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第474話 これで最後じゃ

「アヤさん……色々と聞きたい事があるけどさ、第一に確認して貰っていい?」

「え? はい。なんでしょうか?」

「後ろの扉……鍵かかってる?」


 オレの言葉にアヤさんは振り返るとドアノブを触る。ガチャガチャと回る様だが、開く様子はない。

 ちなみに、管理室の扉は少し特殊で内鍵が無いタイプなのだ。


「その様です……」

「……えぇ……」


 バカな……オレはロクじぃに言われて管理室に来たのだ。


「トキお婆様に呼ばれてここに来たのですが」

「え? なんて言われた?」

「今後の『神島』に関しまして、重要な話がある、と」


 オレと同じ呼ばれ方……これはロクじぃもグルと見て良いだろう。信用してたのにぃ! えーん!


「……あー、うん。そっか。アヤさんは悪くないよ」


 心休まる暇がねぇ! あのババァ……ジジィが寝てるのを良い事に好き勝手しやがってよぉ! 死ぬときは絶対にジジィの老衰と同時に連れてってもらわないと手に負えねぇぞ!


『ザ……ザザ……』


 すると、『神島のヒ・ミ・ツ』の横に置かれていた無線機からノイズが聞こえる。助けを呼べるかもしれないと、思ったオレはソレを手に取った。


「助けてくれ! 管理室に閉じ込められた!」

『その部屋は○✕△しないと出れない部屋です』

「おい。ふざけんな」


 敬語を使ってもバレバレなんだよ。ババァ!


「こっちは疲れてるんじゃ! もう寝たいの!」

『ケンちゃんや』

「なにさ!」

『必要なモノは隅の段ボールに入っとる』

「いや……鍵を……」

『ワシも予想外じゃ。鍵が錆びてたのか壊れてもうた。穴に入ってポッキリ折れたわい』

「おぃぃぃ!!」

『まぁ、イベントにトラブルは付きもの。明日には何とか出来るじゃろ』

「待て待てぇい! 今すぐゲンじぃに言って蹴破って!」

『ケンちゃんや』

「なんじゃい!」

『これで最後じゃ』

「……は?」

『ぐっどらっく!』

「え! ちょっ! おい! 切るな!」


 もしもーし!! とオレは無線に叫び続けるが完全に反応は無い。


「うーむ。どうやら本当にドアノブは壊れてしまったみたいです」


 アヤさんは出来る限りの確認をしてくれていたが、それでも扉は開きそうにない。


「アヤさん……ホントにごめんね」

「い、いえ。お気にならさず。正直な所、結構楽しんでいますので!」


 ふんす! と脇を締めるアヤさんにオレは心から謝った。悪戯好きのババァがホントにすみません……


「やれやれ……」


 仕方ない。とにかく状況整理として色々と物色を開始。まずは『神島のヒ・ミ・ツ』とか言う、明らかにこの為だけに作られた罠資料の閲覧から行くか。


「何が書いてあるのでしょうか?」

「あんまり、期待しない方が良いよ」


 肩口から覗くアヤさんと一緒に資料をめくる。


 『神島』における実働記録。

 大鷲、白鷺による対象暗殺事例。

 大鷲戦理による排除の失敗は、大鷲譲治により――


 オレは走りだけを読んで、パサッ……と閉じる。

 ちょっ! ガチのヤツじゃん、コレ! 何で文化祭のしおりみたいに、ぽんって置いてあるわけ!? ちゃんと金庫か何かに仕舞って置かないとダメでしょうが!!


「ケンゴ様。この資料は……」

「うーん。じっ様に判断してもらおう。勝手に読むとヤバいヤツだ」

「わかりました」


 そんでもってばっ様は怒られろ。

 次に隅の段ボールとやらを漁る。中からは毛布が一枚出てきた。


「一枚だけでしょうか?」


 狙いが読めたぞ。まったくよ、オレも嘗められたモノだな。二人きりにすればアヤさんに手を出すモンだと思ってやがるぜ。やれやれ……


 風呂場とは違い、互いに服を着ているし、何なら10月後半の肌寒さもあってそんな気は起きない。

 アヤさんに毛布を渡してオレは更に段ボールを調べ――


「…………」


 中には避妊具とロー○ョン。そして一言メモ。


“乾燥すると痛いぞ”


 オレはメモを段ボールの底に叩きつけた。


「ケンゴ様……それは……」

「あ! いや! まぁね! ばっ様にも困ったモンだよねぇ! あはは!」


 察しの良いアヤさんは即座に理解して顔を赤くする。

 対してオレは、そう言う道具を見るとそう言うモノを想像してしまう悲しい生物なので少し悶々とした。

 さっさと寝てしまおう。


「もう、余計な事は考えずに寝ようか……」

「はい……」


 もー、変な空気になっちゃったじゃないのよ! ホントに悪戯好きのばっ様には困ったものだ。


 椅子や机を端に避けて横になれるスペースを確保する。

 オレは壁側に背を預ける形で座って寝ることにして、アヤさんには段ボールを折り畳んだ上で横になってもらおう。


「毛布はアヤさんが使って良いからね」

「……いえ。二人で使いましょう」

「いや……それは……」

「私の気を使っていただけるのは嬉しく思います。しかし、それでケンゴ様が体調を崩されれば罪悪感になるのです」


 む、むぅ……モノは言い様だ。しかし……オレの理性は持つのか?


 そんな事を考えていると、アヤさんは隣に座って二人を包む様に毛布をふわり。


「思ったよりも暖かいですね」

「……ソウダネ」


 それよりもアヤさんの良い匂いが煩悩を成長させていく。そう言えば風呂上がりなんだよな! 何でさぁ……女の子ってこう、良い匂いがするんだろう。

 なんか……ふわふわするぅ……今日はもう疲れたし……全部手放してぇ……気持ち良くなっ――


「ケンゴ様」

「なぁに?」


 オレは何とか残る僅かな理性で返事する。


「少し、不謹慎かもしれませんが……今、凄く楽しいのです」


 そう言うアヤさんは楽しそうに微笑む。


「普段から何事も苦にはなりませんでした。けれど、この里に来てからは驚きと知らない感情の連続です」


 アヤさんは端から見ても優秀だとわかる。きっと、圭介おじさんの元でも高水準の結果を残して来たのだろう。

 すると、アヤさんはオレの手を取ると、自分の胸に触らせて来た。


 ………………………………WHY?


「……ケンゴ様。今、私はものすごくドキドキしています。それがわかりますか?」


 ……正直、おっぱいの柔らかさしか解りません……


「アヤさん……風呂場でも言ったけど……そう言う事は……」

「今は……暖を取るべきだと思います……どのような事をしてでも」


 アヤさんは顔を火照らせて上目遣いでオレを見上げた。

遭難シチュ状態

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