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懐いてた年下の女の子が三年空けると口が悪くなってた話  作者: 古河新後
35章 君にだけは嫌われたくなかったから
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第515話 娘を執拗に付け狙う悪魔!

「よぉ、六年ぶりだなぁ」

“……”

「お前は全く変わんねぇな。このオレが殴った痕もちゃんと残しやがって」

“……”

「里の色んな物が朽ちて行ってもお前だけはずっと残るんだろ? オレが死んだ後も皆を見守っててくれよな」

「…………お前、木に向かって何言ってんだ?」

「ひょわわっ!!?」


 オレは母屋の側面に生えている盟友デストロイヤーへ帰郷の挨拶をしている所をジジィに見られた。

 ジジィは、ついにイカれたか、と言う眼でオレを見る。むむむ。オレとデストロイヤーの友情を知らんのか!


「この木は……お前が正拳1000本してたヤツだな」

「名前がちゃんとあるんですー。デストロイヤーって名前が」

「お前……まぁ、いい」


 何だジジィ、その眼は。デストロイヤーの協力と女郎花教理との激戦を得て完成した『ジジィの嫌がらせ正拳』を食らわせてやろうか!


「怪我人が急に現れて。一体に何しに来たのさ」

「お前、外で『古式』を使っただろ」

「ギクッ!」


 あ、やべ……思わず声に出ちゃった。


「んな……使うワケ無いじゃん~。ケンゴ意味わからない~」

「……一応はセーフにしといてやる。ワシの耳には何も入って来て無いからな」


 これは……バレてるな。うん。『古式』のご利用は計画的に行わねば。さもなくば、路地裏の闇の中から『処刑人(ブーギーマン)』がやってくる。


「お前、外での繋がりはどうなってる?」


 今度は外での関係を聞いてきた。


「どういう風の吹きまわし? オレの外の事なんて興味無いでしょ?」

「お前が里で籍を入れればな。だが、今のお前は里の外へ関心を向けている。何か深い繋がりがあるんだろう?」

「…………ちょっとだけね」

「ちょっとか?」

「いや、何を聞きたいのさ! 回りくどいのはいいから、ビシッと言ってよ!」


 珍しく気を使いよってジジィ。そんなの似合わないっつの!


「年末に連れてくると言っていた娘が居たな?」

「え? う、うん」


 電話をした時に少しだけ鮫島家の事を話した。


「何故、里に連れてくる?」

「何故って……まぁ、約束だから……」

「フッ、そうか」


 何の、フッ、だよ何の。


「女に振り回されるのはワシらの厄介な血筋だ。刺されるなよ」


 と、ジジィは七海課長にも言われた事を再度オレに自覚させつつ母屋へ踵を返して行った。いやさ……ホントに何で話しかけて来たん?

