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懐いてた年下の女の子が三年空けると口が悪くなってた話  作者: 古河新後
39章 文化祭編3 姉妹

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第642話 大きければ大きい程良いって事♪

「ようこそ我が高校へ。来客のお兄さん。僕の名前は本郷元親(ほんごうもとちか)。よろしく」


 吟遊詩人のような服装で、爽やかな王子様風味と言う女子ウケてんこ盛りなキャラが出てきたなオイ。

 RPGに例えると、主人公の道行く先で遭遇する終始余裕な雰囲気を崩さない強キャラと言った所だ。


「あ、どうも。鳳健吾です」


 そして、その雰囲気に飲み込まれて高校生相手なのに敬語になるオレも十分なモブ精神が刻まれてるぜ!


「ふふ。おかしな人だ。貴方の方が歳上でしょう? 敬語は必要ない。僕の事は好きに呼びたまえ」

「えっと……本郷君でいい?」

「40点の解答だ。しかし、それが貴方の初対面の相手に対する敬意なのだね」


 なんだ……この子。滅茶苦茶クセが強いキャラじゃねーか! ちょっと止めてよねー! こっちは只でさえモブなのにさ! ベクトルは違えどサマーちゃんに匹敵するメスガキ臭がする。いやいや……本郷君は男だし……


「おっと、視線を胸部に感じたよ。どうやら一つ訂正をせねばならない様だ」

「あれ? オレなんか変な事でも言った?」

「僕は女の子だよ」


 …………馬鹿……なっ。女……の子? だって君は――胸が無い……いや待て! オレの方がおかしいんだ!


 女性=おっ○い。と言う方程式は全人類共通事項。それは変えられない真実。

 何故なら生まれて初めて感じる安らぎが母親の胸の中であり、搾乳する事によって最初の依存性が胸に向くのは必然と言えよう!

 つまり、生まれ落ちた人類が胸に対する注目が行くのは仕方の無い事なのだ!

 男ばっかりがそれに対してセクハラだの、変態だの糾弾されるが……己の胸と他人の胸を比べる女性もまた、生まれながらの依存性が現れてると言えるだろう!


 つまり、何が言いたいかって言うと……女性=おっぱ○で、それは大きければ大きい程良いって事♪


 そして、オレは知り合いには巨乳が多い故に失念していた。

 胸が無くてもっ! 女の子は女の子だ! オレは見た目と名前に引っ張られて、本郷君が男だと勝手に勘違いしていたっ!

 前例としてサン・フォスターと言う、他の姉妹に乳力を吸われて生まれた貧乳代表みたいなヤツがオレの知り合いに存在していると言うのにっ!


「おや? このカミングアウトにそんな反応を示すのは貴方が初めてだよ」


 ガクゥ……と、いつの間にか四つん這いに項垂れていたオレは、はっ! と顔を上げる。

 そこからは地上の者を見下ろす天上者の視線が本郷君から放たれている。

 こ、この視線は……同じ地面の上に立っていても……違う視点を見る――ジジィや社長クラスと同じ慧眼(モノ)……


「……どうやら本郷君。君はオレよりも遥かに上のステージに居るようだね」

「貴方がそう思うのならそうなのだろうね」


 面白れぇ。思わぬ所でこのレベルの者を遭遇するとは。世界は本当に狭すぎるぜ!


「本郷君。是非とも君のクラスの出し物を経験させてくれないか?」

「僕のクラスは何も出し物はやってない。ただ、占い部で良ければ旧校舎へ案内しよう」

「ふっ」


 オレは気合いを入れるように、自分の拳と手の平を合わせる様に打ち付ける。


「伺おう」

「一名様ご案内」


 見せて貰おうか。ジジィや社長クラスの傑物に揉まれたオレに、君の視線が通用するかどうかを!


