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第551話 ひぇ~!

 パンッ!


「うげ!?」


 ミツと名乗る長身の牧師が聖書の裏から向けたデリンジャーは、パンッ! と言うクラッカーの様な音を出すコンマ数秒前に、オレは背後から足カックンをされた事により、射線が外れた。

 チュンッ! と、弾丸は髪の毛を僅かに掠める。


「WHY?」

「痛ってて」


 オレは尻餅を突く。ホント、一体なんなの!? 命狙われる意味が分かんないだけど! 誰か説明をしてくんないの!? ロック○ンみたいな、問答無用で霧散する死に方なんて死んでも死にきれねぇ!


「ストップ」


 そんな声と共にオレを足カックンした人物――ビクトリアさんが背後に立っていた。

 助かったかどうかは未だに分からないが……助けてくれた所を見ると、オレをDIEしに来たワケではなさそう。

 もし、ビクトリアさんがイカれた牧師側なら人生が詰む。あ、下から見上げるとビクトリアさんって結構スタイル良いな。


「ふざけた視線を向けてると、首を蹴り折るぞ、クソ野郎♪」

「ごめんなさい……」


 見上げるオレの顔にミシリッとビクトリアさんが靴裏を乗せる。


「何のマネデース?」

「いや、コイツムカつくけど、殺しちゃ駄目なヤツだから」


 身長的にはミツの方が高いが、気迫ではビクトリアさんも負けてない。そんなビクトリアさんも敵に回すと完全に詰むので、素直に顔面を貸して踏み台に徹する。ギャラリーもざわざわと集まってきた。


「ワタシ、日本語ワカリマセーン」


 パンッ!


 まるで自然な流れで、いつの間にか銃口がオレに向いていたデリンジャーが2発目を放つ。

 しかし、それよりも先にオレの顔に乗せていたビクトリアさんの足が跳ね上がり、デリンジャーの射線を斜め上に変えた。

 え? 今僕……死んで……た? ひぇ~!


「だから駄目だって。マザーの許可が出るまで待ちなよ」


 牧師は弾切れのデリンジャーをスッと聖書の裏に隠す。普通に自然な流れて殺りに来た。並みの技量じゃない。なんと言うか……人間の虚を突く事に長けた、プロの所作である。

 ビクトリアさんもそれなりだが……このミツとか言うヤツはもっとやべぇ……

 今さらだけど、何で牧師スタイルなんだ?


「解ってイマセンネ。コイツはマイゴットを汚したのデース。ソレは罰スルには十分な理由はデショウ」

「マイゴットって……ショウコは神でも何でもないんだけど?」

「無神論者ニハ彼女のシャインが見えないノデスネ。何とも嘆かわシイ」


 コイツ……女郎花と同じ眼を持っているのか? それだけでヤベー奴って事がわかる。


「まぁ、アタシも殺すには賛成派だけど、日本じゃ駄目だって。色々と面倒な事になるし、適当に海外で拉致って海に沈めようよ」


 あの……本人が下に居るのに、そう言う話をするのは止めてもらえませんかね?

 二人の会話に口を挟むとそのまま実行されそうなので今は体育座りで黙って縮こまるしかないが……


「ノー。ワタシはジャパンの聖地へ行く予定を組んでいるのデース。この程度のカスの始末に時間を取られるのは不本意なのデスヨ」


 と、ミツはどこからか懐中時計を取り出し、時間を見る。


「予定を五分もオーバーしてマース。二秒でDIEするカラ、ジャマスルナヨ、メス猿」

「ホントさ、お前ケンカ売る言葉しか言わないよな?」


 ハハハ、と笑いながらビクトリアさんがミツの顔面にハイキック!

 カポエラ戦士としての鍛え上げられたバネが、直立状態でも十分な威力を持ってミツの頭部を刈る!


 しかしミツは、ヤレヤレ……と言わんばかりにそのハイキックを迎撃するハイキックで応戦! 両者の蹴りが脛と脛でぶつかり合う!


