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懐いてた年下の女の子が三年空けると口が悪くなってた話  作者: 古河新後
39章 文化祭編3 姉妹

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第636話 私は……母ぞ……

 なぜ、考えなかったのだろう。

 あたしは……最低だ――






「えっと……って事はさ。オレ達の関係って変わるの?」

「ケン兄が意識すれば変わるんじゃない? 私としては今まで通りだけど」

「ふむ。ヒカリちゃんの告白を受け入れたワケなんだけどさ……凄く……なんか……」

「良く解らない気持ち?」

「何か……負けた感じがする」

「あはは」


 オレはヒカリちゃんが唐突に放ってきた言葉を飲み込む事で精一杯だった。

 まさか……彼女がオレの事を好いてくれていたなんて……こんなモブのどこがええんや?

 ヒカリちゃんなんて、随分とスッキリした感じで笑ってるし。もやもやするのはお兄さんだけですか。


「リンカちゃんには話さない方が良いかもね」

「そんなワケには行かないじゃん。私から話すよ。ケン兄はどーんって構えてて」

「う、うむぅ……」


 いいのかなぁ……? ソレをリンカに話せばヒカリちゃんとの関係に亀裂が走る可能性がかなり高い。


「どうせ、リンと私の関係が壊れるとか思ってるでしょ?」

「そりゃ……ねぇ」

「大丈夫だよ」


 オレとヒカリちゃんが考えるリンカの反応は正反対である様だ。


「でも、現場にはケン兄にも立ち会って貰うからね」

「修羅場な予感が……」

「だから! そんな事にはならないって!」


 そ、そこまで言うなら見届けよう。

 正直な所、リンカとヒカリちゃんは殆んど喧嘩をしたことがない。

 ヒカリちゃんはご両親の教育の賜物あるのか、相手を思いやる気持ちが強く、そんな彼女の気持ちをリンカは察して、一緒に横並びになってあげていたのだ。

 1個しかないモノは半分に分けたり、分けられないモノは互いに譲り合ったり。

 見ていて本当に手間がかからない二人は喧嘩なんてする様を想像出来ないくらいに仲が良い。


「……ふむぅ。オレの方が嫉妬しそう」

「そうなの? あはは。初めてケン兄に勝った気分」

「オレってそんなに高みに居る存在だった?」

「私やダイキにとっては憧れだったよ」

「なんと……畏れ多い……」


 などと話しつつも、腹の虫がぐーぐーうるさいのでリンカと合流しますかね。


「ご飯にしよ。たこ焼きが美味しかったよ」

「本当? そっちも楽しみだなぁ」


 賑やかな出店エリアへヒカリちゃんに先導されて戻る。

 良い匂いだ。空腹にバシバシボディブローを決めて来やがるぜ。その前にリンカと合流せねば。おっとよだれ出てた。


 オレはスマホにてリンカからの連絡を確認する。既読は付いているのに返信が無い。忙しいのかな? こっちから探しに行こう。


「ヒカリちゃん。リンカちゃんから連絡あった? ヒカリちゃん?」


 すると、ヒカリちゃんが何かを見つけた様に拾い上げた。

 それはオレらから死角の位置に落ちていた――猫耳バンド!? 待ち主は居らず、落ちていた様だ。なぁにぃ!? 野生! 野生の猫耳娘が居たと言うのかっ! おそらく『猫耳メイド喫茶』の者が持つものだろう。オレは勘違いしていた……あの店の子猫達はイエネコでは無かったの……だ!!


「……ケン兄」

「はっ!」


 オレは拾った猫耳バンドを拾い上げたヒカリちゃんの言葉で我に帰る。

 少し……落ち着けオレ。変なテンションになっておるぞよ。猫達は逃げたりしないのだ。後でもう一回、『猫耳メイド喫茶』に行こっ! リンカにゃん見てないし!


「ケン兄、ごめん! 連絡するからここで待ってて!」

「え!? 待つのぉ!? オレ……腹が空襲されてるんだけど……あっ! ヒカリちゃあん~」


 ヒカリちゃんは猫耳を握るとそう言い残して走って行った。






「ケンにぃー! リンちゃーん! 遊びましょー!」

「お、いらっしゃい」

「ヒカリちゃん! と……誰?」


 アパートの飼い猫であるジャックを撫でていたリンカは遊ぶ約束をしていたヒカリに笑顔を向けたが、彼女が手を握って連れてきた男の子に首を傾げる。


「ダイキくん!」

「あ……あの……ぼく……」

「あたしリンカ! よろしく!」

「よ、よろしく。ぼくは……ダイキ」

「知ってるよ! 今きいた!」


 三人の様子を微笑ましくケンゴは見る。


「毎度毎度、負担をかけてスマンな、ケンゴ」


 ヒカリとダイキを車でアパートまで送り届けたエイはサングラスをかけたままケンゴに声をかける。


「いや、全然構いませんよ。小さい子の世話は得意なので」

「しかし少々嫉妬してるぞ、私は」

「え?」


 エイは楽しそうにリンカ達と話をする娘をサングラスをあげて見つめる。


「私や哲章の前ではあそこまで嬉しそうにしないんだ」

「ヒカリちゃんは良い子ですから、エイさんや哲章さんの前ではワガママを言わないんじゃないですか?」

「お前の前だと言うのか?」

「アイスねだられます」

「くっ! 羨ましい! だが……甘やかすのは……自堕落の一歩……教育と愛情は紙一重だ!」

「前に昼寝した時にエイさんの名前を呟いてましたよ?」

「なに!? 名前だけか!?」

「ママ大好きって」

「ヒカリぃ~」


 思わず娘に抱き着くエイに、ママどうしたの~? とヒカリは嬉しそうに困惑した。


「お前の元を離れる……私を許してくれ。後、母上かお母さんって呼ん――」

「大丈夫だよ、ママ! リンちゃんとダイキ居るから、へいき!」

「うぐぅ!? 好感度の……序列が……変わっている……私は……母ぞ……」

「あと、ケンにぃも!」

「ケンゴォ……」

「うぇ!?」


 恨めしいエイの視線にケンゴはたじろぐ。その様子を見て子供達は笑った。


 一緒のモノを見て、一緒のモノを感じて、一緒の時間を過ごす。


 それがリンカとヒカリの関係だった。だからこそ……






「あたしは……最低だ」


 リンカにとって、ヒカリのケンゴに対する告白は自己嫌悪に陥るには十分だった。

エイは会社立ち上げの為に奔走してた頃

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