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第573話 文化祭はコレで良いんだ!

 文化祭、野球部恒例の『ストラックアウト』。

 マウントからボールを投げてストライクゾーンの場所に置かれた正方形のパネル目掛けて投げる。パネルは更に番号のついた九枚に分かれており、それを全て撃ち抜けばパーフェクトである。

 景品は抜いた枚数に応じて変わり、数が多いほど豪華になるのだ。


 『ストラックアウト』は『初心者』と『経験者』の二つのコースに分かれており、それぞれ料金と投げれる球数、パネルまでの距離が違う。

 『初心者』では200円の15球で距離は半分。

 『経験者』では500円の9球で距離は標準。


「いいか! 『経験者』コースはパネルを全部落とさないと景品は無い!」


 マリー先輩が補足する。

 貰える景品は雲泥の差があるものの、『経験者』の景品は0か10のどちらかである。


「『初心者』はよくても……出店のタダ券二枚か……」

「マリー先輩、『初心者』と『経験者』で商品が極端じゃありません?」


 むむむ、と景品欄を見るヒカリの横でリンカはマリー先輩に質問する。質問を受けたマリー先輩は腕を組んで、フッ、と笑った。


「文化祭はコレで良いんだ!」

「うわ……全部の質問を問答無用でねじ伏せる回答が飛んで来た……」

「そう、難しく考えるなメイド二人。こう見えても結構冷や汗モノなんだ。何せ……三年生の大切なモノを一人ずつ商品に出したのだからな!」


 その言葉にセッティングを終えた三年生達が、


「俺は兄貴のPS5」

「俺は姉ちゃんのSwitch」

「俺は母ちゃんが海外で大枚叩いて買った包丁」

「俺は親父の隠してたプレミアの『CD』」

「「「「取られたら間違いなく殺されるぜ!!!!」」」」


 最後にハモる四人は笑顔だが、逆にその方が凄みがある。


「えぇ……なんか、商品取るの悪い気が……」


 豪勢な商品がここに置かれている事情はかなり闇深い。


「皆、覚悟の上だ! パネル全部落としたら遠慮無く持っていけ! まぁ、野村でも9球では5枚が限界だったけどな!」


 何度もテストしたが、パーフェクトを取った者は誰も居なかった。


「ちなみに野村先輩は?」

「アイツはクラスの『偉人カフェ』で坂本龍馬やってるぞ! 和服にブーツ履いてるだけだがな!」


 とにかく、今は居ない時間帯らしい。


「情報漏洩と人数過多を防ぐ為に一人一日一回にしてるんだ。ちなみに風紀委員も何人か買収してるぞ! だが佐久間にだけはバレるとまずい! 故にフリーで動くアイツの行動は買収したヤツから常に連絡がある!」


 薬の売買組織みたいに徹底してるなぁ……


「それで、どうする? やるのか、やらないのか、どっちなんだい!?」


 語尾に、ぱわー! ってつきそうな台詞で問うマリー先輩。

 テレビでもバラエティ番組でたまにやっている『ストラックアウト』。

 挑戦者は現役のプロ投手だったりするが、皆パーフェクトを取れずに終わっている印象が強い。


「でも……人の片寄りを防ぐ為にこう言う極端なやり方は規定違反じゃなかったでしたっけ?」


 リンカは文化祭の規定を思い出しつつ指摘する。

 他の出店は100円とか高くても200円なのに対し、この『ストラックアウト』は『経験者』コースに関しては一回500円と割高だ。景品も明らかにオーバー気味だし……


「おいおい、メイド……えっと名前は?」

「一年の鮫島です」

「鮫島! 当然、初心者コースだけを申請してるに決まってるだろ! これは我々三年生からのサプライズなのだ! パーフェクトを取ったら好きなの持ってけ!」

「うーん……」

「後、文化祭運営には黙っててくれよ!」

「それは別にいいですけど……」


 密告する程野暮ではないが、なんかこれで取っても何かスッキリしない。


「マリー先輩。ちなみに『経験者』コース支払いの余分な300円はどこに消えるんですか?」

「野球部三年で焼き肉に行くんだよ! これも黙っててくれ!」


 ヒカリの質問にもビシッと答える。

 いい感じに欲望にまみれてるなぁ、マリー先輩。

 と、リンカがやろうかどうか悩んでいるとヒカリはマリー先輩に500円玉を渡した。


「挑戦します。『経験者』コースで!」

「谷高……お前ならそう言うと思ったぜ!」

「ちょっとヒカリ……下手したらあんたも摘発されるよ? それにもし、景品を取ったら先輩の誰かが死ぬ事に……」

「リン、これは文化祭よ! 景品を取っても誰も死なないわ!」


 文化祭では死なないけど……その後で死人出そうなんだよなぁ。


「毎度あり~谷高。あのマウントに置かれた9球で自らの望みを叶えて見せろ!」

「結構自信あるんですよー、肩とかコントロールとか」

「ハッハッハ。奇跡を見せてくれよな」


 余裕なマリー先輩。まぁ、パーフェクトは難しいか。

 あたしも『万能包丁シラサギ』は欲しいけど、今回は楽しむ事を考えよう。


「マリー先輩、次あたしは『初心者』コースで」

「堅実だな。オッケー!」


 200円を渡して、『初心者』コースの景品の中で一番良さそうなユニコ君(クリスマスver)でも取って行こう。


「谷高、準備が出来たらいつでも投げて良いぞ」


 あのCDに何でそこまで執着するのか。ヒカリの投げた第一投目はパネルの二番を抜いた。

みんな命を賭けてる

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