くも悪くも彼との関係は変わっていくのだ。年相応以上の事をするのはやはり良くないのかもしれない。


「…………そうなると、過去のあたしは相当攻めてたなぁ」


 キスしたり混浴したり。今思えば恥ずかしい事ばかりだ。






 星が流れて、多くの事が過ぎ去る1日。無論、変化があったのはケンゴ達だけではない。


「本家で認められたのですか? 師匠。嬉しいです」


 サマーの自宅で師であり母でもある舞子に連絡していたショウコは『流雲武伝』の“後準(あとなぞら)え”が正式に本家入りする事を聞き、嬉しそうに微笑んだ。


「昨日の今日で随分と早い決断ですね。え? この歌の“鳳”? 説明した通りに実在する人物ですが……どう言うことですか?」


 それは青天の霹靂だった。


「ファン伯父さんがその人物に会いたいから、日本に来る?」






「ただいまヨー」

「お帰りなさい、ダイヤお姉さま」

「お姉さま! お邪魔してます!」

「お疲れ様です、ダイヤお姉さま」

「ワォ、サンにリンクもどうしたノ?」


 ダイヤはマンションに帰ると、同室のミスト(四女)は良いとしてサン(次女)とリンク(三女)が居る事に少し驚いた。


「聞きましたよ、お姉さま! 近々、またジャパンに行くって!」

「サンは耳が早いネー」

「やっぱり、ニックスの所に?」

「ンー、今度はホテルダヨー」

「実はですね!」


 と、サンは実家の父から言われた事をダイヤに説明する。


「ワォ、そうなノ?」

「はい! これで……お姉さまをアイツから御守りします!」


 ダディも考慮したのカナ?

 ダイヤは着替えながら、一人だけになるサンを考慮して父が気を使ったのだと察した。


「ニックスどんな顔をするだろうね。私達全員がやって来たら」

「それはノープロブレムネ、ミスト」


 ダイヤは人身満々に告げる。


「ケンゴはワタシ達を贔屓しないって言ってタヨ!」






「どうですか? ドクター」

「検査結果は驚くモノですね。これなら問題ないでしょう」


 白鷺圭介は妻の診断結果を白鷺家の専門医(女医)に娘の綾と共に聞いていた。


「飛行機に乗っても問題ありません。例のジャパンへ行く話は問題ないと断言しますよ」

「これで、後顧の憂いは無くなりましたね。御父様」

「う、うむ……」

「大丈夫です。私がついています! 御母様も! それに……御兄様も」






 晴れてリンカと恋人になれたワケだけどさ。それでも、今までの関係が劇的に変わるワケじゃない。

 一応は世間体ってモノもキチンと理解していますよ。だからリンカが成人して社会人になるまで、不適切な行為はお預けだ。

 ……卒業まで二年……それから大学とか行って二年か三年。新卒で働いて、仕事に慣れて生活が安定するまで一年強……大体五年くらい、お預けかぁ……


 ふっ、それくらいどうって事はない! それがリンカを……果てはオレを護る事に繋がるのだ! 性欲の一つくらいコントロール出来ずになーにーが恋人だよ! 高校生と付き合うって事はこう言う事だと証明して見せるぜ!

 まぁ、リンカと付き合うなんて公言は出来ないけど。セナさんとかくらいには話しても良い――


「ん?」


 あれ? なんか……アパートの敷地から異様な気配を感じる。とんでもないオーラだ。ちょっと空間歪んでるし。


「何事……」


 入り口側からヒョコっと顔を出して覗くと、セナさんと赤羽さんと――


「……ヱ?」


 片腕を三角巾で吊ったジジィが赤羽さんと対峙していた。

浮気は人の原罪

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