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懐いてた年下の女の子が三年空けると口が悪くなってた話  作者: 古河新後
39章 文化祭編3 姉妹

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第637話 私とケン兄のどっちが好き?

“リン、どこに居るの?”


 ヒカリは校舎内を探しながらそのLINEメッセージを送っていた。しかし、既読さえもつかない。その事からヒカリは確信する。


 さっきの状況をリンは目撃したのだ。タイミング的に十分にあり得る状況である。


「鮫島さん? いや、見てないよ」

「『湯沸かしっ子(大口タイプ)』……中々のパワーね。え? 鮫島さん? 休憩に行ったきりよ?」

「色んな服装のヤツが居るからなぁ。スレ違っても気づかないかも」


 とりあえず、人通りの多い校舎では目撃されていない。と言うことはそのまま人気の無い道を使ったのだ。つまり……校舎沿いに――


「ありがと」


 ヒカリは話を聞いてくれたクラスメイトにお礼を言うと、リンカと自分が昼食を食べる際に使う場所に居ると確信した。






 彼が好きだった。

 ずっと側にいた時は気づかなかったけど……急に居なくなってからその事実に気がついたのだ。


“ヒカリ……あたし、馬鹿だ……おにいちゃんに何も言えなかった……”


 彼がアパートの隣部屋を去った時、気づいた恋心と悲しみを一番にヒカリへ打ち明けた。それだけの心内を話せる程に彼女とは他人でも友達でもなく……家族のような存在だったから。でも……


「…………ヒカリもあたしと……同じ気持ちだったら?」


 ヒカリも彼の事が好きだった。

 あたしと一緒に彼と過ごしていたのだから当然だ。考えれば考えるほど……先程の告白は何ら不思議なところはない。

 だから……


 そんな親友(ヒカリ)の気持ちを考えずに自分の事ばかり悲しんで泣きついていた。

 ヒカリも……彼が居なくなって同じぐらい辛かったハズなのに……


「……あたしは……最低だ……」


 彼からの返事は断ろう……。

 それが……今までヒカリの気持ちに気づけなかったあたしの……


「リン。やっぱり、ここに居たのね」


 リンカが膝を抱える様に顔を伏せていると、ヒカリの声が聞こえた。裏口階段の下から彼女を見つけた様だ。


 そのまま、カンカン、と階段を上がってくると、よいしょ、とリンカの隣に座る。


「ケン兄来てるよ。お腹空かせてるから一緒に――」

「……ごめん……ヒカリ」


 リンカはヒカリの顔が見れなかった。伏せたまま謝るとポロポロと泣き出す。


「あたし……自分の事……ばっかりだった……ヒカリも……お兄ちゃんの事……好きだったのに……あたしばっかり……辛いって……言って……ヒカリも……同じなのに……」


 親友に対する罪悪感と償う意味でもケンゴとヒカリの関係を邪魔するべきではないと諦めていた。


「……リン、確かに私はケン兄の事が好きだよ」

「……」

「でもね――」


 ヒカリは丸まっているリンカへ身体を傾けると寄り添いつつ、


「私はリンの方が好きだから」






「私ね。ケン兄の事が好き――――だったよ」

「え?」


 唐突なヒカリちゃんの言葉にオレは困惑した。あれ……? オレ……何か嫌われる事でもやったっけ? 夏にヒカリちゃんの下着姿を見たけど……アレは許されてるハズ……


「困惑してるみたいだから説明するね」


 説明してくれるらしい。


「谷高光は鳳健吾の事が好きでした。LIKEじゃなくて、LOVEの方でね」

「え?」

「キッカケは再会した時にナンパから助けてくれた時でした」

「え……?」

「やっぱり成長するとさ。人を見る眼って変わるもんだね。不覚ながらケン兄に初恋しちゃったよ」


 と、世間話をするようにヒカリちゃんはとんでもない事を告白していく。オレは、え? しか言葉が出てこない。


「でも、落ち着いて考えてみたらさ。私はケン兄よりもリンの事が好き」

「え……あ、はい……ヒカリちゃん……もしかして……オレって今、フラれてる?」

「うん。フッてるよ」


 マジか……昨日、坂東さんの言ってた事が当たった。


「いや……でも……なんだろ……うーん……」


 何と反応して良いのか……思考と言葉が迷子だ。すると、ヒカリちゃんが間を取る様に続ける。


「私としてもさ。この気持ちはきちんと決着を着けたかったんだ。そうじゃないと、前に進めない性分を両親から貰ってるので」

「ヒカリちゃんらしいよ……」

「だからね。次に無自覚にリンを悲しませたら、ケン兄でも許さないからね」


 そう言ってヒカリちゃんはとても満足そうに微笑んだ。

 どうやら……オレとリンカの関係を一番に気にかけているのはヒカリちゃんだったらしい。






 リンと出会ったあの日、母とはぐれた不安から私は見えるモノ全てが恐怖の対象に映った。

 どうして良いのか分からなくて、隅っこに縮こまっている事しか考えられなかった。今思えば、そんな事をしても余計に母は見つけづらくなるだけだったなぁ。でも、


「最初にリンが私を見つけてくれた」


 あの時から、私にとって――


「リンは家族だった。一緒に笑って、一緒に過ごして、一緒に歩いて……それが当然だったんだよ?」


 リンがケン兄を追いかけてる事は知っていた。そんなリンを私は追いかけてた。

 リンと一緒に居たい。リンとずっと歩いて行きたい。リンと――


「ずっと、ずっと何年も笑い合って居たい。私にとって鮫島凛香は、見つけて貰った時からずっと憧れなの」


 私が心内を告白するとリンは顔をあげてくれた。やっぱり、泣いてたか。

 リンは自己嫌悪に陥ると本当に制限無く落ちていく。だから近くにいる私やケン兄が護ってあげないといけない。


「……私の方こそゴメン。リンが一番苦しい時に嫌われたくない一心で、心から寄り添ってあげられなかった」


 ケン兄が居ない時こそ……私がリンを支えてあげないといけなかった。それが原因で喧嘩をしても、何かを辛いことを言われても、それでも……“家族”だったのなら助けてあげないといけなかった。


「違う……違うよ……ヒカリ……あたしが……勝手にそうなったんだ……ヒカリは何も悪くない……だから……」

「リン、正直に答えて」


 私は優しくリンに問いかける。


「私とケン兄のどっちが好き?」

ヒカリにとってリンカはヒーロー

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