「……まぁ楽しんで行って下さい。ケンゴさん」


 そんなリョウ君の声が背中に聞こえた。






 約一時間前。

 ある情報を持ったガリアは『猫耳メイド喫茶』よりも先に占い部へと足を運んでいた。


「おや。いらっしゃい」


 占い部に本郷しか居なかった。それも情報通り、ガリアは彼女に会いに来たのである。


「占い部ヲお願いしマース」


 一回50円。ガリアは50円玉をカチリ、と目の前に置いた。


「どうぞ、かけて下さい」


 二メートルの長身に神父服と言うガリアの姿にも関わらず、本郷は平然と対応する。


「名前を聞いても?」

「“ミツ”デース」

「ミツさん、どんな事を占って欲しいですか?」

「ワタシの正体を当てられますカ?」

「いいでしょう。では幾つか質問を――」

「ノンノンノン。敬語は必要ナーイ。気を使う必要はナッシングでOK?」

「ふふふ、OK。それでは軽い質問をするよ。嘘でも構わないから何かしら答えてね」

「Yes」


 本郷はガリアに質問をし、幾つかの質疑応答が一通り終わる。


「ふむ。ミツさんの事は大体わかった」

「WHY!?」

「ふふ。僕の洞察力は鋭いんだ。相手を切り裂く程にね」

「御託はノー。アンサープリーズ」


 本郷からの質問は日常的は事ばかりだった。特別な何かを探る様な事は何も聞かれていない。


「まず、ミツさんは本当の神父だ。その姿はコスプレでも偽者でもない」

「ホウ……何を思っての判断デース?」

「服の着込み具合かな。新品でも無ければ丁寧に着ている感じもない。破れたり汚れても予備の服がある。そんな感じの立ち振舞いも見えたよ」


 室内に入ってから僅かなガリアの挙動を本郷は捉えていた。


「そして、貴方は自分から人目の多い所は望まない」

「何故そう思うのデース?」

「扉の外。貴方が部室に入るまで、音も気配も完全に消えていた。これは足音や気配を常に気を使ってる……つまり、そう言う事を標準とする仕事をしている」

「…………」

「そして、そんな貴方は誰よりも一つのナニかに強い信仰心が心の中にある。だから苦手な人混みにも可能な限りの能力を使って僕に会いに来た。

 そして、一人でこんな事をやっているのは、貴方が身内を誰も巻き込みたくないと思っているから」


最後の本郷の言葉にガリアは動揺も感情も雰囲気も何も出さない。


「つまり、ミツさんの正体は神父、兼殺し屋かな?」

「…………」


 突拍子もない本郷の解答。双方、無言の時間だけがただただ流れる。


「フフフ。残念ながらハズレデース」


 と、笑いつつガリアは否定する。


「マズ、ワタシの服。コレは前職で着ていましタ。馴染みが良いので今も愛用しているのデス」

「へー」

「無論、信仰心は持ってマース。しかし、ワタシの信仰は多神なのデース。一つを信仰する事はナイ」

「本当かい?」


 ガリアの雰囲気から嘘を感じられない本郷は自分の分析が全く外れていた事に驚いた。


「殺し屋、と言うのモ、悪くない線を行ってまシマ。ワタシは“掃除人”なのデース。汚れを綺麗にするのが仕事デース」

「あらら」


 うーん。こう言う事もあるかー。と本郷は首を傾げる。

 そんな本郷の様子を見ながらガリアは立ち上がると、1万円札を机に置いた。


「中々に面白かったデース。チップとして受け取って下サーイ」

「あ、良いのかい? 僕は遠慮しないよ?」

「ノープロブレム」


 そう言ってガリアは部屋から去って行った。1万円の下に自らの名刺を残して。






「マザー。報告しマース」

『聞きましょう』

「確かに『ジーニアス』のリストに上がるには十分な人材デシタ」

『そうですか。となれば……サモンは――』

「YES。ジャパンはヤツが欲しいモノが多すぎマース」

『この件は『フェニックス』のファイルと共にこちらで纏めます。貴方は引き続き、サマーの側に』

「YES」


 ガリアはマザーとの通話を切ると、文化祭で盛り上がる高校を振り返る。


 燃え上がる教会。“処分”された子供達――


「サモン。まだお前にワタシは借りを返してナーイ」


 そう呟くガリアの心には“復讐”と言う名の信仰心が強く残っていた。

ガリアの過去は何らかの形で出したいですね。

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