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第470話 ここで死ねよやぁ!!

 オレは髪と身体を拭いて服を着ると脱衣所から出る。


「おや、ケンちゃん」

「……ばっ様」


 すると諸悪の根源こと、ばっ様と遭遇した。


「今、脱衣所から出て来おったな? はて? さっきアヤも入って行ったみたいじゃが?」


 と、ニヤニヤしながら聞いてくる。隠す気の無い様子に全てを察する。このババァ……全部解っててそんな事を言ってやがる。


「あのね、ばっ様。ジョークも行き過ぎると取り返しのつかない事になるんじゃよ? 純粋なアヤさんをけしかけんの、本当にやめてぇや」

「ほっほっほ。アヤは真面目じゃろ?」

「良い子じゃ」

「他には何か感じたか?」


 ばっ様はアヤさんの様子に薄々気がついている様だった。


「こうなんじゃないか、って程度には」

「やっぱり、凸させて正解じゃったわい。こうでもせんとアヤは心内(こころうち)を明かさんでな」


 アヤさんが他者に頼らない強固な自己の殻を持っている事をばっ様は見抜いていた様だ。

 幾ら歳をとっても相手の内心を察する能力は全く衰えていないらしい。


「そこんトコは流石じゃけど、コレはやり過ぎじゃ。オレが手を出したらどうするつもりじゃったんや?」


 オレは脱衣所を親指で指す。すると、ばっ様は確信していた様に言う。


「なに、ケンちゃんの事じゃ。なんやかんやでアヤの事を思って事を納めてくれると思っとったわい」

「……まったく」


 そう言われたら、これ以上は怒れないじゃないのよ。


「まぁ、別にアヤとヤッてもワシらは全然良かったけどな! ホレ、ケンちゃんはヘタレやろ? じゃからワシが気にかけてやったのよ。もう26なのにまだ童貞(チェリー)みたいじゃしのぅ。ワシに深海よりも深く感謝感激し、早く曾孫でもこさえんかい!」

「この……クソババァ……」

「うっけっけっけ」


 ばっ様によるアヤさんの行動は、彼女の事を思ってけしかけたのか、それともただオレをからかいたかったのか……


 後者もマジであり得る話だから、ホントに手に負えない。早くこの的をジジィに押し付けないと被害は拡大する一方だ。


「まぁ、ワシは別にアヤが孫になっても全然構わんよ。圭介もお前が義息子になれば喜ぶじゃろて」

「…………周りが納得する形になるのは解るよ」


 圭介おじさんは、父さんを失ったオレにとっては父親の様に接してくれた一人だった。当時は母屋で一緒に生活していた事もあって一番距離の近い“父親”だったのだ。


 20年前に里から出て行ってしまって、実際は数年しか交流は無かったけど、オレが人を思いやる部分は、圭介おじさんから学んだ気がする。

 そうじゃ無かったら今頃の性格はジジィ2号になってただろう。


「ほほーう。そんで、ラッキースケベくらいはあったんじゃろ? 狭い浴室ッ、裸の男女ッ、奉仕する美女ッ、おっぱいの一つでも触ったか? ケンちゃん好きじゃろ? おっぱい」

「…………」

「なんか言わんかい」

「何も無いわい。少し話をして出て来ただけじゃ」


 そう言うと、オレはトコトコ歩き出す。


「どこでん行く?」

「犬三匹を撫でてくるわい。ドタバタしてまともに相手してやれんかったからのぅ」

「ふーん」


 人災ババァが何を言おうと、もう無視する事に決めた。オレは公民館の外に出ると、戸を後ろ手で閉める。


「…………ふぅ」


 オレは軽く月を見上げて――


 んんんん!! ホントっ! ホントにヤバかったぁぁぁ!! 何なの! アヤさんって何なのさ! いきなり入浴中に入ってきたかと思ったら、背中を流すようにばっ様に言われたってぇ!? ホント、純粋にも程があるでしょうよ!! 圭介おじさんはどんな風に育てたの!? マジで可愛いし! 健気だし! 濡れ美女! 慣れない事にたどたどしいのマジでクるわぁ! アレで更に文武もハイスペックなんでしょ!? 鬼灯先輩のステータスに七海課長の戦闘力足して、年齢設定下げたチートキャラかよ! 


 ぬぉぉぉぉぉ!! と先ほどの風呂場での事を思い出し、オレは声を抑えて悶える。

 三犬豪が、どうしたの? と心配して寄って来るがオレはそれどころではない。

 すると、背後からの視線に気がつく。


「ぬぉぉぉぉ――ハッ!」

「うっふふ。なんじゃケンちゃん。普通にぶっ刺さっとるやないか」

「うわぁぁ! ババァ!?」

「今夜、夜這いをかけるように言っておくでな。今日は管理室で眠りぃや。コン○ームはヨミが持ってきとるからアヤに持っていかせるわい。必要なら使えい」

「させるかよぉ! ここで死ねよやぁ!!」


 育ての親に対して口が悪いと思われるかも知れないが、これ以上アヤさんをこのババァの玩具にさせるワケには行かぬ!


 今日(こんにち)までに経験した強敵達との死闘を得て、成長したオレの全てを使って、ここで始末するぅ!!


 即、サンボタックルを仕掛けたが完璧なタイミングで真下から浮き上がる膝打によって顎を強打。意識が揺らぐ。うわわぅ……見切られ……


「まだまだ青いのぅ、ケンちゃんや」

「くそがぁ……何でまだ……ジジィより強ぇぇんだよ……」


 オレはガクッと気を失った。

 やっぱり……ババァがオレの中の強者ランキング1位だ……

2位はジジィ

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