 すると、風に枝が揺れる。


「デストロイヤー……お前だけだよ優しいのは」


 お前も大変だねぇ、って言われた気がした。






 ケイと天月を乗せたゲンの運転は彼女の実家の前で止まった。


「ほほぅ、ケイさんの実家ですか!」

「当たり前だ。お前を一人暮らしの部屋に呼ぶワケねぇだろ」

「いえいえ、俺は別に構いませんよ。ご家族と親身になることはプラスにしかなりませんからね!」

「ああ、そうかよ」


 ケイと天月は車から降りてトランクを開け、自分の荷物を取り出して閉めた。


「助かったぜ、ジジィ」

「送迎、ありがとうございました!」

「それじゃあ、明日な。俺も今日は、瑠璃に会いに行くとするぜ!」


 最愛の孫娘へハンドルを切るゲンを二人は見送った。


「やれやれ、あんまり理解出来ねぇ感覚だな」

「そうですか? ケイさんもユウヒちゃんやコエちゃんに頼られる所は実に嬉しそうでしたよ」

「ありゃ、また別だろ。まぁ、否定はしねぇけどよ」

「それが自分の血が繋がった身内であると愛は倍増です」

「……」


 まともに会話が出来ていると思ったら、やっぱり面倒くせぇ奴だ。と、ケイは嘆息を吐くと荷物を抱えて実家のインターホンを鳴らす。


『はい』


 すると今の時間は仕事であるハズの父だった。


「ん? 父さん? 今日はアイツ――社長と食事会のハズだろ?」

『おお、ケイ! いやね、急に社長の事情が変わってね。今日の食事会は延期になったのだ。なんでも迎え討つとか』

「あー、そうなんだ」


 あのクソ忍者のせいか。ヤロウ、マジで害悪でしかねぇな。確実に仕留める為に……俺も援護に向かった方が良いか?


『話は家に上がってからだよ』

「今日は泊まるわ」

『おお、そうかい!』


 ま、4課も半分以上が動いてるし……別にいっか。


「ケイさん。今日は泊まるんですか?」

「タクシー代はやるから飯食ったらオメーは帰れよ」


 すると、出迎えに家の扉を開いたのはインターホンに対応したケイの父――七海晋作(ななみしんさく)である。


「お帰り、ケイ。父さんはもっと実家に顔を出してくれると嬉し――――」


 シンサクは、ただいまー、と告げるケイの後ろに立つ天月を見て、


「き、貴様は!」


 娘の帰省を嬉しむ表情を一変させる。


「ついにここまで来たか! 娘を執拗に付け狙う悪魔! 天月新次郎!!」

「こんばんは、支部長! 何とも妙な縁でしてね! 僕もまさか出先で……ケイさんと共に過ごすとは思いませんでしたよ!」

「なん……だと……ケイ……それは本当なのかい? この……悪魔と……?」

「父さん。俺は最低限の義理を果たすだけだよ。母さんには事前に連絡してたけど?」

「と、父さんは聞いてないぞ!」


 母さんは意図的に伏せたな、こりゃ。この手の話題は大好物な人だし。


「と言うワケで夕飯をいただきに参った次第です」

「貴様は黙れ! ケイ……本当かい? まさか……この男に何か弱味でも握られて脅されてないかい?」

「あら、いらっしゃい」


 玄関前でドタドタしていると、奥からケイの母――七海紬(ななみつむぎ)が事態の収拾にやってきた。


「ただいま、母さん」

「お帰りケイ。天月君も上がって行きなさい」

「母さん……本気か? 本気でこの男を上げる気かい?」

「ケイが連れて来たんだから尊重させましょうよ」

「と、言う事らしいですね。支部長」

「貴様……」

「母さん、ノリトは道場か?」


 うぬぬ! と睨むシンサクの視線を爽やかに受け止める天月を後ろ目に弟の事を問う。

 時間的には学校は終わっている。家に居ればこんなにドタバタしていると、顔を出すハズだった。


「あ、そう言えばね、ケイ。今日はノリトが彼女を連れて来るのよ」

「アイツ、シオリを狙ってたんじゃねぇのかよ」


 相変わらず移り気の激しい弟に、まだ見ぬ彼女には同情した。


「え? なにコレ……何で姉貴と新次郎さんがいんの?」


 その時、背後から噂の弟が帰宅。その傍らには同年代と見える美少女が共に居た。


「カオスね」

「いつもはこんなんじゃ無いんだけどな……」

「おう、ノリト。そっちの()がお前の12番目の彼女か?」

「ちょっ! 姉貴! 語弊ある言い方止めろって!」


 慌てるノリトに対して、彼女は何かしらのリアクションを見せると思ったが、機械みたいに表情は動かない。


鬼灯未来(ほおずきみらい)と申します。七海君の12番目の彼女だと思います。初めましてお姉さん」

「鬼灯! 違うから! 少なくとも5人くらいだから!」

「5人目だそうです」

「あっはっは。面白いな、オマエ。ん? 鬼灯?」


 ミライのマシンフェイスのインパクトに隠れたが、改めて名前を聞き返す。


「姉がお世話になっているそうで」


 そう言って、彼女はペコリと頭を下げた。

この展開はやりたかったヤツ

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