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第569話 ゲストメンバー

 体育館のゲスト室(普段は倉庫。今は片付けてある)。

 『フォルテ』は何度も全国ツアーを執り行う程に国内では最も勢いのあるバンドグループだった。

 彼らは毎回、ランダムで学園祭や文化祭のゲストに赴く事で知られ、その抽選に見事当選した学校は幸運に他ならない。


「ふむ……オーケー。二人ともそれで行こう」


 彼らは早めの昼食(弁当)を学校側より提供され、簡単に各々の楽器を調整しながらボーカルでギターもやるリーダーから問題なしの言葉をもらった。


「最近の高校は良い楽器を揃えてるよな」


 ドラムのメンバーは、サプライズと言うことで愛用品を持ち込めなかった為に、学校の軽音部が使うドラムを上手い具合に調整した。


「昔ほど不便じゃないよな」


 ベースを担当するメンバーも学校から機材を借りて、これなら満足行く演奏が行えると湧き立つ。


「けどさ。こんな俺らでも霞んじまう程の大物さんがいるじゃないのさ」


 と、ドラムは別の席に座る、ハリウッドで大活躍の大物俳優――佐々木光之助に視線を向けた。

 彼は弁当を綺麗に食べ終わり、音楽を聴いているイヤホンを外す。


「『フォルテ』の皆さんの事は海外でも話題になってますよ。近々、『グランドミュージック』の候補に上がるかもしれませんね」


 『グランドミュージック』は音楽界のトップであるノーツ家が主催する音楽の世界祭典のようなモノだった。

 観客は国のトップや上流階級の人間ばかり。出場者するだけでも名誉であり更に、最優秀に選ばれれば、生涯において、音楽で困ることの無い程の名声を得る。


「俺たちも噂程度は聞いた事がある。しかし、同じ音楽と言えどバンドは畑違いじゃないのか?」


 そう言うステージは総じてクラシックが好まれるとリーダーは思っていた。


「前に少し話したんですが、ノーツ家の当主――バルフレル・ノーツ様は功績ではなく、“音”で出場者を決めますよ。彼にとって音楽とは生活の一部であり、常に新しい音を求めているんです。何度もコンテストで優勝したとか、大会の常連だとか、そんなモノは関係ないのです」

「実力主義ってことか」

「はい。しかし、流石に地球の裏側まで探し出す様な手間はかけないと思います。YouTubeで、LIVE配信したり、動画を投稿したりして知名度を上げると、より注目される可能性が上がりますよ」

「ノーツ家もYouTubeは見るのかよ」

「噂よりはあてになるのでしょう」


 国外のライブも考えている『フォルテ』にとって『グランドミュージック』に選ばれたと言うだけでも大きな知名度になるだろう。


「直近の目標はソレだな。音の質を上げてコンサートのLIVE中継も常に上げて行くぞ」


 思いもよらぬ情報に『フォルテ』の面々は一層やる気が生まれた。


「貴重な情報をありがとな、佐々木さん」

「佐々木で結構ですよ。皆さんの方が歳上でしょうし」

「あ、マジ? 気を使うのってあんまり好きじゃなくてさ」

「歳上の人に敬意を払うのは当然ですよ。まぁ……こっち業界はそう言うのが厳しくて」

「あぁ……俳優業ってキャリアがモノを言いそうだしな」


 活躍する場は違えど、互いに理解のある立場を共感し、場の空気は良いモノとなった。そして、話題はこのイベントに参加した経緯に移る。


「佐々木君は何でこの高校に? 母校とかだったりするのか?」

「いえ……夏に少々痛い目に合いましてね。それを克服した事を認識したいんですよ」

「あー、そういや何かあったな」


 佐々木は夏にサプライズで地方の夏祭りに参加した。しかし、そこでちょっとしたアクシデントとして“仮面ライダー”と“くも男”の襲撃に合ったのである。(ツイッターにその時の動画が上げられていた)


「あれってどういう状況だったんだ?」

「未知との遭遇としか言い様がないですね」


 得体のしれないナニかに触れた感覚は、俳優として浮かれていた佐々木に喝を入れる結果となった。

 以降、甘いマスクを売りにしていた佐々木は堅実で真面目なイケメンへと成り変わったのである。


「あの“くも男”とはいつか雌雄を決さねばと思っていますよ」

「相当、難しいと思うが……まぁ頑張ってくれ」

「どうも」


 佐々木の今後を応援しつつ、今度は『フォルテ』の事情に移った。


「皆さんの方は、何故この学校に?」

「俺らは一年に一度、どっかの学校でこう言うライブをやってるんだ」

「抽選形式だけどな」

「当たったところはラッキーくらいには知名度を上げたつもりだ」

「謙虚ですね」


 俺らはソレが売りだしな、と『フォルテ』の面々は笑う。

 彼らはファンを大事にする事でも知られており、それが人気の一つだ。


「けどよ、俺は一つ疑問なんだが」


 リーダーは学校側から貰った『文化祭の栞』を開いてイベントの項目の一つを皆に見せる。


「この『厄祓いの儀』ってなんだ?」


 それは昼の頭にあるイベントである。ゲストはサプライズである為に誰が来るのかは名前が載っていない。(佐々木と『フォルテ』は学校に入る所を少し見られて校内では噂になってる)


「大学受験生の生徒も居ますし、願掛けみたいな物だと思いますよ」


 佐々木が客観的にリーダーの疑問に答える。


「つまり、リーダー。ソレをトップに持ってくるのはオードブルみたいなモンさ。ゲストに落胆した所で佐々木君が出て盛り上げて、俺らで占めるって寸法よ」


 ベースのメンバーは学校側の意図を理解する。


「それに『厄祓いの儀』って完全に神社仕事じゃん。来るヤツはおっさんとか爺さんで、ずっとお経を唱えて終わる感じだと思うぜ」


 ドラムのメンバーは『厄祓いの義』がトップに来てくれた事は逆にナイスなチョイスだと感じた。残りの面子で文化祭のテンションは挽回出来るからだ。


「それなら、俺たちの立場が重要ですね。何なら、俺が呼ぶタイミングで『フォルテ』の皆さんに入ってきて貰うのはどうでしょうか?」

「お? 良いのか? それなら時間的に二曲は歌えそうだ」


 等と『厄祓いの儀』を完全に無かったモノてして相談する面々。そこへ、ガチャッ、とゲスト室の扉が開いた。


 『厄祓いの儀』をやるヤツが来たか。と面々は自分達の引き立て役になってくれる人物へ視線を向ける。


「ここか」


 現れたのは、おっさんでも無ければハゲた寺の住職でもない。

 四人とも今まで見たことの無い様な美女だった。


「ん? あぁ、ゲストの面々か。私は流雲昌子。今日はよろしく頼む」


 と、ショウコは淡々と場の面子に告げた。

ゲストの中で一番の変人はショウコ

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