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第481話 第一候補

 結構な大所帯での朝食が賑やかに終わり、オレとアヤさんが洗い物をして、ユウヒちゃんとコエちゃんは広間の掃除を始める。残りの面子は、


「ロクの爺さん。行こうぜ」

「今日はとても素晴らしい! 昼間でもケイさんと一緒に居れるなんて!」

「今日は各々の役割を果たそう」


 七海課長、天月さん、ロクじぃは残りの熊の討伐の為に銃蔵へ他の銃士達と合流しに行った。


「ほいじゃ。ワシらも行くかヨミ」

「早く行きましょう」

「アヤさん。本当に側に居なくても良いのですか?」

「はい。ハジメさんと蓮斗さんは、皆様を手伝ってあげてください」

「ハジメよ。コイツは俺の本領だぜ! この荒谷蓮斗ぉ! 力仕事にかければ右に出る者は居ねぇ! 昨日の俺を越えて行く!」


 昨晩仕留めた熊の死体の解体と移送に、ばっ様、ヨミ婆、ハジメさん、蓮斗は公民館を発った。最低限の道具を持ち、現場には何人かが応援に来るとのこと。

 他の銃士は熊狩りに山へ入るので、蓮斗は力仕事兼護衛だろう。素手で熊を一頭仕留めたらしいし、悪くない人選だ。


「ケンちゃんや」

「なんじゃい」

「アヤとしっかりな(ヒソッ)」


 近づいてきて、ひそっとそう言うばっ様。昨晩の事を何も悪びれてねぇな、このババァ。


「公民館は俺が様子を見てるから。後ろは気にすんな」


 そんでもって、負傷者と非戦闘員の居る公民館の守護神はゲンじぃ。頼もし過ぎるぜ!

 三犬豪は既に仕事モードで、ロクじぃ達には大和が、ばっ様達には飛龍が、公民館には武蔵が就く。基本的にはレーダー要員である。


 昨日の様な事態は起こらないと思うが、各所の戦力は十分にあるので、ある程度のイレギュラーには対処出来るだろう。

 指示系統もロクじぃとばっ様できちんと分かれてるし、オレが出る幕はもう無さそうだ。


「ケンゴ様。私たちは――」

「ちょっとやることがあるから、ユウヒちゃん達の手伝いをしてあげてくれる?」

「わかりました」

「その後にデートで良い?」

「――はい」


 真剣に返事をするアヤさんに、心の構え方を間違えてると思いつつオレは微笑んだ。






『ハッハッハ。やはり君と話していると実に身の入る会話が出来るな、デューク・ケイスケ』

「恐れ入ります、閣下」


 白鷺圭介は農園の小屋にて、収穫される作物の様子を見ながら、自らが属する貴族社会の主席と電話会談していた。


『若くしてその地位にいる君を疎む者も多かろう。しかし、それを補う以上の裁量に他が黙り込む様はいつ見ても実に爽快だよ』

「運が良いだけです」

『運だけでは、キョウリに気に入られる事はない。レアメタルの件は今回も半分はこちらへ譲ってくれるのだな?』

「私が持っていても全てを使いきれませんので」

『ちなみに、レアメタルを何に使っているのか、興味本位で聞いても?』

「主に日用品ですよ。(かま)(くわ)、後包丁です」

『ハッハッハ。良き使い方だ。資源とは本来、人を生かす為に使われるべきと理解している者が我々の世界に何人いるか』

「誰も間違った使い方はしていません」

『ほう?』

「他と対等に接する為には抑止力が必要です。兵器や銃、人を護る防弾チョッキも進化するなら人の死なないレベルまで、進化を続けるべきです」

『それではより多くの血が流れると思わないかね?』

「お互いに死ななければうんざりしますよ? 見返りが無く、資源を使うだけの戦いは不毛でしかありませんから」

『なるほど。逆に考える発想だな! 世間が高度になればなるほど、人は銃を撃つよりも考える余裕を生むと言う事か』

「我々はその中でも最も考える事の出来る存在です。故に下の者に流させるのは“汗”でなければなりません」

『そうだな。その通りだ』


 しかし、現実はそうも行かない。


『君と語る理想は実に楽しい。現実に出来ると思わせ、つい夢を見てしまう』


 圭介は目の前で汗を流し、作物を収穫している者達へ視線を向ける。

 ここは、故郷の地と変わり無い心地良さを感じるが……それでも孤独感は埋められそうにないのも事実だ。


「閣下。世間話も良いですが、本題はなんですか?」


 良いタイミングだったので、本題について問う。


『ハッハッハ、バレていたか! なに、前に社交場で君の娘と話した孫が、アヤの事を気にかけていてね。どうだろう? 近々、場を設けるつもりは無いか?』

「正直な所、その手の話は閣下で6人目です」

『なぬ!? 既に先駆けている者達がいるのか?』

「随分とスタートが出遅れておりますよ」

『だが、この件に関しては皆、対等だな! アヤは続柄で贔屓するようなレディではあるまい』

「ええ。娘はきちんと相手を選びます」

『なるほど……では、出遅れたポイントを稼いでおこう。アヤに電話を代わってくれないかね?』

「申し訳ありません。娘は今――」


“御父様、ケンゴ様にお会いいたしました。とても、この身を委ねるには良き殿方でございます”


 昨晩にかかってきた娘からの嬉しそうな電話を思い出し、圭介は思わず口許が緩む。


「第一候補の元に行っております故」


 その時、会話に割り込みの着信が入る。相手はケンゴからだ。


「噂をすれば彼からの連絡です。失礼します」

『なんと! これは本当にうかうかしてられんな!』


 圭介は今の通話を終えると、ケンゴからの着信を何よりも嬉しそうに出る。


「久しぶりだね。ケンゴ」


 その後、彼らの貴族社会において『白鷺の姫君』を誰が射止めるかでドタバタが起こり、何よりも『鳳健吾』に関して誰もが調査を行った。

 一体、どこの有識者であるのか? と――

勝手に大物にされるケンゴ

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