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懐いてた年下の女の子が三年空けると口が悪くなってた話  作者: 古河新後
39章 文化祭編3 姉妹

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第648話 百鬼夜行だよ

 美術部の出し物であるスケッチ体験はそこそこ繁盛し始めた。

 エイさんは文化祭の時間ギリギリまで『考える人』になるとの事でオレはもう大丈夫だろうと判断して、本郷ちゃんの店へ。


「驚いたよ。鬼灯さんと鳳さんは知り合いだったんだね?」

「お姉さんの方が会社の先輩でね。入社した時から世話になってるんだ」

「ほう。その“お姉さん”なら三学年のフロアにも来たよ。それはもう凄かった」


 そうか、鬼灯先輩は妹さんに会いに来たのか。招待されたと言っていたので妹さんからだろう。あの美形姉妹が同じ空間にいるだけで、相当な聖域となったに違いない。


「よかった……外であの二人が顔を会わせなくて……」

「やはり、お姉さんの方は異性関係に難が?」

「駅に居るだけで入れ違いにナンパされるよ……」


 鬼灯先輩は女性専用車両が必須な御方だが、それでもバレンタインに何個かチョコ貰ったくらいに同性も魅力(チャーム)するのだ。(ホワイトデーできちんとお返ししたらしい)


 もしも鬼灯姉妹が外で待ち合わせしてたらヒューマンハザードが起こるだろう。3課総力を上げての護衛が必須である。


「それなら鳳さんは相当な役得だね。そんな先輩がすぐ近くに居るなら、恋仲になるチャンスが一番ある距離だ」


 本郷ちゃんの言うことは分かる。仕事で距離の近い異性同士なら作業の関係でより親しくなる機会は山程あるだろう。しかし、鬼灯先輩に限ってはそうはならない。


「いや……残念ながらそんな事は一度もなかったよ」

「本当に? ちょっとした隙くらいはあるんじゃないかい?」

「あれば良いんだけどね……」


 鬼灯先輩はマジでミスをしない。不具合が起こってもソレのフォローは完璧で、常に二、三手の手札を持っているかの如く逆に助けてくれる。

 故に、大丈夫ですか!? 今助けます! みたいな状況は全くもって皆無なのだ。

 吊り橋効果どころか、鬼灯先輩だけ常にジェットパックを使って逆にオレらを助けてくれるレベルなのである。微笑みながら。


「どうやら、僕はとんでもない邂逅を逃した様だ。実に残念だよ」

「凄い人だけどね。逆に高嶺過ぎて付き合うとかイメージが湧かないのも事実かな……」


 少し前まで、オレ自身にも問題があった事もあって、鬼灯先輩には恋愛感情は全く無いと断言できる。

 こんなお姉ちゃんが欲しい! と言う感じで接しているのだ。もしも、鬼灯先輩がオレの実姉だったら輪廻先SSRだっただろう。更に鬼灯ちゃんが妹だったら……後の転生先が全部昆虫でも全然受け入れられるね!


「弁護士免許も持ってるからさ。ある程度のトラブルは自分で処理してるらしいんだ」


 色々と逸話はあるが、今鬼灯先輩の話題として一番上げられてるのは――


「それに噂では結婚してるとか」

「そうなのかい?」

「噂だからね」


 それは密かに鬼灯先輩を狙う社員達(レズ気味の女性社員も含む)が囁いている噂である。オレは距離が一番近い後輩と言うことでその事に関して、何か知らないか? と聞かれた。


 オレはそこで初めて、今はそんな噂が経ってるのかー、と能天気に考えていた。当然、一緒に仕事をしていて、夫の影どころか、指輪をつけている様子なんかもない。

 唯一、可能性があるのは真鍋課長だが……あの人は真面目そうなので結婚するなら指輪は贈るだろう。

 

「ふふ。鳳さんの会社はとても面白そうだね」

「面白い……って思える本郷ちゃんなら順応出来るかもね」


 オレは私服でも名刺は五枚ほど常備しているので、はい、と本郷ちゃんに一枚渡す。


「派遣会社……か」


 本郷ちゃんは意外と肩透かしを食らった様子だ。

 しかし、実のところはとんでもない人間の集まった会社なのである。


 1課。

 七海課長は仕事もインファイトも出来るオールラウンダー。口調は厳しいけど、部下思いで頼れる姉御肌。

 泉。オレと同期。何かとオレには噛みついてくるウゼー奴。チビ巨乳。鬼灯先輩LOVE。

 杉田さん。ペクス仲間。最近はレヴナントのウルトで特効するのにハマってる。


 2課。

 名倉課長は物腰柔らかい紳士だ。しかし、社内一のキレ者と行っても過言ではない。実は美人の妻子持ち。その娘さんの件で……オレも色々と眼をつけられてます。

 加賀。同期。イロモノの多い会社では数少ない常識人。飲みに行った回数は多分一番多い。

 姫野先輩。通称姫さん。加賀の直接的な先輩。優しくて仕事や気づかいも出来る2課の良心。

 茨木先輩。通称カズ先輩。下の名前が和奈(わかな)で、姫さんが“カズ”って読んでるから分かりやすく他の社員にもそのあだ名で呼ばせてる人。長身。武術やってるバーサーカー。姫さんとは幼馴染み。


 3課。

 獅子堂課長は年期の入った筋骨隆々のマッスラー。オレのジジィの世代の人間で、身内って事もあって、その家族とも仲が良い。ガハハって笑いながら熊を投げる。オレを会社にスカウトしてくれた恩人。

 徳さん。通称仏の徳さん。社内でも常識人枠の一人。獅子堂課長の後輩らしい。

 鬼灯先輩。説明するまでもなく、完璧超人。ジェットパック。

 そんでオレ。


 4課(弁護士部隊)。

 真鍋課長。経歴不明。『無敗』を冠した最強の弁護士。どこからか来て、何故にウチの会社に居るのか全く不明。とにかく敵に回すと勝てない人。鬼灯先輩と幼馴染みで付き合ってると言う噂。

 鷹さん。弁護士界隈の『伝説』。ウチのジジィに意見出来る強者。盆暮れババァ。

 箕輪さん。ねちっこいヴィラン顔だけど、良い人。過去、現在に置いて三回助けられた。

 ヨシ君。同期で話の分かる理解者。4課でもかなりの曲者。交友関係は内と外に広く、本当に頼りになる。

 陸君。4課で一番若手。オルトロスの管理者。

 海さん、空さん。双子の姉妹で陸君の姉君。陸君の弁護士補佐をしている。木刀が主武器で通称オルトロス。

 国尾さん。♂キラー。お尻プレデター。お尻警察。お尻断罪者。ホモ。課長クラス、既婚者以外の男性社員のケツを狙ってる。女性には無害。寧ろ感謝されてる。男性のトラブルに真っ先に国尾さんを頼る。


 そして、それらの色濃い面子を束ねるのが黒船社長。

 ふっはっはっ! と語り尽くせないくらいにとんでもない経歴を持つと推測される御方。

 その秘書をする轟先輩には本当に大変そうです。


「派遣会社と言う名の百鬼夜行だよ。今は新卒採用はかけてないけど採用条件は大卒が標準だからね」

「それならキチンと大学生活を満喫しないとね」


 まぁ……本郷ちゃんがウチの会社に来たらもっとカオスになりそうだ。

4課が特にやべぇ

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