「オマエ、協調性とか無いわけ?」

「オマエが言ウナヨ」


 オレは両方に言いたいです……

 ぶつかった反動で足を引いた両者だったが、ビクトリアさんはその勢いを利用し、回転しながらソバットにて、再びミツの顔面を狙う。

 ミツの高い身長は攻撃が遠目になるので優位にかと思われたが、足の届く範囲ならビクトリアさんにとっては無いモノと同じらしい。

 その蹴りはミツの顔面に横からヒットした。


「あー、ホントに、やりずらいんだよな、オマエ」


 遠心力を含んだビクトリアさんの蹴りが直撃した瞬間、ミツは身体全体を回転させて威力を完全に流していた。原理は『流力』と同じ。

 ザッ、と正面を向き直すとオレを見下ろす。ビクトリアさんはまだ着地していない。

 イカれた牧師の袖からナイフが滑り出てくる。


「DIE」


 ひぇ~! 座ってる状態じゃ何も出せない! せめて正座なら何とか出来たかもしれないけど……体育座りじゃ詰んでる! そして、人生も詰んだ!


“♪~♪~”


 その時、場に着信音が響き、ピタッと牧師が動きを止める。それはオレの着信音じゃない。ビクトリアさんはスマホを持っていないみたいで、動きを止めた牧師の着信(モノ)だろう。


“♪~♪~♪~”

「……」

「あの……鳴ってますよ?」


 オレは教えて上げるものの鳴る着信音に殺人牧師は動きを止めたままだ。そして、着信が切れる。


「DIE」

「ちょっ!」


 何事も無かったかのように、オレのDIEを再開しやがった! ひぇ~!


「ホントさ、お前止めろって」


 その時、戦乙女のビクトリアさんが、牧師の肩に足を置いてナイフが届く距離を制限。切っ先がオレの鼻先で止まる。ひぇ~!


“♪~♪~♪~”


 そして、再度着信。

 ビクトリアさんが足を橋の様にオレの上空に掛けて、牧師のDIEを止めるポーズで全員固まる。


“♪~♪~♪~”


「……」

「……」

「……」


 何これ? 何で二人とも動かないんだ? オレは動けないんだけどさ!

 謎の硬直。今度はオレのスマホが鳴る。


「あ……すみません……ちょっと、取りますね……?」


 オレは低姿勢でペコペコしながら、胸ポケットに入っているスマホを取り出す。着信はサマーちゃんだ。オレは縋る様に即座に出る。


「サマーちゃん! 助けて! 殺人牧師に襲われて――」

『ミツ! 貴様! 電話を取らんか!!』


 まるでスマホが怒っている様な怒声は、オレではなく牧師へ向けられていた。

 って事は……どこかから……あ、レツのドローンが電柱の上に乗ってる。


「……サマー。これは正当な粛清デース」

『じゃから、電話を取れ! 相手はマザーじゃぞ!!』


 マザー。確か……『ハロウィンズ』のボスだっけ? ミツって、相当に地位は高いヤツなのか?


「エスケープ、キル」


 ミツはオレを指差してそう言うと、ようやくナイフを仕舞って身体を起こした。そして、着信に出る。


「YES、ワタシデス。……しかし、マザー……OK……」


 ピッと電話を切る牧師マンは、諦めた様子で殺意が消えた。


「ここはマザーに免ジテ、見逃しマース。しかし、次は必ず罰シマス」


 と、十字を切る牧師。お前に十字を切る資格はねぇ!


「ケンゴさん」


 と、ショウコさんとテツが走ってきた。

 テツはギャラリーに、映画の撮影です、と言う看板を見せながら事態をおさめる。


「マイゴット……」

「ショウコ。別に来なくても良かったのにサ」

「サマーに言われてな。私が一番事態を納められると」


 サマーちゃん、マジでオレたちのリーダー。メンバーの相関図を加味した完璧な人選だ。一生ついて行くよ~(泣き)


「ケンゴさん。怪我はないか?」

「あ、うん。大丈夫――」


 と、立ち上がろうとした時、思いのほか腰が抜けていたらしく、思わず転びそうな所をショウコさんが抱き止める形となる。

 豊満な二つのクッションの間に顔が埋まる。


「ケンゴさん。急に抱きつかれると正直照れるんだが」

「え? あっ! なんだとぉ……腰に力が入らないぃ!?」


 離れ……られねぇ!


「……ミツ、見なかった事にするから殺ろぜ」

「YES KILL」


 殺意が一つ増えたものの、オレは、ひぇ~! とショウコさんバリアーで何とか命を繋いだ。

ショウコが絡むとスケベ運が増える主人公

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