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第552話 トップ会談

 ケンゴがミツに命を狙われる数時間前。

 『神ノ木の里』。神島の母屋の縁側にてジョージは、来訪した『ハロウィンズ』のマザーと座って会話をしていた。


「正直な所、耳を疑いました。貴方ほどの方が深傷を負うなどと」

「ワシも人間だ。ミスもするし、怪我もする」


 護衛のブルーはジョージの計らいでカポエラを普及するために公民館にて人を募り、この場には居ない。彼の代わりに護衛として三犬豪が母屋の入り口と、中庭に配置されている。

 ジョージは完治しない腕を三角巾で吊った様が痛々しく見えた。


「お前といい、タツヤといい、律儀なモンだな」

「貴方は誰よりも他人の為に戦って来ました。恥ずかしながら……私も貴方の力を借りました。その恩を可能な限り返せればと思っています」

「人殺しのジジィの恩などカウントするな」

「Dr.イグルーも、決して見返りを求めませんでした」

「…………死に方は親不孝だったがな」


“親父、ケンゴが大人になったら三人で酒を飲もう”


 本当に……自分の事はささやかな望みばかりな息子だった。


「それで、サマーは今どうしている?」

「あの子は元気に成長しています。お孫さんとも接点がある様ですよ?」

「初耳だ」

「そうだったのですか? 私はてっきり、知った上で接触してきたのかと」


 サマーとケンゴが御膳立て無しで関わりを持ったのか。やはり……縁と言うモノは思った以上に家族を引き合わせる様だ。


「ケンゴにはサマーの親の事を話したのか?」

「話すかどうかはサマーに一任していますので。しかし、聞いたらビックリするでしょうね」

「だろうな」


 例えその事を知ってもケンゴは拒絶しないだろう。寧ろ、喜んで歓迎するハズだ。


「その過程で、『舞鶴琴音』と『アキラ』に関して全て話しましたが……」

「構わん。どうせ、もう誰も気にかけておらんからな」


 全て終わった事だ。そして……アキラが死んだ事でもう掘り返す者もいないだろう。


「本日は、お見舞いの他にもう一つ用件があるのです」

「なんだ?」


 マザーは一呼吸置いて、心するとその事を口にする。


「『ウォータードロップ』について、知っている事を聞きたく思いまして」






「良く来た、フェニックスよ」

「あ、うん。ありがとう、サマーちゃん」


 移動中もビクトリアさんとミツの殺意ある視線に狙われつつも、ショウコさんのおかげで何とか殺されずに居る。

 こんな状態で『ハロウィンズ』の拠点に行くなど、処刑台に向かう囚人と同じ状態に思えるのだが……オレは生きて帰れるのだろうか?


「グッドタイミングじゃな! 今日はマザーが来る予定でな、夕飯を少し豪勢に作っておる! 食べて行くが良い!」


 奥から食欲を刺激するカレーの匂いが嗅覚を通して空腹感を攻撃する。これ、絶対に旨い匂いのヤツじゃん。でも、


「あー、ごめん。先約があるんだ。伝える事を伝えたら帰る事にするよ」


 いつもなら飛び付く状況だが、例の件を話した後に、同じように食卓を囲むのはいささか場違いな気がする。それに、リンカの所で夕飯を食べるって約束してるし。

 何より、背後から刺さるヒットマン二人の殺意の視線がホントにやべぇ……


「そうか……それは残念じゃのう。では、ミツ。改めて挨拶せい」

「カスに挨拶をする必要はありまセーン」


 ミツは悟った様な眼で拒否。詳しくは知らないんだけどさ、牧師って本来ならそう言う差別的な感じは良くないんじゃないのか?


「やれやれ。フェニックスよ、こやつは、ガリア・ミケロ・ツファイス。『ハロウィンズ』のドレイナーじゃ」

「ドレイナー?」


 聞きなれない言葉には質問が大事。


「掃除人と言う意味じゃ。基本的には粛清者として、組織の離反者、裏切り者の始末をする特殊なエージェントである」

「そういう事デース。マザーに反旗を翻すカスとマイゴットを汚すカスを始末するのがワタシのミッション。故に貴方をDIEシマース」

「ちょっ! DIEする理由の後半が、私的過ぎません!?」


 ミツこと、ガリアさんはかなりぶっ飛んだ人だった。サマーちゃんからの言葉に対しても従う感じはかなり薄いし、組織内での地位は相当にある様子。

 こういう人間に、そこまでの地位を与えちゃ駄目でしょうが!


「ミツよ、DIEする前にさっさとドリンクを作れ。そろそろマザーが来るぞ」

「タシカニ。カスに気を取られてマザーに対応出来ないのは不本意デスネ」


 と、蟻みたいなオレの命よりもマザーのおもてなしが優先のガリアさんは台所へ歩いて行く。


「あ、ちょっと待ってくれません?」

「WHY?」


 しかし、オレはガリアさんを呼び止めた。


「サマーちゃん。皆に聞いて欲しい話があるんだ。二階のPCの部屋で話を出来ないかな?」

「それは構わんが、今すぐでないと駄目なのか?」

「うん。今すぐじゃないと駄目だ」


 オレは父さんの日誌が入ったUSBをサマーちゃんに渡す様に差し出すと、ショウコさんを見る。

 キスをした彼女に『フェニックス』が移っている可能性を考えると一秒でも早く伝えなければならない事だ。


「全てを聞いた上で、オレをどうするか皆で判断して欲しい」

彼の責